食環境科学研究科では、「教育力強化特別予算」という学内制度の枠組みを活用し、次世代の新しい教育スタイルの創造に寄与するプロジェクトに取り組んでいます。食環境科学領域で活躍する最先端の企業人や研究者(フロンティアサイエンティスト)との交流。学生を研究所や企業等に送り込むOJT(On the Job Training)型教育の実践。食環境科学領域にまつわる先端的なトピックをテーマに取扱い、未来の食を考える「食の未来研究フォーラム」等、様々な取組みを2023年度より実践して参ります。
神奈川県横浜市に拠点を置き、工場内植物栽培のためのLED技術を持つ株式会社キーストーンテクノロジーにご協力頂き、OJT研修を実施いたしました。
研修は事前学習・工場での実地研修・事後学修の3つのステップで行われました。
事前レクチャーを受けた学生は、横浜にあるキーストーンテクノロジー社の向上に赴き、播種、育苗、定植、生育管理、収穫、トリミング、パッケージング等各工程を実際に体験。また、収穫物の試食と官能評価を行い、その結果を評価シートにまとめる等をしました。
事後学修では、実務研修で得た知見を基に、人工光植物工場の社会実装を進めるための方策を検討するグループディスカッションを行い、マーケティング戦略の査定、人口植物工場普及に向けた提案をまとめる等、大学の学びにはおさまらない様々な経験をしました。
今回ご協力いただいた岡崎聖一社長(東洋大学食環境科学研究科外部評価委員を兼任)を初め、キーストンテクノロジー社の皆様には厚く御礼申し上げます。
10月4日(金)15時よりフォーラムは開始いたしました。今回は作家瀬名秀明先生をお招きして、「食と生命の未来 ~そこから広がる知能と身体の未来~」と題して約90分間に渡る御講演を頂きました。
本講演では水素水を引き合いに、あるべき人間的な科学的態度、総合知まで議論が展開しました。水素水とは水素分子の濃度を高めた水の事です。各種健康食品が販売されるなどの一時的なブームとなりましたが、その後疑似科学としてバッシングの対象となりました。水素水については様々な言説が飛び交うような状況であります。
御講演の中では、水素水に関わる言論について解説を交えながら、水素水についての考察を踏まえ、さらには我々は社会を取り巻く様々な科学的課題に対してどう向き合うべきかについてお話頂きました。
コロナ禍を経て、特にソーシャルメディア上では社会の分断が頻繁にみられるようになったと感じます。ワクチンの是非、感染症に対する理解、マスクの着用は義務か否か……。近年では紅麹が社会的な話題となったことが記憶に新しいですが、ネット上あるいは実社会での対立と分断は食、例えば健康食品の領域でも同様に起こりうることです。
本講演では、そのような対立と分断を超えるための総合知の必要性について大変意義深い知見を頂きました。聴講学生にとって、サイエンティストのあるべき姿を追及していくうえでの一助になったと思います。
講演後は食環境科学研究の院生を交えて懇親会を実施しました。フランクな場で研究者であり小説家である瀬名先生の様々なご経験をお話頂き、院生達には大変な刺激になったようです。
大変貴重なお時間を下さった瀬名先生には改めて御礼申し上げます。
講演の様子(約200名の参加がありました)
大学院生との懇親会の様子1
大学院生との懇親会の様子2
食のフロンティアから学ぶ食の未来への架け橋プロジェクト初年度となるOJT型研修では、一般社団法人グローバル教育推進プロジェクト(GiFT)の協力を仰ぎ、東松島で二泊三日の体験型研修を行いました。
研修は事前研修、現地での研修、事後研修の三段階で行われました。事前研修では自らの問題意識や課題、目標等を参加者でそれぞれ共有し、目的意識をクリアにして東松島市での研修に臨みました。
東松島では、一次産業から三次産業の現場を体験し、食の六次産業の理解を深めること、またそれらを通じて自らの研究内容を深化させ、自らの研究と社会の繋りを再確認することを目的として行われました。現場ではファシリテーターの元、第一線で活躍する農家や海苔漁師の方々との対談、定置網漁の漁に同行する等、様々なアクティビティを通じて食の産業を体感し俯瞰しました。
事後研修では、お互いの体験を通じて感じたことや経験を共有し、食環境科学を担う研究者としての課題やビジョンを高めました。参加学生からは、研究の背景を見直す契機となった、視野が広まった、社会貢献への関心が高まったといったような声がありました。
事前研修の様子1
事前研修の様子2
船に乗って漁を体験
ワークショップの様子
相澤太氏(アイザワ水産代表)から一次産業の最前線を聞く
集合写真
食のフロンティアから学ぶ食の未来への架け橋プロジェクトでは、食環境科学領域で活躍する最先端の企業人や研究者(フロンティアサイエンティスト)を招聘しご講演いただく等、最新の知見に触れる機会を提供しています。
今回は、総合地球環境学研究所 所長 山極 壽一 氏をお招きし、「食の進化とコミュニケーション」をテーマに人類進化論的な見地から食に纏わるご講演をしていただきました。類人猿や人類の進化の過程を紐解きながら、それぞれの種が発達させてきた「食」の在り方や種の消化力の違いから見る人類進化の過程についてお話しいただき、「共食」をキーワードに、人類と食の在り方とその未来についてご講演いただきました。
また、特別講師として本学食環境科学部 金 賢珠教授をお招きし、「トウガラシとわさびの食文化」をテーマにご講演いただきました。トウガラシとわさび、どちらも「辛味」を楽しむ野菜ではありますが、その起源や、効用、食され方の違いなど、韓国ご出身で日本でご活躍される金教授ならではの視点で国際色豊かなお話をしていただきました。
食環境科学研究科の院生をはじめ、その他学内外の聴講者や教職員等、40名程度の参加者が集まり、時間いっぱいまで質問が飛び交うなど、活気のある講演会となりました。
本講演にご協力下さった山極先生、金先生をはじめ各関係者及びご参加下さいました皆様に改めて御礼申し上げます。
山極先生ご講演の様子
金先生ご講演の様子
質問をする学生(食環境科学研究科大学院生)
先生の実体験を交え数多くの興味深いお話をいただきました