【前照燈No.16】1960(昭和35)

整備工場認可に際し 部員諸君に望む

主将 櫻井生夫

 昭和三十三年度以来、我が自動車部の整備技術向上を目指し、整備面に於て確固たる組織を築き上げんとする目的を以って受け継がれてきた。この認証を取得するに当っては、その先見の明を以って立案された当時のリーダーの方々、又この計画を絶えさせることなく実行された、昭和三十四年度のリーダーの方々の努力の結晶を基礎として、本年度の有志の骨折りによって、検査も無事通り、この度の認証工場の資格を得たのであります。

 認証工場となった現在、私は次の事を部員諸君にお願いしたい。

 認証工場であれば諸君も周知の通り、事業として行うことが認められるのである。併し我々は、アマチュアスポーツの一角をなすものであることを忘れてはならないのである。対外的面から見た場合この認証工場は、我々部員の整備技術向上と、車両整備の合法化を目的として認証を受けたものであるから、営業的な整備、即ち部者以外の車の整備をすることは、好ましくない。しかも我々は、整備工場格の機械工具の取扱い方にも慣れておらず、この点から観ても、我々は常に関心を以って、これらをマスターしていかなければならないと思う。

 一方我々は部内に於て、如何にこの工場を発展せしめるかということを真剣に考えて貰い度いと思う。前述した通り、我々はプロではないのである。一台の車を整備するにしても、一人のものが終始、その車につきっきりで整備するのは不可能であろう。これを試みるとすれば、学生である我々にとっては、無理を生ずる結果となるであろう。

 部の発展に対しては、百年の計がある。同様、整備技術の向上も、一朝一夕にして為せるものではない。整備工場といえども、そこには部独自のやり方がある。併し私は今迄の部の整備のやり方を全面的に支持しているわけではない。今後我々に課せられる問題は、如何に整備工場の水準迄我々の部の整備技術を引上げるか、ということであろう。

 ここに私は具体的な面を挙げて、部員諸君の参考に供したいと思う。

 先ず諸君は、責任ある整備をする事。これはボルト一本締めつけるにも、自分の与えられた個所は、責任を以ってやらなければならない。とかく一本のボルトが弛んでいた為に、大きな事故を起す例は少なくない。

 第二に諸君は絶えず研究心を燃やして、機械工具の扱い方、整備の仕方、車の構造について、実際面に於ても、書籍からも、今迄以上の知識を学びとって貰い度いと思う。整備工場を見学することも良いであろう。しかしこの場合、諸君は部あっての部員なのであるから、部活動を完全に離れてしまう様な長期の実習は好ましくない。休部中を利用するとか、何等かの方法はあろう。

 第三に諸君がこうして学びとった整備技術を如何にして部内に於て応用するかである。換言すれば先輩諸氏から教えられてきた整備技術を土台として、如何に能率的な整備をするかという問題である。部の財政は決して楽なものではない。安全が保たれる限り使用出来る物は工夫をこらして使って貰い度い。併し今後は徐々に重要保安部品に対する考え方を、今迄とは変えていって貰い度いと思う。特に整備面に於て時代を担う三年部員以下の諸君は、以上の事を留意して、いまからその基礎を築いていって貰い度い。