[1] 宝塚医療大学保健医療学部鍼灸学科
高齢者の腱板断裂は,保存療法・手術療法を問わず回復に長期間を要するケースが多く,また肩の可動域も元どおりに復帰することは困難なケースが多い。
本症例は,一日も早い回復を目指して灸治療を頻回に行うことで,通常は3ヶ月を要するところ,他の治療を併用することなく2ヶ月での回復が可能となったものである。施灸で生じる熱ショックタンパク質は,筋損傷部のタンパクの変性を抑制し,破壊されたタンパクを修復する。また,施灸は深部の血管拡張を誘発し,それに伴う血流の増加が組織の修復を助ける。
これらから,皮膚表面の灸刺激が深部筋層にまで及び損傷部の修復を速めた結果,早期回復したものと考えられる。
キーワード:腱板断裂,灸治療,早期回復,血管拡張,上腕二頭筋長頭腱の亜脱臼