断斬師団を統率する師団長
軍への忠誠心が故の厳しさからか、鬼の中将とも呼ばれている
普段は飄々とした雰囲気を感じさせるが、実は真面目な努力家である。
己の信じるものに忠実。しかし、そのためなら手段を問わないなど、危険な方向に行きかねない要素も持ち合わせている。
実際話すと案外気さくでもある。悪く言うのなら猫被り、良く言うのなら話し上手だ。
まず言うのなら、彼の家庭内環境は良いとはとても言えないものであった。
しかし、特別なにか暴力を振るわれることはなく、ただただ冷たいといったところだろうか。居心地が悪いような、この場にいることを許されていないような———そんな疑心暗鬼にもなりかねない場所で彼は育った。
家系を深堀すると、国に伝わる神話を知りつつも、仏を信じてきた一族でもあった。
八楽自体は特に気にしたことはなかったが、自然と仏道の血は流れてしまっているものである。無意識のうちに、思考はそれに従っている。なにかを祈る時も、仏道に基づいた行動をとるのだ。
特別誰かに相談するような内容でもなければ、自分1人で解決できるような問題でもない———そんな家庭の悩みを抱えた彼は、道を外しそうになる。自暴自棄になりかけたのだ。
———ただ、彼に希望の光がさす。
それは、祓魔軍だ。彼ら彼女らは、厳しい世界にいつつも秩序を保ち続けている。
八楽は人の体温を求め、足を踏み入れる。その先で待っていたのは、軍人たちの強い仲間意識、絆だ。
元気がないのなら、元気を出そう。冷たいのなら、火を灯そう。
軍は仲間を1人でも多く受け入れようと、八楽も平等に歓迎したのだ。その出来事が、八楽にとってどれだけの救いになっただろうか。本人は表現できないほど救われたのである。
八楽はその時に思ったのだ、自分の居場所は軍隊にしかないのだと。
自分を救ってくれた軍に恩返しをしたい、次は自分が皆の役に立つ番だ———!!
まだ少年だったあの頃から、今も、これからもずっと、軍への忠誠心は消えない。
なんとしてでも、軍のお役に立ってみせる。そんな熱い思いを秘めたまま、今日も息をしている。
「あっはは! いやぁ、困ったもんだねぇ、このご時世。頼んだよ、参謀諸君。実際に話すことができて俺は嬉しい。さぁさぁ、もっと酒を飲んでくれ。疲れてるだろう」
「楽しもう、この世界を。今は激動の時代だ、まだ我が国の進撃は終わってなどいない! これからだろう、諸君!」
「お目にかかり光栄でございます。改めて、私は刈出八楽と申します。断斬師団の師団長を務めている中将であります。どうぞ、私めで良ければお相手いたしましょう」
「お前たち。何をやっているんだ? 先程からコソコソと、疑ってほしいとでも言わんばかりの行動だが。国を護る軍人であるのだから、少しは堂々としたらどうだ」
「鬼だと言われても結構だ。鬼になる他なかったのだから」
「やってやろうじゃないか。我々に課されたこの問題を、平和かつ確実に解決してみせよう」
「私は軍人だからね。それ相応の義務と責任は背負っていくつもりだ。……否、言葉にするまでもないことだがな」
「そうかたくならなくていい! あはは、日頃から疲れを感じる他ない状況にいるのだから、今ぐらいは気を楽にしようじゃないか!」
「これは、上からの命令だ。我々に課された重大な任務だ。暗黙の了解という言葉があるように、軍人である我らは即座に理解をし行動に移さねばならない」
呼び方:天音
師団長仲間として、彼には尊敬と信頼を抱いている。そして、恋人として愛情も抱いている。
天音は甘味と茶を好んでいるが故に、八楽も気がつけば甘味が好きになっていたようだ。甘味のおかげで心が落ち着くという考えも共感できるほど。
彼の冷静さといい実力といい、かっこよさといい、たまに年下であることを忘れてしまうようだ。
呼び方:昊光様
八楽が人生を捧げると誓っている祓魔軍、それを統率する煌月昊光には厚い尊敬を向けている。盲目———とまでは行かないといいが———。
昊光が愛している人物である星燈籠皐月にも尊敬を向けており、彼らが下した判断には確実に従いたいと思っている。
呼び方:花之壱くん
軍学校には行っておらず、むしろ軍隊に入ること、戦を行うことを酷く嫌っている様子を見て、八楽は少し頭を悩ませている。
彼女のことを頭の中ではだいぶ子供扱いをしており、八楽の言動を注視するとそれが垣間見える。
年齢差もあるから、だとは思うが、それでも仲はあまり良好ではないようだ。