国際規格IIIF高精細画像

九大コレクション

蒙古襲来絵詞, 源氏物語歌絵


インターネット上で高精細な画像を公開・閲覧するための仕組みや技術は,一昔前まではそれぞれ独自に一から開発したものを使うのが主流であった.世界中のミュージアムや図書館が同じ目的のため,似たようなものを必要としているのなら,それらを標準化して,画像をお互いに利用できるような仕組みをつくろうという動きが現実のものとなった.そのようにして作られたのがIIIF(International Image Interoperability Framework)で,現在はIIIFコンソーシアム [https://iiif.io/] という形で,技術的な仕様の策定や普及活動が進行中である.

我が国でも国立国会図書館デジタルコレクションや大学附属図書館等で利用が開始された.今回紹介する九大デジタルアーカイブ画像データ国際規格IIIFに準拠しているため,大きく拡大して細かいところまで見ることができる.一例として九大コレクションの蒙古襲来絵詞の一コマを示した.実際にアクセスして拡大画像で確認してみてほしい.パソコンの画面一杯に拡大しても鮮明な画像を楽しむことができる.合戦の場における武士,蒙古兵,馬の表情には冊子体にはない迫力を感じることができる.

源氏物語歌絵 概要

巻子本(31.3×505.0)。四季・賀・祝の各部ごとに『源氏物語』からそれにふさわしい場面を絵と和歌で描出したもの。各部の依った巻と場面は次の通りである。「春」‐花宴(宮中南殿の桜の宴, 源氏と朧月夜との邂逅)「夏」‐常夏(源氏, 玉鬘に内大臣家の人々を評する)「秋」‐少女(秋好中宮から紫上へ「紅葉の消息」)「冬」‐朝顔(童女達の雪まろばし)「賀」‐若菜下(正月, 六条院女楽)「祝」‐藤裏葉(内大臣邸の藤の宴)但し, 賀部は, 歌なし(物語中でもこの場面では歌は詠まれていない)。

祝 藤のうら葉

秋 おとめ

冬 あさかほ

我家には,「絵巻で楽しむ源氏物語五十四帖」(週刊朝日百科)が本棚に並んでいる.文字を目で追いながら,想像を巡らすのもよいが,素人には絵巻を眺めながら読みすすめる方がもっと想像が膨らむものである.以下の絵図は源氏物語の二十帖「朝顔」に描かれている「雪ダルマ遊び」である.「絵巻で楽しむ源氏物語五十四帖」(週刊朝日百科)に掲載されている絵図はハーバート大学と堺市博物館所蔵の土佐である.印刷体の大きさは実物の90%程度ではあるが,細かいところを拡大してみるのは限度がある.そこで,本源氏物語を所蔵しているハーバード大学Arthur M. Sackler Museumにアクセスしてみた.九大コレクションの源氏物語歌絵の作者は不明であるが,ハーバード大学のものは我国から外国へ流出した土佐光信のものである.

ハーバード大学本源氏物語

ハーバート大学Arthur M. Sackler Museumに収蔵されている画像(土佐光信作)

Object Number: 1985.352.20.A

People: Tosa Mitsunobu, Japanese (active c. 1469-1522)

Title: The Bluebell (Asagao), Illustration to Chapter 20 of the Tale of Genji (Genji monogatari)

Dimensions: H. 24.2 cm x W. 17.9 cm

Persistent Link:

https://hvrd.art/o/199937

IIIF規格の画像の普及で,我国から世界中に流出した名作を自宅にいて鑑賞できる時代がようやく到来した.中小の美術館のIIIF画像化を期待したい.

九大コレクションの説明

九大コレクションに登録された九州大学が所蔵する文庫・文書群等の目録データを検索できます。一部の資料についてはデジタル画像を公開しています(※2020年3月現在、活字本検索機能は調整中です)。

九大コレクションで公開しているデジタル画像(JPEGファイル)は、国際規格IIIF(International Image Interoperability Framework)に対応したビューワーで閲覧することができます。IIIFについて詳しくはこちらをご覧ください。

九大コレクションで公開している九州大学附属図書館所蔵資料のデジタル化画像は、一部を除き、事前の利用申請をすることなく、無償で、改変・商用利用も含めた自由な利用が可能です(2018年10月より)。詳しくはこちらをご覧ください。

※メタデータについても公開、提供しています。詳しくはこちらをご覧ください。

冬 あさかほ

(2023.1.7)