うちの家には、あたしたち家族以外にも住人がいる。いろんな事情があって部屋を間貸ししている人たち。
斉藤さんちの上海。うちの料理担当。料亭の娘で勘当されたらしい。家を出されて途方に暮れていたところを、アクアの伝手でここに来たんだって。
上海「玖美ー、お昼ごはん作っておいたから、ちゃんとチンしてから食べてねー」
玖美「んみゅむ・・・ふぁーい・・・・・・zzz」
上海「それじゃ、私は学校行ってくるから。ニンジン残さないようにね」
玖美「だい・・・じょぶ・・・・・・zzz」
玖美「・・・はっ!すごくおいしそうな匂い!」
上海「まあねー」
玖美「上海はいいお嫁さんになるよね!お兄ちゃんとかどう?」
上海「こ、香を!?そ、そんな、私にはまだ早いって、でも香が求めるなら・・・」
玖美「上海ー、遅刻するよー?」
上海のごはんはおいしい。あたしはニンジンが嫌いだけど、上海が作ったのだとあまり気にせず食べれる。その辺が親とケンカした原因だって言ってたけど・・・
竹馬さんちの蓬莱ちゃん。うちの掃除担当。上海の幼馴染で親友で普通の子。父親がFXで家の財産を溶かしたとかで一家離散中らしい。一応父方の性を名乗ってはいるけど、父親が真人間になるまで見張っているからだって。普段はこの家を間借りしてて、月1くらいで父親の様子を見に行ってるみたい。
玖美「あああああっ!また負けたっ!蓬莱強すぎ!」
蓬莱「これくらいしないとあたしのメンツは保てませんぜ」
玖美「にしても!にしても!あたし1Fあればガードできるのに!」
蓬莱「相変わらずふざけた動体視力と身体能力だな、おい」
玖美「で、どうやってるの?」
蓬莱「攻撃誘って1Fの隙もださないようにしてから攻めてるだけ。こういうゲームは読みが肝心なんだよ」
玖美「ぶうう・・・もういっかい!」
蓬莱「はいよー」
蓬莱はゲームがものすごくうまい。ウチの家でゲーム大会やったら100%優勝するぐらいに。あとあたしの部屋の掃除もやってくれる。おかげで最近はすこぶる快調だよチクショウ。学校行かないといけなくなるじゃんかチクショウ。
上海「蓬莱ー、ちょっと来てー」
蓬莱「ん、なんだ?」
上海「味見して。はい、あーん」
蓬莱「うまい」
上海「まだ食べてないでしょ」
蓬莱「においからして美味い。こう本能が刺激されるうまさ」
上海「もう、おおげさだよー。ってことであーん」
蓬莱「あむっ・・・・・・うまい!」テーレッテレー
上海「んじゃ、食べたからお皿とかよろしくねー」
蓬莱「しまった!罠だったか!」カチャカチャ
お嬢様なオルレアンは、アクアたちの従姉妹かつ上海と蓬莱の幼馴染で親友。うちの内装担当で、家の中を華やかにしてくれる。この子は何か問題があってきてるわけじゃなくて、上海と蓬莱がいるからという理由で転がり込んできた。
オルレアン「くーみーちゃん♪」
玖美「ぴゃっ!?な、なに?」
オルレアン「学校行きましょ?」
玖美「やだ」
オルレアン「・・・・・・」
玖美「・・・・・・」
オルレアン「わかりました。では久々に寄せ書き作戦を実行するしかありませんね。では今から玖美ちゃんのクラスの生徒たちに声をかけて」
玖美「やめてーっ!あれやられるとメアリーの目がものすごく痛いの!またかって目で見てくるの!」
オルレアン「では、早く着替えて出ましょうね。玄関で待ってますよ」
玖美「うう・・・おにー!あくまー!」
オルレアンはやることなすことのスケールがデカい。なんていうかこう、目的のためには手段を問わないというかなんというか・・・。早く用意しなきゃ。
オルレアンが来るときに一緒についてきた、専属メイドの世界。オルレアンと同い年ながらメイドしてるみたいだけど、特に何か込み入った事情があるとかそんなのじゃなくて、なんか気が付いたらメイドしてたみたいな感じらしい。
玖美「世界」
世界「はっ」
玖美「例のモノをもちなさい」
世界「こちらに」
玖美「ふっ・・・・・・」
玖美「・・・・・・やっべ、悪の組織のボスごっこ、全然盛り上がらない」
世界「でしょうね」
玖美「てか!メイドのくせになんでジャージなの!?もっとメイドらしくしてよ!」
世界「メイドにもプライベートがありますから」
玖美「メイド服着てないメイドなんてメイドじゃないよ!ただの休日の自堕落な学生だよ!」
世界「毎日が休日の自堕落な学生に言われたくはありませんね」
玖美「ブーメランだった!ちくしょう!」
仕事になればすっごいてきぱき真面目にまともにやってくれるんだけど、プライベートだとこうだよ。今度からジャージ長って呼んでやる。
世界「ちなみに、メイド長は私ではありませんのでジャージ「長」ではありませんよ」
玖美「読まれてる!?」
オルレアン「世界」
世界「ここに」
オルレアン「これ、お母様から今月のお給料です」
世界「ありがとうございます。これで新しいプラモが・・・」
オルレアン「それと、歌恋さんから伝言が」
世界「メイド長からですか?」
オルレアン「『自分で取りに来い』とのことです」
世界「たしかに主人をパシリに使うのはよくありませんでしたか・・・しかしあの時は塗装の途中だったから致し方ない部分も」
オルレアン「次自分で取りに来なかったら世界のお部屋を掃除しに来るそうです」
世界「畏まりました。次回は私自身が行ってまいります」
オルレアン「私はいいんですけどねぇ」
世界「私がよくないんです!」
赤道近くの国から来た褐色幼女、リリーナ。真恵やメアリーと同学年ながら、単身で留学してくる肝の据わった子。まあお母さんの方の知り合いらしいけど。そんなわけで現在我が家にホームステイしてます。
リリーナ「玖美さん、これの続きがどこですか?」
玖美「んー?あー、それアリスの部屋だわ」
リリーナ「ってことは地下室まで行かないといけないんですね」
玖美「だねー」
リリーナ「・・・・・・玖美さん。お願いが」
玖美「ダメー」
リリーナ「ケチー」
玖美「あたしだってこたつから出たくないもん。冬にこたつ、これ最強の組み合わせなり」
リリーナ「私は生まれも育ちもアラブ方面だから寒さには弱いんです!」
玖美「それはそれ、これはこれ」
リリーナ「くっ・・・香さんなら行ってくれたのに!」
玖美「お兄ちゃんは甘々だからねー」
始めて来た時はわりとお上品にしてたと思うけど、今じゃもうだらけっぷりがヤバい。本人も親に今の姿見せられないって言ってるし。
これまたお母さんの伝手で来た幼女、マリンちゃん。
マリン「誰が幼女だ。貴様より年上だぞ」
自称大学生で言語学部に通ってるらしい。
マリン「自称とはどういうことだ。正真正銘大学生だ」
なんでも親が嫌になって家出同然にここに来たとか。
マリン「親元から離れたかったのは確かだが、ここの大学でしか取り扱っていない事業があったのがメインだぞ?」
あたしよりおっぱいちっちゃい。背もちっちゃい。
マリン「貴様がデカいだけだろうが!それを言ったら上海・蓬莱はどうなる!」
上海は普通だよね。蓬莱はぺったんこ。オルレアンはおっきいよね。身長は三人とも低いけど。
マリン「この家の女でお前より身長・バストともに貴様を上回っているのは薫とリルさんだけだぞ」
そうだった☆玖美ちゃん発育いいから、中1にして高校生とか自称大学生とかより軒並みプロポーションいいんだった☆
マリン「腹周りもな」
玖美「それは無しで」
デブじゃないよ?最近ちょっと体重とか気になるけどデブじゃないんだよ?
リリーナ「そういえば、マリンさんはどこ出身でしたっけ?」
マリン「イタリアだ。貴様はアラブ首長国連邦だったか?」
リリーナ「いえす、その通りです。ドバイ出身です」
マリン「そうか。私の方はなんというか・・・デカい城としか言いようがないな」
リリーナ「お城・・・ということは、お姫様なんですか?」
マリン「いや、私は姫じゃないな。そもそも城の主が王じゃないんだ」
リリーナ「ええー、お姫様仲間ができたと思ったのに・・・」
マリン「・・・貴様、今とんでもないことを言わなかったか?」
リリーナ「はい?」
マリン「いや、聞かなかったことにしよう・・・どうして姫というやつはどいつもこいつも迂闊なんだ・・・」
我が家がこれだけ人数が増えてもやっていける理由。それはおそらく座敷童が住み着いているからだと思う。そんな座敷童の小梅は、今日も今日とて神出鬼没。いると思ったらいなかったり、いないと思ったらいたり。
小梅「玖美。玖美」ユサユサ
玖美「すぅー・・・すぅー・・・zzz」
小梅「リリーナ、リリーナ」ユサユサ
リリーナ「zzz」
小梅「困りましたね。このままでは風邪をひいてしまいます」
小梅「玖美。リリーナ。起きてください」ユサユサ
玖美「んみゅむ・・・・・・カレーは・・・甘口で・・・・・・」
リリーナ「シチューに・・・ごはんは・・・・・・だめですか・・・?」
小梅「ダメです。起きてください。ふたりとも」
次の日、二人そろって風邪ひいた。座敷童いるのに幸運が発動してない。何故だ。
対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド。自立思考成長可能AIを搭載し、見た目は人間だけどどこかメカニカルなボディで今日も周囲に無料Wi-Fiを提供するお姉ちゃんたちが作った高性能アンドロイド。その名は、紫電カノン!!
玖美「カノンってさー、こう目からビームは出ないの?」
カノン「大変申し訳ありません。私では玖美様のご期待に応えることができません」
玖美「こう、空を飛んだりとかさー」
カノン「私にはロケットエンジンを積んでいませんので」
玖美「・・・まじで歩くWi-Fiスポットだね」
カノン「少しでもお役に立てるのであれば、光栄です」
玖美「うーん、腕がアームストロング砲になったり、お腹からマシンガンが出たりすると思ったんだけどなぁ・・・残念」
カノン「右腕からは消毒用エタノール、左腕からは消臭スプレーが。腹部は開けば食べたものが取り出せるようになっています。車酔いしても安心です」
玖美「そんなダイナミックなゲロはいやだよ!」
カノン「ジョークです」
表情が変わらないから、全部本気で言ってるように聞こえるんだよね。しかしまあ、今の時代のAIは冗談を言えるようになってるんだ。かがくのちからってすげー!
さっき紹介したのはアンドロイド。そして今から紹介するのがホムンクルスの虹香!虹が香るって書いてあやかだって。カノン曰く「無機か有機かの違い」らしいけど・・・
玖美「虹香ー、そろそろご飯だから降りてきてってお母さんがー」
虹香「はぅぁ!?く、玖美ちゃん!今生放送中だから入ってきちゃダメ!」
玖美「え、これ放送されてんの!?いえーい!ピースピース!」
虹香「ああ、質問コメがいっぱい来てるよぉ・・・」
虹香「はぅぅ、この子は何と言いますか、下宿先でお世話になっている人の娘と言いますか何と言いますか」
玖美「うわー、そんな痴女みたいな服着て踊ってるんだ・・・ちょっと引くわー」
虹香「はぅぁ!?痴女!?そ、そんなつもりは毛頭もありません!」
玖美「そんなにお腹出してさぁ・・・寒くないの?」
虹香「暖房効いてるから!ほら、もう降りるから、早く出て!」
玖美「ねぇ、これ何で放送してるの?」
虹香「あとで教えるから早くーーー!!!」
虹香がネットアイドル?ユーチューバー?みたいなことをしてるのは知ってたけど。知ってて入った。移りたかった。あと、やっぱお腹綺麗だなー。くびれとかすっごいなー。いいなー。
小梅「虹香。少しいいですか?」
虹香「うん、大丈夫だよ。どうしたの?」
小梅「その、虹香は録音とかは得意ですか?」
虹香「録音ですか?それなら人並みには・・・」
カノン「私には録音機能も録画機能も付いていますよ」
小梅「いや、その」
カノン「ついでに映写機能と再生機能、プリント機能も付いています」
虹香「カノンちゃん、いよいよもって家電と化しているね」
小梅「あの、わたしは」
カノン「虹香も体から電波を発せばいいと思います」
虹香「私の体はほとんど人間と変わりないから無理だよぅ」
小梅「その、歌ってみたというものに興味があって」
カノン「私が録音したものを自動で編集してアップロードすることも可能ですが」
小梅「自分でやりますから!それで、マイクとか、どういうものがいいのかとか・・・」
虹香「私が前に使ってたのでいいなら、譲るけど・・・」
小梅「そうですか?ぜひお願いします」
カノン「あの、私には録音機能が。音質もいいですし」
虹香「たしか、この辺りに・・・」
カノン「自動でカットとか曲の再生もできますし、ほら、あの」
小梅「あ、これですか?」
虹香「そうそう、それそれ」
小梅「ありがとうございます」
カノン「・・・そもそも、小梅様はパソコンを持ってましたっけ?」
小梅「いえ、専ら共用のものを・・・え、自分用のが必要ですか?」
虹香「あー、共用のだとそれの前で歌わないといけないから、結構雑音もだし、邪魔とかがはいるかも・・・」
カノン「私を使えばそんなことはありませんよ!さあさあ!」
小梅「・・・アリスあたりにここらで一発福引でも当ててもらいますか」
上海「いやー、相変わらず多いねー」
リル「上海ちゃん、手伝ってくれてありがとうね」
上海「いえいえ、とんでもない。私がお世話になっている立場なんですし、むしろこれくらいはやらせてください」
壮司「・・・・・・そろそろ改装するか」
蓬莱「まだデカくなるのか、この家・・・」
オルレアン「はて、そんなに大きいですか?」
世界「オルレアン様も上海様も、マリン様もリリーナ様もみな名家出身ですからね。そう感じられるのも仕方ないかと」
上海「あれ、私入ってる?」
香「これ以上広げようとしたら行き来が大変そうなんだけど」
薫「上に広げるにしても下に広げるにしても、ねぇ」
玖美「いいじゃん。アリスミラーを置いとけばエレベーター代わりになるでしょ?」
アリス「私の鏡をどこでもドアみたいな感覚で使わないで!」
日輪「実際問題、する意味がないわ」
真恵「えー、僕も自分の部屋欲しいー」
メアリー「私もです」
リリーナ「いいじゃないですか、三人部屋で」
マリン「この三人に個人部屋があったら何をしでかすかわからんな」
カノン「なにかありましたら私が対処いたしますのでご安心を」
虹香「できれば私の部屋の上下左右には配置しない方向でおねがいします・・・」
うちの家はいっぱいの人が住んでるけど、あたしはこの家が大好き。だからできれば、ずっとこのままで・・・
日輪「いや、学校には行きなさいよ」
玖美「はぅ!」