あいつと初めて会ったのは、いつの話だっただろう。たまたま、家が隣だった。たまたま、同い年だった。そんな理由だけで一緒に遊んでた。腐れ縁っていうのかな。もう一緒にいるのが当たり前すぎて、離れていることに違和感を覚えるほどだった。きっと、大人になっても一緒にいて、そのうち結婚とかして、子供ができて、孫ができて、そんな将来なんだろうなってそう思ってた。
「ねえ、香。あんた、将来何になりたいとか考えてる?」
「んー、わかんないや。お父さんみたいにもなりたいし、お母さんみたいにもなりたい。愛は?」
「んー、あたしはやっぱ・・・お嫁さんかな」
「えー、愛って料理とかできなさそう。掃除も、洗濯も、あんまりしなさそう」
「大人になったらちゃんとやるって」
「ほんとに~」
「ほんとほんと」
嘘。ほんとはもう、ちょっとずつやり始めてる。お母さんに教えてもらって、服を畳んだり、お料理したり、お掃除したり。でも、恥ずかしいから内緒。いつか、当たり前のようにできるところを見せて、「おお!」って言わせてやるんだから。
小さい頃、公園で花冠を作っていた時のこと。私は実家が花屋なので、こういうお花に関する遊びが大好きだった。その時、二人組の男の子と女の子が、興味を持って話しかけてきた。どうやら、私が作っているものに興味があるらしい。せっかく興味を持ってくれたんだ、一緒に作ってみないかと誘ってみた。二人とも元気よく肯定してくれて、私もなんだか嬉しくなった。二人とも飲み込みが早くて、私が少し教えただけでしっかりしたのを作れるようになっていた。ここから、私たちは友達になっていったんだ。
「へー、じゃあ草華はもう小学生なんだ」
「香と2週間しか誕生日違わないのにね」
「そうなんだよね。でもでも、私がお姉さんってことはこれで分かってくれたと思うから、何か困ったことがあったらなんでも言ってね」
「そう簡単に困ったことなんて思いつかないよー」
「えっと、じゃあ、食べられるお花とかってある?」
「たんぽぽとかかな。でもその辺に生えてるのを食べてもおいしくないよ」
「たんぽぽって食べれるんだ!すげぇ!」
「食べたことはないけどね」
ちょっとだけ生まれるのが早かった、それだけで私はお姉さんだった。だから、お姉さんらしくしてあげたかった。知りたいこと、聞きたいこと、ちゃんと答えてあげられるように。
両親の仕事の関係で、私は叔母と従姉のいるこの町に引っ越してきた。なんどか来たことはあったけど、こうやって住むとなるといろいろと不安がこみ上げてくる。私は人付き合いが苦手だから、新しい場所で友達ができるかとか、ちゃんと馴染めるかとか、不安ばかりだった。でも、そんな不安は杞憂だった。
「はじめまして。僕は風流香っていうんだ。君は?」
「あ、えっと・・・・・・アクエリアス、です」
「アクエリアスちゃんっていうのね。んー、ちょっと長い・・・舌噛みそう」
「草華って舌短そうだし、ぽやぽやしてるもんね」
「あ、えっと・・・・・・」
「この子のことはアクアでいいよー」
「お、お姉ちゃん!?」
「アクアちゃん・・・うん、呼びやすい!」
「もう・・・」
「引っ越してきたばかりで、まだまだ不安があるだろうけど、何かあったらいつでもいってね、アクアちゃん」
「よろしくねー」
「これからよろしく、アクア」
「ほら、よろしくって言ってるわよ」
「あ、はい。よろしく、おねがい・・・します」
訪ねてきてくれたのは、向かいの家の子と、その友達だった。あまり人と話さない私を、文句も言わずに受け入れてくれた。この子たちと遊ぶのが、毎日の楽しみになった。誰かと一緒にいるって、こんなに楽しいことだったんだ。
私の妹は、不愛想だ。それが災いしてか、友達はいない。いつも私が一緒に遊んでいたし、そうじゃないときは一人で遊んでいた。でも、そんなこの子にも友達ができた。私にも、友達ができた。みんなで友達。みんなが友達。そんなみんなと過ごす毎日は、まるで冒険みたいで、この子たちと一緒ならどこにでも行けると思った。
「やっほー、香くーん」
「リーブラ。なんで水着なの?」
「ほら、今日近くの学校でプール使わせてくれる日だっていうから。もうみんな準備できてるよ」
「へ?」
「香、あとはあんた待ちよー」
「あせらず準備してね」
「暑い。早く泳ぎたい」
「アクア、もうちょっとまってね。今香くんが全速力で着替えてくるから」
「いや、プールに行くのはいいんだけどさ。みんな着替えは?全員水着着てるけど」
「「「「あっ」」」」
私の友達は、面白い。香くんは積極的だ。愛ちゃんは活発だ。草華は朗らかだ。香くんは面倒見がいい。愛ちゃんは運動が得意。草華はいろいろ知っている。みんな違って、みんないい。名前を呼んで、呼ばれるだけで、私もアクアもその一員なんだって思える。なんだってできる。いつでも、いっしょ。
海際にある、さびれた廃墟。普段人が全く来ないような場所。私はそんなところにいた。誰も来ないその場所に、誰かがやってきた。人に会えたのが久し振りで、なにをしたらいいかわからなかった。だけど、話しかけなければ気付かれない。私はずっとこのままなんだ。だから、話しかけてみた。それが、きっかけ。
「ねえ、そこのお兄ちゃん」
「・・・・・・へっ?」
「かくれんぼ、しない?」
「だ、誰?」
「誰だと思う?」
「いや、わからないから聞いてるんだけど・・・・・・」
「ま、だれでもいーじゃん。それよりさ、かくれんぼ、しよ?」
「んー・・・・・・まあ、いいけど・・・」
「それじゃあ、私が隠れるから。ちゃんと見つけてね、お兄ちゃん」
みいつけた!その声が聞けたとき、私はここにいるんだって実感した。誰かに見つけてほしくて、誰かといっしょにいたくてだから、さ
「ふふ、私はアリスっていうの。今後ともよろしくね、お兄ちゃん」
この人に、憑いていこうと思ったんだ。
愛「そういえば、アリスちゃんって何歳なの?」
アリス「えーと、どうなるんだろこれ・・・・・・あ、享年12歳!」
香「じゃあ僕より年上じゃん。僕まだ10歳だし」
アクア「・・・・・・なのに、お兄ちゃん?」
アリス「えー、だってなんか見た目年上っぽかったたし。身長とか」
草華「香くんのとこは家族みんな大きいのよね」
リーブラ「お母さんとお姉さん。おっぱいがどーんってなってた。大きかった。あれはたぶんミサイル」
愛「おっぱ・・・胸だけならリーブラとアクアのお母さんもおっきいじゃん。草華も」
アリス「うちもおっきかったよー」
愛「あれ?もしかしてあたしが一番将来性ない・・・・・・?」
草華「おっぱいの大きさだけが女の子の価値じゃないから大丈夫!」
愛「お前が言うなー!!」
リーブラ「お母さんがお土産を買ってきてくれました」
香「えっと、あてんしょんぷりーず?の人だっけ」
アクア「キャビンアテンダント」
香「それそれ」
草華「お土産って、どんなの?」
リーブラ「コピルアクっていうコーヒー豆」
アクア「ルアックコーヒーともいうらしい」
愛「え、コーヒー・・・あたしあんまり好きじゃない」
草華「私は飲めるけど・・・それって焙煎してあるの?」
リーブラ「煎りたてがおいしいって話だからまだ。ってことで今から煎るよ」
香「できるんだ」
リーブラ「わたくしさんはコーヒーが好きですからー」
アクア「私はいらない。・・・アリスと香は?」
香「せっかくだし、飲んでみよっかな」
アリス「え・・・・・・私は遠慮しとく・・・」
愛「どしたの?なんか顔がひきつってるけど」
アリス「いや、私の知ってる話だと、たしかあれってなんかのネコの糞から採取したやつだから・・・」
香「え」
草華「え」
リーブラ「そうだよ?あれ、言ってなかったっけ?ジャコウネコの未消化の糞のコーヒー豆」
香「・・・・・・男に二言はない!」
草華「お姉さんだもん!ちゃんと飲む!」
リーブラ「んじゃ、ちゃちゃっと煎ってきまーす」
香「うちの妹を連れてきました」
玖美「ふ、ふりゅうくみですっ!よろひきゅおねぎゃいしまひゅっ!」
草華「うちの子もつれてきました」
蕾「お、お姉ちゃん、見てる、めっちゃ見られてる!」
リーブラ「妹ならここに」
アクア「えっ、いや、そうだけど・・・・・・あっ。私の妹はまだ1歳だからお外には連れてこられない」
愛「そしてあたしは一人っ子です。姉妹うらやましい」
香「よし、玖美!だきつきだ!」
愛「よっしゃ、来い!」
玖美「え、やだ。なんで愛にしなきゃなんないの」
リーブラ「すっごい内弁慶」
アクア「身内側なんだ」
愛「くそぅ、くそぅ!」
草華「蕾?」
蕾「えっと・・・・・・ごめんなさい!」
愛「ふっ・・・わかってたさ・・・」
アリス「愛おねえちゃーん!」
愛「あんた年上でしょうが」
アリス「えー」
毎日が楽しかった。みんなが一緒だった。きっと、これからも。そう思ってた。
ある日のこと。町外れにあるちょっとした林に遊びに行った。そこはたまに虫取りとかをしにいくぐらいでしか行ったことなかったから、今日はちょっと探検してみようって話になった。
愛「右も左も木ばっかり」
リーブラ「林だからねぇ」
アクア「のどかわいた」
草華「お茶持ってきてるよー」
アクア「ごちそうさまでした」
草華「あれっ、もうなくなってる!」
アリス「恐ろしく速い飲み干し・・・私じゃなきゃ見逃してたね」
香「まあまあ、僕のもあげるから」
アクア「ごちそうさま」
リーブラ「うちの妹が大食いキャラにっ!なんか下の双子もいっぱい食べるし、これは私もいっぱい食べないといけないパターン!?」
草華「無理なキャラ付けはしないでいいと思うなぁ」
愛「・・・・・・あれっ?なんかある。なんだろ、あれ」
アリス「洞窟・・・かな?」
香「入ってみる?」
リーブラ「さんせーい」
アクア「入る」
草華「まあ、探検に来てるんだし、ね」
愛「よーし、さっさと入っちゃおう!あ、懐中電灯とかある?」
アリス「私が目を光らせればいいんじゃない?」
香「魔法って便利だなー」
愛「自己主張の激しい幽霊ね」
洞窟の中は暗く、アリスの目から出る光だけじゃ隅々まで見渡せなかった。私たちははぐれない様に、身を寄せ合って進んでいた。
アリス「んー・・・なんかここ、見たことあるような・・・ないような・・・」
リーブラ「アリスって地縛霊なんじゃないの?」
アリス「そうなんだけどー・・・・・・生前に来たことあるのかも」
香「そういえば、ここアリスと会ったところとそんなに離れてないね」
草華「そういえば、私そのこと詳しく聞いてないよ。そもそもどうしてとりついたの?」
アリス「要約すると暇だったから」
愛「香、あんた暇人にとりつかれてるわよ」
香「まあアリス宿題手伝ってくれるからいいんじゃないかな。おかげで今年の夏は楽だったよ」
愛「うっそ、ずるい!」
アリス「アリスちゃんこう見えて天才ですので。現代の小学生の勉強程度よっゆーよゆー」
草華「中学生は?」
アリス「まだやってないからわからないけどまあたぶん余裕っしょ!」
アクア「宿題は勉強がどうとかじゃなくて量が多いのが問題」
リーブラ「単純に人手が二倍だもんね。それは素直にうらやましいよ」
香「はっはっは、これからも僕は楽して宿題していくから、みんなはまじめにがんばりたまえ」
リーブラ「アリスちゃん、バケツプリンあげるからこっちに来ない?」
アリス「え、え、え、えーっと?」
アリス「うーん・・・・・・?」
香「悩むなよ!いや、悩まないでくださいおねがいします」
アリス「冗談だよー。ってことでごめんね、リーブラ。なんせわたくし、一途な幽霊ですので」
アクア「ものすごく厄介なストーカーともいう」
アリス「ストーカーじゃないもん!ちょっと24時間見張っててどこにでも着いていくだけだもん!」
草華「それをストーカーっていうんじゃ・・・」
その直前まで、こんな感じでいつものノリで、他愛のない話で笑いあっていた。きっとこれからも、こんな日々が続くんだって疑ってすらいなかった。
「っと、ここが一番奥みたいだね」
「ん?なんだろ、これ。岩?」
「岩ね。どう見ても」
「もしかして、ここには何かが封印されてて、この岩はそのときの名残・・・みたいな!」
「姉様、それはない。ファンタジーやメルヘンじゃないんだから」
「今目の前にアリスっていう存在を目にしてそんなことよく言えるわね」
「そ、そうだよ!私、けっこうファンタジーな存在!結構メルヘン!幽霊だし魔法使うし!炎とかぽんぽんってだせるし!」
「そうだった。あまりにもなじみすぎてて忘れてた」
「んー、ひんやりしてて気持ちいい・・・」
「え、そうなの?あたしもちょっと」
ピカッ!!!
「な、なに!?」
「まぶしい!」
「アリス、魔法止めて!」
「私じゃないよ!」
「くっ、何も見えない・・・目が・・・目が・・・」
「・・・・・・治まった?」
「なんか気味悪いよ・・・一回出よう・・・」
「さんせ~い」
「アリスちゃん、リレミト的なダンジョン脱出魔法みたいなのよろしく」
「ええ、あれ結構めんどうなんだけど・・・・・・えいっ!」
「さて、脱出完了・・・・・・全員いる?」
「いる・・・はず」
「ううー、びっくりしたぁ・・・何があったんだろ・・・」
「・・・え、えっと・・・・・・ね、ねぇ」
「どうしたの?愛ちゃん」
「えっと、そ、草華・・・よね?」
「そうだけど?」
「か、鏡!誰か、鏡持ってない!?」
「えっ?えっ?な、なにが?あ、もしかして、顔に怪我とか・・・」ペタペタ
「はい、手鏡」
「うん、ありがとう・・・・・・え!?」
「え、ちょっと、な、なにこれ・・・・・・ど、どうして・・・?」
「どうして、私の髪が、こ、こんな・・・こんな緑色になってるの!?」
「髪だけじゃない!目も!どうして、どうしてなのっ!?」
「草華、落ち着いて!アリス、何か知らない?」
「ううん、私も、何が起こってるのか・・・・・・こんなの、はじめてで・・・」
「・・・今日はもう帰ろう。なんか、もうぐちゃぐちゃで・・・」
「なんで・・・どうして・・・」
「まずは草華ちゃんを送っていきましょう。歩ける?」
「はぁ・・・はぁ・・・う、うん・・・大丈夫・・・」
私たちは、知らなかった。それは、ただの始まりでしかなかったんだって。
「私たち」が壊れていくのに、時間はかからなかった。
「それじゃあ、出欠をとりますね」
「はーい」
(草華ちゃん、大丈夫かな・・・学校違うからわからないけど、たぶん行けてない・・・よね)
「―――さん。―――さん。―――くん」
(帰りに、一度様子を見に行ってみようかな。一日たったら、何か変わってるかも・・・)
「・・・・・・」
(あれ?)
「えっと・・・・・・」
「先生、次、私ですよね?」
「う、うん。そうなんだけど・・・・・・ごめんなさい、お名前、ちょっとど忘れしちゃって」
(え?)
「なぜか出席簿の名前のとこだけ破れてるし・・・」
「もう、何言ってるんですか。私は■■■■ですよ」
(あれ?)
「うん、そうそう。えっと・・・・・・あれ?」
「そういや、あいつの名前なんだっけ?」
「覚えてたはずなんだけど・・・」
「先週の班活動のときにもちゃんと呼んだし・・・」
(どうして?)
「そんな影薄いやつでもないのにな」
「むしろ目立ってるだろ」
「も、もう・・・みんな、冗談はやめてよ・・・ね?」
「・・・・・・・・・・・・」
「じょ、冗談、だよね?わ、私、■■■■だよ?3年前に転校してきて、そこからみんなと一緒で、それで・・・」
「あ、わかった!伯母さんのいたずらだ!だからみんな、知らない振りしてるんでしょ!もう・・・」
「あ、そ、そういえば、この子、学園長の姪っこさんで・・・ど、どうしよう、そんな子の名前忘れるなんて、私、もしかして、クビに・・・」
「おい、やべーぞ!」
「誰か、思い出せ!」
「さっき言ったばっかりじゃん!あんたが思い出しなさいよ!」
「あ・・・あ・・・・・・あ・・・・・・」
「いやあああああああああああああああああああっ!!!!!!!!!!!!」
「お母さん!お母さん!」
「おかえりなさい。どうしたの、そんなにあわてて・・・それに、まだ学校じゃ・・・」
「お母さん、私の名前、わかるよね!?ちゃんと覚えてるよね!?ねえ!」
「そんな、あたりまえでしょ。あなたの名前は・・・」
「うん!」
「名前は・・・あなたの・・・名前、は・・・・・・あ、あれ?」
「お、お母さんも、なの・・・?」
「そんなはず、だってこの子は、私が、産んだ子で、私たちで、名前を決めて・・・!」
「どうして、私は、娘の、娘の名前が、思い出せないの?どうして、どうしてっ!?」
「あ・・・あは、は・・・・・・」
「・・・・・・ごめんなさい。ちょっと、病院に行ってくる。もしかしたら、何か脳の病気を・・・」
「違う・・・違うの・・・みんな、そうなの・・・」
「え、みんなって・・・」
「誰も、私の名前を覚えてないのっ!!!
「あのときからそうだった!誰も一度も私を呼ばなかった!!!あのときから!!!」
「おかしくなったのは、草華ちゃんだけじゃなかったんだ!私も、私もおかしくなってたんだ!」
「あは、あはは、あははは」
「・・・・・・ごめんなさい・・・」
「お母さんは悪くないよ!だっておかしいのは私なんだもん!だって考えてよ!」
「100人の人間がいて、99人が狂っていて、1人が正常だったら、狂っているのはその1人のほうなんだ!」
「みんな私がわからない!私以外全員わからない!なら、おかしいのは私のほう!」
「あははははははははは!あはははははははははははははは!!!!」
「あは、あはは・・・あはは・・・・・・」
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
気がついたら、誰もいなかった
「んー、アリスの魔法、失敗したの?まだ暗いまま・・・」
「・・・・・・」
「あれ?みんな、どこ?」
「・・・おかしいな・・・香、愛」
「草華、アリス」
「姉様」
「・・・・・・誰も、いない?」
「あれ?私、だけ?」
「どうなってるんだろ・・・一回出よう」
「変に失敗して、私だけ置いてかれちゃったのかも」
「あ、いた。みんな」
「あれ?草華が、なんか・・・変?あんな緑色だったっけ?」
「いやいや、そんなはずない。確かにさっきまでは黒かった」
「なにかあったんだ。それで、みんな探しにこれなかったのかも」
「あ、帰るんだ。うん、じゃあ私も。草華を送っていくんだね、姉様」
「・・・姉様?」
「ただいま」
「ふう、なんか疲れちゃった。一人だけ洞窟出るのに歩いたし・・・」
「あそこ、微妙に長いんだよね」
「晩御飯、なんだろ」
「お母様、夕飯は何?」
「・・・・・・ねえ、お母様。無視しないでよ」
「・・・・・・機嫌悪いのかな」
「あ、晩御飯できたんだ」
「・・・あれ?お母様、私の分がないよ?」
「ねえ、お母様、聞いてるの?」
「むぅ、返事ぐらいしてくれてもいいのに」
「・・・・・・私、なにか怒らせることしたかな・・・」
「姉様、どう思う?」
「・・・・・・姉様?」
「もう、姉様も、お母様も、二人して無視して。いい加減私も怒るよ」
「・・・・・・ふーんだ」
「ねえ、コスモス、ケイオス、聞いてよ。姉様もお母様も私のこと、無視するの」
「ごはんも作ってくれないし・・・」
「・・・コスモス?ケイオス?」
「もう、お姉ちゃんが来たんだから反応してくれてもいいじゃない」
「ねえったら」
「・・・・・・あれ?おかしい、な・・・なんでみんな、私のこと、無視するの?」
「・・・てか、無視してるって言うより、なんだか、私がいないみたいな・・・・・・」
「あ、あれ?私、ここにいるよね?ちゃんと、生きてるよね?」
「・・・うん。物も触れるし、足もある。ちゃんと・・・・・・」
「あ、でもアリスみたいなものも触れるし足もある幽霊もいるか」
「でも、アリスは存在感あるし・・・自己主張激しいし・・・」
「おはようございまーす」
「・・・・・・やっぱり、おかしい」
「学校に来て、あいさつしてるのに、どの先生も返してくれない」
「朝ごはんもなかった」
「まるで、みんな私に気づいてないみたい」
「・・・そんなわけ、ないよね」
「出席もとられなかった。私だけ飛ばされた」
「給食も、私の分だけなかった」
「食器は余ってたから、自分で用意した」
「ためしに授業中に勝手に外に出てみた」
「何も言われなかった」
「隣の子にちょっかいをかけたりもした」
「何の反応もなかった」
「やっぱり、誰も私に気づいていない」
「誰も私を見ていない」
「私だけ、みんなといっしょじゃない」
「わたしだけ、ひとり」
「ねえさまも、おかあさまも、みんな、きづいてくれない」
「ひとり・・・ずっと、ひとり・・・」
あの日から、草華とかに会えてない。なんだか、とても会い辛くて、会いに行けてない。あの時、あたしがあの洞窟を見つけなかったら、こんなことにはならなかったんじゃないかって今でも思う。
「愛、なんか暗い顔してるよ」
「香・・・うん、そうかも」
「・・・あれから、草華とか、一度も会ってないし・・・そりゃそうだよね」
「・・・もう、あたしどうしたら・・・・・・」
「・・・・・・よし!明日!」
「明日?」
「明日、この野外活動が終わったら、一回会いに行こう。いつまでもうだうだしてたって、どうにもならないよ」
「香・・・」
「ほら、愛。切り替えよう。せっかくのお泊りなんだからさ」
「うん・・・ごめんね、心配かけちゃって」
「ううん、全然」
「そういえば、アリスはついてきてないの?」
「玖美の遊び相手に置いてきた。姉さんはなんか試験前だって勉強で忙しいし、母さんも父さんも忙しいから」
「ふーん。相変わらず、あんたの家忙しそうね」
「まあ、母さんも父さんもあんまり家にいる時間少ないけど・・・でも、いるときはちゃんと構ってあげてるし」
「あんたも構ってもらってんの?」
「僕はもうそんな年じゃないよ」
「たかだか小学4年生が何を言ってんだか」
「愛だってそうだろ」
香と一緒に話してると、気がまぎれた。香と一緒にいると、安心できた。香がいれば、なんだってできる。こんな状況でも、きっとなんとかなる。そう思ってた。だから、また明日、頑張ろう。
でも、私たちに「明日」はこなかった
「香っ!香っ!!!!」
「愛ちゃん、離れて!」
「急げ!重症だ!すぐに止血を!」
「ひどい・・・腕が、肩からちぎれて・・・」
「やだっ!香、起きてよ!香、香ーー!!!!!」
野外活動の山登りの途中、あたしが崖みたいになってるところで滑って、落ちたとき。香がとっさに手をつかんで、あたしたちは二人で落ちていった。
地面についた時点では、まだ無事だった。軽い擦り傷とか切り傷がある程度だった。
ふもとまで降りればなんとかなるかもと思って、あたしたちはひたすら下を目指した。
そんな中、運の悪いことに、野生の熊と出会ってしまった。
小学校の野外活動に、そんな熊が出る場所なんか選ぶはずないけど、あとで知った話だとその熊は二つ隣の山から来たみたいだった。
あたしたちは、逃げた、でも、すぐに追いつかれた。もう、どうしようもない。ここで死ぬんだ、そう思った。
あたしがすべてをあきらめてたとき、香はあたしに逃げろって言った。そしてすぐに、熊に向かって行ったんだ。
だけど、ただの子供が、熊なんかに勝てるわけもない。香は何度も突き飛ばされて、ぼろぼろになっていた。爪で裂かれて、血がいっぱい出ていた。あたしは、動けなかった。
なんども、逃げろ、逃げろって言うんだけど、無理だった。足がすくんで、動けなかった。そして・・・
香の左腕に向かって、熊の腕が振り下ろされた。そしてそのまま、香の左腕が宙を舞った。
叫び声が聞こえる。痛々しい悲鳴。香がずっと暴れてたからか、熊はもう疲れたみたいに去って行った。
香は気絶していた。そして左肩からは、どくどくと血が流れ出てた。
映画なんかで、服とかで腕を縛って止血するシーンがあるけど、今の香には腕がなかった。
どうやれば止まるかもわからない、どこをどうすればいいのかもわからなかった。香の傷口を、両手で押さえるぐらいしか、私にはできなかった。
「止まれ、止まれ、止まれ、止まれ!止まって、止まってよ!ねえ!止まってよぉぉぉぉっっ!!!!」
・・・無我夢中だった。何を、どうしたらいいのか、わからなかったから。そしたら、止まった。
「あ、あれ・・・止まって・・・る・・・」
突然のことだったから、あまりにもびっくりして、あたしはもうなにがなんだかわからなかった。もしかしたら、心臓が止まったのかもしれないと、あせったけど、胸に耳を当てたら音が聞こえた。
そうしてると、まるでダムが壊れるかのように、また血が一気に噴き出してきた。あたしはまた、同じことをした。そして、今度ははっきりとわかった。
「あ・・・これ・・・・・・あたしが、止めたんだ・・・」
香の傷口に、なにか硬い、塊みたいなものがある。触らないとわからないぐらい透き通っているそれは、あたしが作ったものだった。
「こ、れ・・・・・・あ、あたしが・・・・・・固めたんだ・・・・・・血を止めたんじゃなくて、傷口を固めたんだ・・・」
「空気、で・・・・・・!」
それに気づいたら、あとはその塊が崩れないように、維持するだけだった。そして、大人たちが発見するまで、あたしはずっとそのままだった。
髪の色が、突然緑色になった。そんなことを言われて、信じる親はいるだろうか。あのときは多分、信じたとかそうじゃなくて、絶望しきった私の顔を見て、そっとしておいてくれたんだと思う。
早く、忘れよう。きっと明日になれば、元通り。眠ってしまえば、なかったことになる。そう、信じていた。だけど、そんなことは、あるはずがない。
「あ・・・・・・あ・・・・・・」
「や、やっぱり・・・・・・変わって、ない・・・夢じゃ、なかったんだ・・・・・・」
その日は、学校を休んだ。病院で診てもらったけど、お医者さんにもわからないって言われた。
何をしても変わらなかった。お母さんが黒染めのヘアカラーを買ってきてくれた。その日の夜は真っ黒に染まった。だけど、次の朝には元通りだった。
髪の毛を全部切っても見た。だけど、次の日には髪の長さも元通りだった。
ずっと学校を休んでいるわけにもいかない。妹も心配している。両親が学校に事情を説明してくれて、私はそういう病気だってことになった。
学校に行って、気づいたことがある。私は、少し力が強いぐらいで、運動は人並みにしかできなかった。だけど、私が緑になってからは、なんだかいつもより運動が得意になっていた。
体育の時間、ドッジボールで私は最後まで残った。投げるのが得意な男子のボールも、難なくよけていた。
そして、キャッチした。いままで、こんなことできなかったのに。私は試しに、その男子に向かってボールを投げてみた。その球はものすごく速くて、相手は反応しきれずにあたってしまった。
50m走をしても、タイムが5秒台になっていた。リレーをしても、私はどんどん周りの子を抜いて行った。
「花見、なんかすげーよな」
「このまえ手打ち野球で全部場外ホームランだったぜ」
「サッカーで端からゴールまで一直線にボールを蹴ってネットを突き破ってたよね」
これが何のせいなのか、私にはわからなかった。髪が染まったのに関係があるのだろうけど、それがどう関わっているのか、なにもわからなかった。
ある日、私は自分の髪の先が少し黒くなっていることに気づいた。よく観察してみると、朝起きたときには少し黒くなっていて、お昼には元に戻っている。
それを話してみたら、お父さんが知り合いの人からビデオカメラを借りてきてくれて、朝まで観察してみようって話になった。
部屋の電気をつけて、私はアイマスクをつけて、眠る。だけど、その日の朝は、色が変わっていなかった。
次の日、普通に寝て起きたら、やっぱりちょっとだけ黒くなっていた。いっそうわけがわからなくなっていたところに、妹の一言で、すべてがわかった。
「おねえちゃんの髪の毛、なんだかお花みたいだね。光をいっぱいにしてあげたら元気になるの」
そうだったんだ。私の髪は、光に反応して色が変わっているようだった。ためしに、こんどは暗視スコープ付きのカメラで観察したら、少しずつ黒くなって行く様子が観察できた。
「うちはお花屋さんだけど、まさか自分の娘がお花みたいになるなんて思ってもなかったわ」
「まあ、草華っていう名前なんだ。植物っぽくていいじゃないか」
植物は、光を浴びて元気になる。私も、同じなんだ。そうして意識すると、なんだか急に力があふれてきた。
今までは無意識に使っていたんだろうけど、今は意識して使える。前よりも速く走れるし、前よりも高く跳べる。ボールを投げるのも速いし、ものを持ったりする力だって。
そして、だんだんと自分の力に慣れてきたころに、連絡が入った。それは、愛ちゃんからの電話だった。
「草華・・・香が・・・香が・・・・・・!!!」
愛ちゃんに連絡をもらって、私はすぐに病院に向かった。お父さんは車を出してくれるといったけど、私は車より速く走れる自信があった。自分の力を十分に使って、私は走った。
「香・・・・・・くん・・・・・・?」
その呼びかけに、答えてくれる人はいなかった。目の前の男の子は、色んな管がつながってて、顔がマスクみたいなもので覆われてて、そして、左の腕が無かった。
私と手をつないで、泥遊びをして、お菓子作りをして、ゲームをして、泳いで、走って、そしてあのとき、はじめて出会った日に、一緒に花冠を作ったあの手は、もうなかった。
「香、くん・・・・・・なんで、どうして・・・・・・」
「草華・・・・・・香は、あたしを・・・・・・」
愛ちゃんから詳しい話は聞いた。愛ちゃんのせいだとかそんなんじゃなくて、ただの不幸な事故。そう思った。
不幸な事故。
そこで私は、他に来ていない子のことを思い出した。
「・・・私たちって、いつも何人で遊んでたっけ?」
「え、いきなり、なによ、そんなの・・・えっと・・・・・・?」
何故だろう。頭に靄がかかったみたいになって、詳しく思い出せない。私、香くん、愛ちゃん、アリスちゃん、まだ、いたはず・・・・・・
もしかして、これは、今回のことは、私がこんな姿になったことと、関係があるの・・・・・・?
私が誰からも名前を呼んでもらえなくなってからしばらくたった。この件のせいで、お母さんはノイローゼ気味になっている。学校の先生もびくびくしてる。他の子たちも。
私のせいで、みんながおかしくなっている。そんな中、おかあさんから 話を聞いた。
「香、くんが?」
なんでも、学校の野外活動での登山中に、クマに襲われて左腕が無くなったとか。今は入院中で、まだ意識も戻っていない。そういわれた。
草華がおかしくなって、私がおかしくなって、そして、香くんも。もう、なにがなんだかわからない。わからないけど、今はとりあえずお見舞いに行くぐらいしかできない。
すぐに準備して、私は病院に向かった。
病院に着いたら、色んな人が香くんの側にいた。あの子は、玖美ちゃん。あの人は、たしかお姉さんの薫さん。あの人はお母さんだ。
玖美ちゃんはずっと泣いていたのか、目が真っ赤で、ぱんぱんに腫れている。薫さんは立ったまま、ぎゅっと拳を握ってて、爪の近くから血が滲んでいる。おばさんは、玖美ちゃんと薫さんに寄り添いながら、香くんの方をじっと見ている。
私もお母さんも、何も言えなかった。ただ、静かにその様子を見守ることしかできなかった。
その時だった。
「・・・・・・あれ・・・・・・玖美・・・・・・姉さん・・・・・・母さん・・・?」
香くんが、目を覚ました。
「お兄ちゃん・・・・・・お兄ちゃん、お兄ちゃん!」
玖美ちゃんは、またわんわん泣いて香くんにだきついて
「ふぅ・・・・・・よかった・・・・・・ちゃんと、起きてくれた・・・・・・」
薫さんも涙を流してやっと椅子に座って落ち着いた。おばさんは、すぐにお医者さんを呼んで、おじさんにも連絡をしに行った。
「えっと、僕、何が・・・・・・あれ、リーブラも、アクアも、おばさんも・・・?」
えっ。
「あ、そっか・・・・・・思い出した・・・あの時、たしか・・・・・・」
今、私のこと・・・
「香、くん?」
「ああ、そっか。だから、今入院中、なんだ」
「私のこと、わかるの?」
「え?そりゃ、リーブラのこと、わからないはずがないだろ?・・・・・・あれ、おばさん、なんでそんなびっくりした顔して・・・え、アクアも、どうしたの?」
香くんが大変な目にあっているのに、何もわかっていないのに、私は、とてもうれしかった。私のことを、ちゃんと呼んでくれる人が、いた。
この人だけが、私をわかってくれる。この人だけが、私のことを呼んでくれる。香様だけが、私を、リーブラ・マギ・フィールドを覚えてくれている。
嗚呼、今分かった。これは、選別だったんだ。私が共にいるべき人間の選別。私はこの人なしでは生きていけない。私はこの人と共にあらねばならない。それがわかった今、このリーブラ・マギ・フィールドは香様に仕え香様にすべてを捧げなければならない。私のすべてを使って香様に奉仕をして私の総てを用いて香様の為になり私の全てをつかって香様を愛さなくてはならない。香様が私を救ってくれた。香様が私をあの地獄から救い出してくれた。イカれていた私が狂っていた私がおかしくなっていた私が壊れていた私が気がふれていた私が正常に清浄になれたのは香様のおかげだ。私はもう迷わない私はもう狂わない私はもう決めた私はこの人の香様の為に生きる全てにおいて香様を優先する香様の為に命を使う香様が望むのならこの左腕も差し出そう香様が望むのならこの体を差し出そう香様が望むのなら地位も権力もすべてを差し出そう全てを香様の為にすべてが香様の為に私はあなたをこの人を香様を愛します私は香様をお慕いします私は香様をいとおしみます私は香様を恋慕います私は香様に傾慕しますだから香様どうかわたしを捨てないでくださいなんども私を呼んでください私をわたしをワタシをわたシをワタしをわタしを
香が、私に気付いた。どうしてかはわからない。だけど、今まで誰も気づいてくれなかった私の存在に、香は気付いた。私を認識した。
「ねえ、香。私が見えるの?」
「見えるって、変なこと言わないでよ。普通に見えるよ」
「そう・・・・・・」
相変わらず、母様たちは私に気付いていない。いないことがそもそも当たり前みたいに。
「ねえ、変なこと言うね。私、誰にも気づいてもらえないの」
「え?何を言ってるの?」
「ほんと。今日もね、お見舞いに行くって言う時、母様は姉さまにしか声を掛けなかった」
「今私がここにいることを、母様はしらない。姉さまも気づいていない。玖美ちゃんも薫さんもリルおばさんも知らない」
「え、そうなの?・・・・・・もしかして、草華みたいに、なにか・・・・・・」
「多分、そう」
香だけが私のことを見ることができるっていうのは、何か理由があるはず。姉さまの様子も、なんだかおかしかった。
「ねえ、また来ていい?どうせ、誰も私のことは見えないから。学校を抜けだしたりしてもバレないし」
「まあ、いいけど・・・・・・」
やっと、話し相手ができた。これで、一人じゃなくなる。私は、独りじゃない。香が一緒。あなたが一緒。
僕が起きてからは、しばらくずっと姉さんや母さんが側にいてくれた。リハビリも始めているが、左腕が無くなって、バランスがつかめなくて度々転んでいる。
それにしても、僕が起きてからというもの、愛や草華、リーブラやアクアは来てくれるけど、アリスの姿を一回も見ていない。
母さんたちにも聞いてみたけど、家にも帰ってないみたいだ。
そうだとしたら、思いつく場所は二つしかない。なんとかして、そこに向かわないといけない。
だけど、今の僕はまだ病院から出してもらえない。なので、こっそり抜け出ることにした。
「それじゃあ、アクア、よろしくね」
「うん、わかった。でも、どこに行くの?」
「思い当たる場所は二つ。一つは、あの日みんなでいった洞窟。あそこで、何か調べてるっていう線」
「もう一つは、初めてアリスとあった場所。あそこで、僕のことを待っている」
「多分、アリスは僕のことを待っている。だから、行くよ。あの場所へ」
「わかった、病院から出ること、それと歩くの大変だろうからそれもサポートする」
「ありがとう。それじゃあ、行こう。目的地は、海だ」
「お兄ちゃん、来てくれたんだ」
「うん、なんとか来れたよ」
「それと・・・・・・隣に、なんかうっすらと人が見える・・・・・・アクア・・・?」
「・・・しの・・・えが・・・・・・る・・・・・・?」
「あー、なんか掠れてる・・・・・・まあ、そういうことなんだね」
「アリス、何か知っているの?」
「うん。草華の姿が変わって、マギ・フィールドの長女の名前がわからなくなって、アクアのことを認識できなくなって」
「お兄ちゃんが腕を失って。私、色々調べたの。あの洞窟について、何が起こっているのか」
「そしたらね、なんか冥界の偉い人?なんかが訪ねてきてさ。突然言われたの、私が成仏できなくなったって」
「えっと、それってつまり?」
「私は永遠にこの地上に留まる・・・・・・とかなんとか。ってことで、多分私にも起こってるんだ、その不幸なことが」
「それでね、ある日気付いたの。この不幸と引き換えに、手に入れたものについて」
「それは、何?」
「ふふ、知りたい?だったらね、お兄ちゃん。かくれんぼ、しよ」
「え、こんなときに・・・?」
「うん。私のことを見つけられたら、教えてあげる。さ、隠れるからね」
「わけわかんない。あの自称守護霊」
「まあまあ」
「守護霊自称してるくせに守れてないし、なんかわかったっていったのにかくれんぼって」
「あれの件は玖美が体弱いのもあってアリスに頼んでたし・・・それに、これはなんていうか、様式美みたいなものなんだ」
「様式美?」
「そう。あの子と初めて会った時と同じ。さ、行こう。場所はわかってる」
「え、分かってるの?・・・・・・じゃあ、かくれんぼの意味は・・・」
「それも、多分わかるよ」
「さて、ここにいるはずだけど・・・」
「いないよ」
「うん、いないね」
「じゃあ、別の場所を・・・」
「この場所、前に来たときと違う」
「え?」
「ほら、見てよ。こんなボロボロの部屋に、ひとつだけ綺麗な鏡があるんだ」
「えっと?」
「おかしいよね。だってこれ、つい最近取り付けたみたいじゃん」
「あ、そっか。ってことは、アリスが?」
「そういうことだね。それで、アリスはここにいる。だけど見つからない。そして新しい鏡がある」
「ってことは、ここに鏡が必要だったんだ」
「なんか難しい・・・・・・」
「父さんと推理物のゲームとかよくやってたからね。こういうのは得意だよ」
「さ、鏡を調べてみよう。きっと何かあるはずだ」
「なにかあるって、ただの鏡でしょ?普通に顔が写るだけ」
「うん・・・・・・ちょっと、移動させてみるか」
「どこに?」
「前にアリスが隠れてた場所。たしか、この辺りに・・・・・・」
「・・・・・・みいつけた」
『見つかっちゃった』
「・・・・・・うわぁ!?鏡の中から、声が!?てか、アリスが、鏡の中にいる!?」
『ふふふ、そう。私は今、鏡の中にいる』
「だ、だって、鏡はただの光の反射で、そんな鏡の世界なんて、ファンタジーやメルヘンじゃないんだから・・・」
『だからこのアリスちゃんの存在を全否定しないで欲しいって前々から言ってるんですけどー』
『ま、せっかくだし、はいりなよ。こっち側に』
「えっ?えっ?」
「・・・・・・こっから?入れるの?」
『はいれるよー。引っかからないように注意してねー』
「こ、香、入るの?」
「・・・・・・とりあえず、足は入る。ってことは全部行けるか。とりゃっ」
「えっ、えっ・・・・・・もうっ!」
「ようこそ、鏡の世界へ」
「なんなの、これ。またいつもの魔法?」
「こんなこと魔法で再現しようとしたら、私の魔力を使いはたしちゃうよ。無理無理」
「じゃあ・・・・・・」
「・・・・・・草華とか、愛が使ってるのと一緒?」
「え?」
「正解」
「あの、何のことか・・・」
「アクア、考えてみてよ。左腕が根元からもげた人間がさ、どれくらいの間死なずに生きていられると思う?」
「え、えっと、血がですぎたら死んじゃうから、血が残ってる間・・・?」
「うん、そう。で、さ。遭難した僕らをそんなにすぐに発見して、止血してってことは出来ると思う?」
「・・・・・・無理、だと思う」
「まあ実際に無理だったんだ。だけど、僕は生きてる。愛本人に聞いたんだけど、なんだか特別な力を使ったんだって」
「特別な、力?」
「そう。その力って言うのが、空気を固める・・・みたいなやつらしくて。それで僕の傷口を覆って、血を止めてたんだって」
「そうだったんだ・・・」
「草華に関しても、運動神経がよくなったとか言ってたけど、車より速く走れるようになったっていうのは明らかにおかしい」
「それも、その力なの?」
「うん、多分ね」
「あとは私が話すね。その変な力が使えるようになったっていうのは、ここ最近の話なの」
「もっと具体的に言うと、あの日、あの洞窟にみんなで行った後のこと。私のこれも、その後に手に入れた力」
「それじゃあ、もしかして、私や姉さまにも?」
「あると思うよ。ただ、それがなんなのかはわからない。それで、ひとつの仮説ができたんだ」
「うん、どんなの?」
「私たちは、自分の不幸と引き換えにこの力を手に入れたんじゃないかって」
「え・・・・・・」
「いや、不幸なんて生ぬるいね。これはもはや呪いだよ」
「それで、今わかった。お兄ちゃんの力が」
「え、僕の?」
「そう。私、さっきまでアクアはぼやけてしか見えてなくて、声も途切れ途切れにしか聞き取れなかった」
「でも、今は普通に会話できてるでしょ?」
「あ、ほんとだ・・・」
「多分お兄ちゃんは、この呪いを打ち消す力を持ってるんじゃないかなって」
「じゃあ、香はなんで腕を・・・・・・!」
「打ち消すって言っても一気に全部じゃないんだよ。アクアがはっきり見えるようになるまで時間がかかったみたいに、呪いを消すのにも時間がかかる」
「お兄ちゃんは自分の呪いを消していたけど、全部消える前に災いが降りかかった・・・・・・って感じじゃないかな。あくまでも予想だけどね」
「ってことは、僕は呪いの影響を受けてないから、アクアが見えるし、リーブラの名前がわかるってことでいいのかな」
「多分」
「・・・って、それならそうと言えばよかったでしょ。なんでこんなめんどくさいことしたの」
「それは・・・・・・私が、お兄ちゃんにもう一度憑いていきたいから」
「もう、私はお兄ちゃんの側を離れない。これからずっと、今度こそ守ってみせる」
「だから、私を連れて行ってください。風流香さん」
「・・・うん、もちろん。よろしく、アリス。アリス=フレデリア」
アクア「今更ながら、フレデリアっていうファミリーネームだったんだ」
アリス「すっごい今更だね」
香「それで、どうやって帰ろう。さすがに今から病院に入るのは難しいけど・・・」
アリス「あ、大丈夫大丈夫。私のこれね、あらかじめ登録した場所にならどこでも繋がるようになってるの」
アリス「だから、この鏡の行先を病院にします」
アクア「おお、便利・・・・・・海外旅行とかし放題」
香「学校に遅刻もしなくなるね」
アクア「どこでもドア感あるよね」
アリス「それは言わないお約束。知らない場所には行けないし」
アリス「てなわけで、戻りま・・・しょ・・・」
アクア「どうしたの?」
アリス「・・・・・・どうしよ。外で薫お姉ちゃんがキレてる。看護師相手に怒鳴ってる・・・」
香「うわ、出にくい・・・」
アクア「わ、私見つかったら大変なことに・・・・・・」スーッ
アリス「わわっ、消えてる消えてる!見えなくなってる!」
アクア「え?嘘・・・・・・あ、なんとなく感覚掴んだかも。これ、なんか調整できそう」
香「すごいね。それが力、なのかな?」
アクア「うーん、違うと思う。だってこれは呪いの方のはずだから。私にもちゃんとしたやつがあるはず。ってことで私はこっそり帰るね」
香「うん、わかった。さて、どうしようか・・・」
アリス「・・・・・・いっそ、魔法の暴発とかにしたら・・・あ、ダメ。私が怒られる。それはやだ」
そんなこんなで、私たちは各々自分の力っていうのを理解して、使い方とかを考えるようになっていた。
草華「もー、ちょっと離れてよー」
蕾「えー。お姉ちゃんの近くあったかいんだもん」
草華「宿題できないからー」
蕾「やだー」
草華「もー。あんまり邪魔するとあったかくするのやめるよ?」
蕾「もっとやだ!」
草華「じゃあちょっと離れて。ちょっと温度上げるから」
蕾「はーい」
アクア「水を・・・氷に」
アクア「氷を・・・水に」
アクア「水を・・・水蒸気に」
コスモス「きゃっきゃっ!」
ケイオス「おおー」
アクア「・・・・・・水蒸気を氷に!姉様、電灯強くして!」
リーブラ「はーい」
アクア「これが、人工ダイヤモンドダスト・・・!」
コスモス「zzz」
ケイオス「zzz」
アクア「・・・・・・飽きたの?」
リーブラ「疲れたんじゃないかな。いっぱいはしゃいでたし」
リーブラ「それで、この床がびちょびちょなのはどうするの?」
アクア「あ・・・・・・氷にするから、姉様片付けて」
リーブラ「はいはい。毎回こうなんだから・・・・・・」
アリス「あ、お兄ちゃん。そこのみかん取ってー」
香「はい」
アリス「ありがとー」
香「・・・・・・ねえ、僕の目に住み着くのやめない?目から手が出てきてミカンが中に入っていくのってなんか軽くホラー」
アリス「使えるものは使うのがアリスちゃんの主義ですのでー」
香「てか、普通に部屋から出てくればいいじゃん」
アリス「やだよ、寒いもん。地下室暖かいよ」
香「・・・・・・これさ、アリスが手出してる途中に目とじたらどうなるの?」
アリス「えっ、やめて。怖いからやめて」
香「・・・・・・」ニコッ
アリス「まあ普通に弾かれてこっちがわに戻るだけだけどね。私の力、写ってないと意味ないし」
香「ほんと、なんでもありだよね」
アリス「なんでもアリッス!アリスだけに!」
香「うわ、ただでさえ寒いのに・・・・・・やめてよ」
アリス「ごめんなさい」
愛「うーん」
愛「草華と違ってあんまり日常でなんか使えたりすることないんだよねー」
愛「とりあえず窓のとこ固めて寒いの止めてるけど・・・」
愛「なんか、バトルものとかだと強そうなのになー」
愛「別に誰かと戦うわけでもないし、平和が一番・・・・・・」
愛「・・・あ、もうクマには負けないや」
愛「後は、踏み台にして高い所の物をとるぐらい?」
愛「もっと器用に使えたら、階段とか傘とかに使えるんだろうなー」
愛「あとは、解除するとき風が起きるからそれ使ってスカートめくりとか?」
愛「・・・・・・やめよ。男子じゃあるまいし」
そうして冬を過ごし、桜が芽吹いてくる頃。
愛「ええっ、香、転校するの!?」
香「うん。さすがに今の学校のままだと、どうしても不便だから」
草華「じゃあ、引越ししちゃったりとか?」
香「あ、それはない。ちゃんと家から通えるとこにいくよ」
愛「この近辺で香の家から通える距離の学校・・・・・・あ!」
リーブラ「そうでーっす。香様は私たちと同じ学校に通うことになりましたー」
アクア「福利厚生ばっちり・・・・・・イェイ」
草華「なーんだ、そうだったんだね。私もそっちに移るところだったし、ちょうどよかったよ」
愛「えっ」
リーブラ「私が伯母さんとかにかけあって同じクラスにしてもらえるように頼み込んでおいたから」
草華「そんなのできるものなの?」
アクア「伯母さんとか教師陣は姉様の名前がわからなくなって名簿とかも姉様のところだけ破れたり消えたりしてたのがあってちょっと頭が上がらない状態」
アリス「ってことは弱み握ってゆすったってこと?せこっ!」
リーブラ「使えるものはなんでも使う主義なんです~」
愛「ううっ、リーブラのとこって私立なのよね・・・・・・」
草華「私は、なんか無償化されるとか聞いてるけど?」
リーブラ「草華ちゃんみたいな特別な事情を抱えた生徒は基本無償なの。知っての通りウチの学園、孤児院もいっしょにやってて伯母さんが子供に甘いのよね」
香「そのおかげで僕らは助かってるわけだけども」
愛「ねえ、アリス。私の呪いの詳細はわからないの?」
アリス「わからないよ。だって今のところ目に見えて出てこないんだもん」
香「まあ出来るだけ一緒にいれば緩和されるはずだから、こうやって一緒にいるんだけど・・・」
愛「・・・・・・もしかして、これが・・・・・・?」
アクア「?」
愛「・・・・・・まあいいわ。小学校の間は諦める。でも、中学になったら。スポーツ枠で入って見せる」
アクア「なにかやってたっけ?」
愛「空手よ!4年一緒に過ごしてきて知られてなかったの!?これでも結構強いんだから!」
リーブラ「ごめん、初耳」
香「酷いなー。一応僕も一緒のとこ通ってたけど、さすがにこれじゃ続けれないから辞めた」ギシッ
アリス「すごいよね、現代って。腕が無くなっても機械で代用できるんだから。このアリスちゃんが生まれた時代には棒きれしかなかったよ」
リーブラ「そりゃ500年前じゃねー」
そうして、私たちはやっと元の関係に戻れた。だけど、それぞれ学年がちがったり、学校が違ったり。ここまで長い間一緒に過ごしてたってだけでもすごいと思う。
しばらくして、みんなが新しい生活に慣れてきたころ、みんなそれぞれ自分の友達っていうものができた。だから、自然とそちらと遊ぶようになっていく。
気が付けば、毎日遊んでいたのが、2日おき、3日おきとどんどん長くなっていって、いつのまにかそんな時間も無くなっていた。
草華「幽ちゃん、ちょっと聞きたいんですけど・・・」
幽「何」
草華「小学生の、低学年ぐらいの子が読みやすい本ってありませんか?」
幽「そのくらいの年齢なら興味をひきやすい物であればどんなものでもいいわ。物語でも、図鑑でも」
桜「図鑑でもいいんですか?」
幽「図鑑も立派な本」
草華「そうですか・・・ありがとうございます。早速今日、蕾と選んでみますね」
幽「そう」
桜「そっかぁ、図鑑でもいいのかぁ・・・・・・あ、でも私、図鑑とかあまり持ってないかも」
草華「あの、小学生の話ですよ?」
幽「虫に抵抗が無いならファーブル昆虫記が使えるわ。読み物としての評価も高いし、昆虫を実際に捕まえたりすれば理科の自由研究にも使えるし、感想も書ける」
桜「わぁ、それいいですね」
草華「・・・・・・私もそれでやろうかな・・・」
世界「アクア様」
アクア「世界。どうしたの?」
世界「オルレアン様から、昼食のお誘いがあります」
アクア「オルレアンから?・・・わかったわ、行く」
世界「畏まりました。では出席の旨を伝えてまいります」
アクア「よろしくね」
アクア「・・・・・・はぁ。従姉が同じ学年っていうのも、なんだかやりにくい・・・」
上海「どうしたの、悩み事ー?」
蓬莱「さっき世界と話してたってことは、一緒に飯食うのか?」
アクア「ええ。ただ、ね。どうしても世界のあの対応がね・・・・・・もっと砕けてくれてもいいのに」
上海「その辺よく知らないんだけど、何か面倒なのが絡んでるの?」
アクア「私、一応オルレアンの従妹になるから、ウチの財閥で見れば結構高い地位になるわけよ。だからオルレアンの専属メイドにもあんな対応されるんだけど・・・」
アクア「オルレアンも自分で呼びに行こうとしたんだろうなとか、そんなのはわかるんだけどさ。もっとこう、ただの同級生として接したいというか・・・」
オルレアン「そうですよね!」
蓬莱「ひぴゃっ!?」
上海「びっくりした・・・オルレアン、いつの間に?」
オルレアン「専属メイドにも・・・ってあたりからです。そうなんですよ。世界は確かに私のメイドなんですけど、もっと年相応に振る舞っていいはずなんです」
アクア「蓬莱ー、大丈夫ー?」
蓬莱「・・・・・・」
上海「あ、固まってる・・・・・・オルレアンが驚かせるから」
オルレアン「わ、私のせいですか?うう、ごめんなさい・・・」
蓬莱「だ、大丈夫・・・ちょっとびくっとしただけ・・・」
世界「皆様、昼食の用意が整いました」
蓬莱「みゃみっ!?」
上海「あ、また固まった」
アクア「メンタル弱いなー」
世界「それと、オルレアン様」
オルレアン「はい?」
世界「私は、少なくとも現状に満足しています。皆様とこのような関係を築けていられることに、私個人として、幸福を感じていますから」
オルレアン「そう、ならいいけど・・・・・・」
アクア「でも蓬莱で遊ぶのはやめてあげたら?」
世界「本部に持ち帰って検討します」
蓬莱「ここで了解しろよ!しかもそれノーじゃねえか!」
世界「てへぺろ」
上海「こんなムカつくてへぺろ久しぶりに見た・・・」
琴美「愛、空手全国制覇おめでと~」
瞳「おめー」
愛「ありがとー・・・・・・はぁ」
琴美「どしたの?浮かない顔して」
愛「・・・・・・結局、これ取るのに中学までかかった・・・・・・小学生のころに取っときたかったのに~!」
瞳「あー、前言ってた私立の推薦だっけ?」
愛「そうよ!」
琴美「まあまあ、ダメだったものはしょうがないじゃん。その代わりに今回取ったわけだしさ」
愛「そうなんだけど、そうなんだけど~」
瞳「これでスポーツ推薦はほぼ確約されたわけだけど・・・・・・ぶっちゃけなんでそこまでこだわってんの?」
愛「・・・・・・幼馴染が、いるから・・・」
琴美「なになに、もしかってコイバナ的な話!?あっ、まって。お菓子持ってくるから!」
瞳「今学校だから落ち着いて」
愛「・・・・・・あっ!ち、違うからね!?別に惚れた腫れただのそういう話じゃなくて・・・!」
愛「お、幼馴染って言ったってほとんどが女子だし―――」
瞳「一部は男子っと」
愛「ち、ちが、ちがく、ないけど、もう!この話は終わり!やめやめ!」
琴美「むふふふふ、初心ですなーばあさんや」
瞳「初心ですのー、じいさんや」
琴美「私女なんだけどー?」
瞳「流れ的にこう返すべきかとー」
愛「うう~・・・・・・初心で悪かったわね・・・」
リーブラ「うふふ、香様」
香「リーブラ・・・・・・あのさぁ」
アリス「お兄ちゃーん」
香「アリスも・・・・・・さぁ」
香「他に友達いないの?リーブラは特に」
アリス「わたくし、幽霊ですので」
リーブラ「皆さん名前を覚えられなくて結局顔見知りから先の関係には進みませんよ」
香「ああ、そう・・・・・・」
アリス「まあ、こうやって人目が少ない時間を選んでるんだからいいじゃん」
香「人目が少ないんじゃなくて皆気をつかって出ていくんだよ」
リーブラ「有象無象に興味はありません」
香「言い切ったな!」
香「ていうか、アリスはいつも通りだけど、リーブラ、なんか変わったよな」
リーブラ「そうですか?」
香「うん。気にしないでいたけどなぜか様付けされてたり敬語になってたり」
リーブラ「当然の帰結ですわ」
香「だめだ、わからない」
キーンコーンカーンコーン
アリス「あ、予鈴だ」
リーブラ「では、香様、名残惜しいですが、私は一度教室に戻ります」
香「うん。じゃあ、また後で」
リーブラ「はい。それでは」スッ
アリス「あの子、次元干渉系の力持ってるからってワープ使いまくってるけど、人前で使いすぎな気がする」
香「どうせ覚えられてないからいいんじゃないかな、もう」
こうして、私たちは各々の日々を歩んでいる。まあ、一部あまり変わってないのもいるけどね。
そして私たちが、また一つに集まる時が来るんだけれど・・・・・・その話は、また別の機会に。