学外から4名の登壇者と司会者をお招きして、「責任ある研究」をめぐる責任概念を再考するためのワークショップ(以下WS)を開催します。
ELSIやRRI(責任ある研究・イノベーション)が重視される現代社会においては、企業や自治体、開発現場では倫理・法規制だけでは十分に応えきれない多様な「責任」が問われ、予防責任や説明責任、また地域社会との関係も問われています。
WS当日は、3名の登壇者の専門とする技術者倫理/都市計画責任/応答責任論それぞれの理論と実践を照らし合わせる仕方で、責任概念のよりより理解をめざします。
日時:2026/3/9(月) 13:00--16:40
場所:東洋大学白山キャンパス6号館1階 第三会議室(配信はありません)
参加費:無料
参加方法:学外の方は必ずフォームから事前登録をお願いします 👉フォームは【こちら】
主催:東洋大学研究推進課「責任ある研究・技術開発に向けた多文化的ELSIの組織化」(研究代表:松浦和也)
お問い合わせ先:研究支援者 小濵聖子 (kondo520 [at] toyo.jp)
13:00 開会挨拶 松浦和也(東洋大学)
13:05 登壇者・司会者紹介 司会 高萩智也(創価大学)
13:15 提題1 小林知恵(広島大学大学院)「責任ある研究イノベーションと技術者倫理」
13:55 提題2 窪田亜矢(東北大学大学院)「都市計画の責任を都市計画の研究はどう捉えられるのか?」
14:35 休憩
14:55 提題3 西本優樹(南山大学/日本学術振興会)「企業倫理から考える責任=応答可能性の現在地」
15:35 意見交換、質疑応答
16:35 閉会挨拶 今井悠介(東洋大学)
16:40 終了
小林 知恵(Chie Kobayashi)
所属:広島大学大学院 人間社会科学研究科 上廣応用倫理学講座 寄附講座 助教
専門:科学技術倫理、デュアルユース研究、ELSI(倫理的・法制度的・社会的課題)、メタ倫理
「責任ある研究イノベーションと技術者倫理」
新興技術の急速な進展がもたらす新たな知や恩恵への期待とともに、従来にない不可逆的影響の可能性が意識されて久しい。こうした認識のもと、今日ではELSIやRRI(責任ある研究・イノベーション)が政策・研究の両面で重視されている。
RRIにおける「責任」の内実をめぐっては研究の蓄積があるものの、イノベーション・エコシステム全体を視野に入れ、多様なステークホルダーの共創に力点を置くRRIにおいて、開発の担い手である技術者の責任は十分に明確ではない。
本発表は、従来の技術者倫理とRRIの概念的研究を架橋し、RRIにおける技術者の責任を描き出すことを目的とする。提題者は、RRIにおける責任を共同責任とする解釈に立脚し、RRIを構成する諸要素、とりわけ包摂(inclusion)に関して、技術者が単なる包摂的取組みの成果の受容にとどまらず、そうした取組みそのものに対する責任と貢献可能性を有することを明らかにする。
窪田 亜矢(Aya Kubota)
所属:東北大学大学院 工学研究科 都市・建築学専攻 教授
専門:地域デザイン、災後の空間計画、都市計画
「都市計画の責任を都市計画の研究はどう捉えられるのか?」
工学技術は、原子力発電も原子力発電所を受け入れる都市計画も支えてきた。福島原発事故は絶対安全神話が嘘だったことを明らかにした。そのような危険な施設を、広義の意味での都市計画(都市計画法に限定されない都市や地域のあり方に関する公共政策)が受け入れたままで良いはずがない。しかし、原発事故後の避難計画も、中間貯蔵施設/最終処分場計画も、復興イノベーション・コースト構想も、原発事故がなかったかのように本質は変わっていない。
こうした状況において都市計画の研究はどう変わったら良いのか。都市計画の責任を都市計画の研究が明らかにできるとすれば、これまでとは全く異なる原発/原発事故に向き合っている現場の意味について理解を深めることから始めるしかない。
原発事故被害地域において失われたものに加え、説明責任と賠償責任に終わらず応答責任としての行為が生じている価値を論じられたなら、わずかでも責任を負えるのだろうか。
西本 優樹(Yuki NISHIMOTO)
所属:南山大学社会倫理研究所 プロジェクト研究員/日本学術振興会 特別研究員PD
専門:組織の道徳的責任論、集団責任論、推論主義、公害、組織事故(不祥事)
「企業倫理から考える責任=応答可能性の現在地」
責任(responsibility)の本質は他者への応答可能性にあると言われる。RRIをめぐる議論でも、応答性(responsiveness)は主要要素の一つとされ、多様なステークホルダーによる相互的な応答が強調されてきた。しかし、そうしたステークホルダー対話の内実には、参加主体の自己利益、政治性、権力格差、また声の欠如等の問題が指摘され、望ましい応答の規準が確立されているとは言い難い。
本報告では、企業倫理学の見地から、「責任=応答可能性」の規準を検討し、RRIにおける応答性の再考に取り組む。具体的には、企業事故や公害で被害者が担ってきた原因の検証、再発防止、地域再生といった実践を参照し、企業側に求められる応答とステークホルダー理解を検討する。
このように事後の視点からの企業の応答可能性を論じる仕方で、RRIにおける応答性を探求する論点を提示する。
高萩 智也(Tomoya TAKAHAGI)
所属: 創価大学 学士課程教育機構 助教、(兼任)高崎経済大学 経済学部 非常勤講師、 (兼任)慶應義塾大学 未来共生デザインセンター (共同研究員)
専門: 哲学史、近世哲学、ヒューム、認識論、社会認識論、証言の認識論
松浦 和也(Kazuya Matsuura)
所属: 東洋大学文学部 教授/主催プロジェクト 研究代表者
専門: 西洋古代哲学