「気持ち」と仲良しになる子どもプロジェクト

「気持ち」と仲良しになる子どもプロジェクトでは、子どもたちが気持ちと上手に付き合うことができ、良好な対人関係を築けるよう、子どもたちの心理的適応に関する調査や学校や放課後等デイサービス等で実践できるSELプログラムの開発を行っています。

SELとは?

SEL(Social and Emotional Learning)とは、自分の気持ち(情動/感情)とうまく付き合う力や他者との関係を上手に形成する力を育むための、科学的根拠に基づいた学習のことです。近年では、自分の気持ちとうまく付き合う力や他者との関係を上手に形成する力といった非認知的能力(学びに向かう力)が、幸福や成功をもたらすための重要な要因であることが明らかになっています。また、SELは学習面での成果につながることも明らかになっています。

気持ち穏やかにおうちで過ごすために

「気持ち」と仲良しになる子どもプロジェクトでは、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って、学校が休校となり家から出ることもままならない状態にある子どもたちが、できるだけ心穏やかに過ごすことができるよう、SELの要素をtwitterに乗せて発信しています。

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SELは本来、1回15~60分くらいの活動を10~15回ほどかけて、さまざまな演習に取り組みながら行うものですが、その活動の要素は日常生活の中でも活かしていけるものです。

いつもとは違う日常で家からもなかなか出られない中で、ストレスがたまったりイライラしたりすることは当然のことですが、少しでも心穏やかに過ごすためのヒントになれば幸いです。

発信している3要素

気持ちに気づく

イライラや不安・心配といった気持ちに対処するためには、まず自分の気持ちに気づくことが必要です。しかしながら、大人であっても自分の気持ちに気づくことは容易ではありません。子どもであればなおさらです。テンションが高い、何度も同じことを質問する、考えの合わない人に対して攻撃的になる、おなかが痛い…これらのことは、その背景に不安がある可能性がありますが、そのことに気づけていないことも少なくありません。
自分の身体の変化、気持ちの変化に意識を向け、気持ちに気づくことをを促します。

気持ちに対処する

イライラや不安・心配を経験した際、人はさまざまな方法でその気持ちに対処しようとします。攻撃的な言動、暴力、物を壊す、暴飲暴食、外部の情報の遮断…このような方法も1つの対処方法ではありますが、あまり望ましい方法であるとはいえません。また、適切な対処方法であったとしても、1つの方法だけに頼っている場合、その方法が使えないときに困ってしまうことがあります。
気持ちに適切に対処する方法を増やし、気持ちと上手に付き合っていく力を育てます。

レジリエンス

レジリエンスとは、心の”しなやかさ”のことであり、逆境や困難、ストレスをしなやかに乗り越える力、受けたダメージから回復する力のことです。学校が休みの間、家にいないといけない期間の間、新型コロナウイルス感染症が流行している間、その間の逆境や困難、ストレスに対処していくことも重要ですが、加えてその後日常に戻った際に、また元気よく活動していくことも大事です。
自分を取り巻く環境を含む自分の強みをみつけ、困難な時期が終わった際に大きく羽ばたいていける力を養います。

twitterでの発信

子どもたちへの対応について

これまでの海外における先行研究では、感染症の流行下で検疫や隔離といった状況に置かれた場合、大人も含めて、PTSD(心的外傷後ストレス障害)や不安、怒りの症状を示すことが明らかになっています。特に子どもにおいては、災害後と同等の率でPTSDの基準を満たすという研究もあります。

感染の拡大を止めることはもちろん重要なことですが、同時に子どもたちの心に大きな傷を残さぬよう、周囲の大人が適切にサポートしていくことも重要であるといえます。そのためには、まず大人たちが自らのストレスに適切に対処していくことが重要であることも忘れてはなりません。

下は、この間をできるだけ心穏やかに過ごすためのヒントとなる資料です。

保護者向け

小学生向け

中学生向け

この他にも、子どもたちを適切にサポートしていくうえで有用な情報をさまざまな機関が提供しています。

資料の一覧はこちら

これまでの活動

放課後等デイサービス等で、発達障碍をもつ子どもたちに対して教職員の方が実践可能なSELプログラム、「PEACE(Program of Emotional Awareness for Child Empowerment;子どものエンパワメントのための感情への気づきプログラム」の開発と実践を行ってきました。

基本的なPEACEに発展的な要素を加え、小学校一般学級等での実践も行っています。


1.Takahiro Yamane, Yuki Matsumoto, & Yuma Ishimoto (2016). Development of a CBT program for children with developmental disorders and anxiety implemented by professionals in childcare: Study protocol for a randomized controlled trial. EABCT 2016 ABSTRACT BOOK, 724 Stockholm, Sweden

2.Yuma Ishimoto, Yuki Matsumoto & Takahiro Yamane (2017). Delivering CBT Program for Children with Developmental Disorders in a Community Setting. EABCT 2017 ABSTRACT BOOK, 311 Ljubljana, Slovenia

3.Yuma Ishimoto & Takahiro Yamane (2018). The impact of “PEACE” program on children with developmental disorders in community settings. ISPA 2018 Abstract Book, 123 Tokyo, Japan

4.Yuma Ishimoto, Takahiro Yamane & Yuki Matsumoto (2019). Anxiety Levels of Children with Developmental Disorders in Japan: Based on Reports Provided by Parents Journal of Autism & Developmental Disorders, 49(9), 3898-3905.




メンバー

鳥取大学 教員養成センター
准教授 石本 雄真 (連絡先)

神戸大学大学院 人間発達環境学研究科
准教授 山根 隆宏

徳島文理大学 人間生活学部
教授 松本 有貴