2026.10.12|MON
2026.10.12|MON
2026年10月12日(月)3限目(13:00~14:30)に、TGL CAMP「ツーリズムの多様性とグローバル社会―文化の変化とビジネスの未来を考える―」を実施しました。ゲストスピーカーとして、杏林大学外国語学部観光交流文化学科講師の中田久美子氏をお招きし、旅行会社およびリクルート「ゼクシィ」での実務経験と現在の研究を踏まえ、LGBTQ+をめぐる観光・ブライダル分野の現状や、多様な顧客に対応するために企業やサービス提供者に求められる視点についてご講演いただきました。
講演ではまず、中田氏ご自身の旅行・ブライダル業界での経験や現在の研究につながるキャリアについてご紹介いただきました。旅行会社や「ゼクシィ」での仕事、大学教員としての経験など、一見異なるキャリアが、現在の「旅行や結婚式における多様性」という研究テーマへどのようにつながってきたのかについてもお話しいただきました。
続いて学生は、「自分にとっての当たり前」について考えるワークに取り組みました。普段は意識することのない自分自身のマジョリティ性やマイノリティ性を振り返り、自分がこれまで「説明しなくても済んできたこと」や「意識せずに受けられていたサービス」について考えることとなりました。多様性というテーマを誰か特定の人の問題としてではなく、自分自身の立場や日常生活と結びつけて考える導入となりました。
講演の中盤では、LGBTQ+やSOGIについての基礎的な知識を学んだうえで、LGBTQ+の人々が旅行、教育、職場、医療、公共サービスなど、さまざまな場面で直面する課題について具体的に紹介していただきました。
さらに「LGBTツーリズム」を取り上げ、単にLGBTQ+の旅行者を新たな市場として捉え、商品やサービスを提供するだけでは十分ではないことが説明されました。旅行先やサービス提供者の側が当事者を尊重し、安心してサービスを利用できる環境を整えること、そのためには接客だけでなく、社員教育や組織内部の制度・環境まで含めて考える必要があることを学びました。
特に学生に強い印象を残したのが、結婚式をめぐる具体的な事例でした。同性カップルが結婚式を希望した際、衣装について異性カップルとは異なる条件を提示されたケースや、神社での挙式を希望したゲイカップルに対して、人目につかない時間帯での実施を提案されたケース、またホテルでチャペルでの挙式を希望した女性同性カップルに対して、人目につかないレストランウェディングを勧めたケースなどが紹介されました。
こうした事例から、必ずしもサービス提供者に悪意があるわけではなくても、「一般的にはこうだろう」「こちらの方が本人たちのためだろう」という思い込みによって、当事者の希望を狭めてしまう可能性があることが示されました。
講演後に提出された学生のレポートからは、多くの学生が今回の内容を真摯に受け止めていたことがうかがえた。特に、LGBTQ+をめぐる企業やサービス提供者の対応について、社会では理解が進んでいると思っていたが、実際にはまだ十分ではない場面が多く存在することを知った、という趣旨の気づきが多く見ることができました。また、企業だけの問題ではなく、社会全体として多様な性や価値観への理解がまだ十分に浸透していない現状を、具体的な事例を通して実感した学生も多かったようです。
一方で、中田氏が示されたのは、必ずしも特別なサービスを新しく作ることだけが解決策ではないという点でした。接客する側が基礎的な知識を持つこと、相手の希望を決めつけずに確認すること、個人情報を適切に扱うこと、そして組織全体で共通理解を持つことなど、「まず知ろうとすること」から始められる対応も多くあります。
今回の講演は、LGBTQ+やツーリズムについて知識を得るだけでなく、自分自身が普段何を「当たり前」と考えているのかを振り返り、その当たり前が必ずしもすべての人に共有されているわけではないことに気づく機会となりました。
グローバル社会で多様な背景を持つ人々と関わっていくためには、異なる文化や価値観について知るだけではなく、自分自身のものの見方や無意識の前提にも目を向けることが重要です。観光や結婚式という学生にとって比較的身近なテーマを通して、社会や企業のあり方、そして自分自身が他者とどのように関わっていくのかについて深く考える、学びの多い時間となりました。(担当講師:上見めぐみ)