高校生のための心理学講座@金沢工業大学
質問と回答
当日いただいた質問に対する回答を、すべてUPしました。(2019/08/28 18:18)
当日いただいた質問に対する回答を、すべてUPしました。(2019/08/28 18:18)
このページでは、会場で参加者の皆さんが書いてくださった「質問票」に対する、講師の先生方の回答を公開します。「質問票」以外の方法での質問には応じかねますが、以下の内容に関して何かお気づきの点があれば、本ページの一番下にある、webサイト管理者までメールでお問合せください。
動くものに注目しやすいと聞いたことがあるのですが、好きなもの (静止) と嫌いなもの (動く) では違いが出るのですか?
その通り、動くものは注意を引きます。好きなものと、動くもののように、注意を引きやすいものが複数ある場合、それぞれが注意を引く力の強さによって、どこに注意が向くかが決まります。
認知心理学は、どのような場面で活かすことができますか?
認知心理学的な方法は、心を調べるための基礎になるものなので、そこで分かったことは、多くの場面で活用されます。臨床、教育、産業やものづくりの現場などで、認知心理学の知見が使われています。
ユング派や精神分析学派など、様々な学派がありますが、どの大学にどの学派の先生がいらっしゃるか、偏りがあるなどはないのでしょうか?
偏りはあると思います。各大学の伝統や方針によって、あるいは担当する科目などによって、採用が決まるのだと思います。
心理学を学んだ後の進路や就職について
大きく分けると臨床心理系の職を目指す場合と、それ以外に分けられます。臨床心理の職につくためには、現状は臨床心理士あるいは公認心理師の資格が不可欠で、どちらも大学院を修了する必要があるので、進学をすることになります。それ以外の場合は心理学を直接仕事に活用することよりも、いわゆる文系的な就職で企業に入る場合が多くなります。ただし、最近はIT系企業やマーケティングなどの分野で、心理学で学ぶデータ処理や生理測定の技術が注目されているので、そのような職につく場合も増えています。
公認心理師の資格について
最近、施行された公認心理師法に基づく国家資格です。大学と大学院でそれぞれ定められた単位を取得した後に試験に合格する必要があります。金沢工業大学は大学、大学院ともに現状で公認心理師に対応した科目を開講しています。金沢大学も大学は既に対応しており、大学院も数年のうちには対応する予定です。
こういう人が心理学を学ぶのに向いている
もちろん、どんな人でも学ぶことはできます。学ぶ上で重要なのは論理的、客観的であることだと思います(最後の部分は伊丸岡の私見です)。
認知心理学以外で基礎心理学の分野は?
知覚心理学、記憶心理学、学習心理学、感情心理学などの分野があります。認知心理学は、これら全てを含むと考えていただいた方がいいかもしれません。例えば知覚という対象を認知心理学的手法で研究する、ようなイメージです。認知心理学的手法以外にも、行動主義心理学的手法など他の手法もあります。
心理学者になりたかったら入学後、何をすればいい?
そのためには大学卒業後に大学院修士課程、博士課程と進み、博士号を取得することが必要になります。心理学に関して幅広い知識を身につけることに加え、自分自身で新たな研究を進めていかなくてはいけません。心理学をはじめとした授業科目で必要な知識を身につけることはもちろん、自分の研究テーマにつながるよう、社会のさまざまな問題に関して関心を持っておくことが重要だと思います。あと、最近は研究をする上で英語と数学的知識はあって邪魔になるものではないので、余裕があったら英語と数学の勉強をしておきましょう。
大学の教授は普段の講義以外は自分の研究をしている?研究チームを組むことはある?
研究、しています。研究の成果は学会発表や論文として公開していますので、もし興味があったら講師の名前でインターネット検索してみてください。研究内容によってはチームを組むことも多くありますよ。
金沢工大の心理科学科の卒業生の進路は?
「進路や就職」という質問への答えにあるように、総合職として採用される場合が多いです。本当に色々な進路があり、文具メーカーや食品メーカーなどの製造業(職種としては営業や商品企画)、専門商社などの流通系(営業)に加え、ここ数年はIT系の企業に採用される学生が多くいます。具体的な企業名は、金沢工業大学HPの心理科学科紹介ページをご覧ください。
はじめは臨床心理士になりたいと考えていたのですが、大学院まで行かなければならないということで、自分にはそこまでの頭脳がないのであきらめ、同じ国家資格で福祉の中で相談に乗る社会福祉士を今は志しているのですが (認定心理士がまだできておらず、資格をもつものが心理系であまりなかったので、親がすすめたので志したのですが)、心理と社会福祉は関係性がありますか?また、心理系で人の相談にのれる資格のある職業って何がありますか?
(心理と社会福祉は関係性がありますか?)
とても近い分野で業務が重なる部分もあります。社会福祉の方はセラピー (心理療法) をするわけではないので、具体的に社会福祉士とはとは何か、調べてみてはどうでしょう。
(心理系で人の相談にのれる資格のある職業は?)
心理系の国家資格は、公認心理師のみです。民間であれば、臨床心理士、学校心理士、産業カウンセラー、精神対話士、などがあります。
児童心理司になりたいのですが、どのような心理分野を学んだら良いですか?
発達心理学、臨床心理学を基本として、より多くの分野で広く学んでほしいと思います。
心理カウンセラーの仕事をすると、収入はどれくらいですか?また、その他の職業の収入についても教えてください。
大学院修了直後は、非常勤で働く人も多いので、年収は300万円以下~800万円以上まで幅広いです。
心理学を学んでよかったなと思ったことは何ですか?
あいまいだと思っていたこと (心の働き、はその代表的なものだと思います) を、科学的、客観的に調べるための手法があるということを知れたことです。心を調べるためにデータを取るとは思っていなかった。
心理学を独学で学ぶことはできますか?
専門的な書籍を使えば、ある程度の知識に関しては、独学で学ぶことはできると思います。ただし、研究を進める上で必要な技術を身につけるためには、実習や、複数の領域を体系的に結びつける必要があります。そのためには、心理学を学ぶことができる大学に入るのが、確実で、手っとり早いと思います。
教育心理学と学習心理学の違いがよく分かりませんでした。学ぶことについての内容の違いを教えてほしいです。
教育心理学は主に学校を中心とした場面での子どもの発達や学習に心理学の知見を活用する応用心理学ですが、学習心理学はより広い場面に一般に適用されるような「経験と行動変容の関係」に関する一般的な原理を研究する基礎心理学になります。
公認心理師になるには臨床心理学を学ばないといけないのでしょうか?臨床心理学以外を大学で学んでいてもなることはできますか?
公認心理師になるには養成のためのカリキュラムを開講している学部・大学院で学ぶ必要があります。カリキュラムは臨床心理学が必須です。
公認心理師や臨床心理士などの資格は、どんな仕事に就くにしても役に立ちますか?(自分はカウンセラーなどよりも商品企画などに興味があります。)
役に立たないとは言えませんが、心理専門職になるための学部と大学院のカリキュラムは、多大な時間と労力とお金を必要としますので、なぜ資格を取得したいか、よく考えてみることをおすすめします。それを考えることは、必ず役に立つと思います。
認定心理士の資格をとりましたが、ボランティア等で活動できることはありますか。
最近、認定心理士の資格取得者を対象に、シチズン・サイエンスプロジェクトが始まりました。認定心理士の方々に実験や調査に参加していただき、ビッグデータを収集しよう、という取り組みです。ホームページをご覧いただき、もし興味があれば、ぜひご協力ください。
地域のボランティア活動に参加される際に、認定心理士を取得していることを示していただいても問題ありません。ただし、日本心理学会の認定心理士は、心理学の基礎知識を習得したことを認める資格であって、専門的な活動 (心理検査やカウンセリング) を行うことを認める資格とは違いますので、その点にご留意ください。
(講義で教えてくださった以外の先生方)
先生方が高校時代に心理学系へ進学しようと思った理由は何ですか?また、研究のご専門を選んだ理由も教えてください。
先生方それぞれ、動機が異なると思いますので、今後、心理学の先生に接する機会があれば、個別に尋ねてみることをお勧めします。ここでは回答者個人の経験談を回答します。元々のきっかけは、テレビや雑誌で取り上げられるような“心理ゲーム”でした。友達と問題を出し合って、楽しんでいるうちに、人の心の働きを学んでみたいと思うようになりました。(実際には、心理学は今回の講座で体験していただいたように、“心理ゲーム”のようなことはしません。入学後にそのことに気づきました。)
専門分野については、僕自身は大学入学後に仲良くなった先生がきっかけで決まりました。大学入学後に仲良くなった助教授 (当時) の授業に出席したり、時には飲み会を開いていろいろお話しているうちに、その先生のご専門に興味を持って、卒業論文から博士論文までお世話になりました。
(講義で教えてくださった以外の先生方)
心理学をより知り学ぶために、お勧めの本をご紹介ください。
最近、高校生向けの心理学の専門書がいくつも出版されています。一般向けの本ではなく、高校生向けの専門書から始めてみることをお勧めします。すぐに思い浮かぶのは、「心理学科をめざすあなたへ[改訂版]」、「高校生のための心理学講座―こころの不思議を解き明かそう―」でしょうか。あと、大きな書店の心理学コーナーに行くと、「心理」のコーナーに専門書がたくさんあります。そのタイトルを眺めてみて、興味があるものを手に取ってみましょう。
(講義で教えてくださった以外の先生方)
ご自身のプライベートにおいても、心理学の知見を活かすことはできていますか?考え方や見方は変わりましたか?
これも人それぞれ、だと思うのですが、個人的には、役に立っていることもあります。知っていながら、あえて意識しないようにしていることもあります(笑)。
心理学で学んだことを直接生かせる職業に就職することは難しいですか
どのように生かすのかによって難しさは違うので、答えるのがとても難しい質問です。臨床心理学の分野であれば、資格を取るまでの苦労は大きいと思いますが、学んだことをさまざまな領域で生かすことはできると思います。公務員の心理職を目指す場合も、公務員試験の勉強に苦労はあると思いますが、苦労に見合った結果は得られるでしょう。それ以外の分野(例えば製造業の商品企画など)で心理学を直接生かそうとすると、求人条件に心理学という分野名が入ることが少ない分、難しさは高くなるように思います。
金沢工業大学では教育心理学、発達心理学について学ぶことはできますか。
授業科目としてはどちらも学ぶことが可能です(カリキュラム上の科目名はやや違いますが、学ぶ内容には含まれています)。教育心理学については、それを研究分野としている教員もいるので、自分自身の研究テーマとすることもできるでしょう。発達心理学については研究のフィールドが必要な分野なので、そのような研究が確実にできるとは言えませんが、指導可能な教員はいますよ。
私は児童心理にとても興味があって,児童相談所や児童養護施設で働いてみたいと思っているのですが,その際にどのようなことを学べばよいのか,また,取らなければならない資格があれば,詳しく教えていただければ嬉しいです。また,児童相談所で子どもと接する中で,大変なこととやりがいを感じることを教えていただけますか。
一時保護所の一時保護指導員や巡回相談は,どの資格を必要としますか。
ご質問ありがとうございます。まず,資格についてです。児童相談所も児童養護施設も,希望する職種によって必要とされる資格が異なります。具体的また詳細な情報は別途調べていただければと思いますが,「保育士」「社会福祉士」「臨床心理士」などの資格,あるいは「大学で心理学,教育学,社会学もしくは社会福祉学を学ぶこと」が求められているようです。また,巡回相談員も特定の資格を必要とするわけではありませんが,私の周囲では,「臨床心理士」「臨床発達心理士」「特別支援教育士」「理学療法士」「作業療法士」「言語聴覚士」「社会福祉士」「保育士」などのいずれかの資格を取得された方が担当しています。今後は,以上の資格に「公認心理師」も含まれるようになると思います。
次に,大変なこととやりがいですが,一時保護指導員として勤務していた約20年前を思い出しながら回答いたします。「大変だったこと」は,実はあまり思い出せないのですが(忘れている可能性は大いにあります),強いて挙げるなら夜間の緊急保護への対応でしょうか。子どもたちとの保護所での生活は,(とても)楽しかったです。「やりがい」に関しては,一時保護指導員が子どもたちと過ごすのは短期間です。そうした「限られたふれあい」が,子どもたちのその後を支える「何か」になるかもしれない,というかすかな希望を持って従事していました。
教育心理学や発達心理学を学び,教師などの教育現場以外で生かすことは可能ですか?
ご質問ありがとうございます。「職種として」として「生かす」ということでしたら,例えば,児童相談所や児童養護施設に勤務する場合,「大学で心理学,教育学,社会学もしくは社会福祉学を学ぶこと」が求められていることもありますので,そうした領域で生かすことができるかもしれません。「人生において」「生かす」ということでしたら,大いに可能なのではないかと思います。
子ども中心の第三者として意思疎通が難しい場合には,どのように対応されますか。
ご質問ありがとうございます。とても大事なのは,「意思疎通が難しい」という事実を冷静に受け止め,決してその状況を否定しないということでしょうか。そして,可能であれば,意思疎通が難しい原因を探ります。原因は一つではなく,明確ではないことも多いと思いますが,その原因に働きかけることも考えられます。受け止める,原因を探る,寄り添う,無理強いをせず待つ,ということが大切なように思います。
うまくいかない時に暴言や暴力で表現してしまう子どもにはどう対応するのが好ましいですか。
ご質問ありがとうございます。暴言や暴力の背景によって対応が異なってくるかと思います。ですので,まず,どういう時に暴言や暴力が認められるのかを探ります。暴言や暴力の背景や要因がある程度把握できるようでしたら,例えばそうした背景や要因を緩和する,削除するといった観点から,環境を調整するということが考えられます。谷内先生が講義で示しておられた子どもに対する関わり方(お菓子売り場でだだをこねるケースですね)も,参考にしてみてください。
子どもの発する方言について質問です。子どもの語尾やイントネーションは,家族(都市出身の親御さんなど)と,住環境(まわりの大人や友人)のどちらの影響をうけやすいということはありますか。子どもの語彙がどのように増えていくのかが気になりました。
ご質問ありがとうございます。研究結果や経験を踏まえますと,お子さんの年齢によって影響の受け方が異なるように思います。年齢が低いほど家庭の影響をより強く受け,年齢が上がるにつれて(あるいは人間関係が広がるにつれて),社会の影響をより強く受けるようになるのではないでしょうか。また,個人差も大きいかもしれません。
認定心理士でできる仕事と,公認心理師でできる仕事は,どのように違いますか。また,これらの2種の資格を取るためには,大学院ではなく,放送大学などに再入学することになりますか。
認定心理士は、心理学の基礎知識を学んだことの証明となる資格です。専門職に直接結びつく資格ではありません。一方、公認心理師は、カウンセラーなどの専門職に就くために必要な資格となります。認定心理士を取得した方が専門職に就くこともあるようですが、より専門性が求められる仕事に就くことを考えておられるのであれば、公認心理師の取得をご検討ください。
いずれの資格も、放送大学で取得することができるようです。放送大学の「公認心理師の資格取得を目指す方へ」のページに、詳しい説明が載っていますので、ご確認ください。認定心理士と公認心理師の違いについても、このページに説明があります。
将来臨床心理士になりたいと考えているのですが、どうやったらなれますか。大学院まで行かなければなれませんか。やはり頭がよくないとなれませんか。おしえてください。お願いします。
臨床心理士になるには「指定大学院」を修了する必要があります。詳しくはこちら(公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会HP)をご覧ください。
ちなみに公認心理師(国家資格)についてはこちら(一般財団法人日本心理研修センターHP)をご覧ください。
何をもって頭がよいとするか、これも心理学のテーマの一つです。最初に書いたように、臨床心理士になるには大学院修了が必要ですので、一般的には大学を経て大学院へ進学することになります。大学受験に必要な学力は必要ということになります。できれば心理学が学べる大学を選び、まずは臨床心理学をはじめとしていろいろな心理学を学んでみてください。なぜ臨床心理士になりたいのかいろいろな理由や動機があると思いますが、自分の関心がどこにあるのか、学ぶことではっきりするのではないでしょうか。
臨床心理士と公認心理師の違いはなんですか。又、児童福祉士はこれらの資格と異なりますか。スクールカウンセラーは需要が高いと思っていたけれど、なぜ勤務が短いのでしょうか。
臨床心理士は民間資格ではありますが、現在、約36,000人の登録者がおり、心理専門職として社会にその役割と功績が認められてきた資格です。新しく誕生した公認心理師は国家資格であり、臨床心理士とは対象、業務内容、そして活動分野は非常に重なるところが大きい資格です。そのため、多くの臨床心理士が公認心理師の試験を受け、2つの資格保持者となっています。国家資格か民間資格かの違いの他は、今後の見通しとしては未知数です。それぞれ独自性をもって共存していくのか、競合していくのか、心理専門職として働く当事者たちもその動向を見守っていますし、自分自身の立ち位置を各自が考えていくことになるでしょう。
児童福祉司は臨床心理士とも公認心理師とも異なります。児童相談所などに勤務する福祉の分野の任用資格となります。詳しくは厚生労働省のホームページをご覧ください。
公立の小中学校に配置されているスクールカウンセラーが常勤職となり毎日学校で仕事ができれば、そこでの役割も幅広くなり効果的な支援活動ができるかもしれません。しかしそうするにはかなり大掛かりな経済的基盤が必要です。スクールカウンセラーの配置にかかわる費用は都道府県や市町村などの予算ですので、それぞれの予算の範囲で人数や時間数が決まっていくことになります。
石川県では個人開業のものは2つとおっしゃっていましたが、雇ってもらうのは大変(難しい)ですか。また個人開業のものは都会の方が多いのでしょうか。
心理学的支援の個人開業は都会の方が圧倒的に多いです。石川県に限りませんが、開業は小規模の形態のところが多いように思いますので、雇う人数も多くはないと思います。
心理カウンセラーは具体的にどのように悩みなどをきいて解決するのですか。また、どのような悩みが多いのですか。
悩みは本当にさまざまですが、対人関係にまつわる悩みや葛藤は多いように思います。心理カウンセラーがどのように悩みを解決していくか、それはぜひ大学や大学院で学んでいただければと思います。大学入学前でも臨床心理学の入門書を読むだけでもある程度はどのような方法があるのかはわかると思います。どの方法でもクライエントとカウンセラーとの人間関係(治療関係)が非常に重要になってきます。
医療保健分野では、理系的な要素が必要となりますか。
どのような要素を想定しておられるのかわかりませんが、基本的な統計の知識は必要になります。
最近テレビやネットで夏休み明けに自殺する人が増えるという記事を見かけます。そのような人たちを減らすために心理学の面から何かできることはないでしょうか。また、自分の周りにそのような人がいた時にできることはありますか?
自殺の予防については心理学においても優先的に取り組むべき課題です。スクールカウンセラーなど子どもに関わる心理職は、この時期の児童生徒の心理や葛藤を理解し、それに応じて本人や周りの大人に働きかけることが必要になります。そして個人を対象に働きかけるだけでなく、学校全体を対象にストレスへの対処方法や心の不調に関する正しい知識などをテーマに、メンタルヘルスに関わる心理教育を行うことも大事な仕事です。
あなたの近くにそのような人がいたとき、まずはあなたがその人のことを心配している、気になっているということを本人に伝えてみてはどうでしょうか。あるいは身近な大人に自分の気がかりを話してみてください。スクールカウンセラーでもいいですね。たとえ「カウンセリング」でなくとも、悩みでなくても、誰かと話すということがよいきっかけになることは多いです。
話すことが上手ではない人でもカウンセラーになることはできますか?
講座の中でも少し触れられていましたが、カウンセラーとしての話の仕方、聴き方については、スキルとして練習のうえで習得できるものも多いです。また、話すことが上手でないという悩みを持つ人は多いので、より共感的に話を聴くことができるかもしれません。
カウンセラーになるためには、スキルよりも「人に関心があるか」ということが大事になってくるように思います。話すことは上手でなくても、人って面白いな、不思議だなという気持ちがあれば大丈夫なように思います。
カウンセラーを目指す上で、今からやっておいた方がいいことや、できることを教えてほしいです。
高校生の皆さんでも楽しめる心理学関連の書籍はたくさん出版されていますので、興味がわきそうなところから手に取ってみてください。チラシにもいくつか紹介されています。
カウンセラーは自分以外のいろいろな人の人生に関わる仕事です。自分の人生経験が豊富であれば、より共感的に話を聴けるでしょう。しかし自分が実際に経験できることには限界がありますので、多様な人生を疑似体験できるように、小説、漫画、映画などをたくさん読んだり観たりしてください。落語もいいですね。これらの中の心理描写に触れて、自分も含めた人間の心がどんなときにどう動くのか、疑似的にでも体験しておくことが役に立つと思います。仕事以外に自分が熱中できる趣味を見つけて育てておくこともお勧めします。
公認心理師が広まり、今後は臨床心理士の役割はどうなるのでしょうか。展望を教えてください。
今後の展望はまだ見通せません。しかし公認心理師は国家資格ですから、公的機関や医療機関は公認心理師を採用の条件にしています。現時点では公認心理師もしくは臨床心理士の資格を有する者という募集の仕方が多いように思われます。(他の質問への回答も参照してください)
Web管理者:渡邊伸行 (金沢工業大学情報フロンティア学部心理科学科)
問い合わせ先:n-watanabe[at]neptune.kanazawa-it.ac.jp ([at]を@に変えてください)