宝塚医療大学保健医療学部
老化によって視力が低下することは一般に知られているが、高齢者の視力や白内障の改善に鍼治療が有効かどうか検討することを目的とした。
(方法)白内障と診断された高齢患者 6 名(平均年齢 69 歳±10.4)を対象に、30 回~200 回鍼治療し、視力・屈折率・水晶体白濁画像について初回施術前と施術後を比較検討した。
(結果)30 回施術した患者 6 名の裸眼視力(0.45→0.54)、矯正視力(0.89→1.08)共に改善した。また 200 回・5年間の鍼治療で当初の視力がほぼ維持できた。水晶体白濁の改善の有無については明確な結果は得られなかった。
(考察)30 回施術した結果から、75 歳男性(裸眼視力:0.6→0.9、矯正視力:1.0→1.2)を含む患者全員の裸眼視力・矯正視力が改善したことから、高齢者の視力改善に鍼治療が有効であることが明らかになった。福野らは「白内障術後に於いても、鍼刺激により裸眼および矯正視力が向上することが明らかになった。このことは、鍼によるピンホール効果や縮瞳反射の可能性が考えられる」と述べている。これは高齢者の裸眼および矯正視力の向上という、我々の結果を支持するものであった。
(結語)高齢者の裸眼・矯正視力ともに鍼治療により改善された。また施術継続で現状維持が示唆された。白内障による水晶体白濁の改善の有無について明確な結果を得るにはより精度の高い観察手法を要する。
キーワード:高齢者,視力,白内障,鍼治療