愛「そういえばさ、香と月美の関係は知ってるんだけど、香と響華の関係って私詳しく知らないのよね」
香「関係、って言われてもな」
響華「私は一応正式に香様の下僕ですよ」
月美「えっ、正式な下僕って何?」
香「えーっと、契約上そうなってしまったというか・・・・・・でもあれはもう無効になったじゃないか!」
響華「契約は上書き形式でなく追加形式だと認識しています。立場が変わっても無効になったとは考えていませんよ」
アリス「やー、あれはもう完全に上書きされたんだけど」
響華「当人間での認識があれば問題はないはずです」
香「僕の方の認識が抜けてるんだけど?」
愛「えっと、つまり響華がMってことでいいの?」
月美「いや、もともとある程度は察してたけど。リーブラ先輩とは違った方向だって気はしてたけど」
響華「私はマゾではありません!・・・・・・でも香様になら何をされても・・・・・・」
香「だからそういうのをやめてくれって言ってるんだ」
響華「私にも聞けないことはあります」
月美「ここまで心酔してると逆に興味出て来た」
響華「では話しましょうか。香様との出会いからすべてを」
香「虚飾はしないようにね」
愛「話盛ってたらあんたが訂正して」
香「がんばる、けど・・・・・・まずは2年前そもそも僕と真恵が渓流釣りに行った話からかな」
愛「当時真恵は幼稚園だったわよね?かわいかったわねー。あの舌ったらずな感じがねー。あと無鉄砲って言うか命知らずっていうか突撃癖がねー」
月美「ぐぬぬ、そのへん私知らないからなー。ちっちゃいころの真恵ちゃん見たかったなー」
真恵「やまだー!うみだー!かわだー!」
香「海ではないね」
真恵「おにいちゃん!こっちこっち!こっちにかわがあるの!」
香「わかったわかった。わかったから前を向いて歩くんだ。転んじゃうよ」
真恵「だいじょうぶだよー。ボク、このへんずっとあるいてたもん!」
香「いや、大きな石とかあったらあぶないから」
真恵「へーきへー」ズリッ
香「真恵っ!」ガシッ
真恵「・・・・・・あぶない!」
香「だから言ったじゃないか。前を見てねって」
真恵「えへへ、ごめんなさーい」
香「この川・・・・・・アリス、どれくらい深いかわかる?」
アリス「ちょっと待ってねー、んー、あー、一番深いとこで水深2mはあるかな。危ないとこはブイ浮かせとくね」
香「ありがとう。ってことで真恵、あれより先に行っちゃだめだよ。川遊びはいいけどね」
真恵「きょうはつりしにきたんだよ?かわあそびはしないよ?」
香「多分途中で飽きるだろうから」
真恵「だいじょうぶだってー」
香「まあ期待しておくよ。アリス、釣り具出してくれ」
アリス「はいなー。これがお兄ちゃんの分。こっちが真恵の分ねー」
真恵「つりだー!きのえだじゃないつりだー!はじめてだー!うおー!」
香「ああっ、あんまりいじったら針が指に」
真恵「ぎにゃーーーー!わあああああん!いたいーーーーー!」
香「ああ、言わんこっちゃない!ちょっと無茶するよ。よっと」ピッ
真恵「にゃああーーーーー!わあああああああああん!いたいよーーーーー!!!!!」
香「よーしよーし、痛いの痛いの飛んで行けー!」
真恵「あああああああん・・・・・・?いたくなくなった!おにいちゃんすごい!まほうだ!」
香「うん、魔法だよ」
アリス「ってことでエサは付けておいたからこれをぴゅって振ったら釣りができるよ」
真恵「はーい!ぴゅっ!あれ?」ガサッ
香「ああ、木に引っかかった。ちょっとそのままだよ、すぐとるから」
真恵「はーい」
真恵「・・・・・・にゃっ!」バシャッ
香「おおー。大漁だね、真恵」
真恵「なれた!」
香「僕の方は全然だ。このままボウズで終わるかも。いや、そんなことあってたまるか」
アリス「お兄ちゃんは運とか一切絡まないからマジで実力勝負しかできないんだよね」
礼丹「基本インドア派な香が釣りをできるかと思ったら・・・・・・案の定ですね」
香「うるさい!まだこれからだ!」
真恵「つれたー!」バシャッ
香「・・・・・・真恵はもう手慣れたもんだね」
真恵「だってみえるでしょ?だからくいっとしたらすぽーんだよ」
香「見えるの?」
真恵「みえないの?」
アリス「真恵が見てるのは多分魚の魂だね。あとは山育ちの勘とキリングドールの本能でやってる。だから多分餌とか付けなくても釣れる」
香「おっかしいなー。僕も四分の一はキリングドールなんだけどなー」
礼丹「ほとんど人間ですから種族特性なんて残っていないも同然ですよ」
クイクイ
香「おっ!とかなんとか言ってたら引いて・・・・・・デカい!相当デカいぞこれ!」
アリス「竿の引き方がヤバイ!え、ピラルクとかそんなレベル!?」
礼丹「あああっ、竿が折れませんか!?」
香「ミシミシいってる!アリス、タモだ!」
アリス「りょりょ!ひっとらえるよー!おー・・・・・・お?」
真恵「どうしたの?」
アリス「・・・・・・人だー!」
香「えっ!?すぐにひっぱりあげてくれ!水を飲んでたらヤバイ!」
女「げほっ、ごほっ」
香「ああよかった、肺に水は入ってなかったみたいだね」
アリス「最悪このまま病院にぶち込むこと想定してたからなんとかなってよかったよ」
真恵「あぶなかったね。もうちょっとでしんでたね」
香「キリングドールのお墨付きか」
女「あ、う・・・・・・・」
香「大丈夫?って大丈夫じゃないか。意識はあるか?喋れる?」
女「あ・・・・・・・う・・・・・・・」
アリス「朦朧としてる感じだね。低体温症かな。やっぱ病院に」
グウウウウウウウウウウウウウ
香「・・・・・・」
礼丹「・・・・・・」
真恵「ぼ、ぼくじゃないよ!」
アリス「わかってるわかってる。この子だ」
女「ありがとうございます、ここ数日碌に食べ物を食べていなくて・・・・・・」モグモグ
香「いや、いいって。困った時はお互い様だし。僕は風流香だ。君は?」
響華「私、遠山響華と申します。妹たちと川遊びついでに食材を調達しに来たのですが、うっかり意識をなくしてしまって・・・・・」
真恵「ボクはまねだよっ!ふりゅうまね!」
アリス「私はアリス。風流アリスだよ。その言い分だと、妹さんたちが探してるってことなんじゃないの?」
響華「・・・・・・そうでしたっ!ええっと、ここはどのあたりでしょう?戻らないと・・・・・・」
アリス「ちょっと待ってねー。えーっと、妹さんのことを思い浮かべてもらっていい?」
響華「はい?」
アリス「オッケー、そんな感じ。・・・・・・よし、捕捉できた!」
真恵「なにやったのー?」
アリス「GPS魔法の応用をね。探知魔法と検索魔法と組み合わせてイメージした人を探すの」
香「流石アリスだ。てなわけで、妹さんたちのところに行こうか遠山さん」
響華「なにからなにまで・・・・・ありがとうございます、風流様方」
香「様付けは勘弁してくれ」
響華「あっ!寧々!鼓々菜!」
寧音「あっ!おねえちゃーーん!よかったー!!!」
鼓々菜「おー、お姉ちゃん見つかったです。ココは安心したです」
真恵「やー、見つかってよかったねー」
香「向こうに怪我とかもなさそうだし、よかったよ」
寧音「あれ、そっちの人たちは誰?」
鼓々菜「お姉ちゃん、お魚釣りに来たのに男の人を釣ったです?」
響華「もう、失礼なこと言ってはダメでしょ。風流様は私の命の恩人です」
寧音「えっ、ほんとに!?失礼しました!ほら、鼓々菜も!」
鼓々菜「ごめんなさいです。ココは謝るです」
香「いや、いいけど・・・・・・えっと、食材調達って言ってたっけ?」
響華「えっと、その、はい・・・・・・」
アリス「何日も碌に食べてないって言ってたね」
真恵「おなかがぐるるるだったね」
響華「お恥ずかしい・・・・・・その通りでございます」
寧音「お父さんお母さんのお金も残り少ないし・・・・・・だから私、公立に行こって言ったじゃん!」
響華「お金で安全と教育を買えるのなら多少無理をしてでもそうすべきだとお父様お母様も言っていたじゃないの。来年からは私も新聞配達以外のお仕事ができるし、生活も楽にできるから、ね?」
寧音「多少ってレベルじゃないじゃん!死にかけてるじゃん!」
香「あー、えーと、うん。まずは下山しようか。遠山さんも服を乾かしたりシャワー浴びたりしないと風邪ひくよ」
鼓々菜「でも、お魚まだとれてないです。山菜も。ココたちの晩御飯がスープだけになっちゃうです」
香「魚なら僕たちが取ったのをあげるから。真恵、いいよね?」
真恵「うん!おなかへってるならしかたないもん!」
響華「まあ、そこまでお世話になるわけには・・・・・へくしっ!」
香「ああ、ほら!アリス、このまま僕の部屋に直行するよ!そのまま風呂にぶちこんでくれ!」
アリス「あいさ!アイリス、お風呂湧かしてくれたー?」
アイリス『ばっちりだよー』
香「てなわけだ。とりあえずこっちだ」
響華「へっ?きゃっ!」
鼓々菜「おふろー、ほかほかでしたー」
寧音「あったかいお風呂につかったのとか久しぶりだ・・・・・・いつぶりだろ?」
響華「なにからなにまで本当にありがとうございました。その、お礼をしたいのはやまやまなのですが、私には何も渡せるものが無くて・・・・・・この身しか捧げられるものがありませんが、それでよければ」
香「はーい、ストップー。そういうのは求めてないんだ。僕彼女いるし」
真恵「このみをささげる?どういうこと?」
アリス「お金がないから身体で払いますってやつだね」
香「とはいえ、このままじゃ引っ込みがつかないだろうし・・・・・・とりあえず何があったのか聞かせてもらってもいいかな?遠山さん」
響華「響華、とお呼びください。妹たちもいますので」
響華「・・・・・・もともと私たちの家庭は、裕福ではありませんでしたが、一般と遜色のない普通の家庭でした。祝い事があったら外食に行く、その程度の」
響華「ですが2年前、両親が事故で亡くなってしまったのです。頼れる親戚もいなかったので、孤児院にいくことになるかもしれないと思いましたが、行先になっていたところはあまりいい評判を聞かなくて・・・・・・」
響華「それで、代理の保護者役の方をなんとか見つけて、生活は自分たちで行っていたのです。両親の遺産と、保険金と、慰謝料でしばらく生活していました」
響華「そこに重くのしかかってきたのが、学費でした。私たちはアーリア女学園というところに通っているのですが、そこの学費がすごく高くて・・・・・・」
寧音「私は公立の学校に行こうって言ったんだよ?それなら生活できるからって!」
響華「ですが、このあたりの学校はやはりその、少し治安が悪いと聞いていまして。両親もそれをわかって無理を押してでもアーリアに通わせてくれていたのです」
鼓々菜「パパ・・・・・・ママ・・・・・・」
香「2年前、だと草華たちの粛清が入る前か」
アリス「今だとそういうのは全部潰して回ったからね。草華たちが」
礼丹「あれは去年の話ですね。二人とも関係のない風を装っていますけどあなたたちも一部関係してるじゃないですか。二人とも拳で」
鼓々菜「おー、お兄ちゃん喧嘩強いです?」
真恵「すっごくつよいよ!おねえちゃんがいっつもへこへこしてるもん!」
香「あれは姉さんの生活態度の問題だからね。姉さんに力じゃ敵わないからね」
響華「それで、学費でいっぱいいっぱいになってしまって生活費を削って、今のような状況になっているのです。なんとか、寧音と鼓々菜が高等部を卒業はできるようにしてあげたくて・・・・・・」
寧音「お姉ちゃん、このまま中等部卒業したら働くって言ってるの。今のご時世そんなんじゃダメって言ってるのに!」
香「・・・・・・うん、なるほど。お金の問題は本当に僕にはどうしようもないな」
真恵「えー、かわいそうだよー。なんとかしてあげてよー」
響華「いえ、これは私たちの問題ですから。私が頑張ればなんとかなる話なのです。お話を聞いていただいてありがとうございました」
寧音「ちょっとお姉ちゃん!」
鼓々菜「お姉ちゃん、まだフラフラです。危ないです」
響華「こんなにたくさんお世話になったのだから、これ以上はだめよ。大丈夫、2人にはちゃんと――」
香「僕にはどうしようもないけれど、僕じゃなかったらなんとかなるさ」
真恵「おにいちゃん、どういうこと?」
香「響華、一つ言わせてもらうよ。僕らはまだどこまでいっても子供だ。この世の中を子どもだけで生きていくってのは無理がある。何をするに関しても、だ」
響華「それは・・・・・・わかっています、が・・・・・・」
香「だからここで僕を頼ってくるのもお門違いだ。子供が子供を頼っても意味がない。だからこういう時は大人を頼るんだ」
寧音「でも、頼れる大人なんていないよ!みんなお金をとろうとしてくる人たちばっかりだもん!」
香「だから、頼れる大人のところへ行こう」
響華「えっ?」
ファイス「・・・・・・事情はわかりました。ですが、この孤児院ですとアーリアに通うことは難しいですね」
香「やっぱりそうか。マギ・フィールド学園専用だしね」
響華「転校は・・・・・・やはり今の環境を変えるのは好ましくないです」
寧音「贅沢言ってる場合じゃないよ!お兄さんの学校なんでしょ?大丈夫だって!」
ファイス「ふふ、話はまだ終わっていませんよ。知り合いにアーリア女学園に通っている孤児たちの保護者をやっている人がいます。その人に話を付けましょう」
響華「そんな方がいらっしゃるのですか?ですが、その、私たちはちょっと事情が・・・・・・」
ファイス「はい。その孤児たちは、あなたたちと同じ天使です。ですから、うまくやれると思いますよ」
鼓々菜「・・・・・・おー?」
寧音「えっ、て、天使?ナンノコトカナー?」
香「天使だったんだ」
寧音「いやいやいや、確かに天使みたいにかわいいかもしれないけど天使なわけないじゃん!あんなのファンタジーの世界だって!」
響華「あの、ファイスさん。あなたももしかして・・・・・・」
ファイス「申し訳ありません、私は天使ではなくハルシオンという魔物です」
香「生まれながらにして聖力と魔力を兼ね備える聖鳥、ハルシオン。その羽を水に浸けるだけで万病の薬になると言われている伝説の不死鳥、だったっけ」
ファイス「言われているだけ、です。所詮は伝説、この羽はせいぜい解毒ぐらいにしか使えません」
響華「風流様はずいぶんとお詳しいのですね」
香「僕はクォータードール。キリングドールって魔物のクォーターだ。ほぼ人間だけどね」
アリス「アリスちゃんは魔女にして幽霊だよ。あっ、ゴーストって言った方がそれっぽい?」
寧音「だからあんな不思議なことをいっぱいできてたんだ・・・・・・私聖法使えないしなー」
響華「私も、恥ずかしながら訓練をしていませんのでコントロールができなくて・・・・・・」
鼓々菜「ココも使えないですー」
ファイス「ふふ、これからは存分に訓練もできますよ。その人の名前は弥上卯衣。彼女はもともと天界に住んでいたと聞いています」
礼丹「えっ、今なんと言いました?卯衣?」
ファイス「ええ。知っていますか?」
礼丹「知っているも何も、卯衣は・・・・・・古い友人ですから」
アリス「えっ、じゃあ神的な存在?」
礼丹「まんま種族女神です」
響華「女神様が、地上で孤児たちの面倒を?」
礼丹「アレの性格なら引き受けてもおかしくはありませんが・・・・・・香、私たちも行きますよ」
香「礼丹がそう言うのは珍しい、けどもちろんそのつもりだ。最後まで見届けないと気が収まらないしね」
卯衣「なるほど。大変だったでしょう、響華ちゃん、寧音ちゃん、鼓々菜ちゃん」
響華「もし、ここに住まわせてくれると言うのならば本当にありがたいです。学費は私がなんとかしますから、生活だけでも」
卯衣「いいえ。学費も私が持ちます。そんな問題はあなたたち子供が背負うべきものじゃない。和香もノノも、三人がここで過ごすことに異論はないわね?」
和香「もちろんだよ!だって、だってお腹が空いて倒れるなんてかわいそうだよ!絶対ダメだよ!お菓子分けてあげるね!」
ノノ「もちろん異論はありません。同じ天使ですから」
寧音「い、いいの?ほんとにいいの?後でやっぱなしーとか絶対ダメだよ?学校行かずに働けとかも無しだよ?」
卯衣「そんなことは言いません。むしろ大いに学び、大いに遊んで学生としての生活を謳歌してください。人生に一度きりの青春なのですから」
響華「・・・・・・まるで夢のようです。まさか、まさかこんなことになるだなんて。もし夢ならば、決して覚めないでほしい。それほどまでに思っています」
ファイス「いいえ、現実ですよ。響華さん、あなたが今まで努力を続けていたからこそたどり着いた現実なのです」
寧音「そうだよ!お姉ちゃんがふらふらになるまでがんばってご飯も少なくして山に行ってご飯取りに行こうってならなかったらお兄さんと会えてなかったもん!」
鼓々菜「お兄ちゃんもありがとうです。あったかいお風呂と、あったかいごはんと、あったかいお家。お兄ちゃんのおかげです」
香「僕は何もしてないよ。何もできなかったから大人を頼ったわけで」
礼丹「そこで適切な人を選べたのは紛れもなくあなた自身の功績ですよ、香。そしてわたくしも、ついでではありますが思いがけない再開ですし。ねえ、卯衣」
卯衣「そうね。礼丹も元気そうでよかった。あの岩戸で眠りについてから幾年たったことやら。もう会えないと思っていたから、余計にね」
礼丹「それもこれも香のおかげですよ。香、あなたには人と人とを引き合わせる力があるのです。それはわたくしが与えたわけでもない、まぎれもなくあなた自身の力。このわたくしが保証します。誇りなさい」
香「正義の女神のお墨付き、か。これ以上は悪く言えないな、うん」
響華「ええ。風流様、ありがとうございました。また後日、暇ができましたらお礼をいたしますので・・・・・・」
香「香、でいいよ。同い年だろ?様付けもむず痒いからいらない。あれは1人でいい」
響華「ふふ、では香さんで」
寧音「私はお兄さんって呼ぶからね!」
鼓々菜「お兄ちゃんでいいです?」
香「もちろん、好きに呼んでくれ」
アリス「やー、しかしあれだね。また妹が増えたね」
香「正直妹は何人いてもいいと思ってる」
ファイス「香くんは根っからのお兄ちゃんですね」
和香「ママも負けてられないね!」
卯衣「え?」
ノノ「三人とも、卯衣さんのことはママと呼んであげてください。喜びますから」
卯衣「あの」
寧音「ママー!」
鼓々菜「ママー、ココ、おなかすいたです」
卯衣「えっと」
響華「・・・・・・あっ、香さんたちからいただいたお魚、どうしましょう?」
香「あー、食べる?食べるなら引っ越し祝いってことでそのまま・・・・・・あっ、引越しか」
ファイス「そこは私にお任せくださいな。こう見えても大型車の運転もできるのです。トラックもありますし、いつでもお手伝いしますよ」
響華「いえ、そんなことまでさせるわけには」
礼丹「響華、あなたは甘えることを覚えるべきです。今まで自分の力を限界以上まで振り絞って独力でやってきたのですから、このままだと馴染めませんよ」
アリス「なんか礼丹がすっごい神っぽいこと言ってる!」
卯衣「礼丹の言うとおり。響華ちゃん、あとは大人に任せなさい。もう一人で頑張らなくていいんだから、ね?」
寧音「お姉ちゃん」
鼓々菜「お姉ちゃん」
響華「・・・・・・はい!」
響華「ここまでが前半でございます」
月美「えーと、渓流釣りしにいってるって何月ぐらい?」
香「6月かな。ちょうど日輪と菫がコラボダンスをはじめたぐらいのとき」
愛「私が全国三連覇を賭けた県大会をやってた時期ね。言ってくれればなんでもやったのに」
香「月美は受験で、愛は空手で。二人とも忙しいのはわかってたからさ。それに、この話は一日でやった話だし」
愛「この密度で?あー、魚がどうこういってたのはそういうことか」
響華「たった一日で全てが変わったのです。それも、いい方向に。香様たちには感謝しかありません」
月美「心酔するのも理解できるわ。実際に響華の運はどうだったの?」
香「えーっと、そもそもの問題としてこれって運が悪かったとかそういう話じゃないんだよね」
愛「えっ?」
礼丹「運命なのです。香が正義であるように。愛が恋人であるように。月美が月であるように」
愛「なるほど、そっちか」
月美「ん?でもこっからどうやって下僕にまでもっていくの?」
香「言い方」
響華「それは、私が今からお話しますね」
真恵「渓流釣り!二回目!」
香「道具は大丈夫?」
真恵「釣り竿、ヨシ!餌、ヨシ!ルアー、ヨシ!バケツ、ヨシ!ボク、ヨシ!」
香「僕もヨシだ。さあ行こうか。今日は転ばないようにね」
真恵「ひゃっほーい!大丈夫!ちゃんと前見て歩くから!」
香「頼むよ」
真恵「・・・・・・」
香「・・・・・・」
卯衣「」
香「卯衣さーん?」
真恵「生きてるー?生きてるけど」
香「響華みたいに空腹で倒れた・・・・・・感じじゃないな。うわ、ひどい隈だ」
真恵「えっと?」
香「あとやつれ具合から察するに、過労だ。・・・・・・いやいやいや、冷静に言ってる場合じゃない!アリス!救急車を!」
アリス「そう言われると思って既に家まで繋げといたよ!礼丹が車の準備してる!」
香「オーケー!あとは急患を運ぶって電話で伝えてくれ」
アリス「はいはーい」
香「悪い、真恵。今日は無しだ」
真恵「うん、しかたないよ。倒れてる人の方が大事だもん!」
香「よし、いい子だ。よっ、と。うわ、軽い!って言ってる場合じゃないな。念のためレーラさんにも連絡しておくか?まあ様子を見てからでいいかな」
響華「卯衣さんっ!」
香「響華、来てくれたか」
響華「香さん、卯衣さんは、卯衣さんは大丈夫ですか!?」
香「うん、今は落ち着いてるよ。過労だってさ」
響華「卯衣さん、やはり無理をして・・・・・・」
香「何があったのか気になるところだけど・・・・・・話してくれる?」
響華「ええ、もちろん」
響華「そもそもの発端は私たちが卯衣さんのもとへ来たことでした。卯衣さんは天界のいわゆる児童相談所のようなところに所属していまして、和香やノノはその関係で引き取って育てていたようです」
香「それで、響華たちに何か問題が?」
響華「はい。団体側は卯衣さんが私たちを受け入れることを良しとしませんでした。理由としては、私たちは地上生まれの天使であるからということです」
香「天界の地上魔界嫌いはまだ続いてるのか・・・・・・」
響華「ですが、卯衣さんはそれでもなお私たちを受け入れてくれました。その代償として、所属していたところから抜けて来たとのことでした」
香「・・・・・・なるほど」
響華「私がそれを知ったのはつい最近です。・・・・・・卯衣さんは、私たちに気付かせないように1年前からずっと無理をしていました。学費は彼女の貯金から、生活費は彼女がこの地上で働いたお金から」
香「だけど、それにも限界が来た」
響華「はい。私はなんとか成績優秀者として学費免除の特待生とはなれました。ですが、それを差し引いても4人分。とても貯金だけで賄えるような金額ではありません」
香「だからその分働いて稼ごうとした」
響華「はい。卯衣さんは生活水準を落とすことをよしとしません。・・・・・・私もアルバイトをすることを提案しましたが、拒否されてしまいました。卯衣さんの許可がなければ働くことができませんから、八方塞がりです」
香「それで過労で倒れたわけか。どこかの誰かを見ているみたいだね」
響華「・・・・・・はい。だからこそ、このままではいられません。香さん、お願いがあります」
香「ああ。なんでも言ってくれ」
響華「卯衣さんや、私の家族を守るために。力を、貸してください。私の全てを捧げますから」
香「・・・わかった。そこまで言われたら仕方ない。聞いた以上はなかったことにはできないしね。響華からのおねがい、承ったよ」
響華「香さん・・・・・・ありがとうございます。本当に、本当に助かります」
香「但し」
響華「はい」
香「もちろん響華にも働いてもらうよ。僕はどこまでいっても他人で、第三者だ。最終的な説得は君がするんだ。僕ができるのは場づくりだけ。それでいい?」
響華「もちろんです。私の家族、そして私自身のためにも。身を粉にしてでも働きましょう」
アリス「お兄ちゃん、安請け合いしちゃったけど大丈夫なの?」
香「・・・・・・正直、ヤバいと思ってる」
アリス「ほらー!」
礼丹「相も変わらず面倒事に首を突っ込むんですから・・・・・・しかも面倒な方向に」
香「わかってる、わかってるから!今考えてるんだから待ってくれ!」
アリス「要は天界の話なんでしょ?アリアエルに振ればいいじゃん」
礼丹「それが一番早い話ではありますね」
香「・・・・・・リーブラも含めて、僕たちの中でアリアさんの連絡先知ってるのいないんだよ。あの人携帯持ってないから」
アリス「えっ、持ってないの?・・・・・・あっ、そっか。天界ってくそ田舎だから電波飛んでないんだ」
香「そうなんだよぉ・・・・・・だから天界に直接行かなきゃいけないんだけど、礼丹?」
礼丹「私は天界を離れて久しいですし、人を移動させる力は持っていません」
アリス「天界は私行けないからなー。行先登録もできない」
香「クロ?」
クロ「・・・・・・」
香「うん、わかってた。さてさて、どーうしようかなー。レーラさん、は今城の方で健診するから1週間ぐらい動けないって言ってたし、おばさんも連絡着かないし」
アリス「ルーチェを通してリーリアは?」
香「ルーさん今は出張中。アメリカにいるよ」
アリス「アリスちゃんそれ知らなかったんだけど」
香「メールで来たから。暇だったら会社の方見に行ってくださいねーって・・・・・・あっ!そうだ!」
礼丹「どうしました?」
香「ミシェルさんだ!あの人、確か天人だ!」
アリス「なるほどー。で、連絡先は?」
香「持ってる!放送部時代に使ったから!」
礼丹「思いがけないところでつながるものですね」
香「まったくだ。さてさて、メールメールっと。アポとらなきゃ」
香「で、どうですか?アリアさんのところに行けます?」
ミシェル「そうですね、頼ってもらえるのはありがたいのですが、生憎私のような一般人では・・・・・・」
アリス「お兄ちゃんに総理大臣とのコネがないように、ミシェルさんにもアリアさんとのコネがないってことだね」
香「そう言われたら納得せざるを得ないけど・・・・・・困ったなぁ。あとは天界で、それも重要なポジションの人なんて・・・・・・」
礼丹「紗菜がいるじゃないですか」
香「・・・・・・ひいおばあちゃん?」
ミシェル「サナ、とは?」
香「送り火の紗菜。僕の祖父のクラン=ソフライムの母親みたいな存在だから、僕の曾祖母的な人、かな」
ミシェル「クランさん周りは社長に聞いた分しかわからないので詳しくはありませんが・・・・・・もしこのまま天界に行きたいのならばこれをお持ちくださいな」
香「これは?」
ミシェル「聖力を籠めた石・・・・・・いわゆる聖石ですね。コウくんから微量に漏れている魔力はこれで打ち消すことができます」
香「えっ、漏れてるの?マジで?」
礼丹「月美につけられた跡があるでしょう?それが原因です。忌々しい」
香「なるほど、これが・・・・・・まあこの石があればなんとかなるんだよね?じゃあいいか」
ミシェル「アリスちゃんほどの魔力はカバーしきれないので勘弁してくださいね」
アリス「アリスちゃん天界で外に出られないから問題ないよ」
響華「なるほど。では香さんのひいおばあさまのところへ行くのですね。やはり、アリスちゃんの鏡を使ってですか?」
香「いや、あそこはアリスの鏡じゃ行けないんだ。代わりに行きかたがある」
アリス「角を2階曲がって3つ目の扉を5回ノックして7秒待つ。そうすると屋敷の扉へとつながる」
香「ちょうどおあつらえ向きにここは病院で、角も扉も多いからすぐに行けるよ」
響華「では、すぐにでも」
香「ああ。行こう。えっと、卯衣さんは・・・・・・」
礼丹「私が診ておきますよ。起きたらテレパシーで伝えますので」
香「・・・・・・・テレパシーとか使えるの?」
礼丹「私は神ですよ?当然です。まあ今の状態だと香限定ですが」
アリス「ほんとにめずらしいねー。古い友人って言ってたけど・・・・・・まあいっか」
礼丹「ええ、あまり詮索しないでください。結構複雑なので」
香「じゃあ卯衣さんは礼丹に任せて、僕らは紗菜さんのところへ」
響華「はい!」
香「紗菜さーん、来たよー」
ワグラネリー「どうもどうも~、正義くん。それと悪魔ちゃんと、そっちは初顔だね~。塔かな?」
響華「あの、私は遠山響華と申します。あなたが送り火様でございましょうか?」
ワグラネリー「んー、残念だね~。私の名はワグラネリー。ここに居候しているだけの堕天使さ」
響華「だ、堕天使!?」
香「・・・・・・いや、むしろネリーさんの方がいいかも」
響華「あの、香さん?その、堕天使というのは、えっと」
香「ああ、大丈夫。悪い人じゃないし、害はないから」
ワグラネリー「まあ魔力を持ってるだけの天使だから気にしないで~」
響華「香さんがそうおっしゃるのでしたら・・・・・・えっと、それでですね、その、お願いがありまして。送り火さんに取り次いでもらうことは可能でしょうか?」
ワグラネリー「いやー不可能だね~。紗菜はいまちょっと厄介な件を取り扱ってるんだ~。あと2ヶ月ぐらいは動けないと思う」
響華「そう、ですか・・・・・・・」
香「いや、ネリーさんで大丈夫。ネリーさん、僕らはアリアさんのところに行きたいんだ」
ワグラネリー「アリアのとこ?詳しく話を聞こうか」
響華「それについては私がお話させていただきます。実は――」
ワグラネリー「にゃるほどにゃるほど。確かにそれだったらアリアに言ったら確実だね~」
響華「どうか、お願いします。アリアエルさまのところまで、案内していただけないでしょうか」
ワグラネリー「ただ、その問題はアリアが動くようなものじゃない。そもそもあいつを動かすのはホントの最終手段だ」
香「主神が取り扱うことにしては規模が小さい、ってのはわかってる。それでも、僕にはこの方法しか思いつかなかったんだ」
ワグラネリー「あいつは脳筋だからねー。そんな話をしたら拳をもって解決しに行くよ。でも、そんなことは望んじゃいないでしょ?」
香「・・・・・・確かにそれは最終手段だ」
響華「ですが、私たちに他に手段は・・・・・・」
ワグラネリー「・・・・・・んふふ。遠山響華。跪きなさい」
響華「はい」
香「・・・・・・えっ?」
響華「・・・・・・あれ?」
ワグラネリー「天使というものは、自分より上位の階層の天使には逆らえない。それは知ってるね?塔ちゃん・・・・・・語呂が悪いな。タワーちゃん」
響華「あ、はい。もちろん(タワーちゃん?)」
ワグラネリー「だから、あなたは従わざるを得なかったんだよ。これがどういうことか、頭のいい三人ならわかるよね?」
アリス「ワグラネリーが、響華より上位の天使だってことだよね?それって堕天使でも適応されるの?」
ワグラネリー「もちもち。堕ちた身とはいえ、本来の力を失ったわけじゃない。私の権限は今でも変わらずだよ」
響華「私は最下位である第9位の存在、エンジェルなのでアークエンジェル以上なら従ってしまいますが・・・・・・」
香「ノノがドミニオンなんだよね?位階4位の彼女でも物申すことができてないってことは相手はそれより上ってことだよね?」
ワグラネリー「そいつらの総まとめのやつは座天使、いわゆるケルブってやつなんだ。上位三階の内の一つだからそりゃドミニオンじゃ物申すなんてできないさ」
響華「け、ケルビムですか!?それならなおさら主神さまでないと・・・・・・」
ワグラネリー「私はセラフ。位階1位であり、天使の中で最も神に近い存在」
香「・・・・・・熾天使!?」
ワグラネリー「元、だけどね。さあ行きましょうか、人の子、そしてエンジェルよ。この熾天使ワグラネリーがあなたたちを導きましょう」
響華「し、熾天使、様?」
アリス「わーわーわー!待って待って待って!行くなら私が礼丹と交代してからにして!アリスちゃん身体が消えちゃうから!」
ワグラネリー「焦らなくても大丈夫だよ~。行くなら行くってちゃんと向こうに伝えてからだし~。まあさっきのはちょっと威厳だしたかっただけ」
香「具体的な日取りは、どうなる?」
ワグラネリー「私が動けば向こうも動かざるを得ないから・・・・・・3日後かな。学校とか大丈夫?」
香「放課後なら・・・・・・」
響華「私も、授業がありますが・・・・・・」
ワグラネリー「おっけおっけ。じゃあ次のお休みの日だね~。じゃあ明日だね」
香「えっ?いや、確かに今日の次の休みは明日だけどさ。今日土曜日だし。3日後って言ってたのは?」
ワグラネリー「向こうに準備する時間を与えたら、ってなるだけさ。今回は私も納得いかないから強制的に明日やらせる。明日の正午、風流家前で待ってるからね」
響華「・・・・・・はい!ありがとうございます!」
卯衣「・・・・・・ん、あ、れ・・・・・・?」
礼丹「起きましたか。全く、女神ともあろうものが情けないことです」
卯衣「えっと、礼丹・・・・・・・?どうして、私の部屋に・・・・・・・?夜這い・・・・・・?」
礼丹「変な所であのエロおやじの思考を受け継いでるんじゃありませんよ。ここは病院です。そしてあなたは病人です」
卯衣「ここは病院、私は病人、そしてあなたは使用人?」
礼丹「韻を踏むな」
卯衣「・・・・・・病院?」
礼丹「はい。過労で倒れたんですよ、あなたは」
卯衣「え、えっと、それは本当?」
礼丹「ええ。今の自分の状態を確認したらわかると思いますが」
卯衣「・・・・・・ああ、どうしましょう。医療費を、ましてや入院費用を払うお金なんて・・・・・・」
礼丹「立て替えてますから心配はいりませんよ」
卯衣「えっ、礼丹が?」
礼丹「ええ。私の少ない私財から出しているのです。さっさと元気になりなさい」
卯衣「えっと、ありがとう。それと、このことは子供達には・・・・・・」
礼丹「響華は知っていますよ。一応和香とノノにも伝えています。発見したのが香でしたから、そこは諦めてください」
卯衣「・・・・・・ダメね、私は。母親、になるつもりだったのに。心配をかけて、迷惑ばかりかけて・・・・・・」
礼丹「そこに口出しするつもりはありませんが・・・・・・香の手を煩わせている以上、あなたはもはや私とは無関係ではいられないということをお忘れなく」
卯衣「そう、ね。正義の女神さまのお達しは聞かないとね。まずは身体を治すことから、ね」
礼丹「ええ。家の事は心配しなくて結構です。あの二人がうまくやります」
愛「え、礼丹ってこんなキャラだったっけ?」
月美「なんか、刺々しさのベクトルが違うよね。こう、ツンツンしてる」
香「まあその理由はこの後わかるんだけどさ」
愛「あ、じゃあ質問。エロおやじって誰の事?」
礼丹「黙秘します。あれを話題に出すのは面倒ですので」
香「まあ、わりとそのままの意味だよ」
月美「なんとなく察しがついたようなついてないような・・・・・・」
響華「まあまあ、では続きですね。ワグラネリー様とのお話から翌日の事です」
響華「ここが、天界・・・・・・」
香「来たことはないの?」
響華「はい。何分地上生まれ地上育ちですから。この天界では異端な天使であることは間違いありません」
ワグラネリー「天界の奴らって妙にプライド高いからね~。天界に非ずんば天使・天人に非ずみたいな感じだし」
香「・・・・・・もしかして、卯衣さんがもめたのもその事情から?」
響華「はい。彼らにとっては私たちは地上に住まう卑しい天使なのです。私たち姉妹が最下位のエンジェルというのも要因の1つではありますが・・・・・・」
香「なるほどなー。つまり頭が固いとかそんな話じゃなくて、単純な差別じゃないか。余計にむかっ腹が立ってきたな」
ワグラネリー「ね。だからこの私が来たんだよ。とはいえ、タワーちゃん。交渉は君がやらなきゃいけないよ?」
響華「えっ、わ、私ですか?ですが、私の言葉は・・・・・・」
ワグラネリー「私がバックに控えてる。だから君は強気でいったらいい」
香「おかしいな。ネリーさんがすごく頼もしい。明日は台風かな?」
ワグラネリー「さ~てね~」
ケルブ「お前が・・・・・・なるほど、地上で暮らす下賤な天使か」
響華「っ・・・・・・本日は話し合いに応じてくださり、ありがとうございます。私からの話は一点。卯衣さんへの資金援助を打ち切った点についてのみです」
ケルブ「その話はもう終わったことだ。私たちの要求をはねのけ、ここを抜けた。しからばお前たちは我々とは無関係だ」
響華「そんな・・・・・いえ、おかしいでしょう。地上で生まれ、地上で育った。そんな天使を保護することになった。それがどうして彼女への支援をやめる理由となるのですか」
ケルブ「そのままじゃないか。地上で生まれ地上で育ったのならばこの天界の住民ではあるまいに。我々とは無関係の者にまでなぜ手を差し伸べなければならない」
響華「それが私たちだけというのならばまだわかります。和香やノノの分まで打ち切るのはあまりにもおかしな話ではありませんか。彼女らは私たちと違い、天界で生まれ天界で育った純な天使のはずです」
ケルブ「それは弥上のやつがお前たちの分を除くことに納得しなかったからだ。それで所属を抜けたと言うのならば責任はむしろそちら側にあるのではないか?」
響華「抜けざるを得ないような要求をしておいてよくもそんなぬけぬけと・・・・・・!」
ケルブ「いちいち憤りを見せるな、うっとうしい。これだから下賤な天使は困るのだ。規律というものがわかっていない」
響華「納得がいきません!卯衣さんがどのような人物なのかぐらいあなた方も知っているでしょう!救いを求める手を払いのけることがあなたがたのやることなのですか!」
ケルブ「そもそもが間違っているのだ。お前たちのようなものを救う必要も理由もない。我々は天に住まう選ばれし存在だ。それをあいつはわざわざ地上に降りて・・・・・・やつが堕ちた時点で関係を断ち切ってやらなかっただけでも感謝して欲しいものだがな」
香「・・・・・・よくもまあそんな勝手が言えたもんだな」
ケルブ「なんだ、貴様は?部外者は黙っていろ」
香「神は平等に手を差し伸べるんじゃないのか?あんたはケルブなんだから天使の中でも神に近い存在なんだろ?だがそれにしてはあまりにも傲慢がすぎるな。傲慢は罪じゃないのか?」
ケルブ「・・・・・・なんだと?」
香「天に住まう選ばれし存在だのなんだの・・・・・・そんなものただの魂の確率論にすぎない。たまたまくじであたりを引くってのは選ばれたってことになるのか?」
ケルブ「知れたことを。選ばれたからこそ私はここに存在しているのだ」
香「ならばお前は神を否定するわけだな。神が持つ平等性を」
ケルブ「減らず口が・・・・・・ただの屁理屈じゃないか」
香「否定しないわけか。いや、否定できないよな。お前はアリアさんの理念からは著しく離れすぎている」
ケルブ「お前に・・・・・・お前になにがわかる!あんな小童の思想も理念も神相応しいものではない!やつが新たな主神として成り代わったことがそもそも間違っているのだ!あんなものは神ではない!」
香「・・・・・・それは、全ての主神を否定することになるぞ?」
響華「香さん、その・・・・・・・」
香「主神は指名制だ。前代の主神が任せられると思ったからこその今の主神がある。そして、天界はそれを繰り返している。今の主神を否定するってことは前代の主神も否定することになるな。そしてそれが連鎖するだけだ」
ケルブ「それを屁理屈と言うのだ!」
香「屁理屈だろうとなんだろうと理屈は理屈だ。おまえは自分の思想の矛盾を下賤な地上の人間に指摘されていちいち憤るのか?うっとうしいな」
ケルブ「このっ・・・・・・!」
ワグラネリー「は~い、そこまで~」
ケルブ「・・・・・・堕天使風情が、なんのつもりだ」
ワグラネリー「その言葉、返してあげるよ。座天使風情が熾天使である私にたいしてよくもまあそんな態度をとれるものだ」
ケルブ「くっ・・・・・・」
ワグラネリー「座天使風情に教えておいてやる。全ての命は等しく平等であり、そこに貴賎も優劣も存在しない。生まれや育ちによって命の価値が変わることはない。天界から外に出たことがないお前如きが知った気になって地上を語るなどと片腹痛いわ!」
響華「ケルブ様。私の要求は一つ。卯衣さんへの資金援助の打ち切りを、見直していただきたいのです。それが差別意識によるものでないとすれば、正当な理由をもって拒否をしてください。それならば我々も納得しましょう。ですがそうでない限りは以前と同じく、せめて和香とノノの分は出してもらいます」
ケルブ「そんなことをする義務は我々には」
アリアエル「あるのですよ」
香「・・・・・・アリアさん!?」
アリアエル「こんにちは、香くん。珍しい気配がしたので来てみたら・・・・・・面白そうなことになっているじゃないですか」
ワグラネリー「仕事はいいの~?」
アリアエル「そこに救いを求める手がある。ならば差し伸べるのが私の仕事です。さて、ケルブよ。何を勘違いしているのかは知りませんが、彼女らの手を払いのける決定権はあなたにはないことはお判りでしょう?」
響華「アリアエル、様?」
アリアエル「そもそもこの団体は全ての天使・天人・神が生まれた環境の差によって健全な生活・必要な教育を獲得できないという事態を無くすために発足させたものです。しかしながら私一人では全ての天使・天人・神を調べることはできません。だからあなたに委任していた、それだけのはずです」
レイス「先ほどの発言も聞かせていただきました。あなたの発言はアリアエルさまへの反逆の意思とみなすことができます。その認識でお間違いないでしょうか?」
ケルブ「そ、そんなつもりは・・・・・・・わ、わかった!わかったから!あやつらへの援助は続ける!それでいいのだろう!?」
響華「!」
アリアエル「はあ・・・・・・今回のことは不問としておきます。しかしながら私やワグラネリー、それに香くんへの発言が消えたわけではありません。位階3位の座天使として、相応しい言動をとるように。いいですね?」
ケルブ「わ、わかった・・・・・・」
アリアエル「ええ。この一発で不問にしておきますよ」
ケルブ「へ?や、やめ――」
アリアエル「さて、ごめんなさい、遠山さん。遅くなっちゃいましたね」
響華「い、いえ!ま、まさか本当にアリアエルさまが出てきてくださるだなんて・・・・・・」
ワグラネリー「や~、やーっぱり手を出しちゃったね~。だからあんたは呼びたくなかったのに~」
香「・・・・・・人って壁にささるんだね」
レイス「今回は当然の報いです。香くんに手を出そうとしましたからね。むしろこの程度で済んだことを感謝して欲しいぐらいです」
響華「その、先ほど珍しい気配をと言っていましたが、それはいったい・・・・・・」
アリアエル「ええーと、うーん、近くにあるんですけど・・・・・・あっ、香くん。なんか変なのもってません?」
香「変なの?」
礼丹「これですね。ミシェルからもらった聖石」
ワグラネリー「ほお!なーんだ、そんなの持ってたんだ~。や~、香くん愛されてるね~」
香「えっ?」
アリアエル「ミシェル、とはもしかしてイエヴレフのことですか?」
香「はい。ミシェル=イエヴレフさん・・・・・・だったはず。伯母さんのアザラシ製菓で働いてる天人だね」
アリアエル「あの子ったらそんなところで・・・・・・こほん。その聖石は結構強い聖力のバリアを貼ってくれる石です。それで、持ち主に危機が迫ったらSOSを周りに出す効果もありまして」
香「だから駆けつけてくれたんだ」
アリアエル「はい。とはいえ、ワグラネリーが来てるなら私が出張ってくる意味はあまりありませんでしたね」
響華「・・・・・・あら?でしたら、先ほどの反逆の意思がある発言と言うのは」
レイス「ハッタリですよ。まあアレがよからぬ考えを持ってるのは薄々感づいていましたから」
アリアエル「まあ、一番先についたのが私でよかったです。スワンちゃん・・・・・はちょっとどこに行ってるのかわかりませんが、レーラさんやリーリア、ルーちゃんが来てたら厄介でしたからね」
レーラ「どういう意味で?」
アリアエル「それはもちろん香くんに危害を加えようとしたなんて知ったらどんなことになるか・・・・・・レーラさん?」
リーリア「私もいるよー」
ルーチェ「ええっと、ごめんなさい。私もです」
アリアエル「あららー・・・・・私が制裁しておきましたから、穏便にね?」
レーラ「これ以上ことを荒げるつもりはありませんよ」
リーリア「むしろ殴るのはどうかと思う」
ルーチェ「まあまあ、アリアさんだし」
香「みんな、仕事は?」
レーラ「すぐに戻りますよ。SOSがあったから来ただけで、その内容まではわかりませんでしたから確認しに来たのです。しかし、天界にはアリアがいるのだから杞憂でしたね」
リーリア「・・・・・・あーっ!香くんがまた新しい女の子引っ掛けてる!」
香「人聞きの悪いこと言わないでくれ!」
響華「また、とは?」
ルーチェ「もう、だめだよ、香くん。お兄ちゃんみたいにとりあえず受け入れるってのは。特に香くんは彼女さんいるんだからね?」
響華「えっ!?」
リーリア「ああー、この反応は・・・・・・あーあー、やっちゃったねー」
香「えっと、誓って僕にはそのつもりはなくてだね。幽を、幽を呼んでくれ!弁解させてください!」
ワグラネリー「こらこら、盛り上がるのもいいけどさ。ちゃんと報告に行かないと」
響華「そ、そうでした。香さん、ワグラネリーさん、アリアエルさま、それと、えーと・・・・・・」
レイス「レイスと申します」
響華「はい、レイス様。ありがとうございました。大変お世話になりました」
アリアエル「どういたしまして。天界の人たちもみんながみんな、あなたみたいに素直だったらいいんだけどねー」
香「まあまあ、イイ感じに片がついてよかったよ」
アリス「いい感じ、とは?」
響華「私は向こう側の考えも、そして私の考えも互いに伝えられましたのでいい感じではあると思っていますよ」
礼丹「最終的に権力と暴力に頼ってしまったのは歯がゆいものですが、向こうも聞く耳持たずといった感じでしたからね」
香「じゃあ卯衣さんに挨拶だけして、僕はミシェルさんにこれを返しに・・・・・・あれ?」
響華「家の前で誰かがもめていますね。・・・・・・卯衣さん?」
天使「――――――――!!!」
卯衣「――――――――!!!」
響華「卯衣さん!どうしたんですか!?」
天使「貴様か!下賤で卑怯な天使とやらは!」
香「・・・・・・はぁ?」
卯衣「訂正してください!響華ちゃんは下賤でも卑怯でもありません!」
天使「何を言うか!自分の力で敵わぬとみて堕天使を動かし要求を通そうとする卑怯者が!堕ちたとはいえ元熾天使、我らが逆らえぬのもわかっていように!」
卯衣「何の話ですか!言いがかりはやめてください!」
響華「・・・・・・なるほど、さっきの今だからまだ話が伝わっていなくて・・・・・。その話なら解決しましたケルブ様の了承も得ました故、これ以上何かを言われるゆえんはありません」
卯衣「ケルブ、って・・・・・・まさか響華ちゃん、天界まで?」
香「勝手で悪かったけど、大人しくしてられる余裕もなかったんだよ。そういうことだ。大人しく帰るんだな」
天使「なにをっ!もとはと言えば貴様らが駆け込んできたことが全ての原因なのだ!貴様らさえいなければそこの女が倒れることもなかっただろうに!」
響華「っ!」
香「おい、いい加減に」
天使「わかっているのか!この疫病神がっ!今すぐに消え失せるがいい!いや、むしろ私が引導を下してやろう!」ブオン!!!
香「響華っ!!!!」
パキンッ!!!
響華「う、卯衣さん!?」
卯衣「・・・・・・なんとも、ない?」
香「剣が、止まった?」
「よくもまあ、そのような態度が取れたものです」
天使「な、なんだ貴様はっ!」
「あなた程度に神聖なる私の名前を教えるのは気が乗りませんが・・・・・・まあ一応名乗っておきますか」
アストライアー「我が名はアストライアー。正義を司る女神です」
響華「アスト、ライアー・・・・・・礼丹さんが・・・・・・?」
天使「あ、アストライアー、様・・・・・・?」
アストライアー「天界に住まい、秩序を重んじるはずの天使がなんたる恥辱を晒すのですか。自分勝手な物言い、自己中心的な意見、そして自暴自棄な行動。天使の風上にも置けぬ始末ですね」
香「礼丹、その姿は・・・・・・」
アストライアー「己の立場もわきまえず、餓鬼がごとく喚き散らし剰え更なる罪を犯そうとする。決して看過できるものではありません」
卯衣「礼丹、そのあたりで・・・・・・」
アストライアー「いいだろう。貴様らの性根がそこまで腐っているの言うのなら我が直々に審判をしてやろうではないか。貴様らの主張が罪に問われないと言うのならば問題ないのだから」
天使「あ、う・・・・・・・」
アストライアー「この正義の女神からの裁きをその身に浴びられることを光栄に思うがいい!!!暴虐たる天使よ!!!」
「だめっ!!!!」
響華「う、卯衣、さん?」
「アストライアー。あなたの、正義の女神の裁きを受けると言うことは、例えどんな存在であろうとも絶対的な悪となってしまう。そんなことになれば、彼らは今後生きていくことができない。そして死してもなおその罪を背負い、冥府にて無限の苦しみを受けることになる。そんなことは、だめ」
香「・・・・・・」
アストライアー「アテナ。なぜ止めるのです。相手はあなた、そしてあなたの家族を葬らんとする不届き者。あなたには止める理由がないでしょう」
アテナ「あります!たとえ一度離れたとしても、かつて私がいた場所。守護を司る女神として、守らなければなりません!家族も、仲間もっ!」
天使「あ、あて、な?アテナ、様・・・・・・?ま、まさか、弥上卯衣が、あの、アテナだというのか?」
アストライアー「まさか、知らずに接していたのですか?大した玉ですね」
アテナ「アストライアー、私が知らせていなかっただけ。知らせたら萎縮してしまうかもしれなかったから」
響華「ああ、なんという、ことでしょう・・・・・・私たちが、私が原因で、アストライアー様とアテナ様の手を煩わせて、あまつさえ争いが・・・・・・」
香「アリス。契約書をくれ」
アリス「えっ!?い、いいの!?」
香「ああ。早く」
アリス「う、うん。はい」
香「・・・・・・よし。そもそも、あの話を持って来たのは僕だ。ならば今ここで起こっていることは僕が持って来た事態だ。責任をとらないとな」
アストライアー「香、あなたは何も気に病むことはありません。全ては正義を違え正義に背く者、すなわち悪の存在が原因なのですから」
アテナ「悪なんかじゃないっ!ダメっ!その烙印を押してはダメっ!」
響華「もう、どうしたら・・・・・・」
香「響華!」
響華「香、さん?」
香「そもそもとして、この話は君から始まったものだ。君が僕に依頼をし、僕がそれを受けた。だから、責任はとらなくちゃならない」
響華「・・・・・・ええ、もちろん」
香「だから、これにサインを」
響華「これ、は?」
香「読めばわかる。そうしたら、僕がこの場を収められる」
響華「・・・・・・・・・・・・!!!!!わかり、ました。この遠山響華、香さん・・・・・いや、香様にこの身、この命を捧げることを誓いましょう」
香「アリス、どうだ?」
アリス「・・・・・契約は、結ばれたよ」
香「わかった。おい、聞け!!!!!そこの天使!!!!!」
天使「な、なんだ?わ、私は、もう・・・・・・なにがなんだか・・・・・・」
香「遠山響華、及びその家族はこの風流香の庇護下に置く。お前たちに一切の手出しはさせない」
アストライアー「香、何を・・・・・・・」
天使「き、貴様に何の権限で!」
香「三界統一組織、『竜』。序列第二位、クラン=ソフライムの系譜、風流香」
アテナ「・・・・・・・竜、ですって?」
天使「竜、といえば、アリアエル様や、魔王、冥王も所属している世界の監視組織・・・・・・その『竜』か!?」
香「その通りだ。遠山響華は『竜』序列第二位の風流香の所有物だ。彼女らに手を出すということは我ら『竜』相手への宣戦布告とみなす」
アストライアー「・・・・・・」
香「今後彼女らに理不尽な理由で危害を加えると言うのなら、竜の逆鱗に触れると思え!!!!」
天使「わ、わかった!わかったから!竜に手なんか出せない!」
香「ならさっさと立ち去れ!二度と姿を見せるな!!!」
礼丹「香、あなたは・・・・・・いえ、わかっていますよね。だからこその選択」
香「ああ。ともかく今は、脅威が去ったことと、事を穏便に・・・・・・収められてないなぁ」
卯衣「ええ。香くん、響華ちゃん。詳しく話を聞かせてもらえますね?」
響華「はい。全てをお話します。それが、私の責任ですから」
アリス「その話、もうちょーっと待ってもらえる?具体的に言うと1週間ぐらい」
香「アリス?」
アリス「お兄ちゃんが権限を使ったってことはちゃんと上の序列・・・・・まあ竜神だけど。アレに言わなきゃ。んで、そしたら向こうも来るでしょ?そん時に話し合いで」
礼丹「卯衣、よろしいですか?」
卯衣「・・・・・・わかりました。礼丹に免じて、一度話を収めましょう。ですが、何をしたのかだけ響華ちゃん、詳しく教えてください。きっと、私たち家族全員に関わることですから」
竜神「さて、まずは我々の話し合いにこの場を提供していただくことを感謝します、女神アテナよ」
卯衣「弥上卯衣、それが今の私の名です。そちらの名ではあまり呼ばないでください」
竜神「これは失礼した、弥上女史。さて、今回は香、あなたが竜としての権限を使ったって聞いたけれども・・・・・・」
香「間違いないよ。これがその契約書だ」
キース「拝見させていただきます。・・・・・・ええ、間違いありません」
竜神「はあ、面倒なことしてくれたわねぇ。自分で何をやったかってのはちゃんとわかってるんでしょうね?」
香「勿論だ。そもそも、僕はこういう時のためにお爺ちゃんからの遺産を受け継いだんだから」
卯衣「この契約書の限りでは、響華ちゃんが香くんの下僕となる代わりに、私たちはその庇護を受けるというものですけれど、その、これは・・・・・」
響華「卯衣さん、先日話した通りです。そもそも、事が起こった原因は私なのです。あの1年前の日、あの日から今日まで続いていたことに私が責任をとっただけです」
卯衣「それでも、それで響華ちゃんが犠牲になることはないじゃない!香くん、おねがいします。その下僕となる対象を、どうか私へと変えてもらえないでしょうか」
香「無理だ。僕も響華も、自分のやったことに対して責任をとった。それは自分たちの正義に従った行動だ。それを違えるつもりはない」
響華「同じくです。私は自分の行動に未練も後悔もありません」
卯衣「礼丹も!何とか言って!」
礼丹「わたくしは香のやることに反対はいたしませんよ。そもそも香が正義の運命をもつ以上、その行動は全て正義なのですから」
卯衣「だけど!こんな重いことは子供が背負うべきじゃない!」
竜神「ああ、まったくだ。わかっているな、香?竜の序列は拒否権の序列であることを」
香「ああ、わかってる。だから僕の決めたことを拒否できるのは竜神様、あなたしかいない」
キース「はあ、リーブラといい最近の子供はやけに肝が据わっているというか覚悟を決めているというか・・・・・・」
竜神「ああ。その心意気やよし。レーラやアリアエルからも話を聞いたが、遠山響華およびその家族・・・・・この家の者を庇護下に置くことに関しては反対はない」
香「『は』?」
竜神「ああ。あとは、弥上女史が言った通りだ。こんなものはお前のような子供が背負うものじゃない」ビリッ
響華「あ、契約書が・・・・・・」
竜神「私の名と、弥上女史の名をここに上書きする。こういうことは我々大人の役目だ」
卯衣「竜神様・・・・・・」
香「あー・・・・・・ごめん。それ、上書きはできないんだ」
竜神「紙面で用意してある以上、その紙さえなくしてしまえば契約は・・・・・・あれ?」
キース「破ったはずの紙が、もどっている!?」
アリス「そりゃそうだよ。その契約書はこのアリスちゃんお手製の契約の魔法を使った契約書だ。たとえ破こうが燃やそうが食べようがなにしたって失われることはないよ」
キース「アリス・・・・・・あなたも面倒なことをしてくれるわね」
アリス「そもそもこの契約の魔法は私がお兄ちゃんに対して結ぶために作ったものであって、こんな使い方は想定してなかったの!お兄ちゃんにもちっちゃいころちょこーっと言っただけなのに覚えてたし・・・・・」
香「そりゃそうだ。アリスのことを忘れるわけないだろ」
竜神「ふむ、ならばワグラネリーを呼ぶか。あいつなら問答無用ではがせるだろう?」
アリス「無理だよ。ネリーの魔法は『対象』にかかっているものを払うだけ。でもアリスちゃんのこの契約は特別製でね。そういうのの対策で契約対象はこの世界そのものになってるんだ」
卯衣「世界との契約ですって!?そんな、まるで神の如き所業・・・・・・」
アリス「そう、トートの力で作り、私の唯一無二の個別魔法で縛った契約。たとえ本人たちの分をはがしても世界そのものからすぐに再契約される。だから実質的に契約の無効化や変更は不可能なの」
響華「アリスちゃん・・・・・・あなた、すごい幽霊だったんですね」
アリス「あったりまえだよ!伊達に500年幽霊してないからね!」
竜神「はあ、わかった。そうなるとこの契約を覆すのは無理ということだな」
香「うん。きっと、竜神様なら受け入れてくれるだろうと思って」
竜神「そういう無鉄砲というか、事後承諾をせざるを得なくしてくるのはクランそっくりだな、香よ」
キース「では一応、我々の組織がどういうものかをまとめた資料をお持ちしましたので、こちらをお読みください。質問があればなんでも・・・・・香くんに聞いてください」
香「え、そこはキースさんに任せたらダメなの?」
キース「あなたがやったことでしょうが。ちゃんと最後まで面倒見なさい」
香「うへぇ、ってことは僕も改めてちゃんと勉強しないといけないじゃんか・・・・・・」
響華「香様、お手を煩わせてしまうようで申し訳ありません」
香「いや、いいけどさぁ・・・・・・」
竜神「よし、ではこの話はこれで終わり!卯衣さん、もしお金に困ったりしたときは言ってちょうだいな。私たちで工面もできるから」
卯衣「ありがとうございます。皆様方も、またご来日されたときは是非訪ねてきてください。おもてなししますよ」
寧音「ママー、話し終わったー?」
鼓々菜「ママー、お腹空いたですー。あれ、お兄ちゃん、なにしてるです?」
香「やっ、寧音、鼓々菜。えっとだね」
響華「香様はこれから私たちのご主人様ですよ。二人とも、粗相がないように」
香「えっ、それは響華だけで」
卯衣「・・・・・・そうですね。私にとってもそうなると判断してもよいでしょう」
和香「ってことはもうあれだね、香くんとか呼べないね。香さんだね」
ノノ「それよりも私はママが女神アテナであると聞いてすごく驚いているのですが。誰も動じて無さすぎじゃないですか?」
和香「そのアテナってのがよくわかんないし」
寧音「私もしらなーい」
鼓々菜「ココもよくわかんないです」
響華「では、私もわからないということにしておきましょう」
ノノ「・・・・・・まったく」
卯衣「いいんですよ、ノノちゃん。私は卯衣。あなたたちの保護者です。それ以外の何者でもない、それでいいじゃないですか」
ノノ「ママがそういうのなら、そうさせてもらいますけれども。香さん、響華を下僕にしたからといって、不埒なことはしないように」
香「いや、僕そもそも恋人いるし。浮気はしないって」
卯衣「・・・・・・えっ?」
香「え?あ、えっと、あー・・・・・・用事を思い出した!僕はこれで!アリス、鏡!」
アリス「はいな!まったねー!」
卯衣「あ、ちょっと!」
竜神「あの子は相変わらずねー」
キース「クランよりもたちが悪いですね」
礼丹「そう言ってあげないでください。本人も今はそれを自覚して、どうにか克服しようと苦悩しているのですから」
卯衣「・・・・・・おいていかれたけど大丈夫?」
礼丹「1人で帰れますよ。それよりも、病み上がりの姉が無茶しないように見ておかないといけませんので」
響華「姉?礼丹さんと卯衣さんは姉妹なのですか?」
ノノ「二人ともゼウスの娘ですね」
礼丹「異母姉妹ですね。あのエロおやじが際限なく手を出すから・・・・・・一応アテナが長女で、私が四女です」
卯衣「ふふ、そうね。たまには妹と語らうのもいいわ。いままでずっと離れていたんですもの。あなたが眠りについてから、ずっと。話したいことがたくさんありますから」
響華「というわけで私が香様の下僕になった話です」
月美「なるほどねー。香はそういうことするよねー」
香「お金も権力も、それより大事なものを守るために使うものだって父さんと母さんに教えてもらったから。それに従ったまでだよ」
愛「おばさん、使えるものはなんでも使うって悪い顔して言ってたもんね。世の中カネとコネだって」
月美「私が卒業式の時につけた契約印も悪さしちゃったみたいだし、そこは無理矢理やっちゃってごめんね」
香「まあこれに関してはなんとも気にしてないから。しいて言えば公共の銭湯とかプールに入れないぐらいの影響だけども、そもそも僕行けないし」
愛「ん?でも無効化できないのに上書きしたって言ってたわよね?」
アリス「契約そのものを変えることはできないけど、立場を変えることで実質的に無効化することはできるからねー」
愛「あー、なるほど。私らと同じ立場か」
響華「そういうことです。竜の序列13位をファイスさんから受け継ぎました故、竜の幹部は拒否権を除き同等であるという規則が契約の上に来てしまったのです。ですが私は今でも香様の下僕であるつもりですよ」
香「僕にはそのつもりはないって言ってるよね?」
響華「ずるいです!月美さんも愛さんもちゃんと一ポジションもらってるのに!私だけ何もなしは不公平です!それでも公平を望む正義の香様ですか!」
月美「相変わらず天使のくせして欲にまみれてるね」
愛「まあ総大将のアリアさんからして物欲だらけだしいいんじゃない?」
響華「レーラ様も強欲であることは推奨しています!香様、これを機に新たな下僕の契約を!」
香「拒否権を行使する」
響華「はうっ」
アリス「お兄ちゃんの拒否はマリン以外だれも断れないからねー。これは響華の負けだね」
響華「うう、香様と同等の立場になってしまったがゆえに香様に私を捧げることができないだなんて・・・・・・」
香「それはリーブラだけのポジションだから。悪いけど譲れないよ」
響華「メイドと!下僕は!別物です!」
愛「はーいはい、そこらも含めてその辺決着つけるわよ。香、覚悟はいいわね?」
月美「今夜は寝かさないからね?」
響華「朝までしっかりとお話させてもらいますよ!」
香「よし、わかった。とことん話し合おうじゃないか。ただし、言ったからには本当に朝までやるからな!」
愛「あ、私は途中で寝るからね」
月美「覚醒の魔法ー」
愛「・・・・・・何した!」
月美「徹夜用の覚醒魔法。これで眠くなることはない!」
愛「ああもう!巻き込まないで!私は朝までとか言ってないじゃん!決着つけるって言っただけじゃん!」
アリス「んー、長期戦になりそうだね。軽食作ってこよっと」