血と薬を好む、前科ありの鍛冶屋
華族から追放され、没落した人物でもある
情緒不安定と言えばそうであるが、基本は穏やかな性格。稀に狂気的で乱暴な一面も見せる。
危険な雰囲気と趣味を持っているが、人を寄せ付ける、言語化不可能な魅力も同時に持ち合わせている人物。
かなりな寂しがりで、人肌に執着する依存体質でもある。
上記のあれこれで、緋刃と深い関係を持ったが故に死に至った者は数知れず。故に華族から追放されているのだろう。
国の最上位とも言える貴族である華族、彼はそこの一人息子だ。本来であったら、とても恵まれてさぞ幸せな暮らしを送るであろう、そんな環境だった。
———いや、何も家庭内環境が悪いわけではないのだが。
言ってしまえば緋刃に合わなかっただけだ。皮肉にも、緋刃は不自由でなんにも恵まれてなどいない身分だと常に思っていたものだという。
緋刃がある程度の年齢になると、呆れるほどに縁談の話ばかりが飛び込んでくるようになる。
まぁ、逆らえなどしないし、上手くいけばこの環境から抜け出せるかもしれない。そう考えて、縁談の話はひとつひとつちゃんと聞いていた。
聞くだけでなく、縁談を持ちかけた先の娘とも積極的に関わった。
誰も勧めてなどいないのに、2人きりで外出することも少なくなかった。
次第に2人の距離は縮まり、最終的には狂気的な両思いにまで発展した。
ただ、堕ちていく。その先は、真っ暗闇へと飛び込むのも躊躇しないほどの強い愛———否、依存。
ある時、緋刃の実家は大騒ぎしていた。何事かと騒がしい部屋を部屋を覗いて見ると、そこには縁談を持ちかけた例の華族もいた。
———ああ、そういえば、あの娘死んじゃったもんな。
そんな酷い愛を愛を飽く事もなく繰り返した。縁談は縁談は止む事を知らない、緋刃の居場所はその度に現れ、散った。
緋刃の親族はやっと違和感に気づく。息子と愛し合った者が次々と死にゆくことに。
以降、緋刃は化け物を見るかのような目を向けられるようになる。そして、華族から追放されるのも時間を要さなかった。
独りでふらふらと歩き、これからどうしようか、など緋刃は考える。ふと懐から短刀を取り出し、眺めた。なんとなく、今までの”居場所”の香りがした気がした。
今まで散った彼女たちは、完全には去っていない、そう緋刃は考えている。証拠は、この短刀に残る鉄の匂い。彼女たちは皆、この短刀に切り裂かれたのだから。自分とこの短刀が彼女たちを覚えている、今もそんな思いでいる。
「オレの刀で死になァ」
「ヘヘ、アァ……ハハッ!!はァ、いい薬、ヒヒッ」
「血はなァ、浴びんのがいっちばん興奮すんだよ……そう、オレの愛刀はそれを手伝ってくれる」
「あの輩は厄介だ。ハハッ、暗殺組織を手助けしてるオレだと説得力がないけどな。まァ気をつけな」
「オレの刀はちっとばかり特殊だ。だからこその実績ってもんだが……まァ使ってみな。鍛治の腕は自信があるもんでさァ」
「この愛刀もあの薬も、なきゃオレは生きてけねェんだ。オレはアンタが思ってるより弱いもんだぜ」