こんにちは、東北支部長の中島です。2025年9月17日、東北大学青葉サイエンスホールにて、生化学 & 生物物理若手の会 東北支部の合同企画として、「東北生化学&生物物理 秋の合同セミナー」を開催しましたので、報告します。
講師には、東京大学大学院工学系研究科 講師の坪山幸太郎先生をお招きしました[1]。坪山先生は、AIとデータサイエンスを駆使して新しいタンパク質を設計する新進気鋭の若手研究者として、Alphafold3の発表やDavid bakerらのノーベル賞受賞もあった昨今、特に注目を集めています。「AIと大規模データによる、人工タンパク質の合理設計への挑戦」と題して、さらに若手へ向けたキャリア設計についてもお話しいただきました。
ご講演では、大規模解析手法と機械学習を組み合わせた、構造安定性ベースのタンパク質構造予測のための「cDNA display proteolysis法」についてお話しいただきました。さらに、脂質結合タンパク質とリン脂質の結合性をハイスループットに定量する「細胞表面リポソーム結合(CLiB)アッセイ」について紹介していただきました。私自身、Alphafold3などのタンパク質構造予測ソフトウェアは研究で多少使用しますが、「構造安定性」を指標にデータセットを構築した点、さらにそれを大規模解析と組み合わせる点が、大変興味深いものでした。最先端の、特に昨今注目を集めているタンパク質構造予測について、最新の知見を得ることができました。2点目の脂質結合タンパク質とリン脂質の結合性についても、脂質二重膜は研究で多用しているため、大変参考になりました。
キャリア設計についてのお話では、資金獲得のコツ、ポスドク先の選定の戦略、若手PIポジションの面接に関するアドバイスなど、若手を勇気づけるようなお話をいただきました。個人的には、「自分の本当にやりたいことはPIになってしかできない、だから早くPIになった方が良い」という内容が強く印象に残っています。
質疑応答は、対面参加者を優先しつつ、オンライン参加者も含めて、大変盛り上がりました(図3)。構造安定性の基準についてや複合体の考慮、わずかな変異による膜結合性の変化など、深い質問が続きました。
参加者は、構造生物学が最も多く、バイオインフォマティクス、タンパク質工学や機械学習などの周辺分野をはじめ、生物物理学、生化学、細胞生物学、自動化や科学教育など様々な分野に渡っていました。さらに学年も学部生から助教まで様々で、特に先生方が多い印象でした(図2)。当日は、対面10名、オンライン40名程の方々にご参加いただきました。坪山先生には、分野の導入から最先端の研究成果まで、大変わかりやすくご講演いただき、参加者は熱心に聞き入っていました。
講演後、対面会場では軽いお菓子と飲み物を囲んだ交流会を開催しました。新幹線の時間の都合上、先生はあまり長い時間滞在していただけませんでしたが、講演の余韻をそのままに研究の話で盛り上がりました。他分野の若手との新しいつながりも生まれ、まさに垣根を越えた場となったと感じています。
図1 宣伝チラシ
図2-1 学年
図2-2 登録者分野
図3 集合写真
図3 集合写真
遠方からお越しいただいた坪山幸太郎先生、そして企画・運営に尽力してくださった生化学若手の会 東北支部の皆さまに、心より感謝申し上げます。この経験を通して、東北地域の若手研究者同士が互いに刺激を受け合い、学問分野を越えてつながることの楽しさを改めて実感しました。今後もこの勢いを大切に、研究の「熱」と「つながり」を生み出す場を継続していきたいと思います。
さーて、報告はここまでにして、最後に裏話を書いていきたいと思います!
実は今回の企画、生化学側は実質2人、生物物理側はセミナー運営が初めてという、なかなか挑戦的な感じでした。発端は生化学、そこに生物物理側がサポートで入った形ですかね。東北は各支部が規模が小さいので、助け合っていくのが楽かなと思っています。講師選定、予算、会場探し、フォーム作製、ポスター作製など、2,3回運営メンバーで集合し、会議を重ねました(図3: 会議の様子)。逆に、そのおかげで、生化学と生物物理のメンバーが仲良くなり、さらに副支部長が分子科学若手の会のメンバーを誘ってくれたことで、新しい繋がりも生まれたと思っています。分子科学若手の会の方々とは、10月に広瀬川で一緒に芋煮をしました。今後もコラボできたらいいですね!
いくつか反省点もあって、参加登録は70人を超えていたものの、当日参加は50名弱。直前のリマインドや宣伝が甘かった気がします。あと、「講師のマイクと参加者の質問の声の大きさが全然違って聞きにくかった」との意見があり、会場のセットアップも改善点です。あとは、当日の動きをあんまり決めてなかったので、しっかり決めた方がいいと思います。バタバタしました。
セミナー後は、仙台市内の居酒屋で打ち上げをしました(図4)。国分町のホストクラブの前で写真を撮りました笑(流石に自粛します)。自分たちの卓では発生学・分光・合成生物学のメンバーが研究談義で盛り上がり、「キラル」に関して深い議論に突入しましたが、隣の卓ではもっとカジュアルな話題で盛り上がっていたようです。準備は大変でしたが、結局はこの大学生みたいなバカみたいな時間が一番楽しい、これこそ若手会の大きな存在意義だと思っています。
図4 打ち上げ