場所をつくる旅 2024
A Journey To Make A Place 2024
前林 明次
MAEBAYASHI, Akitsugu
A Journey To Make A Place 2024
前林 明次
MAEBAYASHI, Akitsugu
《場所をつくる旅 2024》 展示風景(抜粋)
作品概要
2017年7月に岐阜県美術館において開催されたIAMAS ARTIST FILE#5『場所をつくる旅』展では、収蔵されている明治時代の洋画家、山本芳翠が描いた沖縄の海岸風景《琉球漁夫釣之図》に現在の沖縄の音響を重ねるサウンド・インスタレーション作品を制作しました。
https://www.iamas.ac.jp/af/05/
そして2017年から2024年までの間に、沖縄あるいは岐阜をめぐる旅の線はさらに延長され、あらたな「場所」が形作られようとしています。今回の制作のキーワードは「フレーム」です。鑑賞者は左右2つのスピーカーから流れるオスプレイなどの大音響とともに、5つのフレームから流れる映像とそれらの「間」、あるいは「ない」ことにされているフレームの「外」を想像することになります。
各フレームの解説
フレーム(左上段 )
明治期の日本と沖縄、そこから現在に至るまで登場した「アクター」(山本芳翠、ペリー提督、明治天皇、ジュゴン、伊藤博文、安重根、尚泰王)の肖像がゆっくりと重ねられていきます。
フレーム(左下段)
2017年2月、この旅の起点となった《琉球漁夫釣之図》(1887-1888頃、山本芳翠)を岐阜県美術館の学芸員の方2名が手際よく設営している様子。明治時代、岐阜県出身の山本芳翠は初代首相、伊藤博文に随行し琉球のスケッチや絵画を多数描き、明治天皇に献上したとされています。
フレーム(中央)
中央のディスプレイでは、作者は展示期間中に沖縄に関連するいくつかの場所を訪れ、実際にそこからライブ配信をおこないます。那覇市では「ペリー提督上陸記念碑」、2019年の火災で消失し現在再建中の首里城周辺では「守礼門」、明治時代に山本芳翠が描いた「美福門」(2019年に再建)を訪れます。また「普天間基地」、名護市「辺野古」からの配信もおこないます。
2024年11/1〜11/4の4日間、14:00から14:30まで作品の中央のディスプレイにて、沖縄各所からiPhone経由でライブ配信を行いました。
11/1 (金)ペリー提督上陸記念碑(配信終了)
11/2 (土)首里城、守礼門から美福門まで(配信終了)
11/3 (日)普天間基地(配信終了)
11/4 (月)名護市辺野古海岸(配信終了)
※上記のライブ配信以外の時間帯では、2017年当時記録された沖縄の海岸風景(嘉手納基地周辺の海岸、オスプレイが墜落した安部海岸、糸満市の人工的な浜辺等)が流れます。
フレーム(右上段)
2024年の代執行により現在も埋立が進む辺野古の海岸風景。WEB上で「辺野古」「埋め立て」のキーワードで検索された画像が次々に重ね合わされていきます。
フレーム(右下段)
現在、普天間基地に駐留する米海兵隊は名護市辺野古に移動することになっていますが、建設中の滑走路はマヨネーズのような地盤のため、いつ完成するかさえ見通しが立っていません。また、その工事とは関連づけられてはいないが、2019年には一頭のジュゴンの死骸が発見され、2024年にはサンゴの移植も中断されました。
遡れば、現在の沖縄に駐留する海兵隊は、朝鮮戦争が休戦した1950年代半ばまで岐阜県各務原市の「キャンプ岐阜」(当時の名称、現自衛隊基地)に駐留していました。当時は、米兵による民間人への傷害事件が絶えなかったと言われています。このフレームでは、民家に侵入しようとした若い海兵隊員が地元の警官に発砲された事件について語る各務原市在住の岩井稔さんのインタビュー音声を、旧中山道の発砲現場や21号線と自衛隊基地を隔てるフェンス沿いの風景に重ねています。