この度なら歴史芸術文化村では、「文化村クリエイション」(*1)において招聘している、美術家・黒田大スケの作品を紹介する展覧会を開催します。

黒田はこれまで、様々なリサーチを通じて、その地に確かに存在するけれど、見えず忘れさられ無視された幽霊のような存在を見出し、姿を与えるように作品を制作してきました。その表現は彫刻や映像、インスタレーションなど多岐に渡ります。今回の展示は当初、過去作品で構成する予定でしたが、作家の意向により、天理での短い準備滞在期間中に制作した新作を交えたものとなりました。

タイトルにある「二つの海」の一つは、一説で周辺一帯にかつて広がっていたとされる「奈良湖」、もう一つは、戦時中に付近で海軍の飛行場が建設・使用されていた史実から着想を得ています。かつてそこにあったものや、失われ霞んだ部分を見つめることは、私たちが立ついまここ、そしてその先を想うことにつながっていくのかもしれません。黒田は本展作品制作中に、屋外体験ゾーンで「もぐら」に遭遇したと言います。奈良にはたくさんの遺跡や文化財が土の下にあり、この展示会場も例外ではありません。黒田は自身をもぐらになぞらえて今回この地にもぐり作品を制作したそうです。彼はなにを見出したのか、ゆっくりとご覧ください。