Department of Orthodontics, Tokyo Dental College
29 December, 2021 (No.14)
作成・編集:有泉
『ハイブリッドの美久会!』
コロナ禍もようやく落ち着きを見せ、穏やかな年末年始を迎えられることを期待しております。皆様にはどのような1年だったでしょうか。また、12月初めには美久会総会にご参加いただき、ありがとうございます。初めてのハイブリッド、Zoom開催でしたが、アカウント数では74の参加があり、医局員を含めると100名近くにご参集いただいたと思います。しかしながら、時間の制約等で参加できなかった方もいると思いますので、いくつかご報告したいと思います。
美久会は新たな体制となり、令和3年度美久会役員として、会長は私 末石研二が務めます。以下、副会長 吉野成史、小倉 公、専務 土屋朋未、総務 石山智香子、会計 小坂竜也、そして延島ひろみ、福本恵吾、吉井賢一郎、根津 崇、飯塚美穂の各先生にお願いしております。また、監事は新倉良一、茂木悦子先生にお願いし、総会で承認を得ました。大学からは西井 康教授、石井武展、有泉 大医局長に参加いただき、顧問として山口秀晴先生をお迎えしました。
昨年と本年はコロナ禍にて、活動らしい活動ができませんでしたが、来年はオンラインへの対応を行い、美久会講演会、ホームページの作成・公開、医局講演会等の連携を図っていきたいと考えています。そのため、IT委員会を立ち上げ、会員各位と時空を超えて繋がる会へとできればと思います。IT委員会は福増一浩委員長、根岸史郎副委員長、白石 圭書記、海老澤朋宏の各委員と美久会役員よりの末石会長、土屋幹事で構成しています。
来年初頭に、日本矯正歯科学会の理事、評議員の選出もあります。ここ数年と同様、今回も2部会は無選挙となりました。関係者では、大内仁守、石山智香子、小倉 公、平久忠輝、根津 崇、山崎康博、吉井賢一郎、永田順也、村木一規の各先生が立候補され、選出される見込みです。二宮 隆先生も推薦されるようです。日本矯正歯科学会を見守るのはもちろんですが、さらに西井 康教授および延島ひろみ理事を支えるべく、美久会会員のご協力を仰ぎながら活動していただけることを期待しております。そのほか、学会関連では専門医制度の動向が関心を集めておりますが、依然として難産のようです。大内仁守先生から総会で詳しい報告がありました。
大学での研修課程の展開、千葉歯科医療センターの新規開設、学会活動など西井 康教授から多くの報告がありました。
忘年会で楽しく顔を突き合わせてというわけにはいきませんでしたが、今後も美久会が皆様の交流の機会を与えられればと、そして皆様の美久会と講座へのご協力、御援助を賜りたく、お願いをして挨拶に変えたいと思います。
変貌する社会構造
これからの矯正が目指すもの
「矯正」で検索してみました
トップに現れたのは「目立たない,最短5ヶ月で治る」「月4300円からの部分矯正」
次にはこんなのもありました「部分矯正専門医が在籍」「激安モニター割引」
そして極めつけは「歯並びの再矯正は当院にお任せください」ここ迄来ると笑ってしまいます.でも、これがSNSで拡散している今の実情なのです.この広告主は、かつて歯科医師国家試験で苦楽を共にしたはずの友人に他ならないのです.
患者さんが、どの矯正装置を使うかを指定する、患者さんが治療期間や治療費を決める、Dr不在でも矯正治療は受けられる. これがインターネット上で拡散している社会常識なのでしょうか? これを求める患者さんにとっても、これを提供する医療側にとっても、捌け口のない迷路に向かってしまったように思われます.
厚生労働省医政局長 官報第347号 令和3年9月27日告示
『、、専門医機構専門医認定を受けた医師又は歯科医師について広告する場合にあっては、当該医師又は歯科医師が専門医機構専門医認定を受けた専門性と同一の基本的な診療領域に該当する専門性について学会専門医認定を受けた旨を広告することはできないこととする』この告示が発令されたのは,この秋のことでした.
この改訂により、医療や専門医のあり方について、これまでの学会主導から専門医機構がその舵取りを担うこととなりました.変貌する社会構造の中で、医療の質を問わない治療の蔓延は、歯科医療の社会的な信用を失い、矯正歯科医療の専門性をも脅かす事にもなりかねないところまで来てしまいました.
新しい材料や華やかな先端デジタルテクノロジーに目を奪われるあまり、本来考えねばならない生物学的な背景や診断といった思考過程が蔑ろにされ、診断と治療行為が分離され、ややもすると矯正学の本質からかけ離れた方向に向おうとしているように思われます。
ここ数年では、歯科医師国家試験を終わったばかりの新卒のDrに矯正専門のクリニック開設の斡旋をするコンサルタント会社まで現れました.そしてこのことは現在もなお隆盛の中にあり、これから矯正を志す若い先生にとって、どこに身を委ねたらいいものか、大きな混乱を招く結果となっているように思われます.
教室で指導にあたられる先生や研修生の皆さんは、成長発育の本をひも解いたり、学生の時に終わったはずの解剖の教科書を読みなおしたり、はたまた海外の文献を眠い目をこすりながら訳しては医局の皆に説明したり、セファロ分析をやってはこの症例ってどうなんだろうと議論を交わしたり、夜中までタイポドント実習に汗をかき一喜一憂した仲間たちです.
より生物学的な思考でひも解き、臨床に結びつけようとする地道な努力の足跡は決して派手さはないながら、これこそが当矯正学講座が永年培ってきた矯正学に捧げる伝統であったと思います.時代と世代を超えた普遍性のある考え方を次世代に向って継承してゆくことが、当矯正学講座の使命ではないでしょうか。
臨床指導医(旧専門医)審査を通して
一昨年から続く新型コロナ感染症の終息は未だ見えない状況ですが、美久会の先生方におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。
私は今年の日本矯正歯科学会の臨床指導医審査に挑戦し、合格する事ができました。
日本矯正歯科学会の認定医、臨床指導医(旧専門医)資格の取得は、東京歯科大学の矯正学講座における研修課程を経て矯正医となってからの1つの目標でした。
今日の矯正医としての私があるのは、東京歯科大学矯正学講座の多くの素晴らしい先生、先輩方の指導のおかげであると改めて感じております。医局を離れてみて感じるのは、本講座の研修課程の質の高さといかに恵まれた環境であったかということです。
本講座で学べたことは、私にとって大きな財産であり、患者の方々との向き合い方や、診断の重要性など私自身の矯正治療に対する考え方の基礎となっています。
研修生時代に貴重な時間を割き、指導してくださった指導医の先生方、諸先輩方をはじめ、お世話になった開業医の先生方には、改めて心より感謝申し上げます。
今回の審査を通して、10症例と数は少ないものの改めて振り返ることで、診断力の大切さ、適切なプランニングの重要性など多くの反省点が見え、まだまだ未熟であることを痛感させられました。審査のための準備には、かなりの時間と労力を要するものでしたが、改めて1つ1つの症例と時間をかけて向き合うことで自分を見つめなおす良い機会となり、さらなる成長のために有意義な時間であったと感じています。
私は現在、父の開業する医院で日々臨床に携わっています。数年前から口腔内スキャナーを導入し、従来のワイヤー型矯正治療に加えてマウスピース型矯正装置による治療を行うようになり、当院でも矯正治療の変遷期を迎えています。口腔内スキャナーの活用により、今まで以上に3次元的に歯牙の位置、移動を視覚化できるようになり、成人症例ではほぼ全症例でデジタルセットアップを用いた診断を行うようになりました。今後増々、デジタルテクノロジー、さらにはAIの進歩により矯正治療、我々矯正医のあり方も大きく変わってくるかもしれません。アナログ人間の私としては、押し寄せる波にすでに乗り遅れている感じはありますが、必死にしがみ付いていきたいと思います。
また日々臨床に携わる中、現在の急速なマウスピース型矯正装置の普及などに伴い、手軽に治療が行えることから、矯正治療自体が一般歯科の先生は勿論のこと、患者さんにも身近なものとなり、矯正治療の需要自体は増えているように感じています。ただその一方でトラブルの増加や矯正治療の専門性が失われつつあるという危機感も同時に覚えています。
患者の皆様方には矯正治療の専門性、難しさついては、まだまだ認知されていない部分が多々あり、そういった中で日本矯正歯科学会における認定医や、臨床指導医といった資格は矯正治療の専門性、技術を維持、担保する為に必要であると思いますし、患者の皆様が適切な治療を受けるための1つの指標となるべきものだと思います。
現在は残念ながら広告規制により、大々的に矯正専門医であることを謳うことはできないのが現状ですが、矯正治療の専門性を維持、確立するためにも認定医をはじめ臨床指導医も、これからの若い世代の矯正医にとって1つの目標となるような資格であり続けて欲しいと思っています。
また、患者の皆様が正しい情報を得られ、適切な治療が受けられるようにするための広告規制に関しても、矯正治療を行うすべての歯科医院で規制され、本当の意味で患者の方々のためになる方向に今後進んでいくことを願っています。
私も一矯正医として、これからも初心を忘れずに一人ひとりの患者さんと向き合いながら、ここ地元の鎌倉から微力ではありますが、矯正治療の素晴らしさや専門性について、正しい情報をこれから矯正治療の受けようと思っている方々に発信できればと思っております。
このコロナ禍において、オンライン上で人と人が繋がることが当たり前の時代が到来していますが、便利な一方で何か寂しさも感じています。時には飲みにケーションも必要ですね。美久会忘年会等がまた通常通りに開催され、先生方とお会いできる日を楽しみにしております。
最後になりますが、1日も早い新型コロナウイルス感染症の終息と、皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。
認定医審査を受けて
私は、昨年度の日本矯正歯科学会認定医審査を受け、矯正歯科医として大きな一歩を踏み出すことができました。これもひとえに東京歯科大学歯科矯正学講座での先生方のご指導のおかげだと感謝しております。
昨年度の認定医審査は、コロナウイルス感染の影響で、口頭試問は行われませんでした。1次書類審査の締め切りが例年よりも1ヶ月延長され、さらに学術大会がオンラインになったことを受けて2次審査が口頭試問から模型写真を含めた書類審査になりました。
学術大会での口頭試問が開催されなかったことはとても残念でしたが、書類審査がなおさら重要になることから、書類審査に一切の不備がないように同期と一緒に一生懸命取り組みました。
書類作成中は、コロナ渦で外出が制限されて、自宅に待機することが多かったのですが、その時間を利用して、認定医の症例に対して、時間をかけて取り組むことができました。そして、オンラインで同期とお互いの認定医審査症例をディスカッションし、フィードバックし合うことで矯正治療技術を高め合うことができました。
認定医審査の症例報告では、多くの症例を見返す貴重な機会となりました。
症例を見返すなかで、反省点も多く、矯正治療の難しさを再認識させられました。
矯正歯科医としての未熟さを実感することとなりましたが、この審査を通して、今後目指すべく矯正歯科医としての道筋を見つめ直すことができました。
また、症例を見返すと同時に改めて先輩方への感謝の気持ちでいっぱいになりました。
研修生の時は、医局の先生方のレクチャー、美久会の先生方のレクチャーやオフィス見学などで矯正に関わる多くのことを学ばせていただきました。
先生方が教えてくださった矯正治療技術や診断技術のおかげで、矯正歯科医としての能力を高めれたと強く思います。
この場をお借りして御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
これからは、さらに矯正歯科医としての研鑽を積み、お世話になった方々に恩返しをさせていただきたいと思います。
私は現在、地元である福岡で矯正歯科を開業しております。大学から離れて矯正治療を行うことにより、より一層、東京歯科大学歯科矯正学講座のありがたみを感じております。
近年では、マスクの影響もあり、患者様の矯正治療の関心が高まっており、福岡も例外ではないです。また、SNSの発展により、患者様の矯正に対する要求度も高まっているように感じております。私は、一人一人患者様の矯正の悩みを解決できるように、理想の矯正治療を常に追い求めていき、福岡で東京歯科大学歯科矯正学講座で学んだ矯正治療の素晴らしさを伝えていきます。
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
―美久会からのお知らせ―
■ 令和4年度美久会会費納入のお願い
前略
美久会の皆様におかれましては、ご健勝のこととお喜び申し上げます。
さて、美久会は、美久会会員である皆様にとって有益かつ魅力的な会に発展していけるよう末石新会長の元、役員一同、専心おります。また、このための活動原資は美久会会員一人一人のご支援で成り立っております。
令和3年度はコロナ禍の影響もあり、美久会の実質的活動は行われませんでした。故に今回のお願いする年会費は次年度、令和4年度の会費となっております。例年は美久会主宰講演会(6月)や忘年会(12月)における対面でのお支払いも可能となっておりますが、令和4年度の会費に関しましては指定口座へのお振込による対応とさせて頂きます。美久会のさらなる発展のため、何卒ご理解、ご協力の程お願い申し上げます。
早々
1.令和4年度美久会費: 3,000円
2.お振込口座
三菱東京UFJ銀行 神保町支店 普通 0 0 4 0 1 6 3 東京歯科大学美久会
・お振込は、医院の名称ではなく個人名でお願いいたします。
・振込用紙を持って領収書に代えさせていただきます。
・なお、振込手数料はご負担願います。
■ 逝去会員
下記の会員が逝去されました。ここに謹んで哀悼の意を表し心からご冥福をお祈り申し上げます。
令和3年9月29日 梶山 晃 先生 (享年61歳)
■ 第12回美久会講演会 延期
■ 美久会役員構成
会長 末石研二
副会長 吉野成史
副会長 小倉 公
幹事・庶務
土屋朋未
延島ひろみ
福本恵吾
吉井賢一郎
庶務 石山智香子
会計 小坂竜也
根津 崇
飯塚美穂
監事 新倉良一
監事 茂木悦子
コロナ禍2年目の変革
やっとコロナが落ち着いてきたと思った矢先、オミクロン株の出現で世界は再び不安定な状況となって参りました。本講座もコロナ禍2年目を迎え、いろいろな対策、変化に対応を迫られる1年でした。まずは、千葉歯科医療センターの始動であります。新センターでは、以前の水道橋病院のように合同医局となり、チェアー数も大幅に削減され勤務形態もフレックス制となりました。千葉歯科医療センターのスタッフが試行錯誤しなんとか現在では落ち着いてまいりました。それに伴い研修課程にとって大きな変更が強いられました。共同医局での限られたスペースでの講義と実習、そして何より22時退出時間の厳守です。数十年前「チーズはどこへ消えた」という本がベストセラーになりました。我々は空間と時間というチーズが削られてしまいました。しかしこの状況下の中で、1975年より諸先輩方のご尽力により設立された研修課程を何としても存続していく所存でございます。このため新たな時代に即した研修課程教育の規定やカリキュラムを策定しいたしました。その1つとして、原点回帰でなるべくオリジナルな考えを研修課程教育・診療に反映させようと考えております。新カリキュラムの中で外部レクチャーをしていただいております、美久会の皆様に改めて御礼を申し上げます。研究においても、大学院生希望が増え着実に実績が積み上がってきております、今後、大規模臨床研究が予定されておりますので、美久会の先生方のご協力をどうぞよろしくお願い申し上げます。日本矯正歯科学会におきましても、新しい制度、治療法など混沌とした不透明な時代に突入いたしました。その中において、日本矯正歯科学会設立100周年事業が開始されました。学会活動においても当講座の存在感を示し、国民に安心な矯正治療を提供できる体制を構築したいと存じます。
来年度は、長年講座にご尽力された先生方が退職され、また新たな変革に迫られると存じます。この波にどのように立ち向かっていくべきかを考え、美久会と講座が手を取り合い来たるべき新しい時代に対峙したいと存じます。今後とも変わらぬご指導のほどよろしくお願い申し上げます。
来年も美久会、講座そして皆様お一人お一人にとって良い年でありますよう、そして皆様の対面での笑顔が直接見れますよう、心より祈念申し上げます。
令和3年度水道橋病院矯正歯科近況報告
本年度の水道橋病院矯正歯科は、大山先生、戸嶋先生、深見先生3名の専門研修卒業とともに、新たに千葉での基本研修を終えた阿部先生、沖野先生、小野先生、小泉先生を迎え、さらに大学院4年目の佐竹先生、西村先生、水野先生、大学院3年目の大川先生、戸村先生を迎えて、コロナ禍での診療ですが活気が出てまいりました。卒業された3名の先生方も非常勤歯科医師としてご協力いただいております。歯科衛生士部でも、産休を取られていた関口主任歯科衛生士が復帰され、下川衛生士が小児歯科へ異動、新たに補綴科から斎藤衛生士が矯正歯科配属となりました。
昨年、今年と新型コロナウイルスに翻弄された毎日で、大学からは外食の禁止や現地学会参加の禁止、家族以外との会食や対面会議の禁止、各校舎間の移動自粛など、対外的な活動をかなり制限した決定があり、Webでの会議や活動に特化して対面活動を極力控え感染予防に徹底した難しい状況でした。大学における新型コロナワクチン接種状況の動向にも気を配り、幸いなことに水道橋病院矯正歯科では感染者を一人も出すことなく今年を終えることができそうです。秋頃から新規感染者収束の兆しが見られ、先日ようやく、上記の自粛や禁止が緩和されました。
しかしながら、大学病院という大きな医療機関や、大学という教育機関では、1人の感染が大きな問題を引き起こすことも考えられますので、各々の医療人もしくは医療人を目指す者としての立場をわきまえた行動が問われる状況です。オミクロン株などの変異株による第6波に備えて、医局員や学生各々が気を緩めないよう注意喚起を行っている最中です。日本人の特徴として、喉元過ぎれば..とは良く言ったもので、その時は、過剰に反応していた者も、時間の経過とともに緩くなる傾向にありますので、各々の自制を信頼しながらも羽目を外さないように、気を配っております。
ありがたいことに、マスク効果でしょうか?今年は、月平均コロナ前の2倍以上の新患をご紹介頂きまして、水道橋病院の初診相談は現実的には3〜4ヶ月待ちの状況です。せっかくご紹介頂きましたのにお時間がかかってしまい患者様にもご紹介いただいた先生にもご迷惑をおかけして申し訳ございません。医局員も、全力で拝見している現状ですがチェア稼働率も目一杯となり、再診も2ヶ月おきにしか入らない状況です。返書を書く時間もなかなか取れませんので、連携が希薄になることが心配されますので、お気づきの点がございましたら何なりとご連絡いただければと存じます。
今年一年を総括すると、この未曾有の危機的状況から、何を学び今後にどの様に生かすか?これらが問われている様でなりません。何事も連帯責任と教えられてきた世代の私としては、近年は個人の多様性の理解や、世代間の考え方の格差理解、忖度で動くことは状況は悪くならないが良くもならないこと、貢献しているつもりになっているが、実は周りの迷惑になっていないか?などなど、自身の損得だけではなく、人を思いやる気持ちの大切さなどが問われる時代になってきたのではないかと実感する日々です。何が間違いで何が正しいか?今までの常識が通用しなくなること。先行きが不透明で、将来予測が困難な状況。これを「VUCA」と呼ぶらしいですが、この時代を生き抜くには、適切な情報収集能力や、自らの頭で考える能力、そしてポータブルスキルが必要不可欠です。来年は世の中も講座も様々に変化を遂げていくことでしょう。さらに講座が発展する様に、西井教授を盛り立てて、みんなで力を合わせて頑張っていければと思います。来年も何卒よろしくお願いいたします。
千葉歯科医療センターの開院
2021年も残りわずか、親しい方々と旧交を温めたいこの時期ですが、コロナ禍で迎える2年目の年の瀬となりました。美久会の皆様、如何お過ごしでしょうか?
国内では新型コロナウィルスの感染拡大は大分落ち着きをみせており、社会経済活動も徐々に日常に戻りつつある状況です。大学の感染予防ガイドラインでも国際、国内学会の参加が許可され、4名以内なら飲酒を含む外食も可能となり、大分緩和されてきました。しかし、世界的には新型コロナウィルスは再び猛威を振るっています。さらに、新しい変異株が出現して国内でも予断を許さない状況です。このような中、我々も新しい生活様式の中で、感染予防に細心の配慮をしながら、ほぼ通常の診療体制で診療を行っています。
ご存じのように、新千葉歯科医療センターは3月1日付けで、保健所より新たな医療機関として開設許可を受け、3月6日に開院式が挙行されました。3月9日より患者を迎えて、新センターでの治療が開始されました。一方、旧千葉校舎は皆さんが見慣れた光景ががらりと変わって、基礎棟、実習棟は解体され、更地になり、千葉病院もほぼ解体が終わっています。随分と風通しが良くなりました。
医局においては、今年度研修課程47期生として新人11名を迎え入れました。大学院生を含めて50名近い大所帯で運営しております。新センタースタッフのほぼ半分は矯正歯科スタッフで占められています。お陰様で医療収入、チェア稼働率、患者数ともほぼ目標を達成でき、スタートしたばかりの新センターの医療収入に大きな貢献を果たしています。運営面では効率的な診療が行えるように平日は午後7時まで、土曜日は午後5時までの診療となり、歯科診療チェア40台を時間帯によって他科と共同で運用しています。しかし、合同医局となったことで、矯正歯科医局員一人一人の行動が目立つことが多く、学校担任の先生如く、毎日研修生にはお小言を言ってしまいます。
そして、同時に新センターでの研修教育が始まりましたが、研修生の居場所、講義室、実習室、ラボの机の確保の困難、一人当たりの配当患者数の減少、来年度の指導教員の人員削減、さらに、労基署の指導で日、祭日の出校は出来ず、平日は午後10時までに退館しなければならないなど、日曜出校、徹夜は当たり前の昔の研修課程の日常とは全く違う様相になってきました。今後はこのような不自由な環境の中、いかに研修課程教育を充実させるための知恵が絞る必要があると感じています。母校歯科矯正学講座の名声を維持、発展させるためにOB、OGの方々のご協力は必要となりますので、今後も相変わらずのご支援を頂きたいと願っております。
最後に、私事ですが、来年3月末日もって、定年退職します。皆様大変お世話になりました。大学を卒業して以来、歯科矯正学にどっぷり浸り、40年余りがアッと過ぎ去ってしまいました。矯正歯科を愛する多くの先輩、後輩に支えられ、楽しい思い出とともにここまで全うできたことに感謝しております。美久会皆様の一層のご発展を祈念しております。
開院時の新センター矯正歯科スタッフ
千葉校舎の現状(2021/12/03)
(左上)正門から管理棟入口 (右上)ローターリーから病院棟正面
(左下)基礎棟、実習棟の跡地(右下)病院裏駐車場から病院棟
新センターの診療室、医局
(左右上)矯正歯科の診療エリアBゾーン
(左下)医局の有給者エリア (右下)医局のレジデント、大学院生、研修生エリア
〈主な医局行事〉
令和2年(2020年)
12月 美久会総会・忘年会 ※中止
令和3年(2021年)
3月9日 千葉歯科医療センター 新診療所開院
3月 卒後研修課程第44期研修修了式 ※延期
4月1日 卒後研修課程第47期入局
5月8日~9日 医局旅行 ※中止
5月20日~21日 第45回日本口蓋裂学会総会・学術大会(Web開催)
6月11日~12日 第31回日本顎変形症学会総会・学術大会(ハイブリッド開催)
6月23日 卒後研修課程第43期研修修了式
6月23日 卒後研修課程第44期研修修了式 (修了パーティーは中止)
6月7日~6月30日 Suyehiro法Typodont 実習(47期)
7月12日~27日 反対咬合 Typodont 実習(47期)
7月14日 第80回 東京矯正歯科学会学術大会(Web開催)
9月11日 入局試験(オンライン)
10月1日~25日 Bioprogressive Typodont 実習 Non Extraction case(46期)
11月1日~30日 Bioprogressive Typodont 実習 Extraction case(46期)
11月3日~5日 第80回日本矯正歯科学会学術大会 & 第5回国際会議(ハイブリッド開催)
12月8日 令和3年度 美久会総会 (ハイブリッド開催、 忘年会は中止)
<学会発表>(国内主要学会)
第45回 日本口蓋裂学会
示説
小林奈菜美 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科における口唇裂・口蓋裂患者に関する40 年間の実態調査
原崎ひとみ 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科における口唇裂・口蓋裂患者の交叉咬合の部位に関する40 年患の実態調査
第31回 日本顎変形症学会
示説
都丸宏実 東京歯科大学千葉歯科医療センター歯科矯正における顎変形症患者に関する40 年の実態調査
第80回東京矯正歯科学会
一般口演
水野周平 咬筋機能回復に伴う腱-骨付着部と周囲骨の力学特性
第80回日本矯正歯科学会学術大会
【学術展示】
西村達郎 成長期における歯科矯正用アンカースクリュー周囲骨構造の解析
大川敬介 プラズマ表面処理を行った歯科矯正用アンカースクリューに側方応力を加えた際の骨反応の解析
大澤雄一郎 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科における本格矯正治療患者に関する40 年間の実態調査
飯塚美穂 保定期間における保定説明資料の効果について
優秀演題賞
佐竹 奎亮 TCDD 誘発性口蓋裂におけるケルセチンの効果
坂本 輝雄 Hemifacial macrosomia 症例に対する治療戦略
【症例展示】
大川敬介 卒後研修過程44期生による症例展示
優秀演題賞
坂本輝雄 顎裂幅の広い片側性唇顎口蓋裂患者に歯槽骨延長を行った1 例
【Academic Exhibits】
Bunpout LEKROENGSIN
‘’Condylar bone,masseter,and medial pterygoid muscle changes after orthognathic
treatment for Skeletal ClassⅡ‘’
非常勤講師 (敬称略)
今村 雅郎 野村 真弓 渡辺 洋一
大塚 淳 渡辺 和也 土屋 朋未
菅沼 與明 福本 恵吾 荒川 忠博
根岸 史郎 大塚 和華 鈴木 基
林 正樹 今井 利明 福井 健之
小林 誠 吉井 賢一郎 西村 文邦
市村 賢太郎 北總 博之 小坂 竜也
吉田 章太 東郷 聡司 小泉 儀明 根津 崇
<水道橋病院>
主任教授 西井 康
臨床教授 片田 英憲 (短期大学教学部長)
准教授 石井 武展 (講座幹事、医局長)
講 師 宮崎 晴代
立木 千恵
助 教 安村 敏彦
内山 沙姫
海老澤 朋宏
大学院生
院4 ブンポ-ト レクロエンシン 佐竹 奎亮 西村 達郎 水野 周平
院3 大川 敬介 戸村 拓真
院2 岡林 宏樹 戒田 直紀 島村 唯 下山 圭太 原 瑞紗
院1 後藤 千勝 酒井 菜緒 田上 聖章 左 原美
三宅 麗 森野 響子 山下 悠 山本 楓華
レジデント
河角 久美子 高橋 彩記子
小泉 絹子 鈴木 早苗 西村 真由子 吉沼 紗友美
非常勤歯科医師 田淵 莉奈 戸嶋 翼 戸嶋 未妃
臨床専門専修科生 松野 智美
《千葉歯科医療センター》
主任教授 西井 康
講 師 野嶋 邦彦(育成歯科系 部長)
坂本 輝雄(研3 主任)
助 教 有泉 大 (医局長、研2 主任)
森川 泰紀(副医局長、研1 主任)
飯島 由貴(研3 副主任)
臨床講師 木村 絵美子
レジデント 武笠 友里香 小出 真菜 丸山 友貴
研3(45期)
石川 ひとみ 市川 江里佳 岡林 宏樹 戒田 直紀
小林 奈菜美 島村 唯 沈 圭利 下山 圭太
高橋 諒 林 優希 原 瑞紗
研2(46期)
大澤 雄一郎 太田 健太郎 後藤 千勝 酒井 菜緒
田上 聖章 都丸 宏実 左 原美 三宅 麗
森 瑞貴 森野 響子 山下 悠 山本 楓華
研1(47期)
新井田 張 薄場 はるか 勝田 真央 小泉 洋二郎
小鹿 槙子 設樂 沙月 多田 優 蓮見 英哲
福田 悠 星 沙弥佳 星野 綾香
非常勤歯科医師 副島 亜貴 小幡 智子
臨床専門専修科生
石川 宗理 草場 岳 吉野 史人
亀井 宏和 永井 航平 松本 高明
卒後教育委員会・研修機関検討委員会 報告
2018年4月から卒後教育委員会および研修機関検討委員会の委員を拝命し、今年で4年目になります。
卒後教育委員会は、基本研修及び臨床研修施設が適切に運営されているか、そして臨床研修施設の新規申請を審査することにあります。研修機関には指導医、臨床指導医および研修医の氏名、新患数の実態報告が義務づけられております。現在、基本研修機関が31施設、臨床研修機関が236施設あり、本講座OB・OGの33施設が臨床研修機関になっており、認定医取得を目指す研修医の指導にあたって頂いております。
研修機関検討委員会は、大会初日の生涯研修セミナーを開催することです。今年は、『ゲノム医療は矯正歯科治療にどのように貢献することができるのか?』というテーマで、黒坂寛先生(大阪大学歯学部付属病院矯正歯科 講師)と山口徹太郎先生(神奈川歯科大学歯学部歯科矯正学講座 教授)のお二人の先生にとても素晴らしいご講演をしていただきました。また、このセミナーを受講すると5ポイントを得ることができます。 2022年に行われます大阪大会では、「矯正歯科医院における事業継承の課題(仮題)」というテーマの予定です。皆さま奮ってご参加くださいますようお願い申し上げます。
日本矯正歯科学会
倫理・裁定委員会報告
本年度も日本矯正歯科学会認定医更新者のホームページ(以後、HP)倫理審査をさせていただきました(現在進行中です)。多くの先生方が、初回では問題があり修正依頼をさせていただいております。審査には莫大な時間を使い、一人一人のHPを隅々まで、ブログの中まで目を通します(決して暇なわけではありません)。それにも関わらず、理解いただけない会員もおられることは、非常に残念に思います。改めて、何故HP倫理審査が必要であるのか下記に記載いたします。美久会の皆様におかれましては、日頃から各地方学会や大会のJOSフォーラムなどで詳細を説明しておりますので、ご理解いただいているかと思いますが、ご友人などで間違った解釈をされていらっしゃられる先生がおられましたら、何卒適切なご説明をお願いいたします。
1. 日本矯正歯科学会がHPを取り締まっているわけではない。
厚生労働省の「医療広告ガイドライン」を遵守する様に各学会に依頼が来ており、それに基づき日本矯正歯科学会でも一度に全ての会員を審査することはできないため認定医や臨床指導医、指導医、基本研修機関の新規申請や更新の際に審査を条件としており、会員の皆様に注意喚起を行っております。一部の会員の皆様は、修正に関してご不満な様でSNS等で学会の誹謗中傷をしておられますが、「医療広告ガイドライン」は学会ではなく、「医療法」に定められており、日本の「法律遵守」が必要不可欠であることをご理解ください。また、年度により指摘事項も変わりますが、これは厚生労働省とすり合わせの上、内容が緩和されたり厳しくなったりするものであり、基準が日々刻々と変化していることをご理解ください。
2. 各団体のフィロソフィーを蔑ろにしているわけではない。
厚生労働省の「医療広告ガイドライン」では記載できる事項は限定されております。患者様が一般的な治療を受けることができる歯科医院を検索する際に最低限の情報を得るために用いるものがHPや広告であり、広告はご自身の哲学や他の歯科医院との比較優良を示す場ではないということが理解されていない会員がおられます。ご自身の考え方や手法を否定しているわけではなく、HPや中刷り、看板などの「広告」に記載してはいけない内容を記載している会員には、ご指摘させていただいております。また、独自の名称を用いた治療法は記載不可ですので注意が必要です(ブライダル矯正、お受験矯正、プチ矯正、ビューティースマイル矯正etc)。
3. 認定医や臨床指導医および指導医の記載を制限しているわけではない。
厚生労働省の「医療広告ガイドライン」では、そもそも「認定医や臨床指導医および指導医」などの専門医制度などについての記載は一部の団体を除いて許されておりません。そこで、日本矯正歯科学会では、なるべく会員の皆様が記載できる様に、「限定解除要件」を厚生労働省と相談の上設定し、少なくとも経歴に記載できる様にいたしました。従いまして、記載する場合には「限定解除要件」を満たしていただければ問題ございません。この場合に、あくまで認定医は経歴に記載できる程度であり、認定医等を持たない歯科医師との差別化を図る記載はガイドライン上できませんので注意が必要です(県内唯一の認定医、数%しかいない認定医の一人、認定医の院長が治療にあたりますetc)。
4. マウスピース矯正を認めないわけではない。
マウスピース矯正という呼称は記載できません。「マウスピース型矯正装置(クリアアライナー )」「カスタムメイドマウスピース型矯正装置(インビザライン)」など、一般名称での記載は可能です。その中で、患者様の誘引性が高い内容は記載できません。また、薬事承認を受けていないものに関して、明記しなければなりません(ex.インビザラインは現在、薬事承認を受けておりませんので特別な記載が必要になります)。多くの訴訟事例があることから消費者庁からの注意喚起もあり、誇大広告と見なされる広告は記載できません。誇大広告の一例として(見えない矯正, ダイヤモンドプロバイダー、数千症例の治療経験があるetc)。
5. 治療前後の写真を掲載することはできないわけではない。
治療前後の治療写真掲載はそもそも「医療広告ガイドライン」では、掲載不可です。しかしながら、患者様に適切な医療を提供している情報としての症例写真を掲載したい場合も鑑みて、「限定解除要件」を満たせば掲載可能にしていただいております。症例写真を用いる場合には、必ず「限定解除要件」を満たして下さい。
6. 「無料相談」記載してはいけないわけではない。
無料相談を実施している医療機関も多く存在しております。しかしながら、「無料相談」が患者を誘引するために実施されている場合には、問題となります。従いまして、料金表(掲載義務になっております)に記載することは、掲載可能です。その際に、「無料」であることを誇張したり、メインページに掲載すると誇大広告として理解されますので注意が必要です(色を変えたり、大きくしたりetc)。ただし、「無料検査」は、必ずしもその病院で患者様が治療を希望するとは限らず、無駄なX線被曝などの健康被害の問題などから掲載不可です。
7. 会員以外も取り締まればいいのでは?会員をやめようか?
日本矯正歯科学会に加入されていない矯正歯科医院に対して、問題があるHPがあることも存じ上げておりますが、日本矯正歯科学会から指摘することは法的立場からもできません。この場合には、「医療広告機関ネットパトロール:http://iryoukoukoku-patroll.com」に積極的に情報提供して下さい。
あくまで、悪いHPが法律違反であるわけですので、厚生労働省の管轄委託機関に連絡することが、我々の適切な医療を守る為になります。時折、HPの修正が面倒だからと認定医の掲載部分を取り下げたり、一時的にHPを閉鎖して審査後に元に戻したり、名前を削除して掲載しているHPもございますが、HPには最低記載条件があり、指摘事項や修正記録の保管をしておりますので、問題が生じた場合に日本矯正歯科学会は助けることができません。法律違反などで問題が生じた場合にはご自身で対処なさられて下さい。
ネットパトロールに通達することは、同族嫌悪と考える先生方や他医院の告げ口を良しとしない風潮がございますが、これこそが日本の歯科矯正学の発展を妨げ、我々の医療が美容と同種とされてしまう可能性につながる可能性がございます。是非とも、日本の歯科矯正学の発展のために自浄作用があることを国に認めてもらう必要がございます。
最後に
現在の歯科矯正界は、様々な新しい治療法が編み出されておりますが、医療としてのエビデンスに乏しいものも多く含まれ、臨床ファーストで進んでいるものが多く認められます。これらは良く言えばイノベーションとして大きな経済効果を生みますが、その裏では「誇大広告」を信じたばかりに適切な治療を受けられずひどい治療と多額の金銭を支払い被害にあっている患者様も多く問題になっております。矯正歯科治療は「美容」であり「医療ではない」という意見も出てきております。そこで、生まれたのが厚生労働省の「医療広告ガイドライン」であるわけです。
美久会の皆様におかれましては、これらの背景を充分に理解していただき、患者様に「良質な医療」を提供できる日本の歯科矯正界を牽引する「リーダー」となっていただければと思います。矯正歯科治療が「医療としての立場」を保持できるように、矯正歯科医の「医療人としての権威」を保護していただけることを願っております。
HPについて、ご心配事があればishiit@tdc.ac.jpまでご連絡ください。
認定医委員会より
本年で認定医審査を担当させていただいて2年目になります。今年も昨年同様、コロナ禍のため残念ながら2次審査の口頭試問が実施できなかったため書類審査のみとなり、判定会議もオンラインとなりました。新規申請者数も昨年に続き減少しているとのことで、コロナ禍の影響を否めません。また更新者につきましてもさまざまな影響から更新条件を満たすことが難しい場合、特例措置が適応された場合も多くありました。
さて本年の認定医審査を終えて、報告したいこと、感じたことを記載いたします。(特に今後申請される方はぜひ読んでください)
1. セファロ分析の測定値の精度
臨床では昨今セファロ分析においてデジタルでの測定、すなわち分析ソフトなどを使用する場合が多いと思います。研修課程では基本的にアナログでの(分度器を用いた)計測で修練してきていますが、そのセファロ分析値の精度の問題が議事に挙がっています。すなわち分度器を使用した計測では0.5°刻みの計測値にならざるを得ません。しかしこのような分析値で提出しますと、最近では精度に問題ありと判断されるようになりました。これは分析ソフトを用いたセファロ分析が主流となってきているためと思われます。提出するセファロ分析表の値として、より精度高いものが求められてきています。0.1°刻みの計測値として分析ソフトを用いるのが推奨されてきています。
一方で分析ソフトを用いたトレースについては明瞭な線が描出できていれば特に問題とはされていません。しかし、分析ソフトによるトレースの重ね合わせは精度高く行えない可能性がありますので、個人的には推奨できません。
2. フォーマットの遵守について
症例レポートには決められたフォーマットがあり、さらに記載の仕方については見本がホームページにあります。これらの記録簿やトレース、重ね合わせ等の書き方については細かく従うことが重要です。若手ほどきちんと遵守していることが多く、経験年数があがるにつれて自己流、自己判断が多くなっているのが現状です。これらは意外に点数に反映されることが多いため、記載する前にきちんと確認することが重要です。
3. 記録簿の考察および全体の評価として
本講座出身の先生は優秀な方が多く、素晴らしい症例を提出してくれています。これは私も研修修了レポートの作成や評価に毎年直接携わっておりますので、そのように認識しています。しかし、残念ながら認定医試験で大変よい評価を得ている本講座出身の先生はわずかです。認定医の症例記録簿の指導をしていて気になるのは、研修レポートよりも内容の質が低いことが多く、さらに指導できるのは第1・2症例のみであること、残りの8症例は指導医の目に触れることはありません。記録簿で大事なのは診断と治療、考察の一貫性です。今一度、記録簿を読み直して客観的に評価してみてください(他の人に読んでもらうのが大変有効です。)。また、指導の先生に全症例をきちんと添削してもらってください。ぜひ、本講座の名に恥じない、質の高い記録簿作成をお願いしたいと思います。
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今年の3月、講堂跡に建てられた千葉歯科医療センターへ移転後に旧千葉病院の建物が取壊し作業に入るため、すぐに立入り禁止となりました。
残念ながら、千葉病院開院時からの患者ファイルすべてを救出することは出来ませんでしたが、医局長として、講座の財産的資料や機器が置き去りになっていないか最後に第1研究室(有給部屋)、第2研究室(大学院部屋)、第3研究室(研修生部屋)、医局、ラボを見回りしました。その時に、私が入局する前に発刊されていた「Newsletter」4年分を見つけましたので美久会会誌と合わせまして表紙のみ掲載致します。いずれ美久会HPが本格始動されましたら内容も含めUploadしたいと考えております。
さて、ここ最近の千葉の医局の変化は目紛るしいものがあります。
2020年「コロナ対策 & 新センター移転準備」
2021年「新たな環境下での研修課程」
それに引き継続き
来年度は
2022年「New style 人的・時間的制約との闘い」
だと思います。
指導者の人数と研修の時間が減ることが分かっていながら、有効な解決策を見つけられないままでいます。
無限とも言える時間があり、「寝なければいいだけのこと」でこなせていた仕事量を、決められた時間内でやらなければならない、となると
解決策は
①仕事効率を上げる
②各仕事の完成度の質を下げる
の2択しかないように思います。
矯正に初めて携わる者に①を要求することは難しく、研修として学びに来ている者を一定のレベルまで育てるには、どうしたって時間と人員が必要です。
今、研修課程で起きていることは自然と②を選ばなければやっていけないという状況になってきています。セファロトレースはしっかり描いてもらっていますが、平行模型が多少汚いくらいでは、私も怒らなくなりました。。。症例検討会がオンラインになってからは、研修生もそこまで神経質になって模型を綺麗にすることもなくなっているように思います。その反面、1つ良いこととしては、対面形式の症例検討会ではよく見かけた、緊張しすぎて有給からの質問に頭が真っ白になるという光景がなくなりました。
診療面では、19時までの診療時間になり矯正歯科の患者さんには嬉しいことだと思います。土曜日も午後の診療時間ができ、新患も増えて来ているように感じます。ここ数年は1学年の人数が増え、研修生1人あたりの新患数は減少傾向にありますが、来年度、指導者の数が減っても患者数が激減しなければそれでもまだ臨床研修の機会は担保できるかと思います。一番の懸念は研修修了してしまったら疎かになりがちな基礎的な知識を蓄える基本研修の機会が今以上に奪われてしまい、「手は動くが頭が軽い」研修生を大量生産してしまわないだろうか、ということです。若手の指導者も新しくレクチャーの準備をする時間が作り辛く頭を抱えています。
研修課程 第50期生が入局するまでのカウントダウンが始まっております(2024年です)。今年も大変でしたが、美久会の先生方のおかげを持ちまして、なんとか乗り越えられました。来年もより一層、研修課程へのお力添えをよろしくお願い致します。
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