古いスライド画像の修復

Coolscan III--LUB-SC--iBook G4の接続で現役(2022年8月2日)

(ポジフィルム,フィルムスキャナー,カビ,退色,修復,GIMP,SCSI-USB変換

古い写真はスキャンして電子アルバムとして残しているが,保存媒体である光ディスクの寿命は10〜20年,最長で100年といわれている.カラー写真の色の変化に至っては経験済みであり,長寿社会になった今,一生の思い出として記録する意味がなくなってしまった.カラースライド(ポジフィルム)も例外ではない.半世紀前に撮影したスライド(ハーフサイズ)を,フイルムスキャナー(Nikon,Coolscan III)を使ってデジタル化しておこうと,保管箱から取り出し,スキャン画像をみて驚いた.遮光容器に入れて保存しているにもかかわらず,スライドはことごとく変色,退色,カビなどで見るに堪えない状態であった.

次画像は標準的な条件で取り込んだ「天草第5橋」スライドのスキャン画像である.

取り込んだスキャンデータは画像処理プログラムGIMP 2.8.18 を用いて,自動補正の「平均化」処理を行うと,以下の画像が得られた.画像の右上隅と下部にカビの繁殖痕が見られた.

次に,自動補正の「色強調」を行うと以下の画像が得られた.右上隅のカビが生えた部分は,その左側の色調の延長と見なすことができる.

「スタンプで描画」ツールを使って,大きなゴミとカビを取り除いたものが次画像である.実際にやっている操作は,ゴミ,カビの部分を周囲の色で塗りつぶすだけ(コピー&ペースト)である.

小さいゴミは「ぼかし」ツールで周辺の色と同化させた.

まだ未完成であるが,取り敢えず以下に示すような画像(濃淡の異なる二種)を得ることができた.

フイルムスキャナーで取り込む際は,プレスキャン画像を見て画質を補正しておけば,本スキャン後の補正が楽である.赤紫色に変色したスライドもそれなりに再現することが確認できた.

元画像

修復画像 左下隅の赤色部分はカビによる変色(未処理)

一度は破棄しようと思ったが,時間的余裕があれば,修復を試みる価値はあるようだ.完璧な再現は無理と思うが,その時の感動を呼び起こすには十分であると思っている.


使用機材

Nikon Coolscan III,Scan ソフト Nikon Scan 3.1 主な仕様

Power Mac G4 (Quicksilver 800),プロセッサは1.8 GHzにグレードアップ,メモリ 1.5 GB SDRAM,起動ディスク SSD60GB

OS X 10.4.11,SCSI機器をUSB2に変換するアダプタ(LOGITEC LUB-SC)を使用してPCに接続.

LOGITEC LUB-SC

熊本地震で転がり落ちても壊れなかった筐体のPower PCを利用.フィルムスキャナは中央の機器(1998年発売).15年間使用しているが,二度モーターが回転しなくなる故障を起こした.カバーを開け,モーター軸にマイナスドライバー用の切込みが入っているので,戻る方向に僅かに回転させることで解決できた.

追記(2022.8.2)

熊本地震から6年が経過し,当時使用していたQuick Silverは廃棄しため,LUB-SC接続によるCoolscan IIIは動かないものと思っていたが,iBook G4OS X起動専用,OS9対応のアプリや周辺機器はOS X上のClassic環境OS9.2.2で使用可能)で動くことを確認できた.PC環境:Mac OS X version 10.4.11, 1.07GHz Power PC G4, 512MB, DDR SDRAM. スキャンソフト NIKON Scan 2.2(付属CDからインストール). SCSIのID番号はセロに設定.
今回チェックしたスライドの多くはサクラカラーであるが,有機色素が分解してしまい,全体が赤紫色になっており,色の濃い部分(色素が多い部分)のフィルム表面は盛り上がっている状況である.