阿蘇山の火山ガス情報

工業的に排出される二酸化硫黄との比較

熊本市災害情報メールという下記のような解説情報メールが送られてくる.タイトルは「阿蘇山:火山の状況に関する解説情報(第号)」となっている.福岡管区気象台の「火口周辺警報」のメール版である.

熊本市災害情報メール <info-kumamoto@sg-m.jp>

阿蘇山:火山の状況に関する解説情報(第018号)

宛先:メールアドレス


3月2日16時0分

福岡管区気象台

<火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)が継続>

 中岳第一火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。

中岳第一火口で1月7日に発生した噴火は、本日(3月2日)15時現在も継続しています。2月28日以降、灰白色の噴煙が最高で火口縁上700mまで上がりました。風下側では降灰が確認されています。

 火山性微動の振幅は、小さな状態で経過していますが、孤立型微動と火山性地震は多い状態です。

 火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は、2月28日及び本日実施した現地調査では、1日あたり1500トン、4900トンと増減はあるものの、引き続き多い状態が続いています。

 GNSS連続観測では、深部にマグマだまりがあると考えられている草千里を挟む基線の伸びは鈍化していますが、2018年後半頃からの伸びの傾向は維持されています。

 このように、火山活動の高まった状態が続いています。

中岳第一火口から概ね1kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。

 風下側では、火山灰だけでなく小さな噴石が遠方まで風に流されて降るおそれがあるため注意してください。また、火山ガスに注意してください。

 地元自治体等の指示に従って危険な地域には立ち入らないでください。


火山の状況に関する解説情報(詳細)

https://www.jma.go.jp/jp/volcano/info.html

阿蘇山火山防災連絡事務所が公開している 「これまでの火山ガス観測結果」 の一部を以下に示した.

最近の観測データの一部

2012年以降のデータがWEB上に公開されている.

中略

2012当時の平均値は400−800程度である.

公開されているデータの範囲内で,5,000トン/日を超える大きな観測値は3例あり,2015年以降に認められている.1位は15000トンを超えている.2,3位は最近のデータである.

2016年10月7日の観測値(15000トン)

2019年11月28日の観測値(6300トン)

2019年12月31日の観測値(7400トン)

これらの観測値については, グラフ表示の便宜上6000トンの箇所に表示されている.詳細は参考資料これまでの火山ガス観測結果を見てほしい.

最近の情報(第15号-第18号) は以下の通りである.

阿蘇山:火山の状況に関する解説情報(第018号) 1日あたり1500トン、4900トンと増減(2月28日及び3月2日実施した現地調査)

阿蘇山:火山の状況に関する解説情報(第017号) 1日あたり1500トンから3300トンと引き続き多い状態(25日〜28日にかけて実施した現地調査)

阿蘇山:火山の状況に関する解説情報(第016号) 1日あたり2500トンと引き続き多い状態(25日に実施した現地調査)

阿蘇山:火山の状況に関する解説情報(第015号) 1日あたり2200トン、2900トンと引き続き多い状態(19日及び20日に実施した現地調査)

静穏時の値が500トン程度であることを考慮すると,1日排出量1500〜4900トンはかなりの量であるとの印象が強い.

人為起源(工業的に排出される)二酸化硫黄との比較

参考資料2の「2016年の二酸化硫黄の年間排出量調査データ」によると,世界で最も排出量の多いインドの場合,約11.1メガトンと算出されている.それまでトップの座にあった中国からの二酸化硫黄の排出量は,2007年に年間約36.6メガトンのピークを迎えた後は,おおむね減少傾向にあり,2016年には年間8.4メガトンで,2005年における水準の26%であった.

インドの排出量11.1メガトン/年は 30410.96トン/日に当たる.阿蘇山から排出される二酸化硫黄は平均的には500トン/日(静穏時)ー2000(活動時)トン/日程度であるので,火山由来の二酸化硫黄は人為起源の排出量と比較すると微々たるものである.

参考資料

1) 阿蘇山火山防災連絡事務所 「これまでの火山ガス観測結果」 , 図の拡大,元データの閲覧が可能である.

火山の状況に関する解説情報」のメールに記載されている内容は以下からも閲覧可能である.

火山の状況に関する解説情報(詳細) (防災情報の阿蘇山を選択)

火山に関する情報の発表状況 最近(1ヶ月以内)発表した火山に関する情報一覧 (全国の火山について各種情報の選択が可能)

2) Nature Asia 【気候科学】 インドの二酸化硫黄排出量が中国を上回る

3) 阿蘇山のライブカメラ (各種選択可能)

気象庁監視カメラ 九州地方,阿蘇草千里を選択

熊本大学教育学部 阿蘇山・草千里

京都大学火山研究センター 選択方式 中岳第火口は欠測中

(2020.3.7)

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