代数幾何学 2020

時間: 木曜3限 13:00-14:30

場所: Zoom 理学部6号館302講義室

担当: 金沢篤 (京都大学理学研究科)


[講義の概要・目的]

代数幾何の中で最も基本的な話題である複素(代数)幾何の基礎を解説する. 複素幾何は直感的理解が比較的容易であり, また解析的手法を使うことができる等の利点があるため, 代数幾何の入門として適している. 実際, 複素幾何の基礎を習得することはより一般の代数幾何(Grothendieck流のスキーム理論)を学ぶ上で重要な素養となる. 本講義では特にベクトル束の幾何とKahler多様体(特に射影多様体)に焦点を当てる. 講義の進度と学生の興味に応じて発展的な話題についても触れたい. 複素幾何の基礎を身につけることを第一目標とし, 具体例を通して代数, 幾何, 解析の諸概念に慣れ親しむことを目指す. 


[講義内容]

以下の項目と関連した話題について講義する. 各項目の順序は固定したものではなく, 受講者の予備知識や理解度に応じて変更する. 

1. 複素多様体と層コホモロジー: 複素多様体, 正則写像, 正則ベクトル束, ホモロジー代数, 層コホモロジー 

2. ベクトル束の幾何: Hermiteベクトル束, 接続, Chern類/Chern指標

3. Kahler多様体の幾何: Kahler計量, Hodge理論, 調和積分論, Serreの双対定理 

4. 発展的話題: K3曲面, アーベル多様体, Calabi-予想とYauの定理, ミラー対称性, K-安定性


[講義ノート]

講義ノート (ミスの指摘, コメントを歓迎します)

講義は録画され, 復習のためにPandAで共有されます.


[参考書]

講義において参考書を持っていることは仮定しないが, 復習・自習用に参考書を一冊持っていると便利である. 良い参考書を幾つか挙げておく. 

1. 複素幾何, 小林昭七著 岩波書店

2. 複素代数幾何学入門, 堀川穎二著 岩波書店

4. Complex Geometry: An Introduction, Daniel Huybrechts著  Springer

5. Principles of Algebraic Geometry, Phillip Griffiths and Joseph Harris著 Wiley-Interscience

6. Complex Algebraic Surfaces, Arnaud Beauville著  Cambridge University Press

スキーム理論を学びたい場合には次が標準的である. 

7. Algebraic Geometry, Robin Hartshorne著  Springer

次の講義ノート(非常に長いが)とても読みやすく, 今後標準的な参考書になると期待される.  

8. Foundation of Algebraic Geometry, Ravi Vakil

その他に読み物として次が面白い. 

9. デカルトの精神と代数幾何, 飯高茂/浪川幸彦/上野健爾(著) 日本評論社

10. コホモロジーのこころ, 加藤五郎, 岩波書店

数学関係の推薦図書


[成績評価]

レポートで成績をつけます. 

レポート問題は講義ノート内の問題です(問題リストが最終章にあります). 


[連絡先]

akanazawaあっとまーくmath.kyoto-u.ac.jp

気軽に質問等をメールしてくれて構いません. 


[講義記録/予定]

4/30 第1回: 複素多様体とベクトル束(複素多様体, 正則写像, 変換関数, 束写像, 切断)

5/7 第2回: ベクトル束と層(正則ベクトル束, 前層, 層)

5/14 第3回: 層とコホモロジー1(茎, 芽, 完全系列, 大域切断関手)

5/21 第4回: 層とコホモロジー2(ホモロジー代数, 非輪状分解, 入射分解)

5/28 第5回: 層とコホモロジー3(細層分解, Cechコホモロジー, 計算例)

6/4 第6回: 接続と曲率(接続形式, 曲率形式, ゲージ変換)

6/11 第7回: 正則ベクトル束, Hermiteベクトル束, 特性類1( 不変式)

6/18 休講(創立記念日)

6/25 第8回: 特性類2(Chern類, Chern類の公理, Chern指標, 計算例)

7/2 第9回: Hermite多様体, Kahler多様体, Kahlerポテンシャル, Kahler多様体の具体例

7/9 第10回: Kahler多様体の具体例(続き), Fubini-Study計量, 調和積分論の準備(*-作用素, 余微分, Laplace作用素, 調和形式)

7/16 第11回: Riemann多様体のHodge理論, 正則接束のHermite計量=接束のJ-不変なRiemann計量, Dolbeault余微分

7/23 休講(海の日)

7/30 第12回: 調和積分論(Kahler恒等式, 調和(p,q)-形式, Hodgeダイヤモンド, Serreの双対定理)


今学期は講義数が十分に取れず, 発展的話題には触れることができませんでした.