2023.11.08Wed

SDGs×ECZ ウクライナ交換研究員による講演が開催されました

2023年11月8日、白山キャンパス8号館1階ECZにて、ウクライナのボリス・グリンチェンコ記念キーウ市立大学より本学に交換研究員として来日されている、セメニスト・イヴァン先生が”Sustainable Development in an Unstable World: Is it Possible to Achieve Peace?(Examing the Case of Ukraine)”と題し、講演を行いました。会場となったECZは、ウクライナに関心を寄せる60名超の学生・教職員で埋め尽くされ、静かな熱気に包まれました。

「不確実な世界における持続可能な開発」をテーマとする本講演は、まず国連による最新のSDGs進捗報告書が示す、世界の現状を示すいくつかの事実について言及することから始まりました。

2020年に極度の貧困状態にある人々の数は7億2,400万人に増加し、また現状ではジェンダー平等が実現できるのは約300年後に遠のいているという現実。コロナによるパンデミックやロシアのウクライナ侵攻などにより、理想の実現はますます困難になっています。

「SDGsを実現するために必要なのは、平和と安定だ」と先生は続けます。

ウクライナは現在、SDGsの達成とはほど遠い、破壊と劣悪な生活水準の中にあり、ロシア侵攻以降は810万人以上のウクライナ人が難民となり、戦前には4,400万人いた人口の4分の1が故郷を離れざるをえなかったといいます。

SDGsに焦点をあてウクライナの現状を照らし合わせると、SDGsの17の目標のうち、ウクライナは「目標1:貧困」「目標2:飢餓」「目標8:経済成長と雇用」そして「目標16:平和」、主にこれらの指標において特に大きな打撃を受けています。

家族や友人だけでなく、家や財産、コミュニティを失った人々、推定1,570万人が人道支援と保護を必要としています。2022年のウクライナのGDPは29.2%減、貧困率は人口の24%に達しています。

教育への影響についても語られました。これまでに1,500以上の教育機関が破壊もしくは損傷を受け、多くの学校や大学がオンライン授業を行っています。

しかし、WiFiが頻繁に停止する環境下であり、満足な教育を受けられる環境とはいえません。

また時には砲撃から身を隠すために地下鉄の構内で授業を行なうことも珍しくないそうです。地下鉄には電気やインターネット等の設備が備わっているからです。

SDGsは、すべての目標を2030年までに達成する予定として定められましたが、侵攻によってウクライナは達成が困難な状況にあります。いかに大規模な戦争がSDGs達成の障害となるのか、セメニスト先生は丁寧に学生たちに語りかけていました。