ワクチン接種後の発熱 服用できる解熱鎮痛剤
アセトアミノフェン
身内から「以前医師からもらったロキソニンはワクチン接種後の発熱に使用できるか」との問い合わせがあった.ということで,アセトアミノフェンと非ステロイド性抗炎症薬との違いをメモしてみた.
厚生労働省は, 接種後に服用できる解熱鎮痛剤の成分としてアセトアミノフェンに加えて, 以下の2種を追加した(6.25)ーアセトアミノフェンの品薄対策のためー
イブプロフェン、ロキソプロフェン 👈
アセトアミノフェン(Acetaminophen) 医療用医薬品名 「カロナール」, 【第2類医薬品】 タイレノールA
新型コロナワクチン接種後の副反応に対する推奨薬
別項で例示した非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs) と異なり,抗炎症作用は有していない.
アセトアミノフェンはシクロオキシゲナーゼ(COX)系の阻害効果は弱く, 視床下部の体温調節中枢に作用して表在毛細血管を拡張させ, 解熱作用を発揮するとされている. また, 鎮痛作用は, 視床および大脳に作用し, 痛覚閾値を上昇させるためと推定されていた. その後, 米国国立科学院会報に掲載された論文で, 痛みに関与する「COX-3」の存在が明らかになり, 同時にアセトアミノフェンがそれを特異的に阻害することが分かった.
PM&計算構造
結晶構造(パッキング)
結晶構造(単分子の充填構造)
【第2類医薬品】として入手可能
○タイレノールAはカロナール300 (300mg)と同じ成分.
○バファリンルナは2錠中にイブプロフェン 130mg, アセトアミノフェン 130mg, 無水カフェイン 80mg, 乾燥水酸化アルミニウムゲル 70mgを含む.
〈関連薬物の紹介〉
フェナセチン(Phenacetin) ← OHをOEtに変えただけで使えない.
アセトアミノフェンのフェノール性水酸基がエチル化された化合物であり,かって広く使用された鎮痛剤.プロドラッグ的な存在であったが,長期に大量を服用した場合の腎障害や腎盂・膀胱腫瘍の発生リスクの増大等が指摘され日本薬局方(2003)から削除された.厚生労働省のメッセージ(平成13年4月19日).
フェナセチンの代替薬としてアセトアミノフェンが存在したので,使用禁止に踏み切れたが,代わりに非ステロイド性抗炎症薬を使用していたらフェナセチンの場合と同様な事態になったと指摘する見解もある.
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は, シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害することにより, プロスタグランジンの生成を抑制し解熱鎮痛作用を示す. NSAIDsはピリン系と非ピリン系に分けることができる. 代表的なNSAIDsを以下に示した.
エテンザミド(Ethenzamide)
サリチル酸系解熱鎮痛消炎剤
市販の頭痛薬や総合感冒薬で,アセトアミノフェン,カフェインとともにACE処方として用いられる.頭痛,歯痛,生理痛,発熱を抑える.新セデス錠,ノーシン錠,サリドン,コンタクト,クイックロコなど
イブプロフェン(Ibuprofen) ブルフェン, イブ ワクチン接種後の副反応に対する推奨薬(6.25 追加指定)
2-アリルプロピオン酸(プロフェン)系
市販薬の代表的な鎮痛成分,種々の抗炎症,解熱,鎮痛薬に配合される.効果を発揮するまで比較的時間がかかるが,ロキソプロフェンよりも持続時間が長い.薬店で購入可能.
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する注意喚起の記載がウエブ上にあったが, 現在は根拠はないとの見解になっている.
3. WHOの主な見解(2020年4月19日)(厚生労働省)
現時点において、NSAIDs(注:イブプロフェン等)を使用した結果として、新型コロナウイルス感染症の感染患者における重篤な有害事象の発生、救急医療等の利用、生存期間、又は生活の質(QOL)への影響が生じたという科学的な根拠は得られていません。
ジクロフェナク(Diclofenac) 商品名「ボルタレン」
ロキソプロフェン(Loxoprofen) スイッチOTC薬 ワクチン接種後の副反応に対する推奨薬(6.25 追加指定)
プロドラッグであり,組織(肝臓,皮膚,筋肉)でカルボニル還元酵素の代謝により,より高活性のtrans-OH型に変換される (下図). 発熱や炎症の原因となるプロスタグランジンの生合成を抑制して,抗炎症,鎮痛,解熱作用等を示す.
非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs) は,一般的に消化器への副作用が強いが,ロキソプロフェンはプロドラッグのため,吸収されるまで作用を示さず胃腸障害を軽減する.
2011年,処方箋医薬品から一般用医薬品へのスイッチOTCが認められ, 第一類医薬品となった. 薬剤師常駐のドラッグストアでの購入が可能.
ナプロキセン(naproxen) ナイキサン、サリチルロン、ナロスチン、モノクロトン、ラーセン
2-アリルプロピオン酸 (プロフェン)系医療用医薬品(日本)
鎮痛.解熱,抗炎症薬として用いられる非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs) の一種.光学活性化合物であり,薬物として有効性を示すのは (S)-(+)体 のエナンチオマーである.
N-アリルアントラニル酸 (フェナム酸)系医療用医薬品
頭痛や歯痛,生理痛の緩和などのために経口投与
鎮痛作用,抗炎症作用,解熱作用
アスピリンよりすぐれた解熱作用が認められている
作用機序 プロスタグランジン生合成抑制作用である.
アンチピリン(Phenazone、Antipyrine) ピリン系NSAIDs
イソプロピルアンチピリン(Isopropylantipyrine) ピリン系NSAIDs
別名、プロピフェナゾン(Propyphenazone)
発癌作用のあるニトロソアミンにならないため, アミノピリンの代替薬として使用されている.
資料
アセトアミノフェンの計算構造,FMO(PM6分子軌道法)
HOMO ENERGIES (EV) = -8.766
LUMO ENERGIES (EV) = -0.527
2021.6.23