経済学部国際経済学科(2023年卒業)SMさん
在学中の留学経験について
✿在学中の留学経験✿
①3年~4年次:長期留学(マレーシア国民大学)
✿語学力✿
入学時:TOEIC 575点 ⇒ 卒業時:TOEIC 815点
✿留学を目指すことになったきっかけ、留学時の目標✿
経済発展をしている国での⽣活と多様な⽂化体験をしたいと思うようになったことが留学を決意したきっかけだ。世界の先進国である⽇本に⽣まれ育った私にとって、途上国や新興国の状況や雰囲気は教科書や本の中でしか学ぶことのできないものだった。幼い頃から世界に興味があったこともあるが、⼤学での経済学の講義を通して抱いた経済発展への興味は、ますますそれらを実際に肌で感じてみたいと私に思わせるようになった。マレーシアへの留学は、発展中の国に⻑期滞在する絶好の機会だった。また、マレーシアはマレー族、華族、タミル族などの多様な⽂化が集まった国であり、⽇本とは違った⽂化を知ること、経験ができるのではないかと考えていた。そのような背景から、留学時は⼈との出会いと⽂化に慣れることを意識して過ごした。
留学中は、慣れない⽣活や気候、知らない⼈とのコミュニケーションへの隠れた疲れから、⾃分のコンフォートゾーンに篭りがちだが、それを認識した上で、留学先⼤学で開かれた⾏事や会議、友達からの誘いなど、⾏けるものは全て積極的に参加した。馴染みのないイスラム教やその他の宗教についての理解不⾜から⾃分の取るべき⾏動が異なるなど⼾惑うこともあったが、仲良くなった友達に馴染みのない慣習についてその背景や仕⽅などを聞き、マレーシアの⽂化を理解するように努めた。
✿語学勉強方法(参加して良かった学内講座等)✿
英語は 1 ⽇にしてならず。⾼校時代から英語が苦⼿だった私は、とにかく英語に毎⽇触れることから始めた。⾼校時代のテキストや教科書を引っ張り出し、単語や⽂法を改めて勉強しなおした。コロナ禍での⼊学で在宅時間が⻑かったことも活⽤し、毎朝授業の始まる前に単語帳を⼀周したり、⽂法の問題を解いたりして、⾼校時代の苦⼿意識を克服していった。特に、東洋⼤学は英語学習の環境が整っていた。自分で講座を探し契約することには心理的なハードルがある英語講座にも学内価格で安心して参加でき、外部英語試験にも割引が適⽤されていたため、⾃分のステップに合わせた⽬標を⽴てながら少しづつ学習を進めていけた。特に、留学の選考に向けて TOEFL iBT を初めて受験するときのファーストステップが学内の TOEFL iBT 講座だった。試験を初めて受験する際に、何から初めて良いかわからず、試験の申し込みに踏み出せずにいた私にとって、学内講座はテスト概要から、各項⽬のポイントや勉強の仕⽅、勉強方法などを包括的にカバーしてくれたため、その後の TOEFL学習の良いスタートにつながった。
✿参加して良かった学内イベント(国際交流イベント等)✿
TOEFL iBT 講座
✿留学から得られたもの、成果✿
文化に溶け込む過程とそこから得られたつながりだ。海外の文化や地理に興味があった私は、もちろん留学先であったマレーシアではイスラム教徒が多く、宗教上の理由から豚肉を食べない慣習があることを、留学前にも理解しているつもりであった。しかし、留学を通して、その考えの安易さを知ることになる。仲良くなったマレー系のイスラム教徒の友達に、自身の大好物のゼリーをプレゼントした時の彼女の困った顔を今でも覚えている。「私たちは、ハラルマークのあるものしか食べない。ゼリーのゼラチンにも豚由来のものが含まれている。せっかくだけどこれはもらえない」。喜んでもらえると思っていた自分が少し恥ずかしく、申し訳ない気持ちになったが、思い返せば、これが慣れない生活や文化が初めて自分の生活に溶け込んだ瞬間だった。観光ではなく留学という移住体験だったからこそ得られた彼らへの理解であり、本物の意味で仲良くなれた。留学は良い意味でも悪い意味でも旅行ではなく、旅行では感じない暮らしにくさや不便さ、辛さもあるし、思い描いていたキラキラした生活ではない。しかし、旅行にはない現実と向き合うきっかけや、深い文化への理解得られる経験を経たからこそ、得られるつながりがある。そのつながりは、今も私の一つのルーツとして残り、留学後の人とのつながりや出会いにおいて私の人生の大きな財産となっている。
✿今振り返って、学部生時代に取り組んでおけば良かったと思うこと✿
自身の活動や人脈の幅を広げ、より広い視野で自分の強みを磨けばよかったと感じている。学部時代の私は高校時代にサボったことや、諦めたことを取り戻すための時間として過ごしていた。英語への苦手意識、勉強をしていなかったこと、アルバイト、 留学、海外旅行、ボランティアなど、やりたいことを詰め込んだ結果、自分の強みを 磨くというよりは自身の好奇心やハンデを解消するために、自分と向き合う時間になっていた。大学院に入学し、学部時代に強みを磨いてきた同級生と出会った時、その人たちの持つ人とのつながりの広さを知った時、東洋大学という枠の中で思考を続けていた自分に気付かされ、後悔した。いろんな経験をし、自分と向き合いつつもその中で見つけた自分の強みをさらに高くしようと、より広い尺度で物事を捉えようとする姿勢を持つべきだった。大学院での日々ではその尺度を広げ、積極的に挑戦するようにしている。これまでの価値観や基準が大きく覆され、圧倒される日々に苦労し続けているが、それを楽しみたい。
卒業後の進路:進学
✿現在の研究内容について✿
政策立案や政策の意思決定において、データや科学的根拠を活用するアプローチであるEBPM について学びを深めている。その中でもここでは、費用便益分析を用いた富士登山鉄道構想に焦点をあてる。費用便益分析とは、プロジェクトにかかる費用とそこから得られる便益を精査してプロジェクトを行うべきか否かを測る分析のことである。この分析の面白いところは、経済学に基づいて単に金銭的な価値だけでなく人々がそのプロジェクトが行われたことで感じる満足感、不満をも含めて分析が行える点にある。紹介した富士吉田市の環境整備やオーバーツーリズム解消のために現行の有料道路を廃止して新たに鉄道を敷設する政策案では、金銭的な価値である敷設費用よりもプロジェクトの収入見込が大きいことを主張し、政策の意義を唱えていた。しかし、実際には住民からの反対意見も存在しており、利益が得られるという県政側の主張とは裏腹に反対意見が大きいという問題が生じていた。そこで、金銭的に測れる良さだけではなく、金銭的には測れない不満足感を捉えて政策の是非について考える試みを行なった。結果、政策で得られる利益よりも政策後に住民が負わなくてはならない不利益の方が大きいという結論が得られ、県政の推進とその反対意見を数字で示すことに成功した。この分析、そしてEBPMは政策のある主体からしか見えていなかった政策の構造を全体的に評価し、その是非について一つの示唆を与えることができる面白みがあり、近年注目されているもののひとつである。
✿大学院に進学しようと思ったきっかけ、理由を教えてください✿
学部時代に学んだ経済学の合理性の裏に、そこでは捉えられていない実社会における重要な問題に気づき、その問題も含めた解を合理性を持ちながら回答できる術を身につけたいと考えたからである。私は学部時代、経済学部国際経済学科に所属し、主に貿易理論を学ぶとともに、多国籍企業論を扱うゼミで企業活動の国際展開や資本移動の仕組みを研究していた。経済学の魅力は設定された社会システムのもとで、国全体や消費者、さらには世界全体が豊かになるための合理的な選択を明確に示してくれる点にあると感じた。しかし一方で、インド経済に関する講義や東京外国語大学との単位互換制度を通じて学んだタミル語の授業を通し、経済学的な「最適解」が必ずしも現実社会における「正解」とは限らないことに気づいた。インドの長い歴史の中で培われた文化が、グローバリゼーションの進展によって失われつつある現状を知ったことで、経済学が示す成長や効率性の追求だけでは測れない価値の存在を実感した。
この経験から、金銭的合理性のみを基準とするのではなく、人々の生活や文化といった無形の価値も含めて政策を考える必要があると感じ、こうした複合的な視点をもって現実の課題に向き合うために大学院への進学を決意した。
✿大学院修了後のビジョンを教えてください✿
アカデミアと実務をつなぎ、より効率的で実現可能なビジネスや政策の形成に貢献したい。具体的には、卒業後金融機関に就職する予定であるため、金融の視点から多様なステークホルダーを理解・調整しながら、国家プロジェクトや企業の大型事業に携わりたい。多様な利害を踏まえた上で、最適な金融スキームや解決策を提示し、プロジェクトの実現に貢献することが目標である。
学士課程では、経済学を通じて金銭的側面から社会を分析する方法を学び、修士課程ではその合理的な意思決定の裏にある社会的・倫理的課題を考慮した政策形成のあり方を学んだ。これらの学びを組み合わせることで、理論的にも実務的にも持続可能な政策や事業の設計や調整ができる人材になりたい。現在の日本では、アカデミアと実際の政策・産業現場との連携が十分とはいえず、その背景には学術的知見を社会の制度やビジネスの枠組みに応用し、実行に移すことのできる人材が不足していることが一因であると感じている。私は経済学と金融の両面から課題を分析し、理論と実務の橋渡し役として企業や行政が直面する問題に対し、実現可能かつ持続的な解決策を提示できる存在になりたい。
✿あなたと同じように大学院進学を目指している学生へアドバイスをお願いします✿
まず伝えたいのは、「なんとなく大学院に行きたい」ではなく、「なぜ大学院に行くのか」という問いに、焦らず自分の言葉で答えを見つけてほしいということです。大学院での学びは、誰かに評価されるためのものではなく、自分が本気で向き合いたい問いを掘り下げる時間です。その動機が明確であれば、たとえ周囲が就職を選んでいても、自分の決断に迷わず誇りを持てるはずです。また、大学院での2年間は決して楽ではありません。思考を重ねても答えが見つからず、孤独を感じる時もあります。そんな時、なぜ進学するのかというこの問いが、自身の覚悟に繋がり、大学院での時間をかけがえのないものにできるはずです。