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黒き歴史が夢の跡
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恋

この世には高嶺の花というものが存在する。

リーブラ「あら、おはようございます」

それは決して自分には手が届かない存在。

リーブラ「・・・・・どうしたんですか?私に、何かご用事ですか?」

それでも、僕は

悟志「ぼ、僕と、付き合ってください!」

手を伸ばさずにはいられなかった。


琴美「で、見事に玉砕してきたと」

悟志「うるさいなぁ、傷心中なんだからほっといてよ」

リーブラ・マギ・フィールドさん。学園長の姪っ子で、僕の1つ上の先輩だ。物腰柔らかで誰に対しても丁寧、立ち振る舞いも上品で運動も勉強も得意なまさに完璧人間。

琴美「そーんな先輩があんたなんか気に留めるわけないでしょー」

悟志「そうだけどさぁ・・・・」

雷「今回はあまりにも突然過ぎたっていうのもあるんじゃないか?やっぱりちゃんと交流して好感度稼ぎしてからだな」

瞳「ゲームじゃないんだから、って言ってもよくわからない後輩にいきなり告白されてもそりゃ断るわよね」

悟志「はぁ・・・・」

当たって砕けろの精神で挑んだつもりではあるが、いざ砕けてみると思ったより心にくるものがある。世の中のナンパを繰り返すような男子たちはよくこんなのを耐えられるな。

愛「んー、そもそもどうしてリーブラを?何か接点あったっけ?」

悟志「それは、その・・・・・・」

琴美「一目惚れよ、一目惚れ。校門前で挨拶してた姿に胸キュンしたんだって」

香「リーブラ、たまに色んな委員の仕事手伝ってるからなぁ。校門前で挨拶ってことは風紀委員の手伝いしてたときか」

そう、彼女は学園長の姪でありながらその立場を利用して・・・・などということをしていない。むしろ率先して学園を良くしようと動いているのだ。

愛「あんときはあんたも風紀委員やってなかったっけ?」

香「やってたやってた。父さんがあれだから適正あるかなって思ったけど仕事が朝の挨拶ぐらいしかなくて面白くなかったから2学期はやめたんだ」

風流香と平山愛。1年1組のクラスメイトにして、マギ・フィールド先輩の幼馴染。先輩の情報については逐一この二人から確認させてもらっている。

香「まあ、リーブラは振ったからって態度を変えるような人間じゃないし、どこかでまた再トライすればいいと思うよ」

琴美「どーせまた振られるだけでしょ」

悟志「そこ、うるさい」

中原もこうは言っているが、いろいろと相談に乗ってくれたりNGを教えてくれたりと協力的だ。周りの人間が大体協力してくれているというのはすごくうれしい。


雷「風流、幼馴染とかじゃなくて、唯一の彼女持ちとしての視点で何かないのか?」

香「ええ、僕の場合いろいろと特殊だからなぁ。告白も向こうからだし」

瞳「つまり惚れさせろと」

香「そう、なるのかな?」

アリス「でもお兄ちゃんも付き合う前からデートしたり家に来てもらったりいろいろしてたじゃん」

愛「しかもそのデート自体はあんたから誘ったのよねぇ」

香「うるさい。あれはいろいろと事情が込み合ってるんだ」

悟志「つまりあれか。僕もマギ・フィールド先輩と2人きりで遊びに行けばいいのか」

琴美「・・・・さらっと言ってるけど、それすごい難しいわよね?難しいってレベルじゃなくて、むしろそれ許してくれるならもう付き合ってくれるってレベルよね?」

悟志「香先輩!セッティングオネガイシマス!」

瞳「ちょっと待って、今誰かいなかった?」

アリス「誰かって?」

瞳「あきらかに高校生って感じがしない若干透けてる幼女が・・・・いたー!」

アリス「アリスちゃんを幼女扱いとは失礼な!正真正銘の享年12歳、幼女の域をすでに抜け出た美少女のアリスちゃんなんだからね!」

琴美「・・・・・・・え、享年?」

雷「あー、こいつは気にしない方がいい」

悟志「アリスー、初めてのデートってどこに行けばいいと思う?」

アリス「リーブラはラーメンが好きだよ。特技はアーチェリーとかクレー射撃とかだから、一緒にやってみるとか教えてもらうとかいいんじゃないかな?」

愛「あんた、馴染みすぎでしょ・・・・」

アリス「あ、私アリスっていうの。お兄ちゃん、風流香に憑いてるイギリス生まれイタリア育ちの幽霊だよ。他に質問ある?」

琴美「え?えーと、な、ないかな?」

瞳「しゅ、趣味とかは?」

アリス「趣味は突然人の会話に割り込んでその場にいる人間を困惑させることです!」

瞳「確かに困惑したわよコンチクショー!」


風流たちのアドバイスを元に、まずはアーチェリーをやってみることにした。初心者向けのアーチェリー教室が駅の近くでやっていると聞いたので、まずは通ってみることにする。

リーブラ「あら、こんにちは。奇遇ですね、松永くん」

悟志「って、マギ・フィールド先輩!?どうしてここに!?」

リーブラ「ここは私が昔通っていた教室でして、今はちょっと場所を借りてるんです」

メアリー「先生!30メートル先に当たりました!当たっただけですけど!」

リーブラ「と、まあこの子がアーチェリーを始めたいということでこうして指導しているんです」

悟志「なるほど・・・・」

この子はマギ・フィールド先輩の妹・・・・ではなさそうだな。先生と呼んでいたし、ただの知り合いの女の子なのだろう。一応ここでは僕の先輩にもなるわけだし、挨拶もしておこうか。それにしてもマギ・フィールド先輩は子供の面倒見もいいんだな。本当に非の打ち所がない人だ。

悟志「はじめまして、僕は松永悟志っていうんだ。はじめたばかりでまだなにもわかってないんだけど、よろしくね、先輩」

メアリー「え、あ、う・・・・・よ、よろしく、おねがい、します」

突然話しかけるのは迂闊だったか。人見知りの子だったのかもしれない。

リーブラ「大丈夫ですよ、メアリーちゃん。彼はあなたのお兄様のお友だちです」

メアリー「うな、そうなんですか?え、ええっと、私は風流メアリーです。よ、よろしくおねがいします」

なるほど、風流の妹だったのか。ん?明らかに国籍が違うような感じが・・・・・?まあアリスのことといい、あそこの家庭は複雑なんだろう。深くは踏み込まないようにしておこう。

リーブラ「それじゃあメアリーちゃんは続きをやりましょうか」

メアリー「はい!やってきます!」タッタッタ

リーブラ「あ、松永くん、すこしいいですか?」

悟志「はい、なんですか?」

リーブラ「小さい子と話をするときはできるだけ目線を同じ高さまで下げてあげてください。怖がっちゃいますから」

悟志「あ、す、すいません。気をつけます」

しまったな、こういう細かい所から気をつけていかないと。彼女に気に入ってもらえるように普段の行動から見直してみるか・・・・


悟志「って感じで風流の妹と一緒に教えてもらってたよ」

アリス「あー、メアリーが言ってたのって悟志のことだったんだー」

琴美「で、本人との進展は?」

悟志「なし」

雷「アリス、風流はどうした?」

アリス「お兄ちゃん今日はバイトだよー。業務中に押しかけるわけにもいかないし暇だしで私はこっちにきてるの」

愛「自称守護霊、守りなさいよ」

アリス「外敵に反応して発動する守護結界を100重にかけてるし礼丹もクロもいるし大丈夫だって」

瞳「守護霊とか結界とか日常からかけ離れた話されてるけど全然驚けないのはなんでなのかしらね」

琴美「実感がないからじゃない?」

瞳「そう、なのかしら?」

雷「こいつは幽霊のくせにはっきりしすぎるし触れるしでファンタジー感ゼロだからな」

アリス「この世には奇跡も魔法もあるんだよ!幽霊だって生きててもいいじゃない!死んでるけど!」

琴美「自分でボケて自分で突っ込まれると私たち何を言えばいいか分からなくなるじゃない」

悟志「あ、そうだ。アリスの死因を聞いたら若干鬱になるから聞かない方がいいよ」

瞳「逆に気になるんだけど!?」

アリス「ん?アリスちゃんの生前つまり500年前の話する?5時間ぐらいかかるよ?」

琴美「遠慮しとく。鬱になりたくないし」

愛「じゃあ代わりに好きな幼馴染を追いかけて同じ高校に入ったはいいけどすでにその幼馴染に恋人がいた話する?5時間くらいかかるけど」

琴美「それは知ってるから!」

悟志「え?あ、もしかして平山って風流の事・・・・」

愛「家が隣で、赤ん坊のころから10年一緒に過ごしてきてたった5年学校が離れてただけで自分の初恋が叶わなくなったってだけだけどね」

雷「重い、重いからやめてくれ」


平山は失恋してもなお風流と親しい関係を築いている。風流たち曰くマギ・フィールド先輩に恋人はいないそうだから、一度振られただけで僕は諦めつもりはないが、もしそれでも叶わなかったら・・・・

リーブラ「どうしました?なにか悩み事ですか?」

悟志「え?えーと、わかります?」

リーブラ「はい。矢が乱れていますので。雑念を振り切れていない証です」

初心者の僕が放った矢を見てそこまで察することができるだなんて、本当にこの人は何者なんだろうか。とはいえこの悩みを打ち明けるわけにもいかない。

悟志「まあ、私事なんで話すようなことでもないですよ」

リーブラ「そうですか・・・・私に話さなくてもいいですから、中原さんとか、来ヶ谷君とかみたいなお友だちには打ち明けてみてもいいかもしれませんね」

悟志「え、なんで雷たちのことを・・・・」

リーブラ「さて、どうしてでしょうかね」


悟志「ってことがあったんだ。ミステリアスさも相まって大人な雰囲気を感じたよ」

香「ミステリアス・・・・リーブラが・・・・いや、確かに、でも、うーん・・・・」

愛「わけわかんないって意味ならミステリアスでいいんじゃない?」

雷「幼馴染組は何か言いたそうだな」

香「いや、そういう情報っていつどこで拾ってくるんだろうなっていうのは正直あるんだよ。僕が質問したことの中で答えられなかったものはひとつもないし」

愛「情報源は謎よね。私のこともどこまで知られてるのやら・・・・アレとかアレとか知られてたら死ねるわね」

琴美「・・・・・もしかして、先輩の方もあんたのこと気になってきてるんじゃない?それで調べてるとか!」

瞳「それだ!」

悟志「え、そ、そうかなぁ?」

琴美「じゃないと振った相手のことをいちいち調べたりしないでしょ」

雷「そう考えれば辻褄もあうかもしれんな。なんだかんだ接触する回数は増えてるんだろう?」

悟志「まあね。なんかちょっと自信でてきた気がする・・・・!」


アーチェリーの道具を買う、という名目で先輩についてきてもらうことになった。風流があらかじめ先輩が空いている日を聞いてくれていたので都合をあわせることができたのだ。アイツ含め応援してくれる皆には感謝をしないといけない。

悟志(まあアーチェリーがちょっと楽しくなってきたっていうのもあるんだけど)

先輩と話をあわせる目的ではじめたのだが、これが意外と面白い。もしかしたら自分には合っているのかもしれない。そういえばウチの学校アーチェリー部とかあったっけ・・・・?

リーブラ「松永君は、まだ成長期は続いていますか?」

悟志「え?えっと、あんまり、ですかね」

あんまりどころか完全に身長は止まっている。自分の身長が男子の平均と比べて低いことはわかっているが、もしかして先輩は背が高い方が好みだったりするのだろうか。

リーブラ「ああ、気を悪くしたならごめんなさい。折角採寸するのですから、長く使えるものをと思ってまして」

悟志「採寸?」

リーブラ「はい。やはり身の丈に合ったものを作るには正確に測る必要がありますから」

悟志「・・・・も、もしかして、オーダーメイド的なあれですか!?」

リーブラ「そうですよ?」

そういえば、この人はガチのお嬢様だったんだ。どうしよう、一応財布に2万円ぐらいはいれてきたけど、足りる気がしない。

悟志(後日支払いとかってさせてもらえないのかな・・・・)

値段次第では親に土下座をする覚悟を決めなければならない。とにかく、先輩の前で情けない姿を見せるわけにはいかないのだから。


間宮「はあい。いらっしゃいませ、少年少女たち。できないこと以外なら森羅万象天地万物有象無象諸事万端一切合切全てを取り扱う帽子屋目隠しへようこそ。今歓迎のお茶を入れようと思うのだけれどあいにく茶葉を切らしていてコーヒー豆しか残ってないからそれを用意させてもらったわ」

悟志「え?え?」

な、何を言っているんだこの人?それと、帽子屋?

リーブラ「仁摩さん、今日は彼の採寸をお願いしに来ました」

間宮「お嬢ちゃんここは帽子屋だ。帽子屋で帽子を買わずして何を買うつもりだ。やってやろうじゃないか。男子、そこに立つことを許可しよう。直立不動せよ!」

悟志「は、はい!」

なんなんだ、この人!?わけがわからない!もはやミステリアスとかそう言った次元を超えている!頭おかしいんじゃないか!?

リーブラ「驚いたでしょう?この人、頭がおかしいんです。気にしないでください、腕は確かですから」

悟志「やっぱり頭おかしいんじゃないか!」

間宮「頭がおかしいとは私に失礼な可能性が存在しないはずもないので訂正を求める気はないが私はほんの少しだけ深く傷つくことにするとしよう。腕を伸ばすんだ、ボーイ」

悟志「え、は、はい」

確かに、口調はおかしな感じだが仕事?はちゃんとやってくれているようだ。机に置いてある紙に測った情報を次々に細かく書いている。

悟志(指の長さ、というか関節毎の長さまでびっしりと・・・・・これがセレブのオーダーメイドなのだろうか)

もしかしたら二桁ないしは三桁万円までいくようなものを用意されるかもしれない。流石にそうなってしまっては親に土下座どころの話じゃない。

間宮「なるほど、君は健康優良男児だ。手に少しマメができているがそれは努力の証であることを教えてくれるものに過ぎない。面白味も何もないから素晴らしい」

悟志「ほ、褒められているん、ですか?」

リーブラ「その人が言っていることは9割てきとうですからお気になさらず」

間宮「ちなみにこのままいくとお値段はだいたい税抜きで23万6千280円になりそうですがお金は足りますか?」

悟志「に、にじゅっ!?」

リーブラ「小切手で支払いますのでお好きなお値段を書いておいてくださいな」

悟志「えっ!?」

間宮「流石のお嬢様これぐらいのはした金消費税を少々プラスされた程度では痛くもかゆくもないと存じ上げますかそうですか資本主義社会に君臨する魔王めが」

悟志「せ、先輩!?そんな、お金なんて・・・・」

リーブラ「私とて別に金銭感覚が一般とかけ離れていて一般人がこんな金額をポンと出せるほどお金を持っていると思ってはいません」

リーブラ「ですが、安いものだと手入れをサボってしまいがちですから。少々値が張ってもいいものを買うべきなのです。ですので、これくらいは先輩に任せてくださいな」

悟志「わ、わかり、ました。すいません、なんだか・・・・・」

間宮「悟志ちゃん」

悟志「悟志ちゃん!?ていうか、どうして僕の名前を!?」

間宮「悟志ちゃんは助けてもらってどうして謝るのですか?お世話になった人には迷惑をかけたと思っていますか?思いあがるな小僧。素直に感謝しておきなさい」

リーブラ「はい、こういうときは「ありがとう」ですよ、松永くん」

悟志「は、はいっ!ありがとうございます!先輩!」

こうして無事に?採寸を終えて、道具は後日家に届けられるという話を聞いた。あの店は一応帽子屋という体だけど実際は職人とのやり取りなんかを代理でやってくれる店だと聞いた。


悟志「その後は一緒にごはん食べて解散したんだけど、ごはんのお金も全部出してもらっちゃってさ。なんか身分の違いみたいなものを思い知ったよ・・・・」

愛「・・・・・?アイツはたしかに学園長の姪だけど、アレ自身は一般家庭出身で別にそんなにお小遣いとか自分で使えるお金をもってるわけじゃないはずだけど?」

悟志「えっ?」

琴美「じゃあ、松永のためにわざわざ大金用意したってこと?そんなの絶対気があるって!」

瞳「後輩にいいところを見せたい、ってレベルじゃないしねぇ」

雷「一般家庭ってどれくらいだ?」

愛「父親は商社かなんかの社長で、母親はキャビンアテンダントってぐらい?」

悟志「やっぱり令嬢じゃないか!」

愛「でも少なくとも妹のアクエリアスはお小遣い月5千円って聞いてるわよ。別途欲しいものがあれば家事をやったりしなさいとか言われてるらしいし」

琴美「厳しい親なのねー。むしろそっちの方が一般人と金銭感覚が離れなくていいのかも?」

愛「アレがバイトしてるって話も知らないし、私自身あんまりアレとは関わらないことが多いし・・・・大体は草華とか香と一緒に会うからなぁ」

悟志「・・・・・よし、決めた!今週!今週中に、もう一度告白する!」

琴美「え!?早くない!?」

雷「思い立ったら吉日だ。早ければ早い方がいいだろ」

瞳「当たって砕けろ!あ、いや、今度は砕けちゃだめなのか」

琴美「まあアンタがそう決めたなら別に反対はしないけどさ・・・・・」

愛「んじゃ、アイツを呼び出すとかなら手伝うけど?」

悟志「じゃあ、お願いしていい?今週金曜日の放課後に、場所は校舎裏の、あのデートスポットで」

愛「あのリア充スポットね、了解。ちゃんと言っておくから、忘れたりするんじゃないわよ」

悟志「忘れるわけないだろ」

琴美「ま、がんばりなさい。応援してるから」


そうして迎えた金曜日の放課後、校舎裏。約束の時間の30分前に来てしまった。

悟志(平山はちゃんとOKもらったって言ってたし、来てくれると思うけど・・・・・前と違ってちゃんとした場所で告白するわけだし、緊張する・・・・!)

胸がバクバクいっている。だけど、手ごたえはある。前回と違って、ちゃんと先輩との親交も深めた。だから、大丈夫だ。

悟志(そういえば、風流には言ってなかったっけ)

妹のことやバイトのこと、部活のことで忙しいみたいで、風流とは最近時間が合わない。あいつにもなにか恩返ししないといけないな。

悟志(どっかでカラオケかなんか全員に奢ろう。もしくはお昼ご飯とか)

あのとき使わなかった2万円の使いどころが見つかったかもしれない。なんてことを考えていると、10分前。もうすぐ、時間だ。

悟志(落ち着け、大丈夫だ。きっと、大丈夫)

リーブラ「ごめんなさい」


悟志「・・・・・えっ?せ、先輩、いつのまに!?」

うしろから突然、先輩のが謝る声が聞こえた。足音もなにもないものだから少しおおげさに驚いてしまった。

悟志「あ、いや、まだ時間前ですし、僕も今来たところで」

リーブラ「ごめんなさい。それが私の答えですよ、松永くん」

悟志「・・・・・え?」

突然、何を

リーブラ「もしかしたらなにか勘違いをさせてしまっていたのかもしれませんが、私はあなたと恋人関係になる気はありません」

悟志「ど、どうして、ですか?その、僕は」

リーブラ「私の愛は全てあるお方に捧げているのです。ですから、あなたに気を向ける余裕はありません」

な、なんだ・・・・恋人はいないとか聞いていたのに、そうじゃなかったってこと、なのか?

リーブラ「愛ちゃんたちの名誉のために言っておくと、私に恋人はいませんよ」

悟志「え、どうしてそれを、というか、それを誰から」

リーブラ「私が愛するのはただ一人、私の名を呼ぶことができる男性のみですから」

悟志「それくらいなら、僕だって!」

リーブラ「あまり図に乗るんじゃありませんよ」

なん、だ。この、プレッシャーは。これが本当に、あのマギ・フィールド先輩なのか?温和で、優しくて、頼れる、憧れの・・・・・

■■■■「『それくらい』というのならやってみてもらいましょう。さあ、私の名を言ってみなさい!」

悟志「ま、マギ・フィールド先輩!」

・・・・・・あれ?

■■■■「・・・・・ああ、ごめんなさい。苗字のほうは言わなくて結構です。そんなもの誰にでもわかりますので」

悟志「わ、わかってます!だから、その、」

・・・・・・あれ?

■■■■「・・・・・・」

悟志「あ、う、な、なんで・・・・・?どうして・・・・」

どうして、思い出せないんだ。あんなに好きな人だったんじゃないか。本気で好きになった人なんじゃないか。なのにどうして、一文字も口に出せないんだ。思い出すことができないんだ。

■■■■「・・・・・・・・・・・」

悟志「なんで、どうして、なんだ・・・・・」

■■■■「わかりましたか?自分が言ったことがどれだけおこがましいことであったかを」

■■■■「私の名を呼ぶことができるのはあのお方だけ。所詮あなたがたはあのお方の恩恵を受けているだけに過ぎない」

■■■■「はっきり申し上げましょう。あなたは私にとっては有象無象の一部に過ぎないのです。私にとっての全てはあのお方のみ。私自身は全てあのお方に捧げている。この体も、心も、富も、力も、全て」

■■■■「私があなたのことを調べていたのはあなたがあのお方に近しい人物であるからというただ一点の理由があるからにすぎません。あのお方に関わる可能性がある存在は有象無象だろうが全て調べ上げていますから」

■■■■「興味が無いのですよ、あなたごとき。教科書に出てくる単語を覚えるのと同じようにあなたを覚えているだけです。あなたを知りたかったからではなく、知る必要があったから知っているだけ」

■■■■「お前如きが私の隣に並び立とうなどと、片腹痛いわ」


琴美「そこまで、そこまで言う必要ないじゃないですか!」

え、なか、はら・・・・・?

琴美「悟志はあなたのことが好きで、必死で努力してたのに!あなたに近づこうとがんばってたのに!」

琴美「気に入らなかったぐらいでなんなのよ!そこまで打ちのめす必要はないでしょ!?」

■■■■「・・・・・・自分で愛を口にすることすらできない臆病者が、私に意見すると?」

琴美「な、なにを・・・・・」

■■■■「では教えて差し上げましょう。人には禁句というものが存在します。それは口に発するだけで逆鱗に触れてしまうもの」

■■■■「あなたが、大事な人を罵倒されて怒りをあらわにしているのと同じように私も怒りを見せているだけにすぎません」

琴美「なにが禁句なのよ!名前なんてただの記号でしょ!人を区別するだけの記号!それがなんだっていうのよ!」

悟志「中原、だめだ、それ以上は・・・・・」

■■■■「・・・・・・私が優しく諭している内に退いていればいいものを」

琴美「たかが1年早く生まれただけで何様のつもり!?ふざけんじゃないわよ!」

■■■■「ええ、あなたにはわからないでしょう。あらゆる存在が自分の記号を判別できなくなる、そんな恐怖が」

■■■■「その記号の持つ温かみも、光も、なにもわからないのでしょう。理解しろとはいいません。あの絶望を理解できる者は同じ絶望を味わった者だけ」

■■■■「だから、理解させてあげるわ。絶望を。深い闇の底で彷徨う幼心を」


琴美「・・・・・なにが理解させてあげる、よ。そんなもん口できいただけでわかるわけないじゃない。ね、」

悟志「え?ぼ、僕?」

琴美「あんたしかいないでしょ。ほら、もう行きましょ、えーと・・・・・あれ?」

悟志「中原、どうした、の?」

琴美「あ、ちょっと待って、いや、そんなはず・・・・・・いや、どうして、なんで・・・・や、やめて・・・・」

悟志「なにが・・・・ど、どうしたんだ!中原!」

琴美「やめてやめてヤメてyAめテ私の中から消さないでその名前を嫌だ忘れたくないそんなやめて」

■■■■「・・・・・・・これが絶望ですよ」

琴美「おねがいします私が悪かった謝りますから許してくださいなんでもしますいやだやめておねがいやだやだやだやだやだ」

悟志「せ、先輩!中原に一体何を!」

■■■■「彼女にはなにもしていませんよ。まあ、直接は、ですけれど」

香「リーブラ、そこまでにするんだ!」


悟志「風流・・・・・?どうしてここに、今日は部活が忙しいんじゃ・・・・」

香「ごめん、松永。今はリーブラの方を。そっちは中原さんを診ててあげて」

・・・・・え?

リーブラ「はい、香様。あなたがそうおっしゃるのでしたら、彼に移した呪いは戻しておきます」

今、風流は、先輩の名前を・・・・

琴美「あ・・・・れ・・・・?ああ、さと、し?」

悟志「う、うん。悟志だよ、僕は。僕の名前は、悟志だ」

琴美「ああ、わかる、わかる・・・・あんたの名前が・・・悟志、悟志!」

香「リーブラ、やりすぎだ。いくら怒っていたからって、それは他人に押し付けていいようなものじゃないのはわかっているだろう」

リーブラ「香様、申し訳ございません」

それに、香『様』?

悟志「風流、君は、先輩と、どういう・・・・・」

香「ただの幼馴染、のつもりだよ」

リーブラ「香様は私の全てですが?」

悟志「・・・・なんだよ、それ。最初っから勝ち目なんてなかったんじゃないか」

悟志「知ってんだろ、風流!最初から、こうなることが!」

リーブラ「自棄になって香様に危害を加えるというのなら、容赦はしません」カチャッ

え?


悟志「せ、先輩、いつの間に後ろに、ていうか、この手にもっているのって」

リーブラ「銃ですよ、本物の」

香「リーブラ、やめるんだ!」

琴美「や、やめて!私が悪かったから!悟志に手を出すのは、もうやめて!」

リーブラ「・・・・・了解しました」

バァン!!!

大きな銃声が鳴り響き、離れた場所にあった石が砕け散った。先ほどまで僕の頭に向けられていた銃口は、今は砕けた石の方へ向いている。あんなものを喰らっていたら、僕の頭は文字通り消し飛んでいただろう。

リーブラ「申し訳ありません、香様。私のせいで、ご友人に不快な思いをさせてしまったことをお詫び申し上げます」

香「いや・・・・・それはもういい。ただ、人が大勢いる空間で銃器を出すのはやめてくれ」

リーブラ「ふふ、大丈夫ですよ。もう手元には残していませんから、私が持っていたことを証明することは不可能です。あなたにご迷惑はかけませんわ」

香「いや、騒ぎになるからって意味で・・・・もういいか。ごめん、松永、中原さん。行こう、リーブラ。草華が心配してたよ」


琴美「・・・・・なによ、呪いって。それに、あの銃とか、瞬間移動してたりとか、わけわかんない」

悟志「・・・・・・高嶺の花、すぎたかな」

琴美「あんなの、無理よ。住む世界が違ったのよ、あいつらとは」

悟志「そう、かもね」

結局僕のやってたことは独り善がりの思い上がりだったってことだ。

悟志「先輩は、本当に優しかったんだ」

琴美「何を、どうしたの?」

悟志「あんなことは言っていたけれど、先輩は困っている人は見捨てられないし、頼りにされたら十分に応えてくれる人だった」

悟志「僕は先輩の言うとおり有象無象でしかなかったんだと思う。だけど先輩は、僕が後輩ってだけでいろいろと教えてくれたり、物を買ってくれたりしてくれたんだ」

悟志「誰に対しても分け隔てなく真摯に接する人なんだ、あの人は」

琴美「どうだか。風流へのアピールだったんじゃない?てか、あいつらグルだったんじゃないの?」

悟志「そんなことは、ないよ。先輩はきっと、僕が変な希望を持たないようにはっきりと断ってくれたんだ。一回目は僕が傷つかないようにやんわりと、二回目は決して付き合う意思がないことを示してくれた」

悟志「・・・・・僕が、悪いんだ。勝手に勘違いして舞い上がっていた僕が。先輩はだれにでも優しい、それを僕が勘違いしただけなんだ」

琴美「悟志・・・・・・」


それから、風流とは話をしなくなった。そうなると平山とも話をしなくなり、だんだんと友達と会話をする機会が減っていった。

琴美「なーに辛気臭い顔してるのよ。もうすぐ文化祭だってのに」

悟志「それが憂鬱なんだよ。一緒に回る相手もいないのにさ」

琴美「来ヶ谷は?」

悟志「有沢と付き合い始めたんだって。そっちと回るって言ってた」

琴美「うそ!私聞いてないんだけど!」

悟志「僕の恋愛相談を聞いている内になんとなく、だってさ。言うタイミングが無かったって言ってたけど」

琴美「瞳も教えてくれたらいいのに・・・・・」

悟志「・・・・・そういえば、通り魔事件って知ってる?」

琴美「ああ、たしか最近夜になるとでっかい刃物を持った女が突然切りかかってくるんだっけ?」

悟志「そうそう。中原は文化祭実行委員だし、これから遅くまで学校に残ることもあるだろうから気を付けなよ」

琴美「ふふ、ありがと。なんなら送ってくれてもいいのよ?」

悟志「・・・・・そうだね」

琴美「え?」

悟志「中原にはお世話になったし、遅くなりそうなときの送り迎えぐらいならやるよ」

琴美「ほ、ほんとにいいの?」

悟志「自分で言いだしたんだろ?」

琴美「そうだけど・・・・」


そうして、文化祭当日まで中原の送り迎えをするようになっていた。風の噂で、通り魔事件が解決したとかそういう話も聞いたような気がするが、2人の間ではあえて何も言わなかった。

そして、文化祭前日のこと。

悟志「明日から文化祭か。この送り迎えも終わりかな」

琴美「・・・・そう、ね」

悟志「・・・・・・・どうしたの?」

琴美「ねえ、マギ・フィールド先輩のこと覚えてる?」

悟志「そりゃあね。まあ大きな失恋をした相手だし、凄く衝撃的なことがいろいろとあったし・・・・」

琴美「あの人、やっぱり優しい人なんだと思う。だって本当に、怒っていてもちゃんと諭してくれてたんだから。警告はしてくれていたのを、私が止まらなかっただけだし。風流だって、先輩を止められるのが自分しかいないってことわかってすぐ駆けつけてくれた」

悟志「・・・・・そうだね。風流にも、なんだか悪いことしちゃってるな」

琴美「・・・・・・あの人、多分全部わかってたんだろうなって。私のことも、全部」

悟志「全部調べてたみたいだからね、僕らのこと」

琴美「うん。・・・・・もしかしたら、気付かなかっただけで私の背中を押してくれてたのかも」

悟志「あの、一体なんのこと?」

琴美「その後は本当に怒ってたんだろうけどね。でも、結果としてはあたしにとってはいい感じになっちゃった」

悟志「ごめん、意味がよく分からないんだけど・・・・」

琴美「もう、鈍いわね」

悟志「え?」

琴美「あんた、明日からの文化祭どうするの?」

悟志「どうって言われても、ウチのクラスは出し物もしないし、適当に見て回るつもりだけど・・・・」

琴美「じゃあさ、私と一緒に回らない?」

悟志「中原は、それでいいの?」

琴美「いいに決まってるわ。むしろ大歓迎よ」

悟志「・・・・・それじゃ、まるで」

琴美「だって私、悟志のことが好きなんだから」


悟志「・・・・・本当に?」

琴美「うん」

悟志「えっと、いつから?」

琴美「最初から」

悟志「最初って、いったい」

琴美「一目見た時から」

悟志「つまり、それって」

琴美「うん一目惚れ、だよ」

悟志「・・・・・そっか」


「悟志。私と、付き合ってくれない?明日だけなんて言わないでさ」

「喜んで。もう、勘違いも思い上がりも卒業だ。琴美が、いてくれるから」


リーブラ「って感じで付き合いはじめたんですよ、この二人は」

幽「なるほど」

悟志「先輩!?なんで最後のとこまで知ってるんですか!?」

琴美「わあああぁぁ・・・・・もうやめてぇぇぇ・・・・」シュー

香「幽が他人の恋愛話を聞きたいっていうから・・・・・」

幽「ええ、とても楽しかったわ」

玖美「恋かー、あたしにはまだわかんないなー。あ、そういえばさ、お兄ちゃん」

香「うん?」

玖美「お兄ちゃんはなんで悟志に協力してたの?」

香「リーブラが僕に依存しすぎるのもよくないかなって当時は思ってて。僕には幽がいるし」

幽「私としては私が一番ならそのほかに誰がいてもかまわないわ」

玖美「え、つまり公認の2号さん?」

リーブラ「香様がお望みでしたら」

香「いつも言ってるけど僕にその気はないよって」

玖美「あとこの話ってあれだよね、射美奈が間接的に恋のキューピッドになったってことになるんだよね?」

琴美「あの通り魔事件の犯人って、真泉だったの?」

香「おっと、これはないしょだよ。さて、そろそろ出ようか。幽も満足した?」

幽「ええ。他にも聞きたいことはあるけれど、とりあえずはこれでいいわ」

悟志「次は来ヶ谷たちを呼んでね。僕はもう嫌だから!」

琴美「しかたないじゃない、好きになっちゃったんだからぁぁぁ・・・・・」

玖美「こっちはまだ続いてるし・・・・・」

リーブラ「うふふ、愛は尊いものですわ」

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