生命情報学勉強会

@宮崎大学

生命情報学は生命科学研究にとって非常に重要な役割を果たすようになっています。宮崎大学では生命科学の研究が盛んに行われていますが、生命情報学に触れる機会が非常に少ない状況です。そこで、本勉強会では生命情報学に関する研究をしている研究者を招待し、生命情報学の先端研究を学ぶことを目的としています。

ご講演していただける研究者がいらっしゃいましたら、ページ一番下のメールアドレスまでご一報ください。

日時:2021211日()10~1

場所:図書館3階 o-baco2

招待講演者: 岩切 淳一 先生 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 助教

講演タイトル: 大規模配列データによって加速する生命科学研究の光と影

概要:生命科学研究における計測技術は、十数年の間にデータ産出性能が著しく向上している。特に顕著な塩基配列決定技術では、スループットが約100万倍向上し、同じ量のデータを産出するためのコストは10万分の1、必要な時間も十数年から数日と格段に短縮された。このような大量のデータが日々生み出される現代では、生物学的な現象を大量のデータに基づいて理解しようとする流れが主流になりつつあり、生命科学研究のあり方が大きく変わろうとしている。本講演では、このような大量の配列データにより駆動する生物学を概説すると共に、大量データの影で見落とされがちな現象にも焦点を当てる。


世話人:井上(工学部)

第7回

日時:2023年9月29日(金)17:00~18:30

場所:農学部講義棟3階 L302

招待講演者: 中川 草 先生 (東海大学 医学部 分子生命科学 准教授)

講演タイトル: ⼤規模塩基配列を⽤いたRNAウイ ルス関連研究

概要:DNAシークエンス技術の発展により、様々なRNAウイルスが多様な環境、そして生物のゲノムの中にも存在することが大規模塩基配列のデータ解析によって明らかになってきた。特に、哺乳類ゲノムには様々なウイルスに由来する遺伝子が存在し、胎盤や皮膚の発生やウイルス感染を防ぐなどの機能を果たすことがわかってきた。特に、胎盤の形成と維持には、レトロウイルスの膜タンパク質(env)由来の遺伝子が関与することが明らかになった。その中でもenvに由来する遺伝子は膜融合能を持ち、多核細胞である合胞体性栄養膜細胞の形成に寄与するが、その由来が系統ごとに大きく異なっていることがわかってきた。我々はその進化的な現象を説明するために「バトンパス仮説」を提唱し、envに由来する配列が哺乳類のゲノムに多く存在するために、系統ごとに置き換わりが生じているのではないかと考えた。実際に、胎盤を持たない単孔類にも膜融合をもつレトロウイルスの膜タンパク質由来の配列があることを発見し、そのような機能性配列が多く存在することを示した。  また、様々な環境に由来するRNAシークエンスデータを解析し、新規RNAウイルスの同定を行っている。本研究を加速させるため、RNAウイルスに特有のRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)のデータベースの開発を進めている(NeoRdRp, https://github.com/shoichisakaguchi/NeoRdRp)。様々なRNAウイルスのRdRpを配列類似度に基づいてクラスタリングし、クラスターごとに隠れマルコフモデル(HMM)プロファイルを構築した。このHMMプロファイルを活用して様々な生物由来のRNA-seqデータからRNAウイルスの同定ができる。また、RNAウイルス感染症に関しても、大規模塩基配列を活用した比較ゲノム解析研究を進めている。エボラウイルス、そして新型コロナウイルスに関して、その性状を決める突然変異について明らかにしてきた。  本講演では大規模塩基配列を活用して解析した様々なRNAウイルスに関する研究を紹介し、今後のRNAウイルス研究の方向性について議論したい。


世話人:新村(農学部)

第6回

日時:2022年3月9日(水)16:00~17:30

場所:Zoom

参加登録(学内限定): ここをクリックしてください (3月9日(水) 12:00まで)

招待講演者: 間木 重行 先生 (東邦大学 医学部 生理学講座 細胞生理学分野 助教)

講演タイトル: がん薬物療法の耐性・心機能低下克服に挑む生命情報学研究

概要:がんの薬物療法には、薬物耐性および正常細胞に対する毒性という克服すべき2つの大きな課題が存在する。我々は、数理モデルや機械学習技術を利用して上記課題の克服に挑む基礎医学研究に取り組んでいる。本講演では、抗がん薬耐性および副作用を対象とした生命情報学研究について、関連する生命現象と情報解析手法の両側面から概説する。加えて、薬物経時投与がん細胞の一細胞解析やiPS細胞由来心筋細胞の拍動を解析する深層学習モデルの開発等の我々の研究例を紹介する。 


アンケートにご協力いただきまして、ありがとうございました。

世話人:井上(工学部)

日時:2021年11日()17:00~18:30

場所:Zoom

参加登録(学内限定): ここをクリックしてください (112日() 12:00まで)

招待講演者: 尾崎 遼 先生 (筑波大学 医学医療系 准教授/人工知能科学センター 研究員

講演タイトル: 転写因子結合と1細胞遺伝子発現に潜む多様性の解析

概要:転写制御は様々な生命機能に不可欠である。ハイスループットシーケンシングの登場により、転写制御の様々なモダリティのゲノムワイドな計測が可能になった。我々は、これらのシーケンシングデータを解析する情報解析手法を開発することで、転写制御の多様性を明らかにすることを目指している。本講演では、2つのトピックについて、紹介する。

1つ目のトピックは、転写因子結合配列の多様性である。1つの転写因子はゲノム上の様々な塩基配列に結合するが、既存のposition weight matrix では、その多様性を十分に表現することはできなかった。そこで、転写因子ChIP-seqデータから転写因子結合配列を網羅的に検出する手法 MOCCS を開発した。この手法によって見えてきた転写因子結合の多様性について議論する。

2つ目のトピックは、1細胞RNAシーケンシングデータに潜む細胞間不均一性である。通常の1細胞RNA-seqでは遺伝子発現量の他に read coverage というRNAがゲノム 上の各ポジションからどのくらい転写されたかのシグナル情報がある。従来のデータ解析では、リードカバレッジの情報は無視されていた。そこで、リードカバレッジの細胞間不均一性を可視化する手法 MIllefy を開発した。Millefy に見出された、胚性幹細胞やがん細胞集団におけるリードカバレッジの変動について議論する。

当日は、解析手法の背景から紹介しつつ、今後の進むべき方向性について展望する。 


アンケートにご協力いただきまして、ありがとうございました。

世話人:井上(工学部)

第4回

日時:2021年9月13日(月)17:00~18:30

場所:Zoom

参加登録(学内限定): ここをクリックしてください (9月13日(月) 12:00まで)

招待講演者:柚木 克之 先生 (理化学研究所 生命医科学研究センター 統合細胞システム研究チーム チームリーダー)

講演タイトル: トランスオミクス:細胞の反応速度論的描像に基づく統合オミクス解析

概要:代謝の恒常性は、ゲノム(DNA)、トランスクリプトーム(RNA)、プロテオーム(タンパク質)、メタボローム(代謝物質)など、複数のオミクス階層にまたがる生化学ネットワークによって実現されている。トランスオミクスとはこれらのオミクス階層から得られた大規模データを用いて階層間・階層内をつなぐ生化学ネットワークを再構築し、分子間の因果関係を網羅的に同定する方法論である[1,2]。本セミナーでは、大規模データを統合する際に前提となる細胞の反応速度論的描像や、実験デザイン上の留意点、数理モデル解析等について論じるとともに実際の研究例を紹介する[3-6]。さらに、トランスオミクスにアクセス可能な研究者人口を増やし分野のさらなる発展につながる方策と考えられる解析プロセスの自動化並びにソフトウェア開発の現状についても触れる。

文献:
[1]     柚木, 月刊「細胞」, 51(14):701-705, 2019.
[2]     Yugi et al., Curr. Opin. Syst. Biol. 15:109-120, 2019.
[3]     Yugi et al., Cell Rep. 8, 1171-1183, 2014.
[4]     †Krycer, †Yugi et al., Cell Rep. 21:3536-3547, 2017.
[5]     †Kawata, †Hatano, †Yugi et al., iScience 7:212-229, 2018 (Cover Article).
[6]   †Kokaji, T., †Hatano, A., †Ito, Y., Yugi et al., Sci. Signal. 13(660):eaaz1236, 2020.


アンケートにご協力いただきまして、ありがとうございました。 

世話人:井上(工学部)

第3回

日時:2021年5月26日(水)17:00~18:30

場所:Zoom

参加登録(学内限定): ここをクリックしてください (5月26日(水) 12:00まで)

招待講演者:浜田道昭 先生 (早稲田大学 理工学術院 教授,  産業技術総合研究所,日本医科大学)(2021年日本バイオインフォマティクス学会年会 大会長)

講演タイトル: RNA情報学の最前線

概要:従来のセントラルドグマにおいては,RNAはタンパク質に翻訳されるための中間産物であり,生命科学研究はタンパク質の機能解明が中心課題であった.しかしながら近年,タンパク質には翻訳されないが細胞内で様々な活性を有する「ノンコーディングRNA」が多数発見され,RNA研究が分子生物学における重要な研究フィールドとなっている.またRNAは,次世代の薬であるRNAアプタマーとしても注目を集めている.本講演では,このようなRNAを情報科学的に解析・デザインするためのバイオインフォマティクス技術とその応用について,当研究室の研究を中心に話をする予定である.


アンケートにご協力いただきまして、ありがとうございました。

世話人:井上(工学部)

第2回

日時:2020年11月17日(火)17:00~18:30

場所:Zoom   (医学部講義実習棟3階303教室から配信)

参加登録(学内限定): ここをクリックしてください (11月17日(火) 12:00まで)

招待講演者:新村 芳人 先生 (東京大学大学院 農学生命科学研究科 特任准教授)

講演タイトル: 哺乳類嗅覚受容体遺伝子の進化ーゲノムと環境の相互作用ー

概要:匂いの受容は、匂い分子が鼻腔の嗅上皮にある嗅覚受容体に結合することにより始まる。嗅覚受容体遺伝子は哺乳類最大の遺伝子ファミリーを形成しており、その数はヒトで約400個、マウスでは約千個に及ぶ。哺乳類は多様な環境に適応しており、それぞれの生物のもつ嗅覚受容体遺伝子のレパートリーは、各生物の生活環境に応じて進化してきた。本講演では、数百種の哺乳類のゲノム解析を通じて明らかになってきた嗅覚系の進化についてお話しする。 


今回は生命情報学に関するセミナーを企画された先端的医学獣医学特論の大学院特別セミナーを 配信させて頂きます。

世話人:明石(農学部)

第1回

日時:2020年9月10日(木) 16:50~18:05

場所:Zoom

参加登録 (学内限定): ここをクリックしてください  (9月10日(木) 12:00まで)

プログラム:

  16:50-17:00 挨拶 森下 和広 先生、井上 健太郎 先生 

  17:00-18:00 山西 芳裕 先生(九州工業大学大学院 教授)

         講演タイトル「AIによるデータ駆動型研究が拓く創薬と医療」

  18:00-18:05 挨拶 明石 良 先生

招待講演者:山西 芳裕 先生(九州工業大学 大学院情報工学研究院 生命化学情報工学研究系  教授)(2020年日本バイオインフォマティクス学会年会 大会長)

講演タイトル: AIによるデータ駆動型研究が拓く創薬と医療

概要: 近年の生命医科学では、多様なオミックス情報が得られるようになり、生体内分子の網羅的な解析が可能になった。同時に、膨大な数の化合物や薬物に関する化学構造情報や生理活性情報も蓄積されている。このようなビッグデータ時代において、機械学習(AI基盤技術)の重要性はますます高まってきており、医薬ビッグデータから創薬や医療に繋げる役割が求められている。

 本研究では、化合物に関する化学構造・表現型・遺伝子発現・標的分子情報、疾患に関する病因遺伝子・環境因子・臨床情報などの医薬ビッグデータを融合解析し、医薬品候補化合物の標的分子、薬効、副作用を大規模に予測する機械学習の手法の開発を行った。当日は、既存薬の新しい適応可能疾患を同定するドラッグリポジショニング、パスウェイ制御に基づく創薬、細胞直接変換リプログラミング、医薬品の分子構造設計への応用例をいくつか紹介する。 


アンケートにご協力いただきまして、ありがとうございました。

世話人:井上(工学部)