地方文化のバロメーターのひとつとも言われる、地方での出版活動の重要性に目を向けたブックインとっとり実行委員会では、1987年鳥取県で開催されたブックインとっとり‘87「日本の出版文化展」いわゆる「本の国体」を機に「ブックインとっとり・地方出版文化功労賞」を制定した。
以来、地方と地方そして人と文化の交流を積み重ねてきた。その結果今日では、地方出版への激励や奨励として貢献してきたことが全国から高く評価されている。毎年の事業として、その年の各県の代表的な地方出版物を一堂に集めて展示する「ブックインとっとり・全国各地の本展」と、地方の出版活動のご苦労に対して鳥取県民が選びそして贈る『地方出版文化功労賞』がある。
しかしながら、惜しまれつつ第37回を表彰し「ブックインとっとり」はその役割を終える。
ブックインとっとりは「第37回表彰式(2026/1/31)」をもって閉幕します。
「地域」「地方」「出版文化」想いが未来につながること祈って
2026.01.31 第37回ブックインとっとり表彰式・受賞スピーチ【開催予定】
2025.10.17 第37回ブックインとっとり「地方出版文化功労賞」「奨励賞」プレスリリース
第37回ブックインとっとり表彰式
日 時 : 2026年1月31日(土)13:00ー15:40
表彰式・受賞者スピーチ
場 所 : とりぎん文化会館 第1会議室
受賞作 : 【地方出版文化功労賞】
『中村哲 思索と行動「ペシャワール会報」現地活動報告集成[上]1983~2001』
著者 中村哲 / 発行 ペシャワール会 / 発売 忘羊社
【奨励賞】
著者 坂本桃子 / 発行 株式会社 弦書房
★入場無料、どなたでもお気軽にご参加いただけます。
表彰式終了後、ブックインとっとり閉幕セレモニー開催予定15:40-16:00
受賞者を交えての交流会も開催予定!!18:00~ 参加申し込みはこちら⇒交流会参加申し込みフォーム
第37回 審査委員(2025年10月現在)
審査員長 齋藤 明彦 (元鳥取県立図書館長)
審査員 岩田 直樹 (公立鳥取環境大学特任教授)
上田 京子 (春月の会代表)
山脇 幸人 (元倉吉市立図書館長)
西尾 麻都子(鳥取県立図書館長)
岡村 知子 (鳥取大学准教授)
松井 潔 (元鳥取県埋蔵文化財センター室長)
村上 博美 (鳥取県立図書館司書)
村瀬 謙介 (小取舎代表)
第37回 地方出版文化功労賞
書名 中村哲 思索と行動「ペシャワール会報」
現地活動報告集成[上]1983~2001
編著者 中村 哲(なかむら てつ)
発行所 忘羊社
〒810-0022 福岡県福岡市中央区薬院4丁目8-28 チサンマンション第5博多205
電話 092-406-2036石風社(福岡県)
発行者 ペシャワール会
体 裁 A5判 432頁+グラビア8頁
発 行 2023年6月3日刊行
定 価 2,700円+税
著者略歴
1946年(昭和21年)福岡県生まれ。医師。PMS(平和医療団・日本)総院長/ペシャワール会現地代表。
九州大学医学部卒業。日本国内の病院勤務を経て、84年にパキスタンのペシャワールに赴任。以来、ハンセン病を中心とした貧困層の診療に携わる。
1987年よりアフガニスタン難民のための医療チームを結成し、山岳無医地区での診療を開始。1991年よりアフガニスタン東部山岳地帯に三つの診療所を
開設し、98年にはペシャワールに基地病院を設立。
2000年からは診療活動と同時に、大干ばつに見舞われたアフガニスタン国内の水源確保のために井戸掘削とカレーズ(伝統的な地下水路)の修復を行う。
2003年、「緑の大地計画」に着手、アフガニスタン東部ナンガラハル州に全長27キロメートル
に及ぶ灌漑用水路を建設。その後も砂嵐や洪水と闘いながら既存用水路の復旧や新規水路の掘削を次々と手掛け、沙漠化した農地を復旧。
マグサイサイ賞「平和と国際理解部門」、福岡アジア文化賞大賞など受賞多数。2019年10月にはアフガニスタン政府から名誉市民証を授与される。
2019年12月4日、アフガニスタンのジャララバードで凶弾に倒れる。
著書:『ペシャワールにて』『ダラエ・ヌールへの道』『医者 井戸を掘る』『医は国境を越えて』『医者、用水路を拓く』(以上、石風社)、『天、共に在り』
『わたしは「セロ弾きのゴーシュ」』(以上、NHK出版)、『アフガン・緑の大地計画』(PMS&ペシャワール会)、『希望の一滴』(西日本新聞社)など。
<選考理由>
アフガニスタンで30数年にわたり医療、井戸の掘削、大規模灌漑工事などの活動を行ってきた中村哲氏。この本は彼を支援するペシャワール会の会誌に
彼が書き続けた現地活動報告の集成である。
この本を選考するにあたっていくつかの問題点が上がった。
①すでに中村哲氏の著作は第22回の功労賞に選出されたことがあり、同一人物に賞を送ることが地方出版の応援という趣旨に合うか。
②同じ趣旨で、著名な著者よりも地方の知られていない著者の本を優先すべきでは。
③書き下ろしの前回作品と異なり、新たな創作ではなく過去の現地活動報告を取りまとめたものであることをどう評価するか。
しかしながらそうした問題を踏まえても、今回多くの審査員から功労賞への圧倒的な支持があったのは、この作品の人道を考えさせる強い力と、ややも
すれば埋もれてしまう資料を将来に向けて残す努力に対する強い共感による。
①これまでの著者の作品は、その時点での現地の状況や彼の考えと行動を深く掘り、時に読者に行動変容を起こさせるほどの力を持つものであった。
それらはもちろん重要な著作群である。一方今回は1983年に彼がパキスタン北西辺境州に派遣が決まりアフガニスタンに深く関与し始めた段階から
2019年現地で命を落とす直前まで、らい治療から始まり井戸を掘り大規模灌漑施設建設に至るまでの彼の活動を支援し続けた、ペシャワール会の
会報に載せたその時々の記録である。
年4回、限られたページ数ではあるが、その時々の現地の状況やそれを前にして何を考えどう行動したか、それによって何が実現しどんな壁につき
当たったか、それらのことをリアルタイムで会員に伝えようとしてきた積み重ね。この短い文章が会員にこの会の意義を伝えるとともに、我々も
やらねばという気持ちを奮い立たせたであろうことは容易に推測できる。
ままならぬ現実の壁に悩み、落胆し、時には絶望や悲嘆もありながら、現実を直視し何をなすべきかを考え実行していく自身や現地の人々の姿と、
彼の深い思索はこの本の読者にも何かを与えるであろう。
②登載されたのはペシャワール会の会報であり、会員以外のものが読むことは物理的に難しい。また定期刊行の会報は紙資料としては残りにくく、
データとして残してあるかもしれないが将来的にはこれも散逸の可能性がある。これらが本としてまとめられ貴重な資料の散逸を防げたこと、ぜひ
残したい伝えたいことが全国の図書館で提供できる形をもったことは、図書館関係の審査員などから高く評価された。
著者と現地ワーカー、そしてペシャワール会の長年の活動とその進化は国際的な人道活動(あるいは国を越えた支援)のあり方を深く考えさせ、
これからの指針となるべきものと考える。今回の出版はそれを広く知らしめ長く伝えるための大きな一歩と評価したい。
なお、今回の受賞作は上巻のみだが、昨年下巻も発行されている。この2冊の本が多くの人に読まれ、読者の精神と行動に何かを与えることを祈念する。
第37回 地方出版文化功労賞 奨励賞
書名 食べて祀って 小さな村の祭りとお供え物
著者 坂本 桃子(さかもと ももこ)
発 行 株式会社 弦書房
福岡県福岡市中央区大名2-2-43 ELK大名ビル301 電話092-726-9885
体 裁 201頁
定 価 2,000円+税
発 行 2023年6月30日刊行
著者略歴
1990年熊本県八代郡坂本村(現・八代市坂本町)生まれ。西南学院大学卒業。
大分県安心院町の農村民泊に関る仕事を経て、イタリアの農村でアグリツーリズモを転々とする。2014年、ふるさと坂本町にUターンし、地元ケーブルテレビに就職。自主放送番組の制作を担当する。その際、取材で出会った集落の小さな祭りに魅了され調査を始める。
2019年より結婚を機に水俣市へ移り住み、「高校生がつくる水俣食べる通信」の広報を担当する。現在は、自称「集落の奇祭研究家」として、熊本県内の一風変わった年中行事や伝統風習を取材し、記録する活動に取り組む。
<選考理由>
2005年に合併して八代市坂本町となった旧坂本村。ここを故郷とする著者がケーブルテレビの仕事を通じて集落の営みに関心を持ち、なかでもそれぞれの集落に受け継がれている祭りに魅入られ、それらを祭りの供物(食べ物)に注目してまとめた本である。
まずは集落ごとにいくつもの祭りがあり、それぞれに異なる食べ物が供物として供され、それを直会で皆が食べる習慣の厚みに驚く。中心に据えられる食べ物も面白く、ミョウガ饅頭や小豆飯はそうかと思うが、きゅうり祭りは神様にお供えもせずにきゅうりを食べ続け、こんにゃく祭りなんていうものもある。そのバラエティーの豊かさ。そして時に見物客も誘って祭りの参加を促し、自分たちの作った食べ物を分かち合い、ともに楽しもうとする人々の、垣根の低さとおおらかさ。
それらが、地域の方と著者の信頼関係がテレビの取材を通じてしっかりできていることからえられた豊富な写真と、肩の張らない温かい文章で綴られる。
地域の人たちがそれぞれの小さな祭りを楽しんでいる様子がよくわかり、食べ物を中心に据えることによって、個々の家庭で作った少しずつ違う食べ物を持ち寄り共食する喜びや、人々の繋がりが伝わってくる。そんな人々がいてそんな社会が存在することは地元出身の著者も知らなかったのだが、そこにひきこまれた気持ちは読み進めるにしたがって読者にも理解され共感を呼ぶだろう。
今そこにある、しかし将来的には失われてしまうかもしれない豊かな生活や文化を、楽しみながら知ることができる佳作である。
賞としてはここまでで十分なのだが、最終章で、著者は坂本の祭りへのあこがれのあまり新たな祭りを創設してしまう。赤い食べ物を持ち寄って皆で食べる赤の祭り。熊本の水害の鎮魂を願う祭りだが、坂本の祭りに倣い誰でも気軽に参加できる食べ物を真ん中に置いた祭り。この新たな祭りがどうなっていくのかも少々気になる。
ブックインとっとり
全国各地の本展 および 第37回地方出版文化功労賞表彰式・受賞記念講演会
■全国各地の本展
第37回をもって閉幕となりますので、全国各地の本展は開催致しません。
■第37回地方出版文化功労賞 表彰式・受賞記念講演会
2026年1月31日(土)13:00
とりぎん文化会館 第1会議室
※ブックインとっとり2024、2025は開催しておりません。
主催:ブックインとっとり実行委員会
共催:鳥取県図書館協会・鳥取県立図書館・鳥取県書店商業組合
後援:鳥取県・鳥取市・倉吉市・米子市・境港市・鳥取市教育委員会・倉吉市教育委員会
米子市教育委員会・境港市教育委員会・鳥取県公共図書館協議会・鳥取県学校図書館協議会
日本図書館協会・読書推進運動協議会・全国学校図書館協議会・地方・小出版流通センター
鳥取県印刷工業組合・鳥取県教育文化振興会 ほか(順不同)
※第37回ブックインとっとり実施発表当時の共催・ご後援団体様となります。