日本では、食品や医薬品などは、定められた品質基準を満たしたものだけが販売されています。そのためには、「どの成分が、どのくらい含まれていればよいか」といった成分規格や、それを確認するための試験法が必要です。
特に、植物などの天然由来製品には多くの成分が含まれており、どの成分を基準とすべきかを科学的に判断する必要があります。
私たちの研究室では、こうした製品の分析方法の開発や成分基準の設定に関する研究を、国の研究機関と連携しながら進めています。また、市販されている食品を実際に分析し、表示通りに添加物や機能性成分が含まれているかどうかの調査も行っています。
3.化学物質のデジタル化
NMRの測定データをより正確に解析するために、量子力学的な反復計算を用いた手法があります。この手法はQM-HiFSA(Quantum Mechanical 1H iterative Full Spin Analysis)と呼ばれています。
QM-HiFSAによって得られる化学シフトやスピンースピン結合定数は、その物質に固有の指紋のような情報であり、デジタルな標準品(dRS)として世界中の人と共有することができます。
私たちの研究室では、このdRSを活用して成分の特定や定量を正確に行う方法を研究しており、将来的には、デジタルでサステナブルな分析法として、公的な試験法に実装していくことを目指しています。