兵科に属する軍人、階級は中佐
理想の軍人を目指しているようだ
いわゆる堅物で、合理的で完璧主義。排他的ではなく、接してみれば思ったより優しいと思うかもしれない。
実は男色に興味があるが、それも言えずじまい。理想の軍人を目指す上での完璧主義が邪魔しているのだろう。
ストレスも溜めてしまうのか、喫煙量が異常である。
家族関係は良好。『月』という漢字は縁起がよく、双子揃ってこの漢字をつけられ、産まれた当初から大人になるまで、両親からは溺愛されていたと言っても良い程であった。愛情をいっぱい貰っている。
それは、双子の兄である天ヶ瀬梓月(あまがせ しづき)からも同じく愛情を貰い続けている。その愛はただの家族愛ではないことは、本人は知らないまま。
———否、本人も家族愛と言うには歪な愛情を、兄に抱いているのである。
それは無自覚。今現在は「兄と一緒にいたい」と言う自覚で止まっているようだ。その献身具合は、執着とも呼べるもの。周囲の人間は薄々気づいている者もいるだろう。
愛の形は人それぞれだと言うのなら、裡月はとても恵まれた環境で育ち、誇れるような過去の持ち主だ。
良いのか悪いのか、幸せな日々を送ってきたが故に『悲しい』と言う感情をあまり知らない。自身から涙が溢れた際には驚くほどだ。
たくさんの愛情を受けてきたおかげで、人の気持ちを考えることもできるし、愛を与えることもできる。
その『愛』で満たされた過去から、さらに良い未来へと繋げられるかどうかは裡月次第だが、絶望を祓うためならなんとしてでも戦い続ける覚悟はとっくにあるようだ。
愛で満たされる世界になれば———など思うまもなく、彼は抜刀する。
『一刻も早く幸せな未来へ行く』その覚悟は伊達ではないのだ。
裡月の斬る速度は速く、それは一本の線に見えるほど。
運動神経も抜群で、力もかなりある。物理特化である断斬師団の師団長を腕相撲で負かすほどだ。
酒に滅法弱い。泣き上戸。
「貴様、軍の決まり事を心得ているだろうな? 参謀にて話し合われたこと、それらの最新情報など頭に入れて当然だ。面倒臭いなどと言う戯言は、以後発さないようにしろ」
「笑止千万。俺たち軍人としての役目を果たしたにすぎない。俺も貴様も、何も素晴らしいことなどしていないだろう。そんな阿呆なことを言っている場合ではないことも、知っておいた方がいい」
「兄様は、神かと疑うほどに完璧だ。俺が兄様を追って、更に追い続けても尚、兄様は一等星として輝き続ける」
「貴殿は、あの事件について如何お思いだろうか。俺は国の治安が悪くなりつつあることに危機感を抱いている。我ら軍人が動き出すべきだと、そう思っている」
「救える命があるのなら、絶望を全て捨てられるのなら、俺は戦い続ける」
「俺は愚直な行動はしない。ただ剣の方が戦いやすかった、それだけだ」
「な、なんだその目は! 大体、同性で恋愛をするのが変だとか、そういうのは良くないと思うぞ。お、俺は……、俺は、男に抱かれたい。何かおかしいか!?」
双子の兄、天ヶ瀬梓月(よその子)。双子の弟、天ヶ瀬裡月。
裡月は、梓月さんに信仰に近い信頼を抱いている。
彼の動機の殆どが梓月さんで、異様な執着心も持っているようだ。
梓月さんは能力の高さによる神聖視を向けられており、故の孤独を防ごうと、裡月はひたすらに彼を追い続けている。
裡月自身が抱いている、ドロっとした愛情には気づいていないようだ。