多様化するマーケットに対応した開発提案型の総合商社-ホクリク総業株式会社
ホクリク総業株式会社代表取締役専務 加藤正樹氏
執筆:バートル(多摩大学経営情報学部)
新潟県三条市を拠点とする総合商社の歩み
今回ご紹介するのは、「ホクリク総業株式会社」(以下、ホクリク総業という)である。
同社は、新潟県三条市を拠点とする北陸グループに属する総合商社である。元々は1927年創業の北陸工業株式会社という鍛造工場であり、1945年に北陸工業で作業工具卸売を始めたことがルーツとなる。1978年にホクリク総業として独立し、それから約半世紀に亘って機械部品製造・卸売、LIFE STYLE GOODS、厨房用品テーブルウェアの三つの事業を柱としながらホテルの運営まで幅広く事業展開する開発提案型の総合商社へと成長した。とりわけ機械部品分野では熱間鍛造・冷間鍛造やアルミダイカスト等の加工調達を手掛け、精密部品を必要とする製造業顧客に対して国内の産地力と海外拠点(中国・ベトナム)を活用した調達ルートと自社物流でワンストップ供給を提供している。また、一般消費者向けには燕三条で設計・生産したオリジナルブランドを楽天やAmazonで直販し、飲食店や業務用需要には厨房・テーブルウェアの卸売やカタログ販売を行っている。多様化する市場や納期・品質管理といった顧客の課題に対し、迅速な調達体制と一貫した供給サービスで解決する点が同社の特徴である。
2024年度の売上高は22.7億円(商販事業部18.47億円、ホテル事業部4.27億円)。商販事業部の売上構成は機械部品が59.5%、通信販売が22.7%、厨房用品が12%、カタログギフトが4.5%、賃貸が1.3%であり、機械部品が全体の約6割を占めている。2026年2月現在の本社の従業員数は31名(男性21名、女性10名)で、通信販売事業の拡大および品質管理課強化に伴い女性社員が多く在籍している。
同社の主なグループ企業に北陸工業株式会社(1984年にデミング賞実施賞中小企業賞[1])、株式会社ビップ、株式会社東條造花店、新潟新興交通有限会社、ホクリク精機有限会社などの企業があり、グループの力を結集した新潟燕三条を代表する企業の一つである。また、同社は早い段階から海外でもビジネス展開をしている。
1999年に中国現地法人を設立し中国国内の日系企業向け製品販売を行い、2014年にはベトナムからの輸入を開始。2020年にベトナム事業所を設立し機械部品等を輸入するなど、アジア地域までビジネスの裾野を広げている。このように、国内に軸足をしっかり固めながらもグローバル市場を視野に捉えた経営戦略、換言すれば地域密着とグローバル展開を両立させている点が同社の戦略的な視野の広さが伺える。
以下、同社の公式ウェブサイトの掲載内容に加え、今回の取材に応じて下さった加藤正樹取締役専務に対するインタビュー内容からホクリク総業の三つの事業内容とそれぞれの特徴を整理してみよう。
オーダーメイドを強みとする機械部品の製造販売
同社は、農業機械、産業機械等の部品製造販売、各種搭載工具の販売、各機械メーカー(建設・農業・産業・厨房など)メンテナンス工具を含めた主要部品を納入しており、直接取引関係にある顧客数は約200社、協力工場数約200社にも上る。
一つ目の特徴は、地元工場で顧客からの細かい要望に対応している。協力会社との強い信頼関係を物語っているように、例えば素形材から完成品まで、半径15km圏内を中心に各協力工場を取りまとめ、熱間鍛造・冷間鍛造・各種鋼材関係~加工・熱処理・溶接・表面処理まで幅広く対応している。
二つ目の特徴は、素材から納品まで一貫した対応体制が構築されている。例えば、素材(鍛造・鋳物・鋼材など)選びから機械加工やプレス・溶接、後処理(熱処理・表面処理)納品まで一貫して幅広く提案している。加藤専務によれば、同社は特注品に関しては1点1個からでも対応可能というから驚きである。
三つ目の特徴は、コスト競争力に優位性を持っている。中国・ベトナムなど海外からの調達によるコスト競争力の優位性をもち、製造コストを下げたい顧客への対応が行き届いている。なお、発注が多いものは海外から輸入、小ロットのものは地場に発注するなど、海外からの輸入品との棲み分けはできているという。
ライフスタイルに合わせた商品・サービスの提供
この分野における最大の特徴は、ライフスタイル提案型商品を開発していることであろう。スチール家具や木製家具、キッチン雑貨、生活雑貨の企画から設計、生産販売までをトータルサポートしているが、とりわけ機能性や品質、素材や質感の細部に至るまでこだわっている。消費者の暮らしに新しい価値を生み出しながら新たなマーケットの開拓につなげていることがわかる。
1992年、同社初代社長の意向で、地域のニーズや住民のライフスタイルに合わせてホテル業界にも参入している。同社の冠婚葬祭事業としてホテルウェーディング、宴会場がある燕三条ワシントンホテルを自社社員で運営している。因みに、朝食には定評がある。
厨房用品・卓上用品も手掛ける
厨房用品から食器まで幅広いラインナップを取りそろえており、学校給食、結婚式場、ホテル、福祉施設など様々なシーンに合わせて最適な厨房用品卓上用品を手掛けている。厨房用品や卓上用品に関しては、1324ページもある電子カタログをめくれば同社の多種多様な商品のラインナップの多さが良くわかるので是非ご覧いただきたい。
大変稀なことであるが、同社の公式ウェブサイトでは上記三つの事業に関する取引の流れ、即ち「製品開発の流れ」「納品までの流れ」を公表している。一般的にあまりしない企業が多いと思うが敢えて公にしている理由については、「全体の流れを見ればわかる方はすぐわかるが、一つずつ説明しないとわからない方でもわかるようにしたため。加えて、新入社員の教育の一環でもある」と、加藤専務は述べている。
「燕三条を売り込むセールスマン」
ホクリク総業は営業活動において、「燕三条を売り込むセールスマン」というキャッチコピーを使っているのがとても印象的である。その背景には、「将来、地域一番のトップセールス企業となり、世界の果てまで燕三条を売り込んでいきたい」という想いがあるようだ。加藤専務は「うちは大きい企業ではないので、いくら寄付したとか、なんとか活動に参加したとかいうのがあまりできないですけども、その代わり仕事を持ってきて、そのお金をこっちに運んでくるっていうのは立派な地域貢献かなと思っているので」という。自社の利益だけでなく、地域全体に仕事を呼び込み、経済を循環させることこそが社会貢献であるという考え方であるが、地元への強い愛着と誇りが垣間見える。
「(顧客と)長くお付き合いができているってことですよね。(顧客から)お前また来たかと言われながらも通ったことで、お付き合いができた」、「競合が多いなかでもお客様との信頼関係があるからこそ良好なビジネス関係が成立している」と加藤専務が語るように、顧客のところへ何度も足を運び、対話を重ねることで築かれた信頼関係があるからこそ、製品の大半は半径15km以内の工場で製品すべてを完成できること、地元の協力会社と共に顧客の要望に100%応えるための試行錯誤を繰り返しながら「ここでしかできないこと、作れないもの」を提供できている。それだけ、顧客のニーズ重視、協力会社との信頼関係があるからこそできることであり、同時に競合との差別化にもつながっているであろう。
ホクリク総業のこれからの50年、100年先
厨房用品・卓上用品事業の先行きを考えるうえでは、業務用厨房機器市場の動向も重要であろう。日本厨房工業会が2024年度に実施した「業務用厨房機器に関する実態調査」[2]によると、回答企業の業務用厨房機器の売上高(2023年度実績)は前年度比15%増の7,123億円となり、初めて7,000億円を超えた。業務用厨房機器の主要市場である外食産業の売上高は、2022年から2024年まで3年連続で増加。好調の背景にコロナ禍後の人流回復やインバウンド(訪日外国人)需要の伸長によって外食ニーズが高まったことであると言われている。加えて原材料費・エネルギー価格・人件費などの高騰に伴う値上げも売上高全体を押し上げたと見られている。
一方、市場の変化も予想される。2025年度以降の業務用厨房機器市場について、同調査では、「インバウンド消費による需要や、人手不足を背景とした省人化ニーズ(スチームコンベクションオーブン、自動フライヤーなど)は引き続き底堅い」としながらも、エネルギー価格や原材料価格の高騰、円安の長期化、物価上昇による個人消費の停滞(節約志向・低価格志向の高まり)、深刻な人手不足などの不確定要素が多く、「予断を許さない状況が続く」としている。
国内外の市場が目まぐるしく変化しているなかで、ホクリク総業にとっては少子高齢化により縮小・飽和する国内市場、アジア企業の台頭とキャッチアップの速さ、国内競合との熾烈な競争などが経営の課題になることが予想されるであろう。市場の変化と競合との競争環境について、加藤専務はこういう。「私たちは(顧客に対し)、当社を生かしてくださいっていう話をします。例えば、メーカーであれば特定の工程しかお受けできないと思いますが、当社だと百貨店と同じようにあれもこれもできます。材質で言えば、鉄もステンレスもアルミもありますよっていうことが言えますし、作り方も例えばと鍛造も鋳物もありますし、電解研磨処理もメッキも溶接もできますよとかいうことが PRできるので、当社を活かしてくださいってこと話します」。こういった顧客との対話を通じてホクリク総業が顧客を引き付ける力や魅力に結び付いていると考えられる。
ホクリク総業のこれからの50年、100年先を見据えた経営。その鍵は、これまで同社が築いてきた変化に対応する柔軟さと地域に根ざした強固な基盤の両立にあると考えられる。燕三条という土地の力を活かしながら、世界へと視野を広げるホクリク総業。その歩みは、地方企業の可能性を示すひとつのモデルであり、これからの未来にも大きな期待を抱かせるであろう。
同社の公式ウェブサイトに「産業集積地である燕三条を拠点としていることを活かし、これからもニーズに迅速に対応していくことで、お客様に愛される商品・サービスを50年、100年、さらにその先の未来へと提供しつづけていきます。」と語る加藤峰孝代表取締役社長の言葉に同社の成長や成功のヒントが隠れていると思われる。これからの50年、100年先のホクリク総業の経営に大いに期待したい。
(取材日:2026年3月9日)
前列左より新西、加藤正樹専務、野坂、後列左より中庭、バートル
ホクリク総業株式会社 https://hoxo.jp/company/
[1] 日本科学技術連盟(デミング賞委員会が選考)がTQM(総合品質管理)の進歩に功績のあった民間の団体および個人に授与する経済学の賞。因みに、ホクリク総業の社内に品質管理課があり、製品の品質管理の徹底が顧客との良好な信頼関係の構築に寄与していると見られる。
[2] 日本厨房工業会『業務用厨房機器に関する実態調査』日本厨房工業会、2024年12月