2024.08.08|THU
2024.08.08|THU
今回のTGLキャンプには、特別講師として玉木直季氏にお越し頂きました。英国王立国際問題研究所(チャタムハウス)の研究員である玉木氏は、現三菱UFJ銀行のバハレーン支社、国際協力銀行のドバイ首席駐在員等として、通年12年に渡り中東で活躍されました。この度、東洋大学でグローバル人材を目指す学生たちに向けて、地政学の観点から過去・現在の国際情勢を解説して頂いた後、学生たちに理想的な未来を考えるグループワークをしてもらいました。
現在は、「VUCA(volatility, uncertainty, complexity, ambiguity)」と言われる、「将来を見通す事が困難で、正解のない時代」に入りました。地球の人口が1900年では16.5億人だったのが、2022年には79.8億人へと膨らみ、2050年には97.1億人と、現在より17.3億人が増えると予測されています。中でも、中東を中心とした北東アフリカ、西南アジアの人口が急拡大することが見込まれており、増加する人口の食料とエネルギーの確保が必須です。そこで注視すべきは、各国の食料とエネルギーの自給率となりますが、日本の自給率が低いことはよく知られています(エネルギー自給率=11.3%、食料自給率=38%)。現代の食の生産は化石燃料に頼っており、エネルギーなしでは食の確保はできません。ところが、2020年のエネルギー自給率で100%以下が、欧州ではイギリス(76.0%)、フランス (54.9%)、ドイツ (34.7%)、スペイン (31.6%)となっており、欧州諸国もまたエネルギー確保が必須なことがわかります。欧州諸国への原油輸出国はロシアです。ロシアのウクライナ侵攻に対し、欧州諸国が一丸となれないその背景に、欧州のエネルギー確保を巡る諸事情が見えてきます。
現在のアメリカが行おうとしているのは、「自国ファースト」による「鎖国」であり、鎖国することで自国民のエネルギーと食料分配の安定化を図ろうとしているという、大変興味深いお話を玉木氏はしてくださいました。
このように、地球上の覇権が環太平洋地域からインドや周辺国、アフリカ東部などの環インド洋地域に移りつつある現在、世界の政治や経済のパワーバランスを「感じ」ながら、日本がとるべき方向性をグループワークで話し合いました。答えのない、複雑で奥の深いトピックでしたが、学生は難しかったと悲鳴に似たような声を上げながらも、とても充実した時間を過ごせたと目を輝かせていました。(文:国際教育センター 小早川 裕子)