ANEMONE

All Nippon eDNA Monitoring Network

環境DNAを利用した生物多様性観測のネットワーク

ニュース

  • マリンバイオ共同推進機構(JAMBIO)のウェブサイトにてANEMONEとの協力体制が紹介されています(2020.11.13)

  • かずさDNA研究所のウェブサイトにてANEMONEの取り組みが紹介されています(2020.10.02)

  • 観測ネットワーク」のページに、研究機関等による定期観測サイトの他に、アースウォッチ による市民観測の情報を加えました(2020.10.01)

  • ウェブサイトを立ち上げました(2020.09.26)

理念と目標

環境中に存在する生物由来のDNA(環境DNA)を利用した生態系観測が生態学分野における革新的ツールになりつつあります。環境DNAを利用した生物調査は、現場作業の簡便さ、高い生物検出能力、生物同定に関する高い専門性を必要としないこと、高分類解像性能といったユニークな特徴を備えています。これらの特徴のおかげで、旧来の生態系観測では決して容易ではなかった、広範囲における多地点・高頻度の生物多様性観測が実現可能になりました。

環境DNA観測のポテンシャルを最大限に利用するには、そこから得られるデータの特性を理解し、それに見合ったデータ解析手法を開発・発展させるとともに、観測関連技術を深化させ続けることが重要でしょう。そのためには、新たに開発された技術をテストできるプラットフォームと、誰でも利用可能な観測データが提供される必要があります。それを実現する最善の方法の一つは、科学者の手による観測体制を確立することでしょう。

また、生物多様性保全の重要性がますます高まる一方、これまでの保全の取り組みは必ずしも十分と言えません (Global Biodiversity Outlook 5, 2020)。生物多様性保全に向けてのさらなる努力の拡大が求められる中で、生物多様性の時空間的な変動の正確な把握が鍵となることは火を見るよりも明らかです。今後の生物多様性保全の取り組みの中で、共通手法に基づいて実施される環境DNA観測が提供する生態系情報は、行政、産業、教育といった様々なセクターがそれぞれの役割を果たす中で重要なリソースとなるでしょう。

ANEMONEはこれらの科学的・社会的要請に応えるべく開始された科学者有志による環境DNA観測ネットワーク構築の取り組みです。私たちは互いに協力することで、日本全国の沿岸、湖沼、河川等を対象に、統一された手法によって大規模かつ高解像度の環境DNA観測を実施します。得られた観測データは、生物多様性保全や生態系の持続的利用に貢献するために、オープンデータの精神に則った速やかな公開を目指します。私たちの取り組みによって、環境DNA観測によって得られる高度な生態系情報の活用が進み、生物多様性保全の意義がこれまでにも増して理解され、促進されることを願っています。

関連事業等

採水した海水中から環境DNAを抽出し解析する手法が開発されました。魚類環境DNAメタバーコーディング法 (Miya et al. 2015) が開発されるとともに、全国規模での環境DNA観測が初めて実施されたプロジェクトでもあります。最終評価においてA+[非常に優れている]の評価を受けました。

各大学、JaLTERや水産研究・教育機構等の研究機関との連携のもと、全国の沿岸で魚類を対象とした環境DNAメタバーコーディング観測が実施されています。得られた大規模魚類群集データをもとに生態系におけるレジームシフト現象の原理を理解し、さらにはレジームシフトを予測する手法を開発することが中心課題です。

市民が自分の希望する海岸に出向いて海水を採取し、水に含まれる魚類の環境DNAを研究者が分析して魚類生態系の変動を時間・空間で把握する、市民と科学者の連携による環境DNA観測の試みです。株式会社カカクコムによってサポートされています。本事業は環境DNA学会による協賛事業です。

環境DNA技術を小・中学生対象に解説し、実際に身近な海で環境DNA調査を体験してもらいます。環境DNA学会が中心となり、日本科学未来館、福岡市保健環境学習室まもるーむ福岡、南三陸町自然環境活用センター、全国科学館連携協議会と連携して進める教育プログラムです。船の科学館「海のミュージアムサポート」の支援を受け実施されます。