島根大学 総合理工学部
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2016年からの琵琶湖南湖における研究調査により、淡水湖の無酸素な底層水や堆積物間隙水中には溶存態の重合体ケイ酸(PSi)が存在していることを確証しました(Park et al. 2018&2023)。PSiは珪藻による摂食が不可能であるため、湖におけるPSiの生成は珪藻成長阻害をもたらす可能性があります。そのため、PSiの存在は、藻によるケイ酸摂取の観点からすれば、生物利用可能なケイ酸の大きな除去庫(シンク)の一つとなる恐れがあります。
当研究室では、湖へのケイ酸供給経路として湖底無酸素水域での堆積物からのケイ酸溶出に注目し、PSiの生成と分解機構を解明し、堆積物からの生物用可能ケイ酸の再生速度・再生率とその水中濃度の関係性を明らかにし、新たなケイ酸循環モデル構築を目指します。そして、堆積物からの栄養塩の再生と植物プランクトン群集組成の関係性を解明するならば、湖の水質・生態系保全においてこれまでは過小評価されてきたケイ酸の重要性の再評価に繋がると期待しています。
Park et al. (2023) Detection of polymeric silicate in the pore water of freshwater lakes. Limnology
ケイ素の地球循環は、その一部が水域での生物の一次生産機構に組み込まれるため、炭素の地球循環と密接に関係しています。水圏での溶存ケイ酸は、主要な一次生産者である珪藻の必須栄養塩であり、多くの細菌、特に温泉に生息する細菌の代謝作用において必須の物質として利用されています。
水圏において、珪藻は他の植物プランクトンと競争的に増殖し、ケイ酸が豊富な環境では珪藻が優占種になります。珪藻の増殖は他の植物プランクトンの繁殖を妨げ、アオコなどの発生抑制にも繋がります。このような珪藻の成長には、溶存ケイ酸が必須的に要求されます。したがって水中ケイ酸の濃度変動は、水生態系や水質に影響を及ぼすため、湖底堆積物からの栄養塩の再生と植物プランクトン群集組成の関係性を解明すれば、湖の水質・生態系保全においてこれまでは過小評価されてきたケイ酸の重要性の再評価に繋がると期待します。
珪藻は水中の溶存ケイ酸を摂食し成長するため、珪藻の細胞の外側には被殻とよばれるケイ酸質の透明な殻が覆っています。現在報告されている珪藻殻の分解定量法は、分解に数時間以上の長時間を要することや一部のケイ酸塩鉱物が一緒に溶解されてしまうことなどいくつかの問題が存在しています。当研究室では、ケイ酸塩鉱物の溶解を最低限に抑えた珪藻殻分解法の開発を行っています。