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本プロジェクトでは,実験動物(マウス)をモデルとして用い,分子生物学的アプローチから哺乳類の雄性生殖細胞(精子)の形成・機能を分子レベルで解明する研究に携わっていただきます.本プロジェクトにより哺乳類の雄生殖細胞に関する亜鉛シグナルの重要性が明らかにできれば,得られた知見を,希少動物や実験動物,家畜の生殖工学技術に応用することにより,『個体への高い発生能をもつ哺乳類卵・胚の体外生産法』を開発できると考えられます.また現在の技術では治療不可能なヒト不妊症の新たな治療法の開発にも応用できる可能性も秘めています.
マウス
精子,受精,発生,亜鉛,発生工学
畜産物食品は毎日のように口にしているものの,その食品をめぐる社会的な議論については十分に関心が払われているとは言い難い。しかしながら動物福祉に配慮した国際的規制は生産・流通・消費の各局面で強化されつつある。とりわけEUを中心に,法律を含む公的規制は,食品表示システム(ラベル)に示される形で確立しつつあり,食品産業のなかにはビジネスチャンスととらえる企業も少なくない。日本は一見遅れているようにみえるものの,産業界は着々と対応を進めており,最終的には消費者がそうした動物福祉対応食品を需要・受容するか否かが鍵を握っている。本研究は,文献・現地視察・小売店頭調査・消費者意識調査により,課題に迫る。
産業動物
動物福祉,平飼い卵,妊娠クレート,薬剤耐性菌,小売業,食品,価格,
動物園には、種の保存・調査研究・教育・レクリエーションの4つの役割があります。海外の動物園では、これらの役割を達成するために専門のスタッフが動物園に所属していますが、日本ではまだそのようなスタッフを備えている動物園は多くありません。そこで本プロジェクトは、埼玉県こども動物自然公園と共に以下の研究を行うことで、将来動物園で活躍できる人材の育成と科学的根拠に基づいた管理方法を提案し、動物園の発展を支えます。また、これらの研究は1年を通じて、また単年ではなく長期的に取り組みます。
①希少動物の保全を目的とした繁殖学的研究
②展示動物の福祉的飼養管理の実現を目的とした生理・行動学的研究
動物園動物(具体的な動物種は変更する可能性がありますが、プーズー、サイチョウなどを予定)
動物園、行動発現、空間利用、生理学的指標
シカは食べものとなる植物に強い影響を与えます。近年、日本ではシカが増加し、生息環境にある植物がシカに食べられて、特に林の下に生える植物が減っています。こうした植物 (例えば、野イチゴ類など)が減ると、それを食べていたクマの食性が影響を受けます。シカへの対策として人間がシカを捕獲してシカを減らすと、植物が増えてその種構成が変化します。さらに、罠でシカが捕獲されると、クマがそれを襲って食べ、クマの食性も変化します。
このように動物の食性の変化を捉えると、その動物が生息する環境の植物の変化が捉えられます。さらにその地域の動植物の相互関係が明らかになります。私達は生態系と人間の関わりの中で起こっている変化を、動物の糞を分析することで捉えたいと思います。
ニホンジカ、ツキノワグマ
食性、種間相互作用、胃内容分析、糞分析、保全管理
雄ウズラは繁殖期になると、雌を惹きつけるために求愛の音声を発します。その音声を聞いて集まった雌ウズラを認知した雄ウズラの脳内ではノルアドレナリンというホルモンが一過的に分泌されることを明らかにしました。私たちは、このノルアドレナリンが求愛発声にも影響を与えると考えています。プロジェクトメンバーとなった学生さんには、求愛発声を録音し、求愛発声の音響構造を解析することで、鳥類の発声に与えるノルアドレナリンの影響を明らかにしてほしいと考えております。
ウズラで開始。将来的には、キンカチョウ、マウスやシカの求愛発声も対象とする。
ラブソング、コール、さえずり、広告声、雌雄間コミュニケーション、ソナグラム、レコーディング
近年、プロバイオティクス研究を中心に乳酸菌やビフィズス菌は生体に有益な働きをするというエビデンスから、食品業界だけでなく医療や美容など様々な分野においても注目されています。また、乳、肉、卵といった動物性資源は動物の生命活動の源を維持するうえで重要であり、我々も日常の食生活において、頻繁に摂取しています。筆頭教員の研究では、これまでにさまざまな動物性資源から主として乳酸菌を分離し、菌株の特性についての研究、または分離した菌株を用いて様々な発酵製品を作製し、製品中の有用成分(抗酸化ペプチドなど)について研究を展開しています。本プログラムでは特に、イヌの母乳と各種発酵食肉製品由来の乳酸菌を題材に研究を計画しています。
あえて言えば、ブタとイヌ由来の試料を使用する。
乳・肉・卵、乳酸菌、発酵
母のみが子に授乳するという子育て進化を遂げた哺乳類動物では、母子の関係性は子の成長に大きく影響します。マウスを用いた私達の研究では、人為的に一腹の兄弟の半分を通常より早く離乳させてしまうと、その子マウスの社会的行動やストレス応答性の発達が通常時期に離乳されたマウスと異なることを明らかにしてきました。しかし母側の観点から、母動物は子育て中の子をどのように認知しているのか?子の数が途中で減少する場合などに子への行動を変化させるのか?といったことは殆どわかっていません。これらの研究により、母動物は育子中の子達をどのように認知しているのか、母動物の認知能力がわかります。また、子育て中の子の数の変化で母性行動が変化する場合、そのことが子の成長にどのような影響を与えているのかをさらに調べることで、母動物の子育て戦略を考察します。
マウス
母性行動、社会認知、発達
近年、様々な犬猫用のサプリメントが開発されています。神経の興奮を抑える物質を含むサプリメントでは、老齢犬に2週間の投与することにより、飼い主が評価した問題行動のスコアに改善が見られたことが報告されています。盲導犬候補個体は、その育成過程の中で、パピーウォーカーへの飼育委託(約8週齢)と訓練センターへの入所(約1歳齢)という大きな環境変化を2回経験します。これらの環境変化の直後に、消化器症状や呼吸器症状が見られたり、吠えが増えるなど、身体的あるいは行動学的な問題が起こることがあります。その原因として、環境変化に伴うストレスが考えられているものの、いずれも避けることができない環境変化であるため、何らかの対策が求められています。本プロジェクトでは、盲導犬候補個体を対象に、サプリメントの投与が環境変化に伴う行動内分泌反応に影響を与えるかを調べます。
イヌ
盲導犬、環境変化、ストレス、行動実験
イヌはオオカミと共通の祖先をもつ動物ですが、家畜化の経緯はまだ明らかにされていません 。 イヌは、ストレス応答性の変異により穏やかな気質になったことでオオカミと分岐し、ヒトとの共生が可能になったと考えらえています 。 また、オオカミに比べて、イヌは成獣になっても子獣のような行動や形態を示すことから、ネオテニー(幼形成熟)であるといわれています。しかし、イヌの行動レパートリーの表出には大きな個体差・犬種差があり、オオカミと単純に区別することは困難です。本プロジェクトでは、行動におけるネオテニーの程度とストレスホルモンの分泌が逆相関するという仮説をたて、イヌ同士の遊び中にみられる行動レパートリーとストレスホルモンの基礎値との関連 を調べることで、イヌの家畜化の経緯解明の手掛かりを見出します。
イヌ
ネオテニー、遊び行動、ホルモン分泌、行動実験、ホルモン測定
動物は群れを形成するものから、単独で生活するものがあります。また縄張りを形成し、群れ外の個体とは交渉を持たないものもあります。一方、家畜化されたイヌや自己家畜化したといわれるヒトでは広範な交流が認められます。このことは、動物の距離間が家畜化の過程で変化し、場合によっては異種間(ヒトとイヌなど)の共生を成り立たせることを可能としたことを意味します。ではこのような共生はなぜなりたつのでしょうか。私たちはホルモンに着目し、ホルモン分泌の変化が、個体の社会的距離を変化させると仮説を立て、その解明に挑みます。これらの研究により動物の距離間を短縮させる可能性が見出せます。
イヌで開始。将来的には他の伴侶動物、野生動物、家畜も含む
ホルモン、集団、個体間距離、親和性