座長 演者の方へ
発表5分 討論3分
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参加者の皆様へ
教育講演について
ランチョン形式で実施し、参加登録された人数分のお弁当を準備しております
受付時に引換券をお渡ししますので、教育講演前にお弁当と引き換えてください
松江テルサ 4階
第一会場 大会議室
11:30~ 世話人会
12:00~ 教育講演
13:00~ 学生セッション
14:50~ 一般口演 消化器 肝胆膵
第二会場 中会議室
10:00~ 外科手技セミナー
14:50~ 一般口演 乳腺 呼吸器 心臓血管
10:00~12:00
手術手技セミナー
共催:ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
対象 医師・初期研修医・学生
第二会場 中会議室
内視鏡手術(ドライラボ) 4セット
腸管吻合
皮膚縫合
12:00~13:00
教育講演
共催:アボットメディカルジャパン合同会社 株式会社アムコ ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
第一会場 大会議室
教育講演 「ロボット手術時代の若手医師教育」
座長
島根県立中央病院
外科・消化器外科部長 岩﨑純治先生
講演 1
鳥取大学医学部
医学教育学 講師 花木武彦先生
「育つ」から、「育てるへ」 ―ロボット手術時代の外科教育に求められるもの―
医学の進歩と外科手術の専門分化が急速に進む現代において、外科教育の在り方も変革を求められている。従来からの、経験の中で自然と成長することを前提とした教育スタイルでは、多様化・高度化する現場のニーズに十分に応えることが難しくなりつつある。今後は、意図と設計に基づいた「育てる」教育への転換が重要であり、その実現には、教育の質と機会のバランスを意識した体系的な取り組みが求められる。本講演では、外科教育に対する現状の課題と、それに対応するための基本的な考え方を示すとともに、学習者の主体性と教育者の意欲を引き出すための取り組みを紹介する。また、持続可能性からも、教える側の外科医自身が教育の意義を再認識し、個々の取り組みが将来の医療を支える礎となることへの理解が求められる。外科学の発展と歩調を合わせながら、次世代の外科医を育成していくための環境づくりを、今こそ進めていくべき時期である。
講演 2
京都大学大学院医学研究科
消化管外科学 准教授 肥田侯矢先生
「どう学ぶ?どう教える?~ロボット手術時代の外科教育~」
1995年世界初の手術支援ロボットが発売され、わずか30年のうちに全世界で10000台を超える手術支援ロボットが導入されています。新型ロボットも参入し、まさに群雄割拠となっているロボット戦国時代に我々は何を学び、何を伝えればいいのでしょうか。腹腔鏡を学ぶ必要はないのでしょうか?複数のロボットを使うことは意味があるのでしょうか?人はストレスを乗り越えることで大きく成長します。パワハラのない社会はある意味学習者にも難しい時代ともいえます。令和の時代にどう学び、どう教えるのがいいのか、考えてみたいと思います。
13:00~ 14:30
学生セッション
第一会場 大会議室
座長
島根大学医学部附属病院 心臓血管外科 今井健介
審査員
藤原義之先生
鳥取大学医学部 医学科 器官制御外科学講座 消化器外科・小児外科学分野
吉川泰司先生
鳥取大学医学部 医学科 器官制御外科学講座 心臓血管外科学分野
田中雄悟先生
鳥取大学医学部 医学科 器官制御外科学講座 呼吸器・乳腺内分泌外科学分野
若原 誠先生
鳥取大学医学部 医学科 器官制御外科学講座 呼吸器・乳腺内分泌外科学分野
前田啓之先生
鳥取県立中央病院 呼吸器・乳腺・内分泌外科
徳家敦夫先生
隠岐広域連合立隠岐病院 院長
上平 聡先生
島根県立中央病院 心臓血管外科
渡部広明先生
島根大学 医学部医学科 Acute Care Surgery 講座
山根正修先生
島根大学 医学部医学科 外科学講座 呼吸器外科学
中田朋宏先生
島根大学医学部附属病院 小児心臓血管外科
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学生セッション 1 13:00~13:08
退形成性膵癌とIPMCの混在を認めた若年女性の1例
五十嵐 亮(いがらし りょう)島根大学医学部医学科 6年
学生セッション 2 13:08~13:16
遺伝性大腸腺腫に対してロボット・腹腔鏡(Hybrid)にて大腸全摘を施行した一例
小椋 紀稀(おぐら かずき)鳥取大学医学部医学科 6年
学生セッション 3 13:16~13:24
当科における原発性小腸癌の検討
廣兼 和沙(ひろかね かずさ)島根大学医学部医学科 6年
学生セッション 4 13:24~13:32
腹腔鏡下結腸悪性腫瘍手術における近赤外線蛍光クリップを用いた新たな術前マーキング法の有用性の検討
吉田 真人(よしだ まさと)島根大学医学部医学科 6年
学生セッション 5 13:32~13:40
妊娠継続下で術前化学療法を施行したHBOC異時性両側乳癌の1例
井野 寿音(いの ことね)鳥取大学医学部医学科 5年
学生セッション 6 13:40~13:48
V-V ECMO下に切除し得た気管腫瘍の一例
谷川 明夏(たにがわ あきな) 鳥取大学医学部医学科 6年
学生セッション 7 13:48~13:56
大網充填による気管支断端瘻閉鎖術後に分離肺換気を実施した一例
嶋岡 寧々(しまおか ねね)島根大学医学部医学科 5年
学生セッション 8 13:56~14:04
単一乳頭筋(パラシュート僧帽弁)、左外側尖無形成を合併した完全型房室中隔欠損症+ファロー四徴症の1例
勝部 司(かつべ つかさ) 島根大学医学部医学科 6年
学生セッション 9 14:04~14:12
たこつぼ型心筋症により心室中隔穿孔を合併した一例
島田 真穂(しまだ まほ)鳥取大学医学部医学科 6年
学生セッション 10 14:12~14:20
原発性乳び心膜に対して心膜切除並びに心膜開窓のみを施行し良好な結果となった一例
山﨑 祐次郎(やまさき ゆうじろう)島根大学医学部医学科 6年
学生セッション 11 14:20~14:28
三尖弁形成を要した右室血管腫の1例 ―術前画像と術中所見の検討―
元永 圭一(もとなが けいいち)鳥取大学医学部医学科 6年
14:30~14:45
第一会場
学生セッション表彰式
14:50~
第一会場 大会議室
口演
消化器 肝・胆・膵
座長
上田 晶彦
島根大学医学部附属病院 高度外傷センター
消化器 1 14:50 ~ 14:58
移動盲腸を合併した高度肥満腹壁ヘルニア嵌頓の1例
岡 和幸(おか かずゆき) 島根大学医学部Acute Care Surgery講座
消化器 2 14:58 ~ 15:06
腸管虚血評価に対する当院での取り組み - Dual energy CTの有用性 -
牧田 大瑚(まきた だいご) 鳥取県立中央病院 外科
消化器 3 15:06 ~ 15:14
胃glomus腫瘍の1例
菅沼 和弘(すがぬま かずひろ ) 鳥取県立厚生病院 消化器外科
消化器 4 15:14 ~ 15:22
総肝動脈周囲高度リンパ節転移を有する切除不能胃癌に対してSOX+Nivolumab療法後に根治切除し得た1例
織原 淳平(おりはら じゅんぺい) 鳥取大学医学部 消化器外科・小児外科
消化器 5 15:22 ~ 15:30
経仙骨的に切除した仙骨前面のepidermoid cystの一例
尾﨑 晃太郎(おさき こうたろう)鳥取大学医学部消化器・小児外科
座長
川上 晃樹
雲南市立病院 外科
消化器 6 15:30 ~ 15:38
虫垂粘液性腫瘍の診断で手術を施行した虫垂子宮内膜症の1例
鈴木 寛隆(すずき ひろたか) 山陰労災病院 臨床研修センター
消化器 7 15:38 ~ 15:46
メッケル憩室に発生した小腸悪性リンパ腫の一例
田部 博山(たなべ ひろたか) 松江市立病院 消化器外科
消化器 8 15:46 ~ 15:54
ロボット支援下直腸手術と術後麻痺性イレウスに関する検討
石飛 一成(いしとび かずなり) 島根大学 医学部医学科 外科学講座 消化器・総合外科学
消化器 9 15:54 ~ 16:02
食道癌・食道胃接合部癌術後ニボルマブ補助療法の安全性と短期治療成績
松原 毅(まつばら たけし) 島根大学 医学部医学科 外科学講座 消化器・総合外科学
消化器 10 16:02 ~ 16:10
CR後の落とし穴:傍大動脈リンパ節転移食道癌 Conversion Surgery
岡村 拓樹(おかむら ひろき)島根大学 医学部医学科 外科学講座 消化器・総合外科学
座長
岸 隆
大田市立病院 外科
肝・胆・膵 1 16:10 ~ 16:18
肝細胞腺腫との鑑別に苦慮した限局性結節性過形成の1例
吉田 惇(よしだ じゅん) 鳥取大学医学部消化器・小児外科学分野
肝・胆・膵 2 16:18 ~ 16:26
右心房へ進展した下大静脈腫瘍栓を伴った右腎癌に対して、循環器外科と合同で摘出術を行った1例
中村 光佑(なかむら こうすけ) 島根大学 医学部医学科 外科学講座 消化器・総合外科学
肝・胆・膵 3 16:26 ~ 16:34
肝浸潤を伴う悪性褐色細胞腫に対する外科的切除症例
田中 貴之(たなか たかゆき) 島根大学 医学部医学科 外科学講座 消化器・総合外科学
肝・胆・膵 4 16:34 ~ 16:42
術前診断に苦慮した腫瘤形成性の胆管周囲付属腺過誤腫を伴った肝細胞癌の1例
佐々木 陽平(ささき ようへい)島根大学 医学部医学科 外科学講座 消化器・総合外科学
肝・胆・膵 5 16:42 ~ 16:50
高齢男性に発症した膵頭部充実性偽乳頭腫瘍の一例
中嶋 健人(なかじま けんと) 島根県立中央病院 研修センター
肝・胆・膵 6 16:50 ~ 16:58
2度のConversion surgeryを行った膵体部癌の一例
荒川 将司(あらかわ まさし) 松江赤十字病院
14:50~
第二会場 中会議室
口演
乳腺 呼吸器 心臓血管
座長
若原 誠
鳥取大学医学部 呼吸器・乳腺内分泌外科学分野
乳腺 1 14:50 ~ 14:58
術前診断に難渋した副乳癌の一例
鈴木 隆将(すずき たかまさ) 鳥取大学医学部 器官制御外科学講座 呼吸器・乳腺内分泌外科学分野
乳腺 2 14:58 ~ 15:06
乳房に悪性リンパ腫を発症したメトトレキサート関連リンパ増殖性疾患の一例
大田 里香子(おおた りかこ) 鳥取県立厚生病院 外科
座長
氏家 裕征
島根大学医学部附属病院 呼吸器外科
呼吸器 1 15:06 ~ 15:14
Transmanubrial approachおよび高位後側方アプローチを行い切除した肺尖部胸壁浸潤肺癌の1例
和田 杜甫(わだ とほ) 鳥取大学医学部 器官制御外科学講座 呼吸器・乳腺内分泌外科分野
呼吸器 2 15:14 ~ 15:22
術後にstageⅣAと診断され、Osimertinibが著効した左上葉肺腺癌の一切除例
山﨑 雅也(やまさき まさや) 鳥取県立厚生病院外科
呼吸器 3 15:22 ~ 15:30
リンパ管造影とICG投与が手術に有効であった左乳び胸の一例
二子石 想(ふたごいし そう) 鳥取県立中央病院卒後臨床研修センター
座長
倉敷 朋弘
松江赤十字病院 心臓血管外科
心臓血管 1 15:30 ~ 15:38
瘤外からのback flowの止血に難渋した膝窩動脈瘤の1例
小林 太(こばやし ふとし) 鳥取県立厚生病院
心臓血管 2 15:38 ~ 15:46
血管内治療後の右大腿感染性仮性動脈瘤の1治験例
中嶋 健人(なかじま けんと) 島根県立中央病院 臨床教育・研修支援センター
心臓血管 3 15:46 ~ 15:54
冠静脈損傷を伴う鈍的心損傷による心タンポナーデの1例
上田 晶彦(うえだ あきひこ) 島根大学医学部附属病院 高度外傷センター
心臓血管 4 15:54 ~ 16:02
TAVI後にStanford A型大動脈解離を発症した一例
大谷 舜(おおたに しゅん) 島根大学 医学部医学科 外科学講座 循環器外科学
座長
城 麻衣子
島根大学医学部附属病院 小児心臓血管外科
心臓血管 5 16:02 ~ 16:10
左腎動脈嚢状瘤に対しウシ心膜パッチを用いた血行再建を行った一例
中島 潤哉(なかしま じゅんや) 鳥取大学医学部 器官制御外科学講座 心臓血管外科分野
心臓血管 6 16:10 ~ 16:18
心房細動を合併した重症大動脈弁閉鎖不全症に対して心外からCryoICEを用いてMAZE手術を施行した症例
和田 浩巳(わだ ひろみ) 島根大学 医学部医学科 外科学講座 循環器外科学
心臓血管 7 16:18 ~ 16:26
人工血管の圧排により機械的溶血性貧血を引き起こした仮性動脈瘤の1例
徳留 純平(とくとめ じゅんぺい) 鳥取大学医学部 器官制御外科学講座 心臓血管外科分野
心臓血管 8 16:26 ~ 16:34
ShaggyAortaの弓部大動脈瘤に対して脳梗塞発症予防に両側鎖骨下動脈を確保し、脳分離を送血しながら遮断した症例
和田 浩巳(わだ ひろみ) 島根大学 医学部医学科 外科学講座 循環器外科学
学生セッション 1
退形成性膵癌とIPMCの混在を認めた若年女性の1例
五十嵐 亮(いがらし りょう) 島根大学医学部医学科 6年
島根大学医学部 外科学講座 消化器・総合外科 中村光佑、佐々木陽平、岡村拓樹、井上圭亮、岸本彩奈、石飛一成、谷浦隆仁、梶俊介、林彦多、田中貴之、松原毅、山本徹、日髙匡章
症例は30代女性。心窩部痛を主訴に受診。CTで膵尾部に約6cmの多房性嚢胞性腫瘤を認め、一部に嚢胞壁破綻とcyst-in-cyst構造を呈し、膵粘液性嚢胞腫瘍(MCN)が疑われ紹介受診。CA19-9 60.6 U/mL、CEA 2.1 ng/mL。腫瘍は2か月で2cm増大し、胃に接触する副病変の出現あり、腹腔鏡補助下膵体尾部脾合併切除術を施行。病理にて膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMC)と退形成性膵癌(ACP)の混在を認めた。ACPは膵癌の中でも稀な亜型で、全膵癌の1–3%に見られ、平均生存期間は6~12ヶ月と予後不良である。さらにIPMNやIPMCに退形成成分が混在する場合、術前画像や腫瘍マーカーにて鑑別は困難なことが多いとされている。若年女性であっても、嚢胞性病変の急速増大や内部不均一な充実成分を認める際は、ACPの可能性を念頭に置く必要がある。
学生セッション 2
遺伝性大腸腺腫に対してロボット・腹腔鏡(Hybrid)にて大腸全摘を施行した一例
小椋 紀稀(おぐら かずき) 鳥取大学医学部医学科 6年
鳥取大学医学部 器官制御外科学講座 消化器外科・小児外科 浦上啓、尾﨑晃太郎、安井千晴、柳生拓輝、河野友輔、木原恭一、山本学、徳安成郎、坂本照尚、奥山宏臣、藤原義之
家族性大腸腺腫(Familial Adenomatous Polyposis: FAP)は将来的に大腸癌を高率に発症する疾患であり、若年での大腸全摘術が推奨される。ロボット手術は腹腔手術と比較して骨盤内深部での神経同定と剥離操作の正確性が高く、術後の性機能・排尿機能の温存率が向上している。症例は20歳男性で家族歴にてFAPの指摘があった。大腸内視鏡にて直腸から盲腸まで多数の腺腫性ポリープ(>100個)を認めた。自律神経温存を重視し直腸部分はロボット、結腸側は腹腔鏡で予防的大腸全摘を施行した。術後22日で自宅退院、性機能や排尿機能は術前と比較し低下は認められなかった。FAP患者では癌化低リスクである若年での手術が推奨されており、性機能や排尿機能への影響を最小化することが重要である。今回われわれは、ロボットと腹腔鏡の併用によるハイブリッドアプローチで大腸全摘を行った症例を経験したので報告する。
学生セッション 3
外科的介入を行った原発性小腸癌の検討
廣兼 和沙(ひろかね かずさ) 島根大学医学部医学科 6年
島根大学医学部 外科学講座 消化器・総合外科 岸本彩奈、井上圭亮、石飛一成、谷浦隆仁、山本徹、日髙匡章
【諸言】原発性小腸癌は稀な消化管原発悪性腫瘍で標準治療は確立されていない。当科で経験した原発性小腸癌症例について検討し報告する。【方法/目的】2016/3-2025/3の間で当科で経験した7例を後方視的に検討を行った。【結果】年齢中央値は64歳[55.5-70.5],男女比4 : 3であった。原発は空腸:回腸 4:3例で,UICC-TNM分類(第8版)では空腸癌stageⅠ/Ⅱ/Ⅲ/Ⅳ=0/1/1/1(未検索1),回腸癌stageⅠ/Ⅱ/Ⅲ/Ⅳ= 2/0/1/0であった。初回術式は小腸部分切除が6例,回盲部切除が1例で,術後補助化学療法は3例に施行された。再発は2例で腹膜播種,リンパ節再発であった。原病死は2例,生存期間中央値は85.7カ月であった。【結語】原発性小腸癌は大腸癌と比して予後は比較的良好であるも、再発率がやや高い傾向があった。補助化学療法や術後サーベイランスの確立が望まれる。
学生セッション 4
腹腔鏡下結腸悪性腫瘍手術における近赤外線蛍光クリップを用いた新たな術前マーキング法の有用性の検討
吉田 真人(よしだ まさと) 島根大学医学部医学科 6年
出雲徳洲会病院 外科 大谷裕、田原英樹、井谷史嗣
背景:腹腔鏡下結腸悪性腫瘍手術において、病変部の正確な同定は切離線および郭清範囲の決定において重要であり、術前マーキングは不可欠である。しかし従来の点墨法では、染色の拡がりや異物反応が、クリップ法では術中のリアルタイムな視認困難という問題があった。そこで、近赤外線蛍光クリップを用いた新たなマーキング手法の有用性を検討した。方法:2023年7月~2024年6月に当院で施行した腹腔鏡下結腸悪性腫瘍手術26例中、蛍光クリップを導入した15例につき、術中の視認性を評価した。結果:多くの症例で蛍光クリップは赤外線モード下で良好な視認性を示し、病変部の同定に有用であり、視認率は約75%であった。考察:視認性は、蛍光クリップの留置位置や角度、腸管の展開方法、カメラの挿入角度により変動することが示唆され、手技の工夫が重要と考えられた。結語:蛍光クリップは点墨法に代わる有用な手段となる可能性がある。
学生セッション 5
妊娠継続下で術前化学療法を施行したHBOC異時性両側乳癌の1例
井野 寿音(いの ことね) 鳥取大学医学部医学科 5年
鳥取大学医学部附属病院 胸部外科診療科群 細谷恵子、鈴木隆将、安田遼太、和田杜甫、野坂祐仁、藤原和歌子、大島祐貴、深谷由美、松居真司、窪内康晃、田中裕子、若原 誠、田中雄吾
【症例】29歳女性。右乳癌T2N0M0 StagelIA TN typeに対しNAC後、右Bt(NSM)+Axが施行された。40歳時(妊娠20週)に左乳房に3cm大の新規腫瘤を認め、浸潤性乳管癌 TN typeと診断された。妊娠22週に当院紹介、T2N0M0 StagelIAの診断で妊娠26週からAC療法を開始しcPRとなった。妊娠37週に誘発経膣分娩した後、PTXを完遂した。遺伝学的検査でBRCA1病的バリアントが検出され、手術は左Bt+SLNBと共に右RRM(乳頭乳輪部)を施行した。pCRが得られ、RRSOも施行された。【考察】本症例は高齢妊娠かつ化学療法により、胎児の発育不全および早産リスクが高い状態であったが無事に出産と治療を完遂することができた。妊娠可能年齢の乳癌症例にはHBOCの可能性があり、適応がある症例には遺伝学的検査の必要性を漏れなく説明し、検査を勧めることが重要である。
学生セッション 6
V-V ECMO下に切除し得た気管腫瘍の一例
谷川 明夏(たにがわ あきな) 鳥取大学医学部医学科 6年
鳥取大学医学部附属病院 胸部外科診療科群 呼吸器・乳腺内分泌外科 鈴木隆将、安田遼太、和田杜甫、野坂祐仁、藤原和歌子、深谷由美、大島祐貴、松居真司、細谷恵子、窪内康晃、田中裕子、若原誠、田中雄悟
【症例】70代,女性.血痰を主訴に近医を受診した.胸部CTで気管分岐部から3cm頭側に15×14×21mm大の気管内腫瘍を認めた.気管支鏡下生検で神経鞘腫と診断された.腫瘍が大きく窒息のリスクもあったため,気管管状切除+再建術を予定した.術中の換気不良が予想されたためV-V ECMO下に手術を行う方針とした.右内頸静脈へ送血管を,右大腿静脈へ脱血管を留置し ECMOを開始した.その後,ラリンジアルマスクで気道を確保した.胸骨正中切開で開胸し,左腕頭静脈・腕頭動脈・左総頸動脈をテーピングし気管を露出させた.腫瘍位置を確認して気管を管状に切断した.切断後に術野挿管を行ったが,吻合操作の妨げとなったため,挿管チューブを抜去し,完全ECMO下に吻合操作を行った.気管再建後,口からの挿管チューブで換気ができることを確認しECMOは離脱した.【結語】ECMO下の気管管状切除は安全で有用な方法であった.
学生セッション 7
大網充填による気管支断端瘻閉鎖術後に分離肺換気を実施した一例
嶋岡 寧々(しまおか ねね) 島根大学医学部医学科 5年
島根大学医学部 外科学講座 呼吸器外科 山根正修、氏家裕征、渡辺青、山本寛斉
【緒言】分離肺換気は一般的に肺切除術などの胸腔内操作が必要な手術で行われる.今回,大網充填による気管支断端瘻閉鎖術後に,気道内圧の負荷軽減を目的に分離肺換気を実施し,良好な経過を得た症例を報告する.
【症例】72歳女性.肺癌に対し右下葉切除術を施行.術後22日目に気管支断端瘻が判明し,開窓術を実施した.開窓術2ヶ月後に大網充填による気管支断端瘻閉鎖術を行い,術後も分離肺換気による左片肺換気とした.閉鎖術後48時間で右肺への換気を低圧で再開し,徐々に上昇させた.術後6日目にシングルルーメンチューブへ変更,術後11日目に抜管した.抜管後中葉気管支は閉塞していたが,退院前CT検査では含気が回復し,大網の血流は良好であった.腹式呼吸のリハビリを行い,閉鎖術後30日目に退院となった.
【結語】気管支断端瘻に対する閉鎖術後の分離肺換気による断端の圧負荷コントロールは有効な治療戦略となり得る.
学生セッション 8
単一乳頭筋(パラシュート僧帽弁)、左外側尖無形成を合併した完全型房室中隔欠損症+ファロー四徴症の1例
勝部 司(かつべ つかさ) 島根大学医学部医学科 6年
島根大学医学部附属病院 小児心臓血管外科 城 麻衣子、三浦 法理人、中田 朋宏
完全型房室中隔欠損症に対する心内修復術(ICR)においては、左側房室弁(LAVV)に対して共通前尖と共通後尖の間の裂隙を閉鎖して、左外側尖(LL)と共通尖の2尖とする術式が一般的だが、今回我々は、ファロー四徴症、21 trisomyに加え、単一乳頭筋(パラシュート僧帽弁)とLL無形成を合併した非常に珍しい症例を経験した。使用可能な機械弁の最小サイズが16mmであるため可能な限り体重を増やしてからICRを行う必要があり、4歳15kgで手術介入した。LAVVの裂隙閉鎖の糸は2針のみとし、弁の開口を確保してICRを行った。術中の左房圧 13mmHgで、経食道echoでも狭窄無し、逆流は軽度-中等度に留まったためacceptableと判断した。術後1年のカテーテル検査結果も良好で、LAVV逆流 Sellers 1度、肺動脈楔入圧は右10.5mmHg、左14mmHg であった。
学生セッション 9
たこつぼ型心筋症により心室中隔穿孔を合併した一例
島田 真穂(しまだ まほ)鳥取大学医学部医学科 6年
鳥取大学医学部附属病院 心臓血管外科 岸本 望, 岸本 祐一郎, 大野原 岳史, 掘江 弘夢, 笹見 強志, 仁井 陸冬, 角 尚紀, 徳留 純平, 森本 健一, 中島 潤哉, 吉川 泰司
【背景】たこつぼ型心筋症(TCM)は一過性左室機能障害を呈し一般に予後良好とされるが,稀に致死的合併症を来す.中でも心室中隔穿孔(VSP)の合併は極めて稀である.
【症例】69歳女性.呼吸困難で来院.心電図で前壁誘導のST上昇,心エコーで心尖部瘤化と左右シャントを伴うVSPを認めた.BNP 698 pg/mL,トロポニンI 7.3 μg/mL,CK 299 IU/L,CK-MB 43 IU/Lと高値.冠動脈造影では有意狭窄を認めずTCMに合併したVPCと判断.臓器不全がありECMO+IMPELLA CPによるECPELLAを導入.発症8日目に右室切開でのExtended sandwich PatchによるVSP閉鎖を施行した.病理では広範壊死を伴わない局所的な変性や炎症細胞浸潤の少なさから非虚血性/非炎症性でありTCMの確定診断に至った.遺残シャントは認めず術後22日目に自宅退院となった.
学生セッション 10
原発性乳び心膜に対して心膜切除並びに心膜開窓のみを施行し良好な結果となった一例
山﨑 祐次郎(やまさき ゆうじろう) 島根大学医学部医学科 6年
島根県立中央病院 心臓血管外科 高﨑 直
島根大学 医学部医学科 外科学講座 循環器外科学 山﨑和裕 末廣章一 今井健介 清水弘治 和田浩巳 大谷瞬
【症例】74歳女性。手術歴や外傷の既往はない。近医加療後も増悪する労作時息切れのため当院受診。心エコー、CTで全周性に50 mmの心膜液貯留を認め心タンポナーデ診断。緊急で心嚢穿刺を行い、中性脂肪の980 mg/dL・乳黄白色の心嚢水をドレナージした。心嚢液乳び心膜と診断。リンパ管シンチグラフィーにて左室側壁心膜からの漏出が疑われた。低脂肪食を開始したが、ドレーン抜去後2週間で心膜液の再貯留を認めため、準緊急にて人工心肺下に、漏出が疑われた左室側壁を中心に、横隔神経に注意しながら10×5cmの範囲で心膜切除と心膜開窓術を施行した。術後8か月心嚢水・胸水再貯留なく良好に経過中である。【考察】乳び心膜は乳び液が心嚢腔に貯留する稀な疾患で、約半数の症例で保存的治療が無効で外科的治療が必要になるとされる。今回我々は、術前検査に従って左側壁中心に心膜切除をおこない良好な結果が得られたので報告する。
学生セッション 11
三尖弁形成を要した右室血管腫の1例 ―術前画像と術中所見の検討―
元永 圭一(もとなが けいいち) 鳥取大学医学部医学科 6年
鳥取大学医学部附属病院 心臓血管外科 仁井陸冬、岸本祐一郎、大野原岳史、笹見強志、角尚紀、岸本望、徳留純平、森本健一、中島潤哉、吉川泰司
45歳女性。健診の腹部超音波で右室内腫瘍を指摘され当院紹介。心エコーで右室下壁に43×39mmの腫瘤を認め、三尖弁に接するも弁機能不全は認めなかった。冠動脈造影で右室枝より腫瘍への栄養血管を認め、造影MRIでは中心部へ漸増的に濃染が進行する所見より血管腫が疑われた。胸骨正中切開・経右室アプローチにて心停止下に腫瘍摘除を行い、三尖弁後尖腱索と癒着していたため切除後に三尖弁形成術を施行。術後経過良好で11日目に自宅退院した。病理は良性の血管腫であった。心臓原発性腫瘍のうち血管腫は1〜2%と稀であり、造影MRIでの特有の所見が診断の手がかりとなる。弁に近接する場合には形成術の可能性を考慮し、術前の詳細な構造評価と術中判断が重要である。
消化器 1
移動盲腸を合併した高度肥満腹壁ヘルニア嵌頓の1例
岡 和幸(おか かずゆき)
島根大学医学部Acute Care Surgery講座 川澄駿、渡部開智、上田晶彦、山手敦史、田中航、川口留以、室野井智博、下条芳秀、木谷昭彦、比良英司、渡部広明
【目的】肥満症と移動盲腸を合併した腹壁ヘルニアに対する緊急手術症例を提示する。【症例経過】64歳女性。既往に肥満症(BMI 40.5)等があるが開腹歴はない。約20年前から腹壁の一部膨隆を自覚していた。突然の腹痛を認め受診したところ、CTで回腸から横行結腸が腹壁ヘルニア嚢内に脱出しているのが認められた。用手還納不可であり、緊急手術となった。全麻下にヘルニア嚢直上で皮切を置き、脱出臓器を還納した。移動盲腸を伴っていたため、虫垂切除術を併施し、メッシュによるヘルニア門修復を行い手術終了した。過去に移動盲腸を合併した腹壁ヘルニアの症例報告はない。本症例は移動盲腸のためにヘルニア嚢内により多くの腸管が脱出しやすい状態であったことに加え、肥満症で腹圧がかかりやすく嵌頓を助長したと思われる。【結論】移動盲腸を合併した腹壁ヘルニアの稀な症例であり、肥満症が腹圧を高め、嵌頓を助長したと考えられた。
消化器 2
腸管虚血評価に対する当院での取り組み - Dual energy CTの有用性 -
牧田 大瑚(まきた だいご) 鳥取県立中央病院外科1)救急集中治療科2) 小林誠2)、和田大和1)2)、津田亜由美1)、植嶋千尋1)、尾崎知博1)、遠藤財範1)、蘆田啓吾1)、建部茂1)
腸管虚血は早期診断が重要で、適切な治療戦略をとることが必要である。しかしながら、その画像評価においては造影CTでも評価に難渋する局面が少なからずある。当院では2023年のCT新機導入によりDual energy CTによる評価が可能となり、より精度の高い診断に寄与している。Dual energy CTではX線エネルギーの異なる2つの管電圧を用いて撮影されるため、通常のCTよりも物質弁別能に優れている。ヨード、水、脂肪、カルシウムなど特定の物質を強調した画像を作成でき、腸管虚血の診断に有用とされている。今回、当院でDual energy CTを用いて腸管虚血評価を行い、有用であったと考えられたため、若干の文献的考察を加えて報告する。
消化器 3
胃glomus腫瘍の1例
菅沼 和弘(すがぬま かずひろ)
鳥取県立厚生病院 消化器外科 後藤圭佑,多田陽一郎,岩本明美,鈴木一則,西江浩
【緒言】glomus 腫瘍は四肢末端の皮下や爪下に好発する非上皮性の腫瘍であり、稀に消化管に原発する。疾患の稀少さと粘膜下腫瘍の形態をとることから、術前に正しく組織診断されることは少ない。今回我々は、術前に胃glomus腫瘍と診断し腹腔鏡下胃局所切除術を施行した症例を経験したので報告する。【症例】57歳女性。7年前に前庭部前壁の粘膜化腫瘍を確認され、数年毎に上部内視鏡検査を受けていた。受診2か月前に腫瘍の増大傾向、上腹部痛があり当院を受診した。EUS-FNAで異型の乏しい小型・立方状の細胞が豊富な血管を介在し増生しており、免疫染色ではc-kit陰性、Desmin陰性、S-100陰性、α-SMA陽性を呈し、胃glomus腫瘍が疑われた。腹腔鏡下胃局所切除術を施行し、病理組織所見より胃glomus腫瘍と診断した。【考察】胃glomus腫瘍について若干の文献的考察を含めて報告する。
消化器 4
総肝動脈周囲高度リンパ節転移を有する切除不能胃癌に対してSOX+Nivolumab療法後に根治切除し得た1例
織原 淳平(おりはら じゅんぺい)
鳥取大学医学部 消化器外科・小児外科 松永知之、高橋朋大、清水翔太、宍戸裕二、宮谷幸造、藤原義之
症例は76歳、男性。X年Y月に腹痛で近医を受診し、上部消化管内視鏡検査で胃前庭部後壁に2型腫瘍を認めた。生検でtub1の診断であり、CTで総肝動脈周囲高度リンパ節転移、総肝動脈浸潤疑いにて局所進行切除不能胃癌(cT4aN1(No.8a)M0,StageⅢ)と判断した。Y+3月にSOX+Nivolumab療法を開始後、原発巣・リンパ節ともに縮小を認めた。9コース施行の時点で原発巣の再増大を認めたが、リンパ節は縮小を維持しておりR0切除可能と判断し、手術の方針とした。Y+11月、ロボット支援下幽門側胃切除術(D2郭清、Roux-en-Y再建)を施行し、術後8日目に自宅退院となった。病理学的所見はypT2N1(No.8a)M0,StageⅡA、治療効果判定はGrade1aであった。術後2ヶ月からSOX+Nivolumab療法を開始、術後3ヶ月以降S-1のみ継続し、術後15ヶ月無再発生存中である。
消化器 5
経仙骨的に切除した仙骨前面のepidermoid cystの一例
尾﨑 晃太郎(おさき こうたろう)
鳥取大学医学部消化器・小児外科 河野友輔、柳生拓輝、木原恭一、山本 学
症例は65歳男性.他疾患精査のためのCT検査で偶発的にS5前面の軟部影を指摘され,手術目的に当科紹介となった.MRI検査で粘液などを含む嚢胞性病変が疑われ,仙骨前面腫瘍に対して手術の方針とした.手術は経仙骨的アプローチで行い,腫瘍を切除した.経過は良好であり,術後合併症を認めなかった.病理組織学的診断は類表皮嚢腫(Epidermoid cyst)の診断であり,悪性所見は認めなかった.
Epidermoid cystは全身でみられる先天性嚢胞性病変であるが、仙骨前面に発生するのは極めて稀である.二次感染や癌化,増大による圧迫症状などが発生するとの報告もある.画像による診断に限界があることから手術による完全切除が推奨される.今回我々はS5仙骨前方に発生したepidermoid cystを経験した.本症例に関して若干の文献的考察を加え報告する.
消化器 6
虫垂粘液性腫瘍の診断で手術を施行した虫垂子宮内膜症の1例
鈴木 寛隆(すずき ひろたか) 山陰労災病院 臨床研修センター
山陰労災病院 外科 牧野谷真弘、三宅孝典、山田敬教、福田健治、山根祥晃、柴田俊輔
症例は50歳代女性。特に症状はなかったが検診で便潜血陽性を指摘されたことから、当院消化器内科を受診した。既往歴では30歳代に子宮筋腫の手術歴、帝王切開歴があること以外には特記事項はなし。月経に関する受診歴もなかった。下部消化管内視鏡検査では、虫垂開口部に粘膜下腫瘍様の隆起を認めたため虫垂腫瘍が疑われた。CT検査では根部付近に低吸収域を伴った虫垂腫大および根部の壁肥厚を認めたことから、虫垂粘液性腫瘍を疑われ、手術目的に当科紹介となった。腹腔鏡下に観察すると、明らかな悪性所見は認めなかったことから、虫垂の完全切除のために盲腸部分切除術を施行した。摘出標本の病理検査で虫垂子宮内膜症の診断となった。子宮内膜症の中でも頻度の少ないものは希少部位子宮内膜症と呼ばれ、腸管子宮内膜症もその中に含まれる。虫垂はその中でも非常に珍しい発生部位であり、報告も少ない。当院での経験について文献的考察と共に報告する。
消化器 7
メッケル憩室に発生した小腸悪性リンパ腫の一例
田部 博山(たなべ ひろたか)
松江市立病院 消化器外科 福本陽二、前田佳彦、梶谷真司、本城総一郎
消化器 8
ロボット支援下直腸手術と術後麻痺性イレウスに関する検討
石飛 一成(いしとび かずなり)
島根大学医学部 外科学講座 消化器・総合外科 山本徹、岡村拓樹、佐々木陽平、井上圭亮、岸本彩奈、中村光佑、谷浦隆仁、梶俊介、林彦多、田中貴之、松原毅、日髙匡章
はじめに:ロボット支援下直腸手術後の麻痺性イレウスの発症率は1.8%~15%の報告例があるが、当科では2019年1月28日に初回導入して以降、22.9%と高率に推移している。
目的・方法:2019年1月から2025年3月にロボット支援下直腸手術を施行した70例を対象とし、単後方視的に術後麻痺性イレウスの発症要因を検討した。
結果:麻痺性イレウスの発症率は22.9%(16例)であった。患者背景、術式、手術時間、出血量などとの有意な関連は認めなかったが、術後1日目のD-dimer高値が麻痺性イレウスの発症と有意に相関した(p=0.031)。また、有意差はないがコンソール時間との関連も示唆された(p=0.21)。
結論:ロボット支援下直腸手術後1日目のD-dimerが高値の場合、麻痺性イレウスの発症に留意した術後全身管理が望ましい。今後、さらなる症例の蓄積が必要である。
消化器 9
食道癌・食道胃接合部癌術後ニボルマブ補助療法の安全性と短期治療成績
松原 毅(まつばら たけし)
島根大学医学部 外科学講座 消化器・総合外科 梶俊介、岡村拓樹、井上圭亮、石飛一成、岸本彩奈、谷浦隆仁、林彦多、田中貴之、山本徹、日髙匡章
【背景】食道癌・食道胃接合部癌術後の再発予防として、ニボルマブ療法が注目されているが、安全性や短期成績の報告は限られている。【目的】ニボルマブ補助療法の安全性と短期成績を評価する。【方法】術後補助療法としてニボルマブを投与した26例の免疫関連有害事象(irAE)と再発状況を後方視的に解析した。【結果】irAE発症率は35%(9例)、Grade3以上は19%(5例)であった。観察期間中央値1年以上の現在、治療完遂は7例、継続中は7例で、再発は8例に認め、うち5例は治療期間中の再発だった。全生存期間中央値は33.7か月、無再発生存期間中央値は27.9か月であった。【結語】一定の安全性は示されたが、治療中の再発例も認められ、さらなる症例蓄積が必要である。
消化器 10
CR後の落とし穴:傍大動脈リンパ節転移食道癌 Conversion Surgery
岡村 拓樹(おかむら ひろき)
島根大学医学部 外科学講座 消化器・総合外科 梶俊介、松原毅、井上圭亮、石飛一成、岸本彩奈、谷浦隆仁、林彦多、田中貴之、山本徹、日髙匡章
切除不能進行食道癌に対し化学療法で遠隔転移巣が制御された場合、conversion surgery (CS) が選択肢となる。CSは導入療法でdown-stagingし切除可能と判断された病変への手術と定義される。特に遠隔転移(cM1)を伴う食道癌へのCS報告は限られている。今回、傍大動脈リンパ節(PALN)転移単独の食道扁平上皮癌に対し、化学療法でPALNの画像上完全奏効(CR)を確認後、CSとして食道亜全摘術・2領域郭清を施行した1例を経験した。しかし、CRを得たPALN自体は切除しなかった。術後2カ月で同部位PALNに再発を認め、腹膜播種も出現した。生存期間は治療介入後11カ月であり予後不良であった。術前病勢評価や転移巣切除基準が未確立である点や、術後合併症による補助化学療法開始の遅延などが要因と考えられる。Stage IVb食道癌に対するCSでは集学的な治療戦略が重要である。
肝・胆・膵 1
肝細胞腺腫との鑑別に苦慮した限局性結節性過形成の1例
吉田 惇(よしだ じゅん)
鳥取大学医学部消化器・小児外科学分野 徳安成郎、上平憲太郎、岸野幹也、村上祐樹、坂本照尚、藤原義之
限局性結節性過形成(FNH)は、正常な肝臓に発生する良性病変で、肝細胞腺腫(HCA)との鑑別が必要になる場合がある。今回我々はHCAとの鑑別に苦慮したFNHの1例を経験したので報告する。 症例は46歳女性。心窩部痛を主訴に近医受診され、肝S6にSOLを認めた。精査目的に当院消化器内科紹介となった。MRIにてT2強調像で辺縁中等度信号、内部高信号、また中心部から濃染、肝細胞相では辺縁主体に高信号、中心部は低信号域が混在した。経口避妊薬の内服歴もあり、HCAと診断され、開腹肝部分切除術を施行した。術後12日目に退院となった。病理診断にて、FNHと診断された。FNHの画像所見は一部HCAと重複する部分もあり、鑑別が困難なことがある。HCAは悪性化や出血のリスクもあり、手術が妥当であるがFNHは経過観察できることもあるため術前診断が重要である。
肝・胆・膵 2
右心房へ進展した下大静脈腫瘍栓を伴った右腎癌に対して、循環器外科と合同で摘出術を行った1例
中村 光佑(なかむら こうすけ)
島根大学医学部 外科学講座 消化器・総合外科 佐々木陽平、岡村拓樹、井上圭亮、岸本彩奈、石飛一成、谷浦隆仁、梶俊介、田中貴之、林彦多、松原毅、山本徹、日髙匡章
循環器外科 山﨑和裕 泌尿器科 和田耕一郎
腎細胞癌(RCC)の約4~10%に下大静脈(IVC)腫瘍栓を伴い、特に右心房まで進展した症例では、高度な手術手技と多診療科連携が求められる。46歳男性、右RCCおよびIVC〜右心房への腫瘍栓を認め紹介受診。CTガイド下生検で明細胞型RCCと診断し、レンバチニブ+ペンブロリズマブ併用療法を4コース施行。腫瘍縮小後に開胸開腹および人工心肺下で循環器外科と合同手術を行い、右腎摘出術およびIVC腫瘍栓摘出術を施行。合併症なく術後21日目に退院した。今回、複数診療科連携により安全に摘出し得た1例を通じ、治療戦略と手術手技を報告する。
肝・胆・膵 3
肝浸潤を伴う悪性褐色細胞腫に対する外科的切除症例
田中 貴之(たなかたかゆき)
島根大学医学部 外科学講座 消化器・総合外科 佐々木陽平 岡村拓樹 井上圭亮 岸本彩奈 中村光佑 石飛一成 谷浦隆仁 梶俊介 林彦多 松原毅 山本徹 日髙匡章
悪性褐色細胞腫は、難治性の高血圧や発作的な動悸などの多様な症状を呈する比較的まれな疾患である。また、悪性褐色細胞腫は、転移タイプと局所進行タイプに分かれ、治療方針決定のために遠隔転移の有無、局所における病巣の広がりについても詳細に評価することが肝要である。転移を伴うタイプの治療方針は主に化学療法や放射線療法の併用である。その一方、局所進行タイプは、切除可能な範囲に腫瘍がとどまっている場合、腫瘍を根本的に取り除くことで、カテコールアミンの過剰分泌を抑制し、症状の改善や再発予防に関与するために、外科的切除を中心とした治療方針を立てることが多い。今回、血圧コントロール不良を契機に認められた肝浸潤を伴う悪性褐色細胞腫に対する外科的切除例を経験したために、その治療方針および外科的手技を供覧する。
肝・胆・膵 4
術前診断に苦慮した腫瘤形成性の胆管周囲付属腺過誤腫を伴った肝細胞癌の1例
佐々木 陽平(ささき ようへい)
島根大学医学部 外科学講座 消化器・総合外科 岡村 拓樹、井上 圭亮、岸本 彩奈、中村 光佑、石飛 一成、谷浦 隆仁、梶 俊介、林 彦多、田中 貴之、松原 毅、山本 徹、日髙 匡章
肝細胞癌(HCC)は一般に画像所見で診断可能だが、胆管病変の合併時には鑑別が困難となる。症例は70歳代男性。甲状腺癌術後フォロー中のCTで肝S7に2病変を指摘され、EOB-MRIで動脈相の濃染と肝細胞相での取り込み低下を認め、両病変ともHCCと診断された。肝後区域切除を行い、術中USで新たにS6の腫瘤も確認、切除範囲に含め切除した。病理診断でS7病変はHCC、他2病変は胆管周囲付属腺過誤腫であった。胆管過誤腫は稀であり、HCCとの画像上の鑑別は極めて困難である。本症例は、術前診断の難しさと画像診断の限界を示す貴重な一例と考えられた。
肝・胆・膵 5
高齢男性に発症した膵頭部充実性偽乳頭腫瘍の一例
中嶋 健人(なかじま けんと) 島根県立中央病院 研修センター
島根県立中央病院 消化器外科 三原 開人、佐藤 総太、伊藤 拓馬、服部 晋明、前本 遼、 宮本 匠、岩崎 純治、金澤 旭宣
【諸言】充実性偽乳頭腫瘍(Solid Pseudopapillary Neoplasm:SPN)は膵臓に発生する腫瘍の1~2%と稀な腫瘍である。SPNは女性の膵体尾部に好発し、外科的切除で良好な予後が見込まれる。【症例】70歳台男性、検診の腹部超音波検査で膵頭部に腫瘍を指摘され当院紹介となった。腹部造影CTでは膵頭部に30×40mm大の乏血性腫瘤を認めた。穿刺吸引組織診を施行し、SPNの診断であった。膵頭部を占拠する腫瘍であり、腫瘍核出術は困難と判断し、亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した。切除標本の肉眼所見や病理組織所見もSPNに矛盾しない所見であった。術後経過は問題なく術後1ヶ月で退院した。【総括】高齢男性に発症した膵頭部SPNに対して亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した。SPNは本症例のように高齢男性や膵頭部に発症する場合もある。本症例を経験し、若干の文献的考察を含めて報告する。
肝・胆・膵 6
2度のConversion surgeryを行った膵体部癌の一例
荒川 将司(あらかわ まさし)
松江赤十字病院 外科 西健、内藤聖記、玉木加歩、高井清江、杉本真一、平原典幸、佐藤仁俊
2度のConversion surgery(CS)を経て切除を行った膵癌症例を経験したので、問題提起を含め報告する。症例はPS良好な70代男性。R膵癌(Pb, cStageⅡA)に対し、NAC-GS 2コース施行。切除企図も, CY(+)・肝円索に播種を認め切除断念。mFOLFIRINOX 10コース施行し、PR・CA19-9正常化。CS行うも、CY(+)にて切除断念。GnP 14コース追加し, SD・CA19-9正常化継続。再度CS予定したところ急性虫垂炎発症し、保存的加療 1ヶ月後にCS施行。CYで良悪性の判断つかず、家族にICのうえ切除方針とした。空腸に一部浸潤を認め、小腸部分切除+膵体尾部切除+虫垂切除術を施行。永久病理で虫垂根部に膵癌転移を認めた。術中迅速病理検査には限界があり、切除判断に迷うことがある。術中所見・患者PS・治療経過など考慮し、総合的に判断する必要がある。
乳腺 1
術前診断に難渋した副乳癌の一例
鈴木 隆将(すずき たかまさ)
鳥取大学医学部 呼吸器・乳腺内分泌外科学分野 安田遼太、和田杜甫、野坂祐仁、藤原和歌子、大島祐貴、深谷由美、松井真司、細谷恵子、窪内康晃、田中裕子、若原誠、田中雄悟
症例は67歳女性。2年前より左腋窩に腫瘤を自覚し、徐々に増大を認めた。腫脹と疼痛を伴ったため、前医を受診された。2×2cm大の皮下腫瘤を認め、アテロームを疑われて局所麻酔下に摘出された。病理検査にて腺癌の診断となり、乳癌の可能性も考慮されて当科紹介となった。MMG、US、MRIにて乳腺内に明らかな腫瘍性病変を認めず、PET-CTでも明らかな原発巣を考慮する病変なども認められなかった。鑑別として汗腺癌と副乳癌があげられた。根治手術として副乳癌に準じて左腋窩部の局所追加切除と腋窩リンパ節郭清を施行した。切除標本で腫瘍の残存と近傍に乳腺組織が認められ、副乳癌(pT2N0M0, Luminal type)の最終診断となった。術後治療はホルモン療法単独の方針とした。腋窩に生じた鑑別が困難であった腫瘍の一例を経験した。画像診断や病理診断を含めた鑑別診断の重要性をふくめ、文献的考察を加えて報告する。
乳腺 2
乳房に悪性リンパ腫を発症したメトトレキサート関連リンパ増殖性疾患の一例
大田 里香子(おおた りかこ)
鳥取県立厚生病院 外科 髙木雄三,山﨑雅也,小林太,西村謙吾
症例は69歳女性.抗SRP抗体陽性壊死性筋炎で当院脳神経内科通院,メトトレキサート内服中.左乳房に腫瘤を自覚し同日近医を受診した.翌週,咳を主訴に脳神経内科を臨時受診.CTで左乳房に10㎝大腫瘤,左腋窩に2㎝までの腫大リンパ節を複数認め,左乳癌疑いとして当科紹介となった.左乳房腫瘤に対して吸引式組織生検を施行し,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の診断を得た.左腋窩リンパ節の穿刺吸引細胞診でも悪性の診断でDLBCLが推定された.血液内科に紹介,メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患(MTX-LPD)が考慮され,まずはメトトレキサートを休薬したが,腫瘍の縮小はみられず,化学療法の方針となった.MTX-LPDにおける悪性リンパ腫の発生部位として,乳腺は稀である.今回,乳房に悪性リンパ腫を発症したMTX-LPDの一例を経験したので報告する.
呼吸器 1
Transmanubrial approachおよび高位後側方アプローチを行い切除した肺尖部胸壁浸潤肺癌の1例
和田 杜甫 (わだ とほ)
鳥取大学医学部 呼吸器・乳腺内分泌外科 鈴木隆将、安田遼太、野坂祐二、藤原和歌子、松居真司、窪内康晃、田中雄悟
(はじめに)肺尖部胸壁浸潤肺癌は腫瘍の局在や浸潤された隣接臓器によってアプローチが異なる.前後両方向からのアプローチを要した1例を経験したため報告する.(症例)55歳男性,右背部痛を主訴に受診した.胸部CTにて右肺尖部に5cm大の腫瘤を認め,第1・2肋骨および右鎖骨下動脈への浸潤が疑われた.精査にて扁平上皮癌(cT3N0M0 llB)と診断され,術前治療を実施後に手術を行った.まず,Transmanubrial approach(TMA)により右鎖骨下動静脈を確認した.右鎖骨下動脈の合併切除し人工血管による再建を行った.その後,左下側臥位に体位変換を行い,第5肋間で高位後側方開胸をおき,第1・第2肋骨を含む胸壁を切離した.最後に右上葉切除を行った.手術時間は14時間34分,出血量は495 mLであった.(まとめ)前後両方向からのアプローチを行うことで良好な視野での切除が可能であった.
呼吸器 2
術後にstageⅣAと診断され、Osimertinibが著効した左上葉肺腺癌の一切除例
山﨑 雅也(やまさき まさや)
鳥取県立厚生病院外科 髙木雄三、大田里香子、小林太、西村謙吾
【症例】70代女性。他疾患精査のCTで左上葉に2.6cm大の不整形充実性結節を指摘された。左下葉にも1.5cmのPart solid noduleを認めたほか、両肺に3mm程度の無数の肺結節を認めた。両肺の多発結節は臨床的に炎症性変化と考えられた。気管支鏡下生検で肺腺癌の診断となり、PETで明らかな肺門・縦隔リンパ節転移を認めなかったため胸腔鏡下左上葉切除+ND2a-2+下葉部分切除を施行した。病理検査の結果、多数の縦隔リンパ節に転移を認めたほか、両肺に多発していた微小結節がすべて転移巣であることが判明した。対側肺の病変も一連の転移巣と考えられるためpT4N2M1a stageⅣAの最終診断となった。EGFR遺伝子変異陽性(L858R)であったため、術後はOsimertinib単剤療法が開始され、両肺に多発した肺結節陰影は全て消失し現在も治療継続中である(CR)。
呼吸器 3
リンパ管造影とICG投与が手術に有効であった左乳び胸の一例
二子石 想(ふたごいし そう) 鳥取県立中央病院卒後臨床研修センター
鳥取県立中央病院呼吸器・乳腺・内分泌外科 城所嘉輝、小嶋駿介、門永太一、前田啓之
【はじめに】乳び胸に対する治療では,保存的治療が無効であった場合,外科的治療が考慮される.今回,乳び胸に対してICG投与を用いて胸管結紮術を施行した一例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.
【症例】70歳代,女性.心臓手術後の定期受診時に左胸水貯留を指摘,胸腔穿刺で乳び胸と診断され当科紹介となった.リンパ管造影では左胸椎の傍椎体,左胸壁にリピオドール分布がみられた.保存的加療では改善がみられず手術の方針とした.手術開始直前にICGを鼠径部へ注射した.胸管結紮は右胸腔アプローチで実施した.食道背側に発達した胸管を認め,横隔膜の直上で結紮した.体位変換し,左胸腔内を観察したところ,ICGで蛍光される新規の流出はなく,手術を終了した.術後約半年が経過したが再貯留は認めていない.
【まとめ】
胸管結紮術に際して,リンパ管造影による術前評価とICG投与による術中評価が有用であると考えられた."
心臓血管 1
瘤外からのback flowの止血に難渋した膝窩動脈瘤の1例
小林 太(こばやし ふとし) 鳥取県立厚生病院 外科
西村謙吾、笹身強志、山﨑雅也、大田 里香子、髙木 雄三
鳥取大学医学部心臓外科 笹身強志
膝窩動脈瘤(PAA)は末梢動脈瘤の中で最も頻度が高い動脈瘤であるが、比較的まれな疾患である。瘤外からのback flowの止血に難渋したPAAの1例を経験したので報告する。
症例は91歳男性。腹部大動脈瘤を外来で経過観察していた。2024年3月に右膝窩部の違和感を訴え来院された。触診で右膝窩部後面のやや頭側に約6㎝の拍動性腫瘤があり、CTで最大径54x57mmのPAAを認めた。PAAに連続する左浅大腿動脈(SFA)には広範囲に石灰化を認めた。バイパスフグラフトとして適切な静脈がなかったため、待機的に内側アプローチで左SFAと遠位膝窩動脈とを人工血管で置換した。瘤内の血栓を摘出したところ、膝蓋骨レベルの瘤外からのback flowの止血に難渋したため術中血圧が低下した。術中・術後に輸血を行いながらリハビリを継続し、術後19日目に独歩退院した。
心臓血管 2
血管内治療後の右大腿感染性仮性動脈瘤の1治験例
中嶋 健人(なかじま けんと) 島根県立中央病院 臨床教育・研修支援センター
島根県立中央病院 心臓血管外科 上平 聡、高崎 直、金築 一摩、花田 智樹、山内 正信
症例は76歳男性.脳底動脈瘤に対して脳神経外科にて右大腿動脈アプローチでコイル塞栓術が施行された。止血はPercloseを用いた.4日後に穿刺部の発赤腫脹と疼痛が出現.仮性瘤はCTで数mm径であり,右鼠径部全体に蜂窩織炎が拡大していたため,抗生剤投与での保存的治療を優先した.炎症反応は軽快に向かっていたが,20日後に疼痛増強と仮性瘤の急速拡大を来したため,全麻下に非解剖バイパス術(右外腸骨―浅大腿動脈バイパス術)+右総大腿動脈結紮術を施行した.鼠径部創は開放としてVAC療法を施行.抗生剤投与を継続しながら1ヶ月後にデブドメント+創閉鎖術を施行し軽快退院となった.感染性動脈瘤の治療は手術時期,血行再建の有無,グラフト材料やバイパス経路などを含めて論議すべき点が多い.今回本症例を経験し若干の文献的考察を含めて報告する.
心臓血管 3
冠静脈損傷を伴う鈍的心損傷による心タンポナーデの1例
上田 晶彦(うえだ あきひこ) 島根大学医学部附属病院 高度外傷センター1) 心臓血管外科2)
川澄駿1)、渡部開智1)、山手敦史1)、田中航1)、川口留以1)、室野井智博1)、岡和幸1)、下条芳秀1)、木谷昭彦1)、比良英司1)、清水弘治2)、山﨑和裕2)、渡部広明1)
症例は75歳、男性。高さ3mの脚立から転落し、胸部を打撲し救急要請となった。ドクターヘリ接触時ショックであり、FASTで心タンポナーデと診断し、心嚢ドレナージを施行され当院搬送となった。搬入後も低血圧で、ドレーンからの持続的な出血がみられた。permissive hypotensionとしhemostatic resuscitationを行いつつ精査を行った。胸骨骨折、多発肋骨骨折を認めたが胸部以外に重篤な損傷を認めず、かつ切迫心停止の所見を認めなかったため、手術室での開胸止血術の方針とした。胸骨正中切開で開胸し心膜を開放すると右室前面に挫傷を認め、右冠動脈右室枝に伴走する静脈からの出血を認めたため、焼灼止血し閉胸した。術翌日に抜管し、術後17日目に独歩で自宅退院となった。冠静脈損傷由来の心タンポナーデの報告は極めて少ない。心タンポナーデを伴うショックでは早期の心膜切開が救命に重要である。
心臓血管 4
TAVI後にStanford A型大動脈解離を発症した一例
大谷 舜(おおたに しゅん) 島根大学医学部 外科学講座 循環器外科学
山﨑和裕 末廣章一 今井健介 清水弘治 和田浩巳
倉敷中央病院 心臓血管外科 小宮達彦 平尾慎吾
TAVI後にStanford A型大動脈解離を発症した高齢女性の一例を報告する。症例は86歳女性。STSスコア5.3%、Clinical Frailty Scale 4、Katz Indexは満点でADLは自立していた。Severe ASに対し、Navitor 25mmによる自己拡張型弁を用いたTAVIを施行。術後合併症なく、第5病日に自宅退院となった。ところが術後18日目に失神し、近医でA型解離と診断され、再紹介。血行動態は安定していたが心嚢水とSTJ部外膜破綻を認め、上行大動脈置換術および大動脈弁置換術を施行した。術後経過良好でPOD57にリハビリ病院退院、POD106に外来受診を確認した。Navitorによる遅発性A型解離は稀であり、弁のアウトフロー径や大動脈の傾斜がリスク因子と考えられた。高齢者においても適切な外科的介入が救命に寄与しうることを示唆する貴重な症例を経験した。
心臓血管 5
左腎動脈嚢状瘤に対しウシ心膜パッチを用いた血行再建を行った一例
中島 潤哉(なかしま じゅんや)鳥取大学医学部 器官制御外科学講座 心臓血管外科分野
岸本 祐一郎、大野原 岳史、掘江 弘夢、笹見 強志、仁井 陸冬、角 尚紀、岸本 望、 徳留 純平、森本 健一、吉川 泰司
【症例】70歳男性.検診契機のCTで左腎動脈に最大径37mmの嚢状瘤を偶発的に認めた.瘤は腎実質近傍に位置し,ステントグラフトによる血管内治療は困難と判断され,外科的切除目的に当院紹介となった.手術では腎周囲を剥離し受動可能とした後に,腎動静脈中枢を遮断し動脈瘤を切除後,ウシ心膜パッチを用いて腎動脈の血行再建を行った.術後Crnは1.25mg/dL(術前0.75mg/dL)で,AKIはKDIGOステージ1に留まり,術後12日目に自宅退院となった.【まとめ】腎動脈瘤は有病率が0.1-1%と稀であり,30mm以上の嚢状瘤では破裂リスクが高く早期治療が推奨される.再建困難例では腎摘出となることもあるが,本症例は血管内治療が困難な腎動脈瘤に対して腎温存下に瘤切除を行い良好な経過を得ることができた.
心臓血管 6
心房細動を合併した重症大動脈弁閉鎖不全症に対して心外からCryoICEを用いてMAZE手術を施行した症例
和田 浩巳(わだ ひろみ) 島根大学医学部 外科学講座 循環器外科学
今井健介 大谷瞬 清水弘治 末廣章一 山﨑和裕
心房細動の発生は両側肺静脈を由来とするものが非常に多く、BOX lesionを完成させることが重要である
患者は感染性塞栓子による出血性脳梗塞、感染性脳動脈瘤、脾梗塞、腎梗塞を併発した感染性心内膜炎抗生剤加療後の心房細動を伴う重症大動脈弁閉鎖不全症の76歳女性。
残存した重症大動脈弁閉鎖不全症、心房細動に対して待機的に大動脈弁置換術、MAZE手術を計画した。長期入院後の治療でもあり、可能な限り心停止時間を減らし侵襲を軽減するため、CryoICEを用いて心外からのMAZE手術施行を行った。
手術は体外循環下に両側肺静脈焼灼術、左心耳クリッピングを行った後、両側上肺静脈、下肺静脈間をテーピングしCryoICEを左房背側より腹側に引きあげながら冷凍凝固を施行しBOXlesionを完成させた。大動脈弁置換術の後、型通り手術終了しその後の経過はおおむね順調である"
心臓血管 7
人工血管の圧排により機械的溶血性貧血を引き起こした仮性動脈瘤の1例
徳留 純平 (とくとめ じゅんぺい) 鳥取大学医学部 器官制御外科学講座 心臓血管外科分野
岸本祐一郎 大野原岳史 掘江弘夢 笹見強志 仁井陸冬 角尚紀 岸本望 森本健一 中島潤哉 吉川泰司
症例は59歳男性.3年前にStanford A型急性大動脈解離に対して上行弓部大動脈人工血管置換術を施行した.外来フォロー中,血尿,Hb低下,LDH高値を認め,溶血が疑われた.精査の結果,塗抹検査で破砕赤血球を認め,機械的溶血と診断した.造影CTにて中枢側吻合部に仮性動脈瘤を形成しており,これが人工血管を圧排し,高度狭窄をきたしていることが原因と考えられた.Hbの低下は著明であり,手術の方針とした.破綻した中枢側吻合部は血管形成による修復は困難であり,Bentall手術を施行した.術後経過は良好で,貧血の進行は認めなくなり,LDHの改善がみられ,術後40日目に自宅退院となった.人工血管置換術後に人工血管の屈曲や進展による機械的溶血性貧血をきたす症例の報告は散見されるが,仮性動脈瘤拡大による圧排で溶血性貧血を起こした症例の報告は稀であり,今回報告する.
心臓血管 8
ShaggyAortaの弓部大動脈瘤に対して脳梗塞発症予防に両側鎖骨下動脈を確保し、脳分離を送血しながら遮断した症例
和田 浩巳 (わだ ひろみ)島根大学医学部 外科学講座 循環器外科学
今井健介 大谷瞬 清水弘治 末廣章一 山﨑和裕
ShaggyAortaは遮断に伴い複数の塞栓子を発生させる可能性があるため注意が必要である。 本症例は狭心症、心房細動を伴った弓部大動脈瘤の77歳男性。 膀胱癌術後のフォローアップCTにおいて偶然発見された弓部大動脈瘤で、ShaggyAortaのため術中脳梗塞発症予防が必要と考え、両側鎖骨下動脈を確保後低体温循環停止とし、両側鎖骨下動脈より脳分離を送血しつつ、腕頭動脈、左鎖骨下動脈を遮断した。末梢吻合後大腿動脈からデブリをフラッシュし、分枝吻合、中枢吻合後、CABGを行い手術を終了した。術後脳塞栓を認めたものの、意識レベル、ADLともに改善しリハビリ転院となった。