熊本地震から3年

2016年4月14日の前震と同16日の本震で,観測史上初めて最大震度7を2度観測した平成熊本地震から,今日(2019年4月16日)で3年になった.

二度の震度7の地震と余震で,熊本、大分両県で,家屋の倒壊などによる直接死50人,地震後の避難生活などが原因と市町村が認定した震災関連死218人,同年6月の豪雨災害で地震との関連が認められた5人の計273人が犠牲になったと報じられている.熊本県庁では追悼式が行われ,益城町の 益城情報交流センターには追悼献花台が設けられた.

復興の現状を各種報道記事をもとにまとめてみた.

交通インフラ 阿蘇大橋は元の位置から600m熊本側に新しい橋が建設中である.不通が続いている国道57号線は北側復旧ルートの二重峠トンネルが貫通し2020年度内に開通するとのことである.また,豊肥線は大規模な斜面崩壊で肥後大津~阿蘇間約27.3kmで運転の見合わせが続いているが,来年度中に開通する予定と報じられている(2019年4月12日).南阿蘇鉄道は,2022年度の全線復旧を目指して南阿蘇村の立野-中松の10・6キロで工事が進んでいる.

仮設住宅 住家被害は両県で全壊8651棟,半壊3万4613棟,一部損壊16万3148棟に上った.仮設住宅や自治体が民間の賃貸物件を借り上げるみなし仮設住宅にはピーク時(2017年5月)には,自宅を失った熊本県の被災者2万255世帯の4万7800人が仮設住宅などで生活.3月末時点でも7304世帯1万6519人が仮住まいで暮らしている.

復興住宅 熊本県内の12市町村は自宅再建が難しい被災者の恒久的な住まいとして復興住宅70団地,計1717戸を整備予定であるが,2019年3月29日現在で完成しているのは29%の496戸.熊本地震の復興需要による建築業者不足などで自宅の再建や災害公営住宅(復興住宅)の整備が遅れており.熊本県が目指す来春までの仮設解消は難しい見通しである.

コミュニティー機能の低下 仮設団地に残った入居者の高齢化も課題のようだ.熊本県によると,建設型の仮設住宅(4303戸)の入居率は3月末で46.32%.自宅を再建した比較的若い世代が退去し,復興住宅の完成などを待つ高齢者が取り残される傾向が見られるという.65歳以上の高齢世帯率は36.13%に上り,住民同士で見守り合ってきたコミュニティー機能が低下していると指摘している記事がみられる.

家賃負担 熊本地震の復興住宅の家賃負担も問題とのことである.熊本地震で自宅を失い,再建困難な被災者の恒久的住まいとして整備が進む災害公営住宅(復興住宅)には,主に年金生活者などが入居すると予想されるが,家賃が重い負担となる可能性がある.自宅や仮設住宅では家賃は要らなかったが,復興住宅の場合は月1万5000~5万4000円程度の支出が必要といわれてる.熊本県内では20年春までに12市町村で1717戸が整備予定になっており,既に8市町村の270戸が完成しているが,被災者向けに家賃補助などの支援を新設した自治体はないとのことである.

観光の復興 熊本県の観光客数は地震があった16年は前年比18.7%減であったが,17年以降は訪日外国人を中心に回復傾向にある.天守閣や石垣が損壊した熊本城全体の復旧費用は600億円を超えると予想されている.市は20年後の完全復旧を目指しているが,天守閣は今年度中に再建し,現在は立ち入りが制限されている城の見学が10月から再開される.

私事になるが,父母が隠居していた家の耐震補強工事が,今日(平成31年4月15日)終了した.熊本地震の復興需要による建築業者不足で延び延びになっていた工事である.工事終了前日の4月14日の熊本日日新聞にショッキングな記事が掲載された.

日奈久断層帯、依然ひずみ 九大など調査

3年前の地震では布田川断層帯のひずみが開放されただけで,日奈久断層帯は依然ひずみを保持しているとのことである.

熊本日日新聞電子版の図を使用しました.

追記1

熊本市内の地震被害は,2度の震度7地震に見舞われた益城町に較べれば,軽微な印象であったが,最近そうでもないらしいと思うようになった.その理由はほとんどのビルが順番に最上階まで届く足場が作られ,外壁の修理が実施されているからである.このような状況が3年間続いているわけだから,一般家庭の小規模な被災個所の修理や耐震補強工事が大幅に遅れるはずである.

写真左下 左側のマンションの工事が終了したら,写真中心と右側のマンションに足場が設けられている(自宅南側を撮影 4/16).

写真右下 北東側のマンションにも足場が作られている(自宅北側を撮影 4/16).

追記2

自宅前新屋敷郵便局の解体工事(2019年4月ー5月)

後ろから2枚は2019年9月9日に追加掲載した写真である.

(2019/4/16)