月の加護を受けている、禁忌の聖騎士
人間の聖騎士たちをよく知り、幾度も立ちはだかっているようだが……?
正義感が強く、人思い。周囲にもよく目を向けている。
しかし正義感の行き着く先は高確率で自己犠牲。自分はいつも二の次。
実はネガティブでもある。
”正義は勝つ” そして ”悪は滅びる” これをタルオスは信じていた。いや、今も信じているだろう。
タルオスが人間の頃所属していた騎士団は、数多くの騎士の中でも優れた者たちを集めた聖騎士団であった。彼らの一員になれて光栄だと心の底から思っていたし、たびたび口にもしていた。
民のために剣を振るう覚悟もあった、命をも惜しくないと、勇敢に立ち向かう日々だった。
なのに、己は———。
分かってはいたんだ、そうだ。命を捧げるのは、自分だけではないはずだ。
しかし、仲間がみんな———みんな消えていく———。
”正義”は”悪”により次々と滅ぼされていく様を見続けた。自分が信じていた”最強”それが分からなくなっていたのだ。
正義は勝つんじゃないのか———?
ある時、精鋭部隊である聖騎士団でも歯が立たない敵が存在してしまった、戦場はまさに地獄絵図。タルオスも死を覚悟して戦った。しかし、生き残ってしまった。
数少ない生き残りはタルオスも含まれていたのだ。———なぜだろう、全く嬉しくない。
何もかもに絶望した、夢を見続けるのは不可能だということを知った。
もう、何も分からない。嫌だ、嫌だ———!!!!
絶望し、ナイフを己に振り翳した。
その後、目が醒める。
身体は異様なほどに身軽で、力もみなぎるような、今まで感じたことのない強い力が己に宿っていることに気づいた。
月明かりに照らされ———、やけに、眩しくはないだろうか?
月光は、タルオスを包んだ。空を見上げると、星ひとつない、絶望とも呼べる暗闇だけが広がっていた。タルオスは、嫌な予感に迫られる。
かつて人々に脅威を振り翳した月神、それは光をも吸い込む恐ろしい存在。後に、禁忌とされ封じ込まれたという。
その禁忌は己に宿り、その力で甦ったのだと悟る。
水面に映る顔は、何も綺麗じゃない。目は夜空と朝焼けを思わせるが、こんなにも汚いと思ったのは初めてだ。
———返せ、あの美しい景色を!!
しかし、その神は痛恨のミスをしていることに気づく。そう、僕は聖騎士だ。
まだあの騎士団は存在している。禁忌と成った自分を、討ってもらおう。彼らの戦術は理解している。彼らが簡単に命を奪われぬよう強くし、安心できた頃に禁忌ごと消してもらおう。
禁忌の聖騎士タルオスは、月と星を模した剣を手に持ち、聖騎士たちの元へと向かった。
モンブランとブッシュドノエルが好き
星空を見るのが好きで、それを邪魔するものはやはり好まない
人間であった頃は普通の金眼だったが、今は右目が夜空、左目が朝焼けとなっている
「諸君、最強と謳われるその正義で、この僕を僕を討ってみたまえ」
「正義は絶対なのだろう!悪は滅びる、そうだろう!なら立ち向かえ、君たちの眼前に居る、この忌々しい悪を討ちたまえ!!」
「僕は悪に堕ちた。これは紛れもない事実だろう。僕に憑依した神は禁忌と呼ばれ、光をも吸い込む。人々に危害を与え続ける。彼ら聖騎士たちをよく知る僕に憑依したのは痛恨のミスと言ったところだろうか、正直助かったよ」
「彼ら聖騎士たちと戦えること、昔から光栄に思っていた。……今は、対立しているけれど」