【天下特別守衛隊】の主将候補
駄菓子を始めとした甘味が好き
努力家で野心的。己の意志を貫き通したいタイプ、何をされようと屈することは中々ない。
しかし上記の性格は表面上のものである。それは本人も気づいていない、所謂強がりだ。
家族愛と正義感が強いが故、復讐心を強く抱いている。
出身は庶民の家庭である。貧しい暮らしを強いられ、周りからは哀れな目で見られる生活を送ってきた。
さらに言えば母子家庭でもあり、母親と二人暮らし。ただでさえ苦しい身分なのに、いつも子を思ってくれる母親が何よりも好きであった。現在の強い精神も、家族愛によるものだろう。
ある時、陛下直属の護衛組織ができることを耳にする———が、それは我ら庶民には到底届かぬ様で、全国の士族たちから選ばれるらしい。いつもそうだ、好きでこの身分になったわけではないのに。
悔しさとやるせない気持ちが消えないまま数日を過ごした———そんな矢先、庶民にも光が当てられた。武士以外も陛下直属———改め軍隊に入隊できる制度ができたと言うのだ。
玲都は誘われる前に自ら入隊を希望した。
———そう、軍隊に入ればご飯をいっぱい食べれる、暮らしも豊かになる、その言葉を口にした軍人を確かに見たのだ。
しかしそれの根拠は的確ではない。念の為訊くと、それは嬉しそうに話をする軍人たち。
よかった、俺と母さんはやっとこの暮らしから抜け出せるんだ———
「申し訳ありません、白米の量が少々足らず———」
「なんだ? それぐらい食べれれば充分だろう」
「…………」
「下賎な者が偉そうな口を聞くな。食べれるだけ感謝したほうがいい。たいして国の役にも立てないのだから」
国は戦力を求めているのだろう、確かに自分はたいして強くもない。ならば強くあるのみ。
———、
「はは、そんな暗い顔してどうした」
「いえ……」
「片目が痛むか? 首はもう縫ってもらったんだし、生きているのだから明るくいろ」
「そうですね」
「国の役に立ててるんじゃないか? おめでとう」
「……ありがとうございます」
机上に置かれた冷たい残飯を口に運んだ。少し、鉄の味がした。
「誰が許そうとも、俺は絶対に許さない」
「吠えるな、煩い。まずは、お前の喉を突いてやってもいいが」
「憎い……憎いんだよ!!あいつらの全てが、存在の全てが!!嗚呼、これも全て、全て切り裂けたのなら、どれだけ良かっただろうか」
「……これは駄菓子だ。見て分からないか?……ああ、縁がない、か。俺が幼い頃から世話になっている甘味だ」
「銃は確かに便利だと思う。しかし、俺としては刀の方がいい。勝敗が明確だし、俺は……、……そう、慣れてるからな」
「差別的で頭の悪い、視野が狭く幼稚で醜い。はは、どうも救いようがないな。吠える間も与えぬ、今すぐその喉元を突き刺してやろう」
「放たれた言葉を全て鵜呑みにし、騙されに行ったようなものだと。それは俺、冴賀玲都だと。そんなもの百も承知だ。だからこそ、這い上がるのだろう。堕落した己を、上へと昇らせる。それだけだろう」
玲都が履いている草履は、母が作ったもの。幼少期に綺麗だと言った色、縹色の横緒が特徴的である。
攻撃は力で押し切るよりも、確実に急所を突くタイプ。片目を失くした今も、研ぎ澄まされた感覚によって強さは健在している。
首の縫い目は、治療とも呼べない雑な処置をされた証。何かを訴えかけれないかと、玲都はそのままにしている。