『殺し屋施設』という会社の幹部を勤める殺し屋
好奇心から所属したとは思えない実力と行動力の持ち主
少し常識が欠如してる自由人、友達と楽しいことがしたい。
スリルを味わうことを楽しみとしているため、今の殺し屋という職業は天職だと思っている。直感で動くタイプ。
普段は明るく愛想もいいが、実は人を信用しきれず一定の距離を置いてしまっている。友達や親友だって憧れているけど、人との関わり方がわからない。
因みに初めて稼いだお金で買ったものは知育菓子。
教育に厳しい家庭で育った……と言ってもその厳しさは度を超えているもので、行動も制限される上に友達を作ることすら許されなかった。
愛も感じず、褒められるのは愚か、叱られたり怒鳴り声を浴びることも少なくなかった。
小学校で友達と遊ぶ約束をしている同級生、人気なテレビ番組の話題で盛り上がるクラス、公園で元気に走り回る子どもたち… ただただ羨ましい気持ちでいっぱいになる。
約束をする相手なんていない、テレビなんて見れない、公園には行けない。
自分の勉強机を眺めた、辛い気持ちで満たされた。
独りのヤナに声をかけてくれた同級生が現れ、嬉しくてヤナは必死に話した。
初めての友達で、嬉しくて、嬉しくて………。
親にはバレないようにひっそりと仲良くしていた。
…しかしその日々は突然終わりを告げる。その同級生はある日突然、無視を始めた。
どうして?遊べないから?面白い話ができないから?
わからない、わからなくて、悲しくて、信じたくなくて、
その同級生の家に電話をしたが出てもらえず涙が溢れた。その際に親にもバレてしまい、酷く叱られた。
それから塞ぎ込んでしまい、中学生になった時に不登校になってしまうが、親からしたら好都合だったのか不登校を許可した。
しかし、その代わりに家庭教師がつくことになる。
人との関わりがどっと減り、暗い気持ちは加速していくばかり。
ある日、持っていた携帯でネットを見れることを知り、気休めにと思い色んなことを調べていたら、偶然裏社会の記事を見つけた。好奇心を刺激され、しばらくその世界のことを調べていた。
そんな日々で知った殺し屋が集まる会社のこと。
殺し屋なんてよくわからなかったし、危険なことはわかってはいたが、当時のヤナは気になって仕方がなかった。何しろ、この会社はきっと近くにある。
数日後、ヤナは家出を決意。
殺し屋施設に行くことは決めていたが、場所は明確ではない。しかし直感で辿り着けると信じていた、恐れはなかった。
家から抜け出し走るこの時間は開放感にあふれていて、ただ楽しかった。
「はは、楽しい、楽しい!!見つかったらどうしよー!!追いかけられたりして!!!」
久しぶりに笑った気がした、実際数年ぶりに笑ったはずだ。
こんなに楽しいと感じるのは初めてだった。
息が切れようが、喉が渇こうが、この楽しさに勝るものはなく走り続けた。
走り続け辿り着いた異様な雰囲気を感じる建物。
入ってみようと思ったのも束の間、身体は限界を迎えておりその場で意識を失ってしまう。
「…あ、起きた起きた。大丈夫か」
「え?あ、あ!!殺し屋なります!」
「ああうん、もう少し寝てろ」
「いやぁ〜、かったるいんで抜け出してきました!一応一般家庭出身!一般人が扱える武器じゃないって?いやいや、案外いけんだよこれが!!こう…シュって、わかる?無理かw」
「名前なんだっけ?ごめんごめん!人の名前覚えるの不慣れでさ〜」
「ターゲットあいつだよね?おっけー…でも2人で仕留めるなんて相当すごいんだろうね。どんな相手なんだろー、楽しくなってきちゃったな!あれ?笑ってる場合じゃない感じ?」
「暇だなぁ…あ、そういえば俺スカートめくり興味ある!昔に同級生がやっててさ〜、やってみたかったんだよね!」
「あの知育菓子が新作出してさ!俺買ってきたんだけど!!組み合わせによって味が変わるらしくて…すごくない!?一緒にやろ〜!!」
「俺そんな子供っぽいかな〜?…一応それなりに19歳だよ?」
「ここに整列するんだね、なんだっけ…両手伸ばして肩に合わせるんだっけ?え?そこまでしなくていいの??」
ヤナという名前は本名ではなく、後から自分で名付けたもの。
本名は『山貝 成(やまがい なる)』。
この本名は社長であるセイと幹部には教えている。
今のヤナという名前は苗字と下の名前の最初をとったものらしい。