「平和資料館で三つの補助線を引く」展

古閑慶治、崔栄梨、牧園憲二会期:2022年3月25日(金) - 27日(日) 会場:岡まさはる記念長崎平和資料館 3F(長崎県長崎市西坂町9−4)時間:10:00-16:00入場料:無料 ※ただし資料館への入館料 (一般250円/高校生まで150円)が必要です。

展覧会にあたって

「岡まさはる記念長崎平和資料館」は1995年に市民の手によって作られた平和資料館です。名称の由来となっている岡正治氏は、牧師、平和活動家であり「日本の戦争責任・加害責任」「長崎の朝鮮人被爆者問題」に取り組んでいました。彼は日本の原爆の被害の側面だけでなく加害の側面もしっかりと伝えていくことが本当の意味での平和を実現するのだと考え活動していました。三人の作家はこの平和資料館にアクセスし、約一年かけて資料のアーカイブや独自のリサーチなどを行ってきました。その過程でこの平和資料館の活動やそこに眠る資料の重要性を感じ、そしてこれらの記録や活動が過去のものではなく、未だ解決されていない現在の問題に繋がっていると考えました。本展覧会では、古閑は岡正治氏が晩年に行っていた「長崎忠魂碑違憲訴訟」についてリサーチを行い、未だ戦前の状態から変化していない自身の状態と向き合いながら現在も残る忠魂碑の問題を擦り出します。岡正治氏が代表をつとめた「長崎在日朝鮮人の人権を守る会」の活動の中には在日朝鮮人の母国語での教育を守る活動もありました。崔はその活動記録を読みながら帝国主義による抑圧ー被抑圧の関係に翻弄された被植民者にとっての「国語」教育の変遷を追います。牧園は岡氏が中心となって1983年より開催されていた「反核・平和セミナー」や、企業に対して行った改善要望「高島神社内三菱『差別碑』問題」等の資料を読み解きながら、戦前から現在まで続く資本主義が孕む搾取の問題の構造的な解読を試みます。この展覧会は残された資料を紐解きながら、各々が着目した問題に対して現在の私たちの視点から補助線を引き、新たなかたちを与えていく試みです。私たちはこの展覧会をはじまりに平和資料館の中にアートスペースを開設し、より多様な学びの場を作ることを目指します。

アーティスト

古閑慶治


1995年奈良県生まれ。2021年東京芸術大学大学大学院映像研究科修了。大阪の西成のドヤ街にいる日雇い労働者の祖父を探すフィールドワークから始まり、過去の歴史から自身に無意識に内面化されている事を始まりとしてリサーチを重ねることで再び内面化し主にパフォーマンスや映像作品として発表している。近年は炭鉱の歴史や碑を主題として残されていくものについて考え、制作を行なっている。

崔栄梨


福岡在住の在日朝鮮人3世。福岡で生まれ育ち、県内の朝鮮学校に通う。東京にある朝鮮大学校卒業後、福岡県下の朝鮮学校で美術講師をつとめる。絵画や写真と言葉を組み合わせた制作を行ってきた。近年は自らのルーツにちなんだリサーチをもとに制作を行いながら現代の課題に向かっている。

牧園憲二


1983年福岡県生まれ。2008年東京芸術大学大学院映像研究科修了。近年は韓国、台湾などで滞在制作を行う。インタビューやコラボレーションという手法を軸としながら、人々との関わりから学び取った日常生活に潜む歴史や社会システム、主に近代化や核エネルギーが孕む様々な問題や、今も引き継がれる日本の戦争責任に向き合うための試みを模索している。

会場

岡まさはる記念長崎平和資料館 3F

※長崎駅より徒歩7分、駐車場がありませんので長崎駅の近くのコインパーキングをご利用下さい。