プロジェクト概要

U21 Autism Research Network

U21 Autism Research Networkは2020年にUniversity of Birminghamを中心に、Universitas 21に参加する6つの研究室によって設立され、岡本研究室・大須研究室も参画しています。国際的なオンラインデータベースの構築と一般参加型イベントを通して、自閉スペクトラム症のダイバーシティー&インクルージョンに関する国際連携を推進することを目的としています。→ U21 Autism Research Network

高次視覚野における様々な社会認知・感覚処理

高次視覚野の一部であるLOTCには身体部位の視覚処理を担う領域があり、自己認知やコミュニケーションにも関与しています。自閉スペクトラム症の方は身体・動作認知やコミュニケーションにむずしさを抱えていることから、LOTCを中心としたネットワークの機能について機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて研究を行っています(福井大学, 南洋理工大学, 株式会社ATR-Promotions, 弘前大学などとの共同研究)。

(1) 模倣認知

相互模倣は重要なコミュニケーションの一つである。自己と他者の行動の随伴性検出は他者から模倣されたことを理解するために不可欠で、自閉スペクトラム症の方は模倣されることに気づきにくいことがわかっています。自閉スペクトラム症の成人の方は随伴性検出に関連するLOTCの活動が弱いことを明らかにし(Okamoto et al. 2014)。また、定型発達者では相互模倣時のIFGとLOTCの機能的結合性が発達に伴い変化することを発見しました(Okamoto et al. 2020)。また、定型発達者においてLOTCでは手だけでなく顔や声の相互模倣にも関与することを報告しました(Okamoto et al. 2021)。

(2) 身体部位の自己・他者視点

自閉スペクトラム症児は手のひらを自分に向けて手を振るなどの模倣の間違いを示すことが多く、一人称・三人称視点に関する処理の苦手さがこの模倣の間違いと関連している可能性があるとされています。自閉スペクトラム症の成人を対象に、手を一人称視点と三人称視点から観察した際に、視点に関するLOTCとmPFCの活動が定型発達者と異なることを明らかにしました。さらに、模倣の正確さは下頭頂葉および小脳の視点による活動と相関することがわかりました(Okamoto et al. 2018)。

(3) 視覚的身体認知

自閉スペクトラム症の方にみられる身体・顔認知の難しさは、子供の時により顕著であることが知られています。学童期では自閉スペクトラム症と定型発達児では顔・身体認知にかかわるEBAとFFAの活動が異なる一方で、成人になると差が認められないことを発見しました。この結果は、自閉スペクトラム症の方にみられるEBAとFFAの成熟の遅れが成人期までに追いつく可能性を示唆するものと考えられます(Okamoto et al. 2017)。さらに、Multi-voxel pattern analysis (MVPA)で評価したLOTCにおける身体表象は定型発達児の感覚回避スコア(感覚プロファイル)と関連していることを明らかにしました(Okamoto et al. 2020)。

自閉スペクトラム症とADHDの歩行分析

自閉スペクトラム症やADHDは運動が苦手な方が多く、定型発達者とは異なる歩行パターンを示すという報告があります。本研究では、画像をもとに動作解析システムで動きを評価し、機械学習によって自閉スペクトラム症やADHDに特有の歩行パターンを探索することを試みます(広島市立大学、福井大学、国立障害者リハビリテーションセンタ―との共同研究)。

無意識的なコミュニケーションに対する選好

自閉症傾向を評価するアンケートでは、コミュニケーションが好きかを明示的に尋ねることが多いです。しかし、コミュニケーション能力の高い人が評価されるという社会的背景によって、自分の感情とは異なる回答をすることもあるのではないでしょうか?本研究では、意識にのぼらないコミュニケーションに対する好みを評価するテストの開発を試みます(福井大学との共同研究)。