AI技術の発展に伴い、AIが「メタ認知(metacognition)」を持つのではないかという問いが提起され始めている。ここではひとまず、メタ認知を、「自らの思考過程を認識し、必要に応じて制御すること」としよう。もしAIがこのようなメタ認知を持つとすれば、大きな発展である一方、AIが内部プロセスを隠ぺいする可能性なども出てくる。
AI研究では、メタ認知が、自己評価・説明生成・不確実性評価などと重なるように見えることがある。一方、哲学・認知科学・心理学では、より根本的に、そもそもメタ認知とは何かということや、人間とAIのメタ認知を同じ概念で捉えられるのかということが問われている。
そこで、本研究集会では、「AIとメタ認知」をキーワードとし、人工知能研究・数学・言語学・哲学などの多様な観点から議論を行う。
2026年10月5日(月)12:45~18:45
ハイブリッド開催(対面・オンライン)
日本語
(ただし、発表資料は可能なかぎり英語で作成し、
オンライン配信には英語字幕を付ける予定です。)
ご参加形式を選択してお申し込みください。
神田明神 随神門
12:15 開場
12:45~12:55 谷中 瞳(東京大学・理化学研究所・東北大学)開会挨拶
セッション1(座長:)
12:55~13:25 佐藤 広大(東京大学・理化学研究所)、太田 紘史(関西大学)「AIは自己概念を持ちうるか」
13:25~13:55 篠崎 大河(東京大学・慶應義塾大学)、 土井 智暉(東京大学)「LLMの命題的解釈可能性と自己説明」
13:55~14:25 水上 拓哉(新潟大学)「AIのメタ認知を「帰属の実践」として読む:関係的技術哲学からの検討」
セッション2(座長:)
14:35~15:05 宮原 克典(北海道大学)「個体主義的人工メタ認知批判:エナクティヴィズムの視点から」
15:05~15:35 鈴木 貴之(東京大学)「Is Metacognition Necessary for Next-generation AI?」
15:35~16:05 原 聡(電気通信大学)「「AIの解釈」の多様性」
セッション3(座長:)
16:20~16:50 菅原 朔(国立情報学研究所)「言語モデルのメタ認知的振る舞いをどう測るか」
16:50~17:20 横井 祥(国立国語研究所・東北大学)「言語モデルの内部表現には何が転写されているのか」
17:30~18:20 パネルディスカッション
18:20~18:30 今泉 允聡(東京大学・理化学研究所・京都大学)閉会挨拶
18:30~18:45 写真撮影
AIの「メタ認知」を論じるプラグマティックな意義のひとつは、自己状態を把握しているかのような振る舞いによる出力の改善にあると思われる(ハルシネーションや望ましくない出力の回避など)。しかしこの目的に照らせば、人間的な心的能力が必ず求められるわけではない。本発表では、道徳的行為者性の「帰属」をめぐる関係的技術哲学の議論に着想を得て、AIのメタ認知を帰属の実践の問題として読み替える可能性を示唆したい。
人工メタ認知(artificial metacognition)に関する現在の研究は、メタ認知を自己の内部状態を監視・制御する個体内のプロセスとして狭く捉えがちである。本発表では、それに対して、人間におけるメタ認知、すなわち、私たちが自分の思考や意思決定を理解し、理由づけし、制御するプロセスは、身体化され、関係的であり、社会的に埋め込まれたものであると論じる。この視点は、個体主義的な人工メタ認知の開発がAIの説明可能性(explainability)の課題に対する解決策になるという、広く共有された前提が自明でないことを浮き彫りにする。
Metacognition is known to play several important roles in human thinking and learning. It is therefore often argued that incorporating this ability is a necessary step toward advanced AI, including AGI. Contemporary AI, however, has computational power far superior to that of humans, which might enable it to achieve high performance without metacognition. In this talk, I will consider whether this is really the case.
AIの挙動や判断を人が理解し、信頼できるものにするため、「AIの解釈」に関するさまざまな手法が研究されている。しかし、同じ現象に対する人間の解釈が人によって異なるように、同じAI・同じデータ・同じ挙動や判断に対しても、複数の解釈が存在し得る。本発表では、この「AIの解釈の多様性」という考え方を紹介する。また、都合のよい解釈を選ぶことで、実際には偏りのあるAIを公平に見せかけることができる、といった多様性の負の側面についても議論する。
言語モデルにメタ認知的な振る舞いを要請することは、利用者がモデルの限界を把握し、適切に信頼・利用するための判断材料を得るうえで重要であると考えられる。しかし、現在提案されているベンチマークや分析手法の間で、メタ認知的な振る舞いの「よさ」をどのように捉え、評価すべきかについて合意があるわけではない。本発表では、規範性・言語知識・心の理論などに関する研究を手がかりに、メタ認知的な振る舞いの評価のあり方を検討する。
生成AIがはたしてメタ認知を持つのかという問いは哲学的にも工学的にも大きな魅力がある。とくに最近では、言語モデルの内部表現にはモデル自身の知識や回答の確からしさが何らかの形で反映されているだろうという暗黙的な前提の下で、数多くの経験的な検証がおこなわれている。本講演では、こうした経験的な知見が科学的な証拠としてどの程度有効なのかを考えるため、言語モデルの内部表現に関していまわかっていることを、とりわけデータの統計的性質がモデルの内部表現にどのように反映され得るのかについて概観する。
トヨタコンポン研究所 探査研究「人工自我」研究代表者 今泉 允聡
学術変革領域研究(B)「ナラティブ意識学の創成」研究代表者 谷中 瞳「人間参加型ナラティブ意味解析システムの開発」