2026.07.15|WED
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2026年7月15日、東洋大学のグローバル人材育成プログラム「TGL(Toyo Global Leader)キャンプ」の一環として、講義「留学のすすめ」のなかで特別講演が行われ、80人の学生にご参加いただきました。
今回お招きした講師は、東京・丸の内にオフィスを構えるコンサルティングファーム、Ridgelinez(リッジラインズ)株式会社の執行役員パートナーであり、CIOやDigital Strategy & Transformation Practice Leaderを務める鬼束 孝則(おにつか たかのり)氏です。
高卒というキャリアのスタートから、どのようにして世界中のメンバーが集まるグローバルチームを率い、数々の大きなプロジェクトを成功に導いて現在のポジションに至ったのか。その波乱万丈なキャリアと、ビジネスの最前線で得た「世界で活躍するためのリアルなヒント」を、学生に向けてわかりやすく熱く語っていただきました。
■ 講師紹介:英語力200点台からの挑戦。一歩ずつ築き上げたグローバルキャリア
宮崎県の工業高校を卒業後、日本IBMに技術員として入社した鬼束氏。当時の英語力は、TOEICでいうと200点台半ばという状態からのスタートだったそうです。入社してからは英語で書かれたマニュアルと必死に向き合う日々を送り、24歳のときに憧れのグローバル社員と出会ったことをきっかけに、「海外に挑戦してみたい」と強く思うようになります。
その後、34歳でサポート部門の日本責任者となり、海外のメンバーと連日のように深夜までやり取りを重ねる重要な任務を担当。さらに41歳のときには、オーストリア、スロバキア、アメリカ、シンガポール、中国、インド、オーストラリア、そして日本という世界8カ国からメンバーが集まる多様なグローバルプロジェクトをリーダーとして率い、大成功へと導きました。33年間勤めた日本IBMを経て、現在はRidgelinezの執行役員パートナーとして、企業のデジタル変革(DX)をサポートする最前線で活躍されています。
■ 講演内容:大切なのは、きれいに伝える力よりも「相手を巻き込む」力
鬼束氏のお話は、教科書に書いてあるような難しい理屈ではなく、実際の現場で何度も壁にぶつかりながら身につけた、とてもリアルで説得力のあるものでした。
多くの人が「留学したり世界で働いたりするには、まず完璧な英語を身につけなきゃ」と思いがちです。しかし鬼束氏は、「英語は単なるツールにすぎず、実際に使ってみる体験を通してしか伸びない」と断言します。言葉が完璧でなくても、図や色をうまく使ってビジュアルで伝える工夫をすれば、自分の意思はちゃんと相手に伝わります。
そこで最も大切になるのが、自分の考えを「明確にわかりやすく伝えるコミュニケーション力」よりも、周りの人を引きつける「巻き込むコミュニケーション力」です。相手に関心を持ち、相手にリスペクト(敬意)を持って接することで、「この人と一緒に働きたい!」「この人を手伝ってあげたい」と思ってもらうこと。これこそが、言葉の壁を越えて世界中の人を動かす一番の原動力になります。
そしてこの「巻き込む力」は、若い皆さんが持っている大きな武器、つまり「分からないことは、正直に『分からない』と言える強さ」とも深くつながっています。変に知ったかぶりをせず、素直に「教えてほしい」と助けを求める。その誠実で謙虚な姿勢こそが、結果として周りの大人の心を動かし、強力なサポートを引き出す「巻き込み力」へと変わっていくのです。
また、完璧な正解を探して立ち止まってしまうことへのアドバイスもありました。変化のスピードが速い今の世界では、完璧さを求めて時間をかけるよりも、まずは行動するスピードが何より大切です。「失敗したら恥ずかしい」というプライドは、自分の成長を遅らせる一番の邪魔者になってしまいます。まずは勇気を出して一歩を踏み出し、走りながら、その場で少しずつ修正していくしなやかさを身につけていきましょう。
さらに、国籍や文化が違う多様なメンバーと一緒に働くうえで、鬼束氏が強調したのが「トラブルが起きたときこそ、人を責めない」という姿勢です。何か問題が起きたとき、日本ではつい「誰のせいか」という犯人探しをしてしまいがちです。しかし世界標準のプロフェッショナルは、人を責めるのではなく、問題そのものを客観的に見て「どうすれば解決できるか」という未来の話をします。こうした建設的な態度が、お互いの強い信頼関係を作っていくのです。
■ 現場の熱気が伝わる質疑応答:これからのキャリアを描くロードマップ
講演の後半には、これから社会へ羽ばたく学生の皆さんに向けて、今後のキャリアのヒントになるお話がたくさんありました。鬼束氏は自らの歩んできた道を振り返りながら、学生の目線に立って、とてもフレンドリーにアドバイスをくださいました。
例えば、就職活動で自分の「弱み」をどう説明すればいいかという悩み。これについて鬼束氏は、「弱みは隠すものではなく、自分でちゃんと気づけている『これからの伸び代(課題)』として話せばいい」と教えてくださいました。その弱みを克服するために今どんな努力をしているかをセットで伝えることができれば、それは面接官にとっても素晴らしい評価ポイントになります。
また、企業の選び方についてもアドバイスがありました。有名な大企業ばかりに目を奪われがちですが、すでに仕事の役割やルールが細かく決まっている大きな組織よりも、若いうちから色々な仕事を任せてもらい、自分で考えて手を動かせる環境のほうが、圧倒的に早く、そして大きく成長することができます。
さらに講演のなかで、鬼束氏自らが、「もし入社した部署や、任された今の仕事に不満があったらどうするか」という問いを投げかけ、お話しされる場面がありました。
「不満があるからとすぐに諦めて辞めてしまうのではなく、まずは自分から動いて、社内のほかの部署の人たちと積極的にコミュニケーションをとり、どんな仕事があるのかを自分で学びに行く。そして面白そうな仕事を見つけたら、『自分にやらせてください!』と自ら手を挙げてみる。仕事は誰かから与えられるものではなく、自分自身の手で作っていくものだからです」
この熱く心強いメッセージに、参加した学生たちは大きく背中を押された様子で、真剣にメモをとっていました。
■ 国際教育センターより:未来のグローバルリーダーを目指す皆さんへ
今回の特別講演は、単なる留学のすすめや英語の勉強法を超えて、「自分自身の強みや弱みをしっかり見つめ、違う価値観を持つ人たちとどうやって協力していくか」という、自分の器(キャパシティー)を大きく広げるためのヒントがたくさん詰まった素晴らしい時間となりました。
英語のテストの点数だけに一喜一憂する必要はありません。完璧でなくても自分の考えをしっかり持ち、主体的に一歩を踏み出すこと。そして、わからないことを素直に「わからない」と言える誠実さと勇気を持つこと。鬼束氏がこれまでのキャリアのなかで自ら証明して見せてくれたこれらの姿勢は、これから世界に旅立つ学生の皆さんにとって、とても大切なコンパス(指針)になるはずです。
国際教育センターでは、今後も皆さんが広い視野を養い、自分の限界を作らずに世界へ羽ばたいていけるよう、実践的な学びの場や、未来の可能性を広げるきっかけを全力で提供し、サポートし続けてまいります 。(国際教育センター・講師 上見めぐみ)