「・・・・・・・」
夢華「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
夢華「えっと、すみません。起きてますか?」
「・・・・・・・」
夢華「・・・・・・・どうしよう、これ」
夢華(夜食を食べたくなったからコンビニに行った帰りにこんなものを見つけてしまうとは)
夢華「脈は、ある。呼吸もしてる。つまり、生きている」
夢華「そして立派なツノと翼。そして尻尾」
夢華「・・・・・・・取れない」
夢華「これは、俗にいう悪魔というやつなのでは?」
夢華(アルコールの臭いはしない。かといって何かの薬を使っているようでもない)
夢華「・・・・・・・うーん」
―翌朝―
「ん、まぶしい・・・・・・・」
梨々愛「あ、起きたのね」
「・・・・・・・ここ、は」
梨々愛「ゆめかー、あの人起きたー」
「・・・・・・・えっと?」
ドタドタドタ
夢華「梨々愛、起きたってホント?」
梨々愛「ほんとだよー」
夢華「よかった、一晩で起きてくれて。見た目人間じゃないっぽいから放置するのもかといって家に置きっぱなしにするのもよくなかったし・・・・」
「・・・・・・・ああ、なるほど。迷惑をかけたみたいね。ごめんなさい、そしてありがとう。すぐに出て行くわ」
梨々愛「えー、朝ごはんぐらい食べていきなよー」
夢華「その恰好で外出られたら騒ぎになるし、ちょっとそういうのに詳しい先輩に話をしてみるから今日一日はここにいてくれない?」
「それは、いいのだけど・・・・・迷惑じゃないかしら」
夢華「ま、乗り掛かった舟だし。引っ張ってきたのはあたしだし、最後まで責任もって面倒見るよ」
梨々愛「りりあ的にはー、面白そうだしいいかなーって」
「それじゃあ、しばらくお世話になるわ」
夢華「あたしは六宮夢華よ」
梨々愛「りりあは六宮梨々愛。あんたは?」
「・・・・・・・名前、か。なんだったかしら。もう覚えてないわ」
夢華「ええー、記憶喪失系女子?」
「いえ、そういうわけではないの。もう何百年も呼ばれていないから」
梨々愛「何百年・・・・・・お姉ちゃん、この人電波なの?」
夢華「多分、本当の事なんだろうけどねー。ま、梨々愛は別に知らなくていいわよ」
梨々愛「えー」
(記憶喪失ということにしておいた方がよかったかしら)
夢華「えーっと、高等部の校舎に来るの久々だからどっちがどっちか・・・・・」
梨々愛「二年生はどこだろねー」
金「そこのあなたがた」
夢華「ん?」
梨々愛「はーい」
金「見かけない顔ですが、どちらさまでしょうか?私は生徒会庶務、1年の犬神金です」
夢華「あ、えーっと、中等部3年の六宮夢華です」
梨々愛「おなじく2年の梨々愛でーっす」
金「中等部の生徒・・・・・・誰かを探しているのですか?」
夢華「えっと、その・・・・・」
梨々愛「風流先輩をさがしてまーす」
金「風流、は二人いますね。二年の男子と一年の女子」
夢華「二年の男子の方です。香先輩ですよね」
金「あの人はまた女の子にちょっかいかけてるのか・・・・・・今の時間なら副会長はこっちです。案内します」
夢華「副会長?」
金「おや、ご存じありませんか?風流香先輩は高等部生徒会の副会長なのですよ」
夢華「いや、全然知りませんでした」
梨々愛「りりあもー」
金「まあ、あの人は普段から名乗りもしないし当然と言えば当然ですか。では、ついてきてください」
金「副会長、いらっしゃいますかー」
草華「あら、金ちゃん。どうしたの?」
金「副会長にお客さんです」
桜「香君なら今はリーブラさんと海野さん、あと虹香ちゃんと一緒にアーリア女学園に行ってますよ」
夢華「ええーっ!?」
梨々愛「あー、タイミング悪いなぁ」
幽「呼びだしたらすぐ戻って来ると思うけど」
夢華「いやいや、さすがにそれは申し訳ないです。・・・・でもなぁ」
愛「もしもし、リーブラ?香つれて一回戻ってきて」
夢華「え、あの、先輩?」
リーブラ「はい、戻ってきましたよ」
夢華「先輩!?」
梨々愛「え、女学園まで行ってたんじゃ?」
リーブラ「はい、ですからそこから」
梨々愛「???」
香「あっちはあっちで大体話はまとまったから、いいかなって。で、どうして夢華と梨々愛がここに?」
夢華「えっとですね、ちょっと厄介ごとというか、あたしの手に負えないことというか・・・・・」
香「黒いツノ、黒い翼、黒い尻尾・・・・・まあ悪魔って感じだね」
アリス「悪魔の諸々のパーツが黒くなるのはそこに魔力を貯めこんだりするから。ってことでツノを折って翼としっぽをもげば無力化はできるよ」
梨々愛「なるほど。暴れたらやっとくよ」
夢華「怖いこと言わないで!あんたもノるな!」
リーブラ「香様、どうなさいますか?」
香「六宮家で保護ってのは大変そうだし、一回ウチに連れて帰る?」
梨々愛「りりあでも抑え込めない?」
アリス「そういうのって物理以外でいろいろできるから」
日輪「危なくないの?そんなあからさまに怪しいヤツ、私は反対よ」
香「なにかあったら対処できるのもウチじゃないか。なんだかんだ大体が戦闘民族だし」
夢華「暴れたりはしない、と思うんだけどなぁ」
梨々愛「ふつーに朝ごはん食べてたもんね」
幽「香くん、私もいっしょに行くわ。とりあえず相手の事を読んでみる」
香「じゃあ、お願いできるかな」
草華「安全性でいえばリーブラの家が一番よね」
リーブラ「そうね、私なら相手が何者であろうと対処できるし、コスモスケイオスも死なないし」
アクエリアス「あの、私の安全は」
草華「リーブラ一人で見張るというのも大変よね。言い出しっぺの私も一緒に見張るわ」
リーブラ「よろしく」
アクエリアス「あの、私・・・・・」
アリス「まあ、危ない奴と決まったわけじゃないんだし、最悪双子連れてこっちに避難してきたら?」
アクエリアス「今日はよろしくね、香」
香「アクアは日輪と同じ部屋だからね」
日輪「結界貼っとくわ」
香「おじゃましまーす」
幽「おじゃまするわね」
夢華「こっちです、先輩」
香「はーい。さてさて、鬼が出るか蛇が出るか」
「・・・・・誰?」
夢華「この人が名前不詳の悪魔さんです」
梨々愛「もう名前を覚えてないんだって」
リーブラ「確かに、見た目は悪魔って感じですね」
幽「じゃあ記憶を」
香「んー、リーブラ?」
リーブラ「はい、なんでしょう」
香「あ、そうじゃなくて。こっちの子」
「・・・・・・・私?」
香「そうそう。君、リーブラじゃないの?」
リーブラ「・・・・・・・はい?」
夢華「え?」
梨々愛「先輩、頭おかしくなったの?」
「・・・・・・・あなた、私の名前がわかるの?」
リーブラ「あの、香様。どういうことでしょうか」
香「ちょっと待ってくれ、僕も混乱してるんだ。リーブラは確かにここにいる、だけど彼女もリーブラだ。間違いない」
香「でも、どうしてだ?双子でもこんなことになんかならないし・・・・・・・」
幽「リーブラ、二人並んで立ってみて」
リーブラ「こ、こうですか?」
「こうかしら」
夢華「あー、確かに似てるっちゃ似てる?」
幽「目の色、体格はほぼ同じ。髪の色も同じ。外見は確かに瓜二つね」
香「んー、僕のことはわかる?僕は香。風流香だ」
「・・・・・ふりゅう?その名前は、もう残ってないはず・・・・・」
「それに、こうっていうのもおかしい。香くんはもうずっと前に・・・・・」
幽「彼女は嘘をついているわけではないわ。彼女の記憶では、確かに香くんは亡くなっている」
リーブラ「香様がお亡くなりになられるなどと・・・・・・」
夢華「何百年も名前を呼ばれてないって言ってたし、寿命じゃないんですか?」
リーブラ「あなた、歳はおいくつで?」
「さあ・・・・・・数えていないわ。だけど、少なくとも700年は生きている」
リーブラ「未来の私、ということなのでしょうか。それにしては不自然な・・・・・・」
リーブラ『そういうわけでして、私と同じ存在であろう者を一時的に保護しています』
セレシア「ええ、わかったわ。危ないことだけはしないように」
リーブラ『わかりました。では切りますね』
セレシア「ええ。おやすみなさい」
セレシア「・・・・・・娘が、増えた?」
リーブラ「さて、まずは・・・・・あなたを何と呼んだらいいのでしょうか」
「さあ。もうずっと呼ばれていないから私にもわからないわ」
リーブラ「■■■■と呼ぶのも・・・・・あら?」
「・・・・・・やっぱり、そうなるのね」
リーブラ「えっと、私の名前はリーブラ・マギ・フィールド。そしてあなたの名前も■■■■・■■・■■■■■」
リーブラ「・・・・・・ああ、なるほど。呪いが解けていないのですね、あなたは」
「その言い草だとあなたは解けているようだけれど」
リーブラ「ええ、もちろん」
「・・・・・そういえば、香くんも私のことを名前で呼んでいた。もしかして、解呪のトリガーは彼だったの?」
リーブラ「・・・・・・わかりませんね。あなたが未来の私だというのなら、香様に対する愛と情報があまりにもなさすぎる」
「あなたの方がよくわからないわ。どうしてただの友達を様付けで呼んでいるのか」
リーブラ「それは――」
ピンポーン
リーブラ「あら・・・・アクアー!出てちょうだいー!」
「・・・・・・アクア?アクアがいるの?」
リーブラ「ええ。あなたにもいるでしょう?それともまさか、アクアもコスモスもケイオスもいないというのですか?」
「いえ、そもそもどうしてこの年代に香くんが生きているのかというのも疑問だわ」
リーブラ「情報の照合が必要なようですね。近いうちにリズさんのところまで出向きますか」
ガチャ
コスモス「おねえさまー、おきゃくさんですー」
ケイオス「おねえさまー、おとまりですー」
リーブラ「泊まり?・・・・・・あ、そういえばそんな話だったわね」
アクエリアス「姉さん、草華が来たけどこの部屋でいいの?」
リーブラ「ええ、ここでい」
「草華ちゃん!?」
コスモス「わぴゃっ!?」
ケイオス「すにゃっ!?」
アクエリアス「急に大きい声を出さないでよ。コスモスとケイオスがびっくりするでしょ」
「コスモスに、ケイオス?この子たちが?それに、草華ちゃんも?」
草華「リーブラ、どうしたの?なんか大声で呼ばれたけど」
「!!!!!!!」
リーブラ「やけに草華に反応するのね」
「草華ちゃん、草華ちゃん、草華ちゃん!」
草華「わっ、わっ。ど、どうしたの?え、ていうかこの子、■■■■よね?」
リーブラ「香様から聞いたの?」
草華「いや、抱きしめた感触が一緒」
アクエリアス「あの、姉さん。今どういう状況なの?コスモスケイオス連れて向かいの家に避難した方がいいの?」
コスモス「おねえさまはおにいさまのところにいきたいだけですね」
ケイオス「そうかさん!わたしも、わたしも!」
「ああ、ケイオス、ケイオスが話してる・・・・・。コスモスと一緒に・・・・・・」
リーブラ「私にとってはいつものこと、なんですけどね」
―翌日―
香「リーブラ、どう?リーブラの様子は・・・・・・なんだこの日本語」
リーブラ「大丈夫です香様。なにもおかしくありません。それで、あの子のことですが・・・・・・」
「zzz」
リーブラ「このようにぐっすりと」
草華「あ、香くん、リーブラ、来た!あの、この子を起こして欲しいんだけど」
香「すっごい抱きつかれてるね。何したの?」
草華「あの、それはいいから、早く」
リーブラ「彼女、なにやら草華に強い執着があるようでして」
草華「漏れちゃうから!早く!」
リーブラ「はいはい。私のベッドで漏らされても困るからどかしてあげるわ」
香(リーブラって草華に対してはちょっと意地悪というか、遠慮のなさを感じるな)
リーブラ「この子だけ二次元化っと」
草華「よし!」
リーブラ「よほどだったみたいですね。能力まで使うとは」
香「相変わらず二人は仲がいいね」
リーブラ「まあ、否定はしませんが・・・・・・」
「ん・・・・・草華ちゃん、草華ちゃん?」
リーブラ「あら、おきましたね」
「草華ちゃん、草華ちゃんはどこ?だめ、だめ・・・・・わたしのそばをはなれないで・・・・・」
リーブラ「草華は今お手洗いに行っています」
「だめ、だめ・・・・・・・もういなくならないで・・・・・・草華ちゃん、草華ちゃん・・・・・・」
リーブラ「寝ぼけているのでしょうか、錯乱している様子で」
香「んー、ちょっとアレやるか」
リーブラ「アレ、とは?」
香「すぅー・・・・・・リーブラ、落ち着くんだ。草華は戻って来る、だから落ち着くんだ」
「草華ちゃん・・・・・・ちゃんと、戻って来る・・・・・?」
香「うん、ちゃんと戻って来るよ。ゆっくり深呼吸して、目を覚ますんだ」
「ん・・・・・・ここ、は・・・・・・」
リーブラ「なるほど、紗菜さんやマリンさんのアレですか」
香「ちょっとかじった程度だから、軽い暗示ぐらいにしか使えないけどね」
スッ
「ごめんなさい、取り乱しちゃって」
リーブラ「自力で元に戻った・・・・・・本当に私なのですね」
「私も、それで確信したわ。あなたは私、私はあなた」
香「あ、そういえば能力見ればわかるんだった」
香「この悪魔っぽい翼とか、尻尾とか、リーブラってここまで立派なもの生やせたっけ?」
リーブラ「無理ですね。私の吸血鬼化ではもっとコンパクトに収まっています」
「・・・・・・これは、完全に魔物化した代償だから」
草華「おまたせー。間に合ってよかったー。あ、起きたんだね。おはよー」
「おはよう、草華ちゃん」
香「おはよう。それでだけど、人化の魔法って使える?」
「いいえ、無理よ。教わる相手がいなかったから」
リーブラ「完全吸血鬼化、となると元々は私と同じ吸血鬼混じりの人間だったということですね。私なんかはそもそもとして人化の魔法を身につける必要がありませんので、覚えなかったのですが・・・・・・」
香「アリスは?」
アリス「アリスちゃんも人化の必要ないから使えないよー。むしろ足す方なら得意なんだけど」
「アリス、随分と小さいのね」
アリス「余計なお世話だよ」
香「となると、移動は夜までむずかしいのか?」
リーブラ「カバンに潜ませていいのならそうしますが」
「どこに連れて行く気なの?」
香「僕のバイト先。昨日リズさんには話は通してあるから、昼過ぎには行きたいんだけど」
ケイオス「それでしたら、わたしののうりょくをつかいますか?」
「ケイオス?ケイオスにも、能力が?」
リーブラ「この子は混沌を支配する能力です。まさか、知らないのですか?」
「知らないも何も、私の知っているケイオスはそんな力は持っていないわ。そもそも、こんなに小さくないし髪の色ももっと黄色いし」
草華「んー、となると、どこか根本から違う世界から来た、とかなのかな?」
リーブラ「あるいは大きな分岐点があったとか。・・・・・・香様のいない世界など想像したくもありませんが」
「姿を完全に別のものに・・・・・・これが、ケイオスの力なのね」
ケイオス「です!」
コスモス「もとにもどすときはわたしがやります!」
「コスモスも・・・・・・あなたたちも、あそこに行ったの?」
リーブラ「この子たちが5歳の時に、気が付いたら行っていたんですよ。髪の色が抜けているのはいたずらしてオキシドールを頭から被ったから」
アクエリアス「その状態のときに『呪い』で不老不死になったのよ、この子たち」
「不老不死・・・・・・」
リーブラ「だから5歳のころから見た目が変化していないんですよ、この二人」
「それでこんなに小さいのね」
コスモス「いざとなればかみさまをひっこぬけばいいとおもってます」
ケイオス「れにさんがひっこぬいてくれます」
「そんなことできるの?」
香「まあね。礼丹はなんかよくわからないけど特殊なんだよ」
礼丹「おのぞみでしたらあなたからも抜いて差し上げますが?」
「・・・・・・私は、いいわ。やめておく」
リーブラ「では行ってきますから留守をおねがいね」
ケイオス「はい!」
コスモス「わかりました!」
しろ「おまかせください!」
アクエリアス「不安なんだけど」
リーブラ「まあ、いざとなったらすぐに帰れるし」
冠光「さてさて、調べさせてもらったことなんだけど・・・・・・みんな、ショックを受けないでね」
香「僕が死んでることはわかってますが」
草華「私も死んでるみたいですね」
アクエリアス「私も」
リーブラ「私はこれですし」
冠光「意外と淡白ね、みんな」
「リズさん、あなたも能力をもっていたのね」
冠光「ええ。私の能力は情報を解析する能力。改ざんもできなくはないけど、やらないわ」
香「それで、このリーブラはどうしてここにきたのかとかってわかりました?」
冠光「結論から言うと、この子は飛ばされてここに来たのよ。アリスに」
アリス「え、私?」
「アリスが、どうして?」
冠光「さあね。私にわかるのはあなたに入っている情報だけだから。それで、この子のいた世界はたくさんの人が死んだり、ひどい目にあったりしている」
冠光「香くんは確かその左腕、熊にやられたのよね?」
香「はい・・・・・・思い出すと腕が痛んできた気がする。ないのに」
アクエリアス「大丈夫?冷やす?」
リーブラ「幻肢痛ですね。すぐに治療いたします」
冠光「それで、この子の世界では香くんがクマに襲われた時点で死んでいるのよ」
香「それで、愛も?」
冠光「いいえ、愛ちゃんは逃げた先が崖で、草で足元が見えなかったから気付かずに転落死」
冠光「アクアちゃんは車に轢かれての事故死、草華ちゃんは・・・・・・死因は不明ね」
「草華ちゃんはなにも言わずにいなくなっちゃったから・・・・・・でも、アイツに殺されたのだけは確か」
香「アイツ?」
「ええ。私たちの街を襲った殺人鬼。その名は――」
ガチャ
射美奈「ごめんくださーい、リーリアさんいますかー?」
「!!!!!!!!!」
冠光「今日リーリアは外出してるわよ」
射美奈「うー、じゃあこの瞬間接着剤でくっついた赤美の指どうしよう・・・・・・」
「殺人鬼・・・・・・!この世界ではまだ生きていたのね・・・・・・・!!」
射美奈「へ?」
香「待つんだ、リーブラ。彼女はもう」
「被害が増えないうちに始末してやる!!!!」
射美奈「へっ!?ちょ、ちょっと!?」
リーブラ「はいストップです」ガシッ
「!?」
(腕を握られただけなのに、身体が全く動かない!?)
リーブラ「あなたの世界ではどうだったか知りませんが、この世界では彼女はすでに香様のお力で更生しています。人を殺した経験なんかありませんよ」
射美奈「え?え?今何が起こってるの?私大丈夫なの?」
「こいつが、更生?そんなことするタマじゃないでしょう!こいつのせいで、叔母様も、ケイオスも、草華ちゃんも!」
香「そういえば射美奈は僕がボコって説教したんだっけ?」
射美奈「うん。思いっきり腹パンされた。チタンの左手で」
草華「んー、そっか。あそこで香くんが止めてくれたから射美奈ちゃんは今元気に生徒会長やってるけど、香くんがいなかったらあのまま暴走してたんだ」
リーブラ「そもそも、私がいながら射美奈さん程度に遅れを取るはずがないでしょう。あなたも同じ私なんだから」
「何を言っているの。そんなことできるはずがないじゃない」
冠光「あ、この子元ひきこもりよ」
リーブラ「・・・・・・はい?」
リーブラ「そうですか。つまりあなたはあのあと外界に出ることができず、ずっと部屋に引きこもってなにもしていなかったと」
「あなたはひきこもらなかった私なのね」
アリス「お兄ちゃんがいないとリーブラってここまでダメ人間になるんだね」
草華「しょうがないよ。だって誰もリーブラの名前がわからないんだよ?名前が書けないし登録もできないから公共的なものが大体使えないし」
「一応、マギ・フィールド学園を卒業はしたけれどね。お情けで」
射美奈「とりあえずまあ、なんというか、別次元の私がご迷惑をおかけしました」
「いえ、私も頭に血が上ってしまっていたわ。ごめんなさい」
香「あのとき僕が死ななかったのは愛のおかげだから、分岐点はあそこか」
リーブラ「愛ちゃんが逃げるか一緒に残るかでここまで影響が及んだんですね。逃げずに残ってくれた愛ちゃんには後でお菓子をあげましょう」
「愛ちゃん・・・・・・私も、会いたいわ」
香「今日空いてるかな。ちょっと聞いてみるか」
愛「やっほー、別世界からリーブラがもう一人来たんだって?」
アリス「その説明で理解してくれる愛には感服するよ」
愛「だってあれでしょ、リーブラって次元を移動できるんでしょ?それくらいできても不思議じゃないし」
リーブラ「私の次元移動はそういうものではないのだけど・・・・・・」
「ああ、愛ちゃん・・・・・・そう、そうだったわ。私たちはいつも、この6人で一緒だった」
草華「毎日遊びまわったよね。公園に街に海に山に林に」
アクエリアス「みんなでプールにいったり、姉さんがコーヒーを炒ったりしてた」
香「リーブラの態度がまだフランクだったころか。今でも戻していいんだよ?」
リーブラ「そのような恐れ多いことできませんわ。私、リーブラ・マギ・フィールドは全てをあなたに捧げる忠実なる僕ですから」
香「普通に幼馴染だってば」
草華「リーブラはこうして一線をおいておかないと我慢できなくなっちゃうから」
アクエリアス「うわ、姉さんけだもの」
アリス「少なくともアクアが言えることじゃないよ」
愛「あんた今月何回下着盗んだのよ」
アクエリアス「盗んでない。借りてるだけ。満足したら返してる」
香「毎回でろっでろなんだけど」
リーブラ「折檻いたしましょうか?」
香「次ダメになったらよろしく」
アクエリアス「つまり、次は新しいのに替えればいいのね」
リーブラ「アクア、今日の夕飯はニンジンのグラッセね」
アクエリアス「ごめんなさい反省してます」
「あなた、まだニンジンが苦手なの?」
アクエリアス「しかたないじゃない、苦手なものは苦手なんだから」
「・・・・・・みんな、変わってるようで変わってないのね。こんな平和な世界だと、それもそうか」
草華「変わる要素がないからねー」
「あなたは、幸せなのね」
リーブラ「ええ、そうですよ」
アクエリアス「そっちの姉さんは、聞いてる限りじゃ散々な人生だったのね」
「ええ。やりなおせるならやりなおしたいくらい」
ロック「おっと、そんなこと言うなよな、長女二号」
リーブラ「あら、お父様。お帰りなさい。でも、今日は帰ってくる予定ありましたっけ?」
ロック「娘が増えたって聞いたから急いで帰ってきたんだよ。ああ、そうだな。見てわかる、お前は俺の娘だ」
「おとう、さん?」
セレシア「ただいま、お母さんもいるわよ」
「ひっ!」
セレシア「あら?」
リーブラ「彼女、母親が一家心中を図って殺されかけたんです」
セレシア「何やってるのよ、別世界の私・・・・・・」
「い、いえ、おかあさんは、ノイローゼになって、アクアが死んで鬱になって、ケイオスが死んで完全に錯乱していただけですので、あなたは大丈夫・・・・・ですよね?」
セレシア「一時期ノイローゼにはなりかけたけど今は大丈夫よ」
ロック「ん?俺は?」
リーブラ「彼女をかばって刺されて亡くなったそうです。同時に、娘を守るために余力を振り絞ってお母様を絞め殺したと聞いています」
セレシア「別世界の私がご迷惑をおかけしました」
ロック「いやいや、多分俺もどこかしら現実から逃げたかったところがあったんだと思う。だから、お前の変化に気付けなかったんだろう」
ケイオス「いまならかえりうちです!」シュッシュッ
コスモス「やられるまえにやってやります!」シュッシュッ
アクエリアス「シャドーボクシングしてるけどあんたらのパンチは全くと言っていいほど痛くないからね」
「・・・・・・ふふ。家族って、いいな」
ロック「んで、だ。どうだ、長女二号。この後の行先とかあんのか?」
「えっ?」
ロック「俺は事情については詳しく知らんが、おまえが突然この世界に来て路頭に迷ってるっていうなら助けてやりたい」
セレシア「端的に言うと、あなたさえよければここで一緒に暮らさないかしら」
「私が・・・・・・?」
ロック「住んでた世界が違おうとも、俺たちの娘であることには変わりない。だから、お前次第だ」
「・・・・・・・・・・・・」
リーブラ「ま、今日のところは泊ってくださいな。今から寝床を探すのも大変でしょう」
「・・・・・・ええ、わかりました。お世話になります」
ロック「しかしあれだな!娘が増えるってやっぱいいな!」
セレシア「ふふ、まだ増やす?」
アクエリアス「ここで盛るな」
しろ「アクア殿がそれを言いますか」
「あの、この方は?」
リーブラ「うちで飼っているペットのようなものです」
しろ「ペット!?」
ケイオス「おて!」
しろ「いやいや、しませんから」
コスモス「よくわからないしろいひとです。おむかいさんのおともだちだそうです」
「香くんたちの?」
アクエリアス「正確には香に憑りついている?影女のクロの知り合いらしいわ」
「私はその影女を見たことないからよくわからないけれど、まあそういうことなのね」
リーブラ「香様がお亡くなりになられているとなると、クロちゃんも助からなかったのでしょうね。嘆かわしいことです」
―後日―
夢華「あ、風流先輩」
香「こんにちは。夢華、菫」
菫「どうも、ご無沙汰してます」
夢華「あの、あの人ってあのあとどうなりました?」
香「ああ、マギ・フィールド家に居候って形になったみたいだ。帰るかどうかはしばらくとどまってから考えるってさ」
夢華「そうですか。なんとかなったみたいでよかったです」
香「見つけれくれた夢華にはなにかしないとな。今日放課後って空いてる?菫も」
夢華「えっ!?あ、空いてます!すっごい暇です!」
菫「私も一応空いてますけど、いいんですか?私は何もしてませんけど」
香「ついでだからいいんだよ。梨々愛もつれてどこかご飯でも食べに行こう」
夢華「はい、是非!」
香「おしゃれなレストランと焼肉と回らないお寿司とどれがいい?」
夢華「ええっ!?」
菫「先輩、それってお金は・・・・・・」
香「もちろん僕が、って言いたいところだけどリーブラが出すことになってるんだ。別世界とはいえ自分が世話になったからそのお礼にって」
菫「マギ・フィールド先輩ってことは、すごいレストランになりそうですね。当日予約で大丈夫なんですか?」
リーブラ「あんまり大声では言えませんがマネーパワーでなんとかなりますよ」
夢華「わわっ!?い、いつのまに!?」
リーブラ「香様にお聞きしたとは思いますが、正式にお誘いをと思いまして。どうでしょうか、私の用意できる最上級のレストランにご招待いたしますが」
菫(これを逃すと一生行けないような場所に行く気がする)
夢華(正直、気になる!)
リーブラ「ふふ、顔がすごいことになってますよ」
香「ってことで16時ごろに更衣室の前に来てくれ。梨々愛にも言っておいてくれる?」
夢華「は、はい!わかりました!」
梨々愛「更衣室前来たはいいんだけどさ、なんでここなの?」
夢華「さあ?風流先輩のことだからきっと考えがあるのよ」
梨々愛「夢華は先輩に夢見すぎじゃない?」
菫「確かにあの人はノリと勢いで行動することも多いけど、こと約束事となるとそうはないから安心していいと思う」
梨々愛「菫先輩もずいぶんと信頼してるんだね」
菫「ま、1年は同じ部活の後輩だったわけだし、一応命の恩人だし」
梨々愛「ふーん」
香「おまたせ、三人とも」
菫「ひゃっ!?せ、先輩、今の聞いてましたか!?」
香「何を?」
菫「あ、わかってないならいいです。掘り返すつもりはありません」
アリス「ってことで三名様ごあんなーい!鏡の世界へゴー!」
夢華「えっ?」
夢華「あ、あれ?ここ、学校じゃない?」
アリス「詳しくは言わないけど、どこでもドア的なあれで移動したと思ってくれれば」
梨々愛「へー、アリスってちんまいのにすごいことできるのね」
アリス「ちんまいとは失礼な。栄養失調で身長が伸びずにそのまま死んだだけだよ」
梨々愛「お、お菓子いる?今度パフェとか食べる?」
アリス「なんでみんなすぐにアリスちゃんにものを食べさせようとするのか」
テトラ「アリスの境遇を憐れんでいるからに決まっているだろう」
アリス「わかってるけどさー、アリスちゃん的にはさらっと流して欲しいのが本音なんだけどなー」
菫「それで、ここは?」
香「服をレンタルしてくれるお店だよ」
アリス「ってことであとはよろしく!」
テトラ「ああ。ウチの店でも特別上等のものを貸し出そうじゃないか!ムム、採寸を!」
ムム「まっかせろー!」
夢華「ひゃっ!?」
梨々愛「みゃっ!?」
菫「きゃっ!」
ムム「うんうん、ニケー!178番と45番、726番持って来てー!」
ニケ「りょうかーい。ってことでステラさん、ちょっと待ってね」
ステラ「あ、はい。大丈夫です」
菫「あ、ステラ」
夢華「本当だ」
梨々愛「やっほー」
ステラ「あれ、菫先輩?と、六宮姉妹に、先輩も!?なんで!?」
菫「そっちこそなんでここにいるのよ」
香「ステラは玖美が紹介して以来ここの常連さんなんだ。そしてこっちはドレスコードを満たすような服を借りに来た」
夢華「ど、ドレスコードって、あの伝説の!?」
梨々愛「すごい・・・・・・ドラマでしか聞いたことないやつだ!」
ステラ「あー、そんなとこ行くんですか?マナーとか厳しいとこだったらめんどくさそう・・・・・・」
菫「その口ぶりだと・・・・・・ああ、そういえばステラの家は普通にリッチだったわね」
ステラ「普通にリッチとは」
ニケ「お待たせしました。お客様方、こちらのフィッティングルームへどうぞ」
夢華「あ、はい」
夢華「な、なにこのドレス・・・・・・なんていうか、本当にテレビの中でしか見たことないものを自分が着てるだなんて」
梨々愛「ゆ、夢華、どうしよう。裾踏んで破れたりとかしないよね?」
菫「社交ダンスでもこんなの着たことないわ・・・・・・」
ステラ「うわー、この生地とかすご・・・・・・これ、1着8桁ぐらいいきますか?」
テトラ「さて、どれくらいだと思う?貴嬢の審美眼を見てみたい」
ステラ「生地と織り方、んで色合いと見て・・・・・・んー、2、いや、3400!」
テトラ「ほう、惜しいな。3200だ」
ステラ「あー!はずしたー!」
菫「え、えっと、これ1着でさんぜんにひゃくまん?」
梨々愛「あわわわわわわ、そ、そんなの借りるお金は・・・・・・」
テトラ「ああ、大丈夫だ。代金はすでにもらっている」
夢華「飲み物こぼしたりしないように気をつけないと・・・・・・き、緊張してきた・・・・・・」
アリス「お兄ちゃんはどうするの?」
香「おばあちゃんが前に作ってくれたのがあるからそれを着るよ」
アリス「ってことで私たちの分はいらないからその手に持った服をしまいなさい」
テトラ「ちっ、アリスに着せるつもりで用意した服が無駄になった」
アリス「身内に腕のいい職人がいるからねー。そりゃそっちを頼るよ」
リーブラ「皆様、本日はお集まりいただき誠にありがとうございます。当人に代わりまして、私リーブラ・マギ・フィールドからお礼を申し上げます」
草華「代わりましてというか、同一人物だよね」
リーブラ「そこ、うるさい。それでは堅苦しい挨拶は抜きにして、どうぞ食事をお楽しみください」
梨々愛「夢華、夢華!やばいよ!なんかやばくてやばいよ!」
夢華「梨々愛、落ち着いて。日本語になってないわ。まずは食べましょう、ええ」
香「個室だからテーブルマナーとかも気にしなくていいよ」
菫「こんな高そうなお店の個室なんて、いったいいくらぐらい・・・・・・」
愛「値段聞いたら料理が喉を通らなくなるわよ」
菫「そ、そんなに?」
アリス「まあ菫のお小遣いのうん千倍とは言っとこうかな」
リーブラ「2人とも、あまり脅かさないの。水田さん、気にせず食べてくださいね。皆さんの口に合うように味付けはしてもらっていますから」
菫「注文まで付けて・・・・・・!?」
草華「この店がそもそもリーブラのだからそこまで気にしなくても」
梨々愛「あわわわわわわわわ、私たち今まですごい失礼な態度とったりしてなかったかな?」
夢華「マギ・フィールド先輩っていったい・・・・・・」
リーブラ「こういうこともあろうかと念のため買っておいただけです」
幽「はい、香くん。あーん」
香「あーん」
草華「戦慄してる三人をそっちのけで向こうはイチャイチャしてますね」
愛「あの図太さは正直見習いたいわ」
幽「図太いんじゃなくて、もったいないだけよ。折角おいしい料理なんだから味わって食べないと勿体ないじゃない」
香「あと、僕らは割とこういうの食べなれてるって言うのもある」
愛「そういやあんた年3ぐらいででっかい城に行ってたわね。あそこもすごかった」
アリス「オーラムに行った時もこんな感じだしね」
梨々愛「今まで食べた中で一番おいしかったものは?」
香「上海が作った炊き込みご飯。今のところアレを超えた料理はない」
梨々愛「さすが料亭の娘の料理」
リーブラ「彼女の料理の腕は天才的ですからね。悔しいですけれど、私にあの味は出せません」
香「リーブラは得意料理が違うじゃないか。量が作れる中華がメインだろ」
幽「私は洋食がメインだけど、2人には敵わないわね」
草華「私は料理はそこそこにお菓子ばっかり作ってる気がするなー」
夢華「・・・・・・べ、ベーコンエッグなら」
菫「納豆ご飯ならつくれます」
梨々愛「玉子かけご飯なら!」
愛「こいつらに張り合おうとするのが間違いよ」
アリス「そうは言っても愛も普通に料理できるし普通においしいじゃん」
愛「あんたは奇妙に料理できて奇妙においしいのよね」
リーブラ「アリスちゃんの味も真似できないもののひとつね。おいしいのはおいしいのだけれど言葉にできないような味なのが・・・・・・」
夢華「そういえば、肝心の本人はどうしたんですか?」
リーブラ「叔母様達の晩餐会に呼ばれました。そちらには妹たちと一緒に向かわせましたのでなんとかなるでしょう。あの子たちはちゃんとやってくれる子たちです」
香「完全に保護者目線だね。まあ、普段から面倒見てるしそれもそうなるか」
リーブラ「私は長女で、あの子たちは妹ですから。面倒を見るのは当然のことですし、あの子たちの成長を喜ぶのも姉の務めであると思っています」
香「それを当たり前だって言えることが偉いんだよ。自分の事も、自分以外の事もこなすのは半端な労力じゃできないはずだ。いつもお疲れ様、リーブラ」
リーブラ「あぁ・・・・・・そのような勿体ないお言葉、身に余る思いでございます。ありがとうございます、香様」
草華「でもあんまり気を貼りすぎてちゃだめだからね?私も手伝えることとかは手伝うから」
リーブラ「草華は草華で家の手伝いとか生徒会の仕事とかも忙しいでしょ。申し出はありがたいけど、そっちはそっちのことがあるんだからあまり気に留めなくていいわ」
愛「んー、やっぱりリーブラって草華に対してはこう、すっごいフランクよね」
幽「遠慮がない感じがあるわよね。同年代以上に対して敬語を使わないのは草華だけ」
菫「仲がいいんですね、お二人とも」
草華「なんだかんだ腐れ縁だからねー」
リーブラ「たしかに、気兼ねなくという意味では草華が一番話しやすいわね」
梨々愛「せんぱーい、あーんしてー」
香「ごめん、今忙しいから無理」
アリス「あーん」
クロ「・・・・・・」
梨々愛「りりあも入れてくれるだけでいいからー!」
夢華「梨々愛、風流先輩の迷惑になるでしょ。そのあたりにしておきなさい」
梨々愛「あっ、じゃありりあじゃなくて夢華にやってあげてー」
夢華「ちょっ、何言ってるのよ!?先輩、冗談です、冗談なんで!」
香「いいよー」
夢華「ええっ!?」
香「はい、口開けて」
梨々愛「あーん」
夢華「え、えっと、えっと、あ、あーん」
リーブラ「幽さん、香様の両手は塞がっているようなので香様の分はおねがいしますね」
幽「リーブラがやればいいじゃない」
リーブラ「身長的に悲しい構図になるんです」
草華「じゃあ私が抱っこしてあげようか?」
リーブラ「身長だけ寄越しなさい」
草華「やだ」
愛「んー、向こうの様子が気になる・・・・・・アクアに電話してみるか」
アクエリアス「もしもし、愛?どうしたの?」
愛『いや、そっちの様子が気になって。どんな感じ?』
アクエリアス「どんな感じと言われてもねぇ」
セラフィム「いえーい!リーブラちゃん、のんでるー!?」
「ええ、いただいてますよ」
ブロディ「リーブラと飲める日がこんなに早く来るなんてな!」
「叔父様とお酒を飲むのは久しぶりで、懐かしいです」
セレシア「あなた、リーブラが、リーブラがこんなに大きく・・・・・」
ロック「大丈夫だ、全然変わってない」
コスモス「ツノー、ツノー」
ケイオス「しっぽー、しっぽー」
「コスモス、ケイオス、やめてちょうだい」
オルレアン「つばさー。つばさー」
「オルレアン、あなたいい年して恥ずかしくないの?」
オルレアン「お姉様と戯れることに恥じらいなどありませんわ」
世界「オルレアン様はこういう方ですので」
「・・・・・・そう、だったかしら。私の記憶にあるオルレアンはもっと、なんというか、余裕が無かったから」
アクエリアス「まあ、思い思いに過ごしてるわよ、とだけ」
愛『はいはーい。あんたはこっち来なくてよかったの?』
アクエリアス「私がこっちにこないと新・姉さんが寂しがっちゃうから。姉さんはこっちに来るの嫌がったし」
愛『メイドがびびるんだっけー?』
アクエリアス「そうそう。姉さんはいちいち細かいから。・・・・・・宴会の場で無粋なことを言いはしないだろうけど」
愛『ま、普段の行いってやつよね。それじゃあそろそろ切るわ』
アクエリアス「了解」
愛『また今度遊びに行きましょうねー』
アクエリアス「暇だったらね。それじゃ」
愛『ばいばーい』
―後日―
菫「ってことだったのよ」
ステラ「へー。それであんなドレスを」
玖美「ドレスって動きにくいからあんまり着たくないんだよねー」
ステラ「わかるわー。たしかにキレイではあるからコスプレにはいいんだけど、着て何かするってなると途端に面倒になるのよね」
菫「あんたらマジでそんなのばっかり着てるのね」
玖美「ばっかりじゃないよ、たまにたまに」
ステラ「何かしらのパーティーとかじゃないと着ませんよ、さすがに」
菫「たまにでも着る機会があるってだけで・・・・・・まあいいか」
玖美「こう見えても玖美ちゃんやんごとなき家系です」
ステラ「私もなんだかんだやんごとなき家系です」
菫「先輩方もそうだったし、この部活で一般家庭生まれなの私ぐらいなんじゃないのかしら?」
玖美「月美も割とお嬢様だし、ポーラは貴族の家系だし」
ステラ「菫先輩の上って、そっか、だいたい風流家か」
菫「部員募集のビラに「一般家庭の方大歓迎」とか書いておくべきだったかしら」
玖美「いっつも思うけどこの部活のビラに対する信頼はなんなんだろうね」
ステラ「伝統らしいわよ」
セレシア「というわけで、ここが今日からあなたの部屋です」
「・・・・・・わざわざありがとうございます」
ロック「おっと、敬語は無しだ。世界が違っても、家族なんだからな」
「・・・・・・わかったわ。ありがとう、お父さん、お母さん」
セレシア「うふふ、いいのよ。・・・・・・こっちのリーブラもこれぐらい素直だったらいいのに」
ロック「俺はまだあいつに敬語をやめさせる計画を諦めてねぇぞ。これからだ!」
「ああ、そういえばそうだったわね。こっちの私は」
セレシア「自分からメイド教育を受けてマナーを完璧にしてくれたのはいいんだけれど、完璧すぎてその姿勢を崩さないのが問題なのよね」
ロック「アクアたちを除いたら草華ちゃんぐらいだよな、リーブラが気兼ねなく接するのは」
セレシア「同い年、っていうのもあるんでしょうけどね」
「ああ、やっぱり草華ちゃんなのね。あの子はいつだって私の味方だった」
ロック「こっちじゃ味方、ってよりライバルって感じが強いな。事あるごとに何かしら競ってるし」
「え?どうして?」
セレシア「お互いがお互いに負けたくないんだって。リーブラの部屋には草華と競ったことの記録が全部残ってるわよ」
ロック「あとは香くんの一日の行動記録とか」
セレシア「・・・・・・やはり香くんにリーブラをアクアごともらってもらうしかないんじゃないかしら?」
ロック「幽ちゃんはそれで納得してるのに当の本人たちが拒否だからな」
「香くんはいったいなにがどうなってそうなったの・・・・・・」
リーブラ「香様のそれは生来のものです。香様の誠実さと人情深さが特性と噛み合って相手がその場で一番望む行動を無意識にとってしまうのです。その結果が現状であると言えるでしょう」
セレシア「り、リーブラ!?お、お帰りなさい。突然ね、本当に」
リーブラ「このままだと部屋が荒らされかねないので急いで戻ってきました」
ロック「いやいや、流石に荒らしはしないって。ちゃんと元に戻す」
リーブラ「本当に見られたくないものは警告書が張ってあり、正当な手順を踏まずに開けたら催涙ガスが発射される箱に入れているのでその注意をと」
セレシア「どこでそんなものを手に入れたのよ。コスモスケイオスが触ったら・・・・・・問題ないわね」
リーブラ「そもそもあの二人は私の部屋を荒らしません。無論、アクアやしろちゃんも。私の部屋で何かをした形跡があればどうなるかを知っていますから」
セレシア「ちゃんとお姉ちゃんをしてくれてるし、学校の成績も文句言うこと何もないし、普段の生活態度も全くの問題なしなんだけどね・・・・・・」
ロック「親としては心配になるんだよな。このままで大丈夫なのかって」
「って言ってるからあなた、香くんを自分のものにしなさいよ。できるでしょ」
リーブラ「私自身が香様のものですので所有権の逆転などありえません。あと、私の心配をする暇があればアクアやケイオスの問題行為をなんとかしてくださいな」
セレシア「うっ、耳が痛い・・・・・・任せきりだし・・・・・・」
ロック「あいつら何回言っても聞かないんだよな・・・・・・一応言ってはいるんだけど・・・・・・」
「力づくで言うことを聞かせるのは?」
リーブラ「その後の関係が険悪になるじゃないですか。ダメですよ、そんなこと。私はDVをする気はありません」
「倫理観がぶっ飛んでるかと思ったら、割とそうでもないのね」
リーブラ「当然です。私は香様のもの、すなわち私になにか悪評があれば香様に影響を及ぼす可能性があります。そうならないように努める義務がありますから」
「やっぱりぶっ飛んでたわ」
セレシア「一緒に協力してこっちのリーブラをまともな道へ連れて行ってほしいわ」
ロック「本人だからこそわかることもあるだろうしな」
「まぁ、構いませんが・・・・・・」
リーブラ「さて、そろそろ香様が物理の勉強を始める時間ですので私は一度この場を離れますね。夕飯までには帰ってまいります」
「・・・・・・ん?私なのに、物理とかできるの?」
リーブラ「そりゃそうでしょう。私理系ですし」
セレシア「あなたは文理関係なしにほとんどの学問を独学で見につけてるじゃないの」
リーブラ「人にものを教える時はその人間の3倍は理解してなくてはならないと言います。香様がいつなんどきどんなことを求めようとも私は応えねばなりませんので」
ロック「まーじで俺より賢いんだよな、今のリーブラ。俺より資産あるし」
セレシア「社長令嬢が社長よりお金持ちっていう状況はなかなかないわよね」
「あの、私自分のことがわからなくなってきたんだけど」
リーブラ「暇なら私の部屋に参考書がたくさんありますから読んでも構いませんよ。それでは今度こそ、失礼いたします」ヒュッ
セレシア「行っちゃった・・・・・・。まあ、あの子も言ってた通り、暇だったら何かを始めるのもいいかもしれないわね」
「あ、いや、私勉強をすると頭が痛くなるので」
ロック「・・・・・・本当に同一人物なのかわからなくなってきたな」
セレシア「しかし、便宜上でも名前が無いというのはやりにくいわね」
「・・・・・・好きに呼んでくれたらいい。わかりさえすれば」
アクエリアス「じゃあ、誰でもわかるように呼べばいいわけね」
ロック「おっ、アクア。なんかいい案があるのか?」
アクエリアス「単純よ。名前が無いのなら名前が無いという意味の名前で呼べばいい。だから、姉さん。これからあなたのことは『ナナシ』って呼ぶから」
ナナシ「・・・・・・ナナシ、ね。名無しの私には良い名前だわ。本来の名前じゃないからこれだと呪いが効かないみたいだし」
セレシア「それじゃあよろしく、ナナシ」
ロック「これから頼むぜ。主にチビたちの面倒とかな、ナナシ」
ナナシ「ええ。今後ともよろしく、お父さん、お母さん、アクア。そしてここにはいないコスモスケイオスと・・・・・・リーブラも」