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LABEL: BLOG
DATE: 01/27, 2026
BLOG POST
TITLE:
The Fall / 落下の王国
RELEASE-DATE:
09/09, 2006
DIRECTOR:
Tarsem Singh
COUNTRY:
India, United Kingdom, United States
STORY REVIEW
CAUTION: SPOILERS!
前々からタイトルと断片的なシーンの画像のみ知っており、いつか鑑賞したいと思っていたため、デジタルリマスター上映を機に映画館へ足を運んだ。
(鑑賞自体は 11 月の中旬頃だったため、若干間を置いての記憶頼りな感想)
映像美については再三語り尽くされていると思うが、個人的には海外の童話、あるいは夢をそのまま映像に閉じ込めたような印象を受けた。
夢を映像化する試みは古今東西で幾度となく行われてきたが、そういった映画でありがちな間延びはなく、本作を退屈に鑑賞する人は少ないように思う。
常に展開があり、かといって目まぐるしすぎることもなく、突飛ではあるが起承転結もある。
糸からゆっくりと布が織られていくような、丁寧な構成・映像で、傑作と言われているのも納得の緻密さだった。
ただ一応、人を選ぶ映画であることは言っておきたい。
誰でも楽しめる名作、という種類の映画ではない。この種の現実感・脈絡のなさを楽しめない人は大勢いるだろうとも思う。
鑑賞者の理解、受容、感性に頼る部分は非常に大きい。
海外の童話 (殊、グリム童話) における顕著な残酷さ、荒唐無稽で理不尽なグロテスクさを含みながら、全体としては「美しい」にまとめていくバランス感覚が素晴らしいと感じた。
童話モチーフの過剰な子ども向け感、ミニチュア世界のような悪夢感を出さないことに、本作にしかない独特のセンスが存在していると思う。
優れた画家がパトロンに阿ることなく自分の精神世界と向き合うような、そんな純粋さが本作にはあり、それが傑作足らしめているのかもしれない。
人に鑑賞を勧めるかと言われたら、個人的にはそういう映画ではないという評価になる (無論好きそうな人には是非見てほしい) が、鑑賞から何をかヒントや着想を得るにはとてもよい映画なのではないだろうか。
思い返してみると、自分の記憶には「お話」よりも「現実」のシーンの方が印象に残っている。
殆ど薄暗く古臭い病院内ばかりなのだが、切り取り方なのかカラーグレーディングなのか、とにかく何か懐かしいような光の演出が素晴らしく、光景の記憶として思い出される。
加えて、主人公の子役俳優が、「いかにも木から落ちそうな落ち着かない子ども」の演技に終始徹底しているのが圧巻だった。
あの演技ができるなら、絶対に普段は頭がよく、いい意味で子どもらしくないはずなのだが、それを感じさせない幼さを客観的にも演出できるのはとても素晴らしい俳優だと思う。
全体として、制作に関わった様々な人たちが細部までこだわり抜いた先の、洗練された映画という印象を受けた。