Search this site

Embedded Files

ホーム
レッドブルー / switch
ワールドトリガー
その他

柿崎と影浦

9ページ目

柿崎　「俺は、ボーダーに入ったときからずっと、逆らえない流れに巻き込まれてくような苦しさがあって、息をつく暇もなかった。『街を守るために』『敵に負けないように』『ボーダーを強くするために』、『成長しろ』『強くあれ』…。いったいいつまで走り続ければいいんだろうってよく考えてた。俺たち、今まで急ぎすぎてたんだ。遅すぎることなんてない。」

柿崎は影浦の手をとりながら言う。「『無駄なものなんてひとつもない』とかわかったようなこと俺には言えねぇ。でも、カゲが自分の弱さや痛みを自覚して向き合えるようになるまでのその過程は、絶対に無駄じゃなかったはずだ。下手な生き方でも大丈夫だよ。」

柿崎　「今だってカゲが自分の言葉で俺に打ち明けてくれたじゃんか。それってさおまえが自分自身と向き合い続けてきたからできたことだろ。なっ。」　影浦　「俺…今までバカみたいなことばっかしてきたけど、そういうのはもうしたくねえと思ってるから…。」　柿崎　「うん。わかってる。」　影浦　「なあ、ザキさんがさっき言ったこと…。今もまだ苦しさを感じることあるのか？」

柿崎　「ない…と言えば嘘になるかな。」　影浦　「やっぱ辞めちまうのかよ。」　柿崎　「どうだろ。なかなか踏ん切りがつかねーんだよな。カゲは辞めるときのこと考えたことあるのか？」　影浦　「あー。戦える相手がいなくなってつまんなくなったら辞めんじゃね。」　柿崎　「ははは。カゲらしいな。」　影浦　「笑ってんじゃねーよ。」　柿崎　「そっか。じゃあおまえが辞めるときに一緒に連れてってもらおうかな。なんて。」

影浦　「いいぜ。」　柿崎　「え。」　影浦　「今度は俺があんたを連れ出す番だ。」

場面が変わり、冒頭二人が初めて会話したその後のシーンになる。柿崎が挨拶しながら喫茶店の扉を開ける。「こんにちはー。」　店主　「おや、国治くんいらっしゃい。好きなとこ座ってて。」

柿崎　「この喫茶店の店長とうちの親が仲良くてさ。たまにサービスしてくれんだよね。」　影浦　「フーン。」　店主　「いらっしゃい。こちらは国治くんのお友達かな？」　柿崎　「うん、そう。」　柿崎　「ウソついてんじゃねえよ。」　柿崎　「友達じゃないですって答えるほうが気まずくないか？」

影浦　「おまえさ、俺をここに連れてきてどうしてぇんだよ。」　柿崎　「どうって、ただダラダラしたいだけだよ。好きなんだ、ここ。静かで落ち着くだろ。」

日の光が差し込む店内が映し出される。　柿崎　「な。」　影浦　「ああ。」

影浦　「すごく静かだ。」　*終わり

以下奥付…イメージソング：Mokita　『down』、タイトル：「凪」、発行日：2022年10月22日（2023年10月1日再版）、発行者：ham（余暇）、印刷所：あかつき印刷。この本は個人による非公式ファンブックです。原作者、出版社とは一切関係ありません。無断転載、複写、転用、web上へのアップロード、ネットオークションやフリマアプリへの出品を禁止します。

この話の先頭へ

ワートリのアーカイブへ戻る

SNSや掲示板へのURL共有、作品の転載・無断使用を禁止しています。ご意見や不備の報告などはWaveboxへお願いします。

Google Sites

Report abuse

Google Sites

Report abuse