【天下特別守衛隊】の創始者
若くして軍の重要な役割を担っている
愛国心による危機感を抱いており、故に冷酷な面をよく見せる。国の将来のためならどんな犠牲も厭わない。
頭の回転も早く、常に冷静で、判断力も優れているため帝国軍の脳として重宝されている。
劣等感こそ抱いていないが、屈辱は味わっており、それを繰り返さないための力を常に欲している。実は野心家であり、熱い人物。
道陽は生まれながらの武士であり、国の貴族の1人として、しばらくは何不自由ない、富んだ生活を送っていた。
今現在も豊かではあるが、不自由ばかりだ。自分が信じていた”国”よりも大きな世界、大きな国々を目の当たりにし、言葉が出ないほどの恐怖と焦りを覚えた。自身を悪に突き落とすきっかけとなった出来事であったが、道陽ならそれから逃げる事だってできただろう。彼は頭の回転が速い、逃げ場を用意することも容易であったはずだ。
しかし、逃げなかった。
正確に言うのなら、逃げるという選択肢は何も希望ではなかったのだ。
そう、これも彼なりに思考して至った答え。最善策を考えに考えて、結果悪に堕ちた。
———ただ、終わってなどいない。
これは経過であって、結果ではない、そう彼は考えている。
”悪の道を歩み、正義の日の出を浴びる”
真っ赤に染まった花々は、後に栄華となるだろう。
士族という富んだ身分だが、最上位ではない。
絶対的な貴族、華族がそこには居て、道陽は彼ら彼女に笑われることもあった。品を捨てた野蛮な貴族だ、と。豪奢な服を纏えば嗤われる。下の者たちには妬まれる、ルサンチマンだ。
どうも居心地の悪い環境だと思ったのは大人になってからだ。
海の外に広がる強大な力、国々。激動の時代の幕開け。明けることを願うしかない、深い長い夜。それを明かすのは誰なのか。
真の力と愛を持って悪の道を行く。その先にあるのは頂点。導くは新たなる大帝国。
恐れ慄く場合なのか、命を必死に守っている場合なのか? そんな醜い恥同然の思想は消してしまえ!!
刃先に付いた赤を振り払った。散ったそれは、側に咲いていた花に付着する。
濁る空に、刹那太陽が顔を出した。日の出を拝むその花は、鮮やかな赤色を魅せた。
「今は激動の時代と言えよう。そんな時、国を支えるのはお前たちだ。縁の下、日が刺さずとも、眩き日の出を目にすることは可能である。夜を明かすのは誰なのか、その問の答えを私は待ち侘びている」
「赤色の菊……か。それは品種として赤いのか?」
「ひとつ訊く。お前のその言動は、本当にお前の意思によるものなのか?そう悩むな、悩む箇所などひとつもないだろう」
「国は変わるべきだ。都度怯えていては、滅びを選択したも同然。この地を愛しているのなら、立ち向かう他ない」
「提案がある。愛すべきこの国を守る、そんな組織を創りたい。無論、責任者は私だ」
「おめでとう、お前は選ばれた。活躍を楽しみにしているよ」
「貴殿は素晴らしき御方が故、私めの提案を受け入れて下さった事、身に余るほどの光栄で御座います。どうぞご期待の程を。必ずや御国を導いて見せましょう」