関西支部長の晏晞です。2025年10月11日に、関西支部と京都大学理学研究科生物科学専攻生物物理教室との共催により、京都大学吉田キャンパスにて2025年度関西支部研究セミナーを開催しました。
本イベントは複数のきっかけから推進され、開催に至りました。まず、今年は生物物理学年会が関西圏で開催されることから、年会後の支部活動を交流促進に繋げたいという目的がありました。これに加えて、これまで夏の学校を共催いただいてきた京都大学基礎物理学研究所(以下、京都基研)との交流を促進することも目的に掲げて開催しました。
生物物理学の過去と未来を考えるという目的で開催しました。その名目で、日本生物物理学会が出版するBiophysics and Physicobiology (以下、BPPB)誌のEditor-in-chiefであられる中村春木先生(大阪大学・名誉教授)に、BPPB誌の取り組みを含めたOpen Science時代における論文出版の現状と、京都基研の所長であられる早川尚男先生(京都大学・教授)に京都基研と生物物理学のかかわりについてご講演いただくこととなりました。さらに、支部内の交流を促進する観点から、参加者によるポスター発表のセッションを設けました。これにより、セミナーは中村先生と早川先生による招待講演に加え、参加者によるポスター発表の三部構成となりました(詳細は宣伝ポスター[図1]に参照)。2つの招待講演を多くの方々にも視聴できるように、招待講演だけ対面と、Zoomによるオンライン配信のハイブリッドにしました。
図1 宣伝チラシ
会場として、プロジェクター、スクリーン、マイク等のオンライン配信機材が完備されている京都大学理学研究科二号館第一講義室を使用しました。また、オンライン配信に必要なZoom関連機材については、生物科学専攻内で共有されているヤマハマイクスピーカーシステム[リンク1]を使用した。
Zoomに接続したPCを講義室のプロジェクターに接続するとともに、ヤマハマイクスピーカーシステムに繋ぐことで、会場の音声をZoomへ、Zoomからの音声を講義室のプロジェクタースピーカーへ出力する双方向のシステムを構築しました。これにより、一台のPC操作だけで、会場参加者とZoom参加者が円滑に交流できる環境を整えました。
ポスターセッションについては、会場の壁に養生テープでポスターを直接貼り付ける形式で発表していただきました。また、参加者に提供した飲み物は、夏の学校やその他のイベントで余剰となった在庫品を使用しました。発表時間は全体で1時間半としましたが、奇数番号と偶数番号に分けて、それぞれ45分ずつの目安発表時間を設けました。
デザインとして、宣伝用のチラシと名札のデザインを行いました。チラシ制作については、高田研究室の元ポスドクである寺川まゆ氏から多大なご協力を得て進め、このチラシのデザインを基調として名札を作成しました。チラシに掲載した講師の顔写真は、ご本人からメールで提供された希望の写真を使用し、印刷には研究室設置のプリンターと京都大学情報環境機構の大判プリンターを使用しました。一方、宣伝活動は、関西支部のXアカウントやDiscordチャンネルでのオンライン告知に加え、中村先生からの助言に基づいたProtein Researcher Communicationでの宣伝、さらに夏の学校、年会、京都大学学内の掲示板を利用した紙媒体での掲示を併用して実施しました。
事前登録された参加者数は、オンラインが64名、対面が38名、合計102名となり、これは関西支部の歴代活動における最高記録を更新しました。対面参加を希望された方のうち、15名からポスター発表の申し込みがありました。登録者は、地域的に日本のほか、中国、アメリカ、ヨーロッパからもあり、身分も高校生から社会人や教授まで非常に幅広い層をカバーしました。参加者の身分構成は、図2に示すとおり、ポスドク・教員の方が最も多く、次に博士課程1年生(D1)、2年生(D2)が続く順でした。
中村先生からは、FAIR原則という4規則に基づいてデータをオープンにするオープンデータと、自由に知見を得られるオープンアクセスの組み合わせであるオープンサイエンスの理念と重要性をご講演いただきました。AIとインターネットの普及を聖書のラテン語訳と活版印刷になぞらえた講演は、専門英語のジャーナルに閉じられていた科学が今まさに大衆化する時代であると若手研究者らが意識できた大変有意義な機会でした。BPPB誌についても、AIによる論文執筆と査読の可能性や、国内誌への投稿インセンティブなど、身近な問題についても活発な質疑応答が交わされました。
早川先生からは、湯川博士が関係して基礎物理学研究所が発足した歴史や基礎物理学の各分野の位置づけといった物理学の歴史からはじめ、相分離生物学などの生物物理に対する先生独自の率直な評価が、特に生物をバックグラウンドとして生物物理を学んでいる学生にとっては大変刺激的な内容であり、さらにAlphaFoldなどの主要な生物物理におけるブレイクスルーについても基礎物理の視点から見てどのように進歩してきたかを解説してくださり、総じて学びが多いものでした。
二つの招待講演終了後、第一講義室の横にあるピロティにて集合写真を撮影しました(図3)。その後、ポスター発表に移り、時間を20分延長して活発な交流が行われました。本セミナーは盛会のうちに終了しました。
セミナー終了後、参加者全員にアンケート調査を依頼しました。15名の方から回答を得ました。アンケート結果によると、二つの招待講演とポスターセッションに対する満足度は、「満足」以上の評価が回答者全体の約9割を占めました(図4)。
図2 参加者身分割合
図3 集合写真
図4-1 参加者アンケート(中村先生)
図4-2 参加者アンケート(早川先生)
今回のセミナーは関西支部にとって6年ぶりの対面開催となる重要なイベントでした。これを契機に、関西支部の参加人数が増加し、今後も同様のセミナーが継続的に開催されるという機運が高まりました。結びに、本セミナーの開催にあたり、多大なるご協力をいただいた関係者の皆様に心より感謝申し上げます。特に、同研究室の林 泰瑶氏と山田 莉彩氏にはオンライン配信機材の操作補助、若手の会副会長である藤井 真子氏と若手の会前会長である高橋 大地氏には企画全体への助言、寺川 まゆ氏にはデザイン制作、そして京都大学理学研究科生物科学専攻長である高田 彰二先生には会場確保にご尽力をいただきました。この場を借りて、上述の方々に深く御礼申し上げます。
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