日本大学 文理学部 情報科学科
北原研究室 阿久井愛
J-pop の楽曲をバラードやジャズなどの原曲とは異なるスタイルで演奏するため の楽譜が市販されている.このような試みはその曲の楽しみを広げるだけでなく, なじみのなかったジャンルに興味を持つきっかけとして大変有用である. 本稿では,このような試みをさらに進める一環として,ユーザーが指定した楽 曲に対して,ラテンジャズのスタイルでピアノ演奏するための楽譜を生成するシ ステムを実現する. ラテンジャズのスタイルにアレンジする際には,ラテンらしい前奏,ラテンら しい伴奏パターン(左手パート)の生成に加え,メロディ自体のリズムも変化さ せる必要がある.ラテンらしいリズムをそのままメロディとして使用すると原曲 らしさが保てなくなってしまうという問題があるからである. そこで本研究では,実際にピアノ演奏されているラテン音楽で使用されている リズムから最もふさわしいものを選び,メロディーのリズムとして採用した.具 体的には,ラテン楽曲で使われているリズムと編曲したい楽曲のメロディを一小 節ごとに DTW を用いて比較することで原曲に近いリズムを探し出し,更にラテン 楽曲内での出現頻度を加味することでラテンらしさを考慮した.伴奏として左手 パートを作る際には,原曲のコード進行をラテンピアノ楽曲で頻出するパターン を選びの上で演奏する.さらに原曲の A メロ・B メロ・サビの構成を考慮して頻 出するパターンの中から十分に異なるリズムパターンを選び,適用する.さらに ラテンのリズムを強調するため,ラテンピアノの教本を参考にしたリズムパター ンを前奏として生成する. ii 本システムで生成されたラテン風ピアノ編曲はラテンらしさを反映することが できたのかを確認するために音楽専門家に評価してもらう主観評価を行った.ラ テンらしく編曲ができているかという質問に対し 10 点満点中 6.61 点という評価を 得られた一方,音高の配置は適切かという質問の回答は 5.35 点にとどまった.