名古屋数論幾何集会

日時:2023年11月4日(土) 9:00 -- 19:00

開催形式:現地(オンラインなし)

場所:愛知県立大学サテライトキャンパス(ウインクあいち15階,アクセス:名古屋駅徒歩5分)

世話人:大下達也(群馬大学),佐久川憲児(信州大学),田坂浩二(愛知県立大学)

講演者

プログラム

11月4日(土)


9:00-10:00 小関祥康(神奈川大学)

タイトル:Lubin-Tate 拡大体におけるCM アーベル多様体のねじれ部分群の位数の評価


10:20-11:20 三柴範(東北大学)

タイトル:正標数多重ポリログの代数的点での値について


Lunch break


13:00-14:00 佐久川憲児(信州大学)

タイトル:アフィン代数曲線の基本群上のホッジ構造について


14:15-15:15 並川健一(東京電機大学)

タイトル:GL(n)×GL(n)のRankin-Selberg L関数の臨界値の有理性


Coffee berak 


15:45-16:45 太田和惟(大阪大学)

タイトル:惰性的素数におけるCM楕円曲線の反円分変形に対するイプシロン予想


17:00-18:00 原隆(津田塾大学)

タイトル:非可換ガロワ変形の岩澤理論を追い求めて


18:00-19:00 自由討論

講演概要


小関祥康(神奈川大学)p進数体 K 上のアーベル多様体において、その K 有理点のなす群のねじれ部分群が有限であることは Mattuck によって知られている。その有限群の位数がどの程度の大きさになるかについても、適当な還元型のもとでClark-Xarles らによって調べられている。本講演では、K の「よい」条件を満たすLubin-Tate拡大体 L を考え、CM アーベル多様体の L 有理点のなす群のねじれ部分群の位数の上からの評価について説明する。時間があれば、最近考えているアーベル多様体に関する問題についても触れてみたい。


三柴範(東北大学):正標数の関数体上の多重ポリログは,Carlitz対数関数の一般化としてChangによって導入された.その代数的点での値は関数体上の周期として現れ,重要な研究対象となっている.例えば,正標数多重ゼータ値は正標数多重ポリログの特殊値を用いて表されることが知られている.本講演では正標数多重ポリログの代数的点での値について,代数的独立性を中心に知られている結果を紹介する.


佐久川憲児(信州大学)1980年代にHainとMorganは滑らかな代数多様体の基本群のtruncated group ring上に自然な混合ホッジ構造を定義した. この混合ホッジ構造は様々な興味深い周期を生み出すことが知られており, 例えばYが3点抜き射影直線の場合にはその周期として多重ポリログの特殊値が現れる. 本講演では長さが2の場合に焦点を絞り, p進的な話も交えつつ講演者が得た結果を報告する. 時間が許せば, 相対的副冪単基本群の場合における展望も述べる.


並川健一(東京電機大学)Grenieにより, 無限素点でのある局所積分の非自明性の仮定のもと, GL(n)×GL(n)のRankin-Selberg L関数の臨界値の有理性が示されていた. この仮定は臨界値が中心値である場合は, 正しいことがDong-Xueにより確かめられている. 一方で, 石井-宮崎は, 無限素点でのRankin-Selberg局所積分の明示公式を得ていた. この講演では石井-宮崎の結果の応用として, 中心値とは限らない全ての臨界値に対し, Grenieの仮定に現れる局所積分の明示公式を与え, 臨界値の有理性を示す. またこのモチーフ論的な帰結や関連する話題についても紹介する. (原隆(津田塾大学), 宮崎直(北里大学)との共同研究.)


太田和惟(大阪大学)p進ガロワ表現の族に対して、加藤和也は局所イプシロン因子を補間する局所イプシロン同型の存在を予想した。この講演では、CM楕円曲線の惰性的素数における反円分変形の場合の局所イプシロン同型を、Rubin 予想とよばれるガロワコホモロジーの分解定理を用いて明示的かつ elementary に構成できることを説明する。また、大域的なイプシロン予想に関して得られる結果についても説明する。本講演は、Ashay Burungale 氏 (テキサス大学オースティン校)、小林真一氏 (九州大学)、安田正大氏 (北海道大学) との共同研究に基づく。


原隆(津田塾大学)John Coates 等が提唱した非可換岩澤理論は,「純モチーフの"非可換変形"を岩澤理論的手法で調べる研究分野」と解釈されるべきもので,非可換変形ならではのエキゾチックな現象が多々観察されて非常に興味深い理論ですが,一方で実態がよく分かっていないことも多く,現在もまだ発展途上にある状態です.本講演では,非可換岩澤理論のこれまでの進展(特に総実代数体の非可換ガロワ拡大に対する仕事)をごく簡単に振り返った上で,講演者の現在の取り組みや考えていることなどをいくつか選んでご紹介できれば,と考えております.